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801 名前:藁を叩く少女[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 12 28 35 ID xDCdn1cN 入学祝いに作ってもらった一人部屋の寝台に丸まって、美佳はすすり泣いていた。 自分は直樹に裏切られたのだ。約束を破られたのだ。二人だけの秘密だったあの場所を、他人に暴かれたのだ。 美佳の脳裏には、あの三人が発した楽しげな笑い声がこびりついて離れなかった。 耳穴に指を突っ込んでも、忌々しい音は聞こえてきた。布団に頭を埋めても、音は余計に大きくなって美佳の心を痛めつけた。 何も見ずとも、聴かずとも、触らずとも、どうやっても三人の嘲笑を消すことは出来なかった。 せいぜい自らの呻き声でそれを少しなりとも誤魔化すだけだった。 『ともだち』に秘密をばらした直樹が恨めしかった。かといって美佳には直樹を怨むことなど到底不可能だった。 美佳にとって直樹とは自分の半身であり最愛の伴侶であって、彼を否定することは彼女の存在意義を否定することに等しいのだ。 そうなると美佳の憎悪の矛先は当然のように『ともだち』である二人の少女へと向かうはずなのだが、幼い少女には悲しみを憎しみに転化するほどの機知はまだ備わっていなかった。 結局のところ今の美佳に出来たことは、こうして一人でみじめにすすり泣くことだけだった。 802 名前:藁を叩く少女[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 12 31 43 ID xDCdn1cN 夏になった。夏休み中、美佳と直樹が遊ぶ機会は以前と比べてかなり減ってしまっていた。 直樹は美佳をほったらかして、例の少女二人と毎日のように遊び歩いていた。 美佳は毎日、秘密基地に一人で佇んでいた。あの少女たちが持ち込んだのだろう玩具を手に取って、一人遊びを続けていた。 時折、すすり泣きの音が神社の床下に響いた。 一昨日久しぶりに会った直樹は真っ黒に日焼けしていた。今みたいに秘密基地にいる以外は部屋に閉じこもっている美佳の肌は、真っ白なままだった。 美佳はピンクの手提げ袋から、一冊の冊子をとりだした。犬の絵の表紙には可愛らしい書体で『たのしいなつやすみ』と描かれていて、裏表紙にはマジックペンで『なおき』の文字が書かれていた。 この冊子は一昨日会ったときに美佳が直樹に押し付けられたもので、ぱらぱらと捲るとページの空欄は全て小奇麗な丸文字で埋められているようだった。 美佳は父親の書斎から持ち出してきたライターを手にして、捲った表紙の角に火をつけた。 冊子が置かれている地面は少し湿っていたが、炎は数秒で表紙全体に広がり、冊子は勢い良く燃え続けた。 直樹の肌とお揃いで真っ黒になった冊子に、美佳は靴の踵を何度も何度もたたきつけた。そして、かろうじて形をとどめていた直樹の冊子はばらばらの灰になった。 神社では蝉の鳴き声に混じって、少女のしゃくり上げる声が響いた。 学習机の上には、『みか』と名前が書かれた夏休みの宿題が置かれていた。美佳は『みか』の文字を手で擦った。手が湿っていたからか、水性マジックペンで書かれた文字は灰色に霞み、何回も擦るうちにとうとう消え去ってしまった。 薄く灰色に滲んだ名前欄に、美佳は『なおき』と書き入れた。ペンを持ったままの手で、美佳はいつもしているように濡れた目元を拭った。拭った手がべたべたになった。 新学期が始まった日に、宿題を失くしてしまった美佳は先生に叱られた。 803 名前:藁を叩く少女[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 12 33 20 ID xDCdn1cN 秋になった。美佳と直樹の家族は連れ立って紅葉狩りへ出かけた。 登山の最中、美佳は久しぶりに直樹と手を繋いで、鮮やかに色付いた景色の中を一緒に走り回った。 木の根に躓いて転んでしまい、美佳はわんわんと泣き出してしまったが、直樹は泣いている彼女のために団栗を沢山拾ってきてくれた。 美佳は大好きな直樹に、ひさしぶりに心からの笑顔を見せた。 ピクニックを終えて家に帰っると、二人は採ってきた団栗を使い、どんぐり独楽を作って遊んだ。 直樹の作った独楽のほうが、不器用な美佳の作ったそれより良く回った。直樹は自分の作った独楽と美佳の独楽を交換しようと提案して、美佳も喜んでそれを受け入れた。 美佳の宝物がまた一つ増えた。 次の日、隣にある直樹の家から響いてきた音は、ごちゃごちゃとしたテレビゲームの電子音と、時折それに挟まれる少女たちの歓声だった。 美佳は学習机に昨日拾った団栗を全部広げて独楽を作り続けていた。雑念を払うように、団栗に錐で穴を開け、爪楊枝を刺す作業を延々と続けた。 完成した独楽は、直樹に貰ったもの以外全部金槌で叩き壊した。 804 名前:藁を叩く少女[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 12 37 26 ID xDCdn1cN 冬になった。校庭では直樹たちが雪合戦をしていた。美佳はそれを廊下の窓から眺め続けていた。 入学してから今日まで、ついに美佳は一人の友達も作ることが出来なかった。 美佳が望んだなら、友達の一人や二人簡単に作れただろう。この年頃の子供というのは何よりも遊び相手に飢えているから、誰だろうと差別なく自分たちの輪の中に受け入れることが出来るのだ。 しかし、美佳は直樹以外の友人をつくることを拒否した。 周りの同年代の子供らが無遠慮に口にする『ともだち』という単語は、美佳が最も憎んでいて、耳にするだけで不愉快になるようなものだったからだ。 たった数ヶ月の付き合いで心を許すなんてことは、言語道断であると少女は考えていた。ただの遊び相手に抱く薄っぺらな友情も彼女は御免被りたかった。 何よりもまず上辺だけの付き合いをしようにも美佳には少女らしい潔癖な誠実さがあり、そういった軽薄な振る舞い自体、彼女にとって到底許せるものではなかったのだ。 美佳の態度があまりにも頑なだったので、この頃にはもう自分から彼女に話しかけようとする子供は直樹以外に誰も居なくなり、彼女はクラスという集団の中で浮いた存在となってしまっていた。 しかし、美佳は集団生活の中にいるうちは孤独だったが、一度学校から離れれば直樹という最愛の人間がいた。 美佳が今のように一人で遠くから直樹を見つめている間だけは、学校生活で感じる寂しさと劣等感を一時的にせよ慰めることが出来た。 直樹が敵軍の大将をやっつけたことで校庭から歓声が上がった。 得意そうにしている直樹の様子を眺めて、美佳は心底嬉しそうに微笑んだ。 805 名前:藁を叩く少女[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 12 38 57 ID xDCdn1cN 二度目の春が訪れた。二年生になっても相変わらず美佳は孤独だったが、直樹との距離は一時期に比べて以前のものと近くなっていた。 四月の初めには、親たちに内緒で家を抜け出し、美佳と直樹の二人きりで夜桜を見にいった。 直樹が露店で買ってくれたたこ焼きは涙が出るほど美味しくて、いつまでもこの味を忘れないでいようと美佳は誓った。 翌日、美佳は家族に連れられてお花見に行った公園で、直樹が二人の少女たちと一緒にお好み焼きをつついている姿を目撃した。 806 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 12 41 03 ID xDCdn1cN 以上です。 十周打ち切りっぽく、オチが無いのがオチです。 807 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 14 17 13 ID 9eBFQfr7 806 これがオチって・・・ 打ちきりになった作家さんに失礼だろ 808 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 14 46 28 ID j2/dNd2e 806 文体とか非常に好みなので、 なんていうか惜しいです 感想のつけようがない 809 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 14 51 23 ID E01vIY3O 806 ほほうほほう、遠回しにヤンデレの作り方を教えてくれてありがとう。 来世はコレで行くか! 810 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 15 57 49 ID vDpkdufK 亀だが、 771とかのあのセリフをオレはバルドフォース(のEXEだったかな)から来てるのかとオモテタ。 811 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 16 20 31 ID drMNHCpw 最近投下が増えてきて嬉しい。 作者さんたち乙です 812 名前:異喰物語 ◆cgdFR4AMpg [sage] 投稿日:2007/09/14(金) 22 00 39 ID mngBUKM5 平坂暦にとっての“覚醒進化”とは、つまるところ一種の“悟り”のようなものであると思う。 既存にして起源である世俗より解脱し、そこからも更に上、次なる段階への躍進であると、暦はそう定義する。 そう自覚してより以後、暦は世界が“未だ嘗て無いもの”に満ちていることを知り、同時にそれらを知る事の出来ぬ“世間”を煩わしく思うようになった。 中身の無い亡骸に縋る両親も、それを聞きつけ打算を張り巡らせる親族も、その他諸々一切の全てを何にも値せぬゴミと判断し見下し軽蔑し、 ――――それらへの決別を決意した。 その頃である。彼女が同類と思わしき青年と出会ったのは。 彼は見た目こそ老衰し、衰弱し、死に体であったが、観念的に物事を把握する彼女にとって見た目は何ら問題では無く、だからこそ彼の本質を見抜いた。 そして惚れた。 それはもう問答無用、空前絶後の完全無欠なまでに一目で陶酔した。 一目惚れである。そしてこれが、暦の初恋でもあった。 「うふ、うふふふ……」 彼が欲しい、と暦は思った。 だが己の身では彼を捉えることは出来ない。 かといって彼の“終わり”を待つことも出来ない。それに続きが存在するのは、己だけに赦された特殊性であると理解していたからだ。 食べてしまいたいほどに愛おしい彼。彼のことを思うだけで秘奥が疼き、淫らな空想に耽ってしまう。 見下してしまうのはただ照れ隠しだ。どうしようもないもどかしさが、彼を想って口を吐いてしまう発露。本当は今すぐにでもその腕の中に抱かれたいのに。 だが未だ。 彼が目覚めるまでは―――― 「こんな若さ故の迷妄。――――あなた方に理解できるかしら?」 813 名前:異喰物語 ◆cgdFR4AMpg [sage] 投稿日:2007/09/14(金) 22 02 13 ID mngBUKM5 『――――、―――― ――――』 “それ”は暦の呟きに答えるように、不明確そのものの雑音を漏らす。 老い、枯れ、死に至った在りし日の残滓。 還るべき場所に還る筈のそれは、しかし暦の朧手によってしっかと捉えられていた。 『――――、―――― ――――』 「あぁ、あぁもう煩いわ。耳障りよあなた。やっぱり老人には度の過ぎた話かしらね」 見ようによってはヒトの形に見えなくも無い“それ”の、おそらくは首にあたる部分を暦はぎりぎりと締め上げる。 “それ”に問うたのも、ある種気紛れのようなものだったが、やはりというかまともな答えなど返ってはこなかった。 例えばその手を離したとしても、或いは優しく撫で擦ったとしても。 “それ”は同じ雑音を繰り返すに違いない。 他と同じく、茶器の底に残るような澱でしかない“それ”。 暦はそれが堪らなく嫌いだった。 “終わり”を迎えたものの後に残る“それ”。 “魂”とでも言うべき不確かを、暦は締め上げ縊る。 “終わり”は彼女の独壇場だ。終わったものを糧とする、彼女だけに赦された“覚醒進化”。 己の場合にとっての“それ”を、暦は“魂喰らい”と名付け称した。 ――――黄泉比良坂に息衝く痩せ犬、平坂暦。 『――――、―――― ――――』 「そう、残念ね。だけどここで終わり。だってあなたは“餌”だから」 先程死した老人の“魂”の一端を喰らってみれば、「一目孫に会いたい」と語っていた。 だが、そんなことは関係無い。 「迷ってないでさっさと逝くべきだったのにね。だけどもう遅い。それじゃあ――――」 いただきます、と。 言うや否や、早々に口に運ぶ。 しゃりしゃり、じゅるり、さっくりと。 凡そ物質的な食感ではない食べ応えに、暦は一応の至福を見せたが、それもすぐに消えた。 数分と経たずに食べ終えるも、ますますその表情は険しくなっていく。 理由は簡単。単に不味いからだ。 例えるならば小骨の多い焼き魚を冷めてから食べるような、旨味を出し切った鶏がらを齧るような、そういう感触。 「やっぱり老い耄れは駄目ね、美味しい要素が一つも残ってないんだもの。未練たらたらな部分は良さげだったけど、それだけじゃあねぇ……」 空しさに虚空を仰ぎ、彼の下へと思いを馳せる。 彼と添い遂げる時には、うんと上等なものを用意しよう。そう密かに決めて。 「メインディッシュはこれから。早く目覚めてね、キョウ……」 814 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 22 03 55 ID mngBUKM5 投下宣言し忘れてました。すみません。 短いですが、第二話とさせていただきます。それでは。 815 名前: ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/15(土) 02 36 05 ID mGHngbhz 一昔前に妄想したネタを投下。 SS書くのは初めてなので誤字脱字等があるかもしれませんがご了承下さい 816 名前: ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/15(土) 02 36 59 ID mGHngbhz 「君がいけないんだぞ『大人になったらお嫁に貰ってくれる』って さぁ、あの時の約束、ちゃんと責任を取ってもらうぞ」 私こと玄田ジュンは、幼馴染の椎名ミキに手足を拘束され婚約しろと脅されている なぜこのような状況になったかというと今日(午前1時なので正確には昨日か)の同窓会でミキと一緒に帰っている時の事 「じゅ・ジュン…突然で悪いんだが小学3年の夏、私との約束を覚えているか?」 本当に突然の質問で私は戸惑った…え~っと、10年前ミキになんか約束したっけ? そういえばおじいちゃんに『レディとの約束を忘れちゃいけない』と言われたが覚えてないものは仕方ない 「え~っと、ゴメン俺、ミキとなんか約束したっけ?」 ミキは「本当に覚えてないのか?」っとどこか悲しげな顔をしながら言った。 そんなミキを見ると少し罪悪感を感じた…がやっぱり思い出せない 本当に覚えてないとわかったのかミキが頬を赤くして 「き・君は、その時『10年たったらミキをお嫁に貰う』ってい・言ってくれたんだ」 … …… ………あっ思い出した 確かに私は10年前、ミキに結婚するって約束した しかし、それは世間を何も知らない小学生同士の約束…なんでそんな事を今更、掘り起こしたのだろうか? 「私はうれしかったそして今日がその約束の日だ…今日まで君の為に純潔を守ってきた」 あれ?もしやミキは私の事が好きって事?無愛想な女だが自分を好いてくれるのはうれしい おもわず「私も男だ!ミキと結婚しよう」っと言いたくなったが現実的に考えると さすがに計画性のない学生結婚はしたくない…あぁせめて15年後って言っときゃよかった 「え~っとねミキ、さすがにお互い学生の身だし…いやほら若いうちに結婚すると 色々と苦労しそうだしね…その…だからあの約束はなかったって事で…」我ながらナイス言い訳 「…つまり結婚の約束は………なかった事って事なのか?」 「いや…その…あぁ、そういう事になるな」 「そうか…わかった」そういうとミキはバックから護身用スタンガンを取り出し私にそれを押し合えた 「ぬぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 817 名前:『10年前の約束』 ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/15(土) 02 38 38 ID mGHngbhz …どうやら私は気を失ってたらしい で、手足を手錠で拘束されてるようだ 「ようやく目を覚ましたか」 「はっ!その声はミキ!な・なぜこんな事を…」 「…君がいけないんだぞ」 月の明かりでさっきまで暗闇で見えなかったミキの姿が見えた…ミキの姿は裸だった 「君が私を本気にさせた…それなのに君は私と結婚してくれないという…君は実に酷い男だ」 「待て!ミキ、話し合おう!!」 「話したら…話したら結婚してくれるのか?一緒にいてくれるのか!?愛してくれるのか!!?」 そしてミキは私の服を無理矢理と脱がし私の身体にまたがり私の口に舌を入れてきた ミキは、私の舌吸いつき舐めまわし、しゃぶりついてきた 数分してようやくミキは私の舌を開放した 「結婚してくれないなら…フフフ、結婚せざるおえなくしてくれる」 そう言うとミキは私のパンツごと一気にズボンを引き摺り下ろした 「すごい臭いだ…これならフフフ君との子が孕めそうだ」 「や・やめて…STOP・THE・レイプ!!」 「えぇ~い!!問答無用じゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 818 名前:『10年前の約束』 ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/15(土) 02 39 28 ID mGHngbhz 「むにゃむにゃ………はっ!」 いつの間にか寝てたようだ う~んっと同窓会の後、ミキと一緒に帰って………そこから先が思い出せん 多分、ミキの事だ酔った私を家まで送ってくれたに違いない本当になんていい奴なんだ …でも俺、酔ってたっけ? とりあえず顔を洗おうと私は台所に向かうと 「ジュン、おはようあいからわず君は寝坊助だな」 そこには割烹着を着たミキがうちの台所で朝ごはんを作っていた 「な・なんでミキが家の台所で味噌汁作ってるんだ!!」 「夫の朝食を作るのが妻の役目だろう …それとも昨日、あんなに愛し合ったのにまた忘れたというのか?」 そうだ思い出した!私はミキに犯されて…それから 「私に中にあんな大量に射精して…フフフ、そんなにそんなに私と赤ちゃん作りたかったのか?」 「いや…待って!お前が無理矢理やってきたから…」 「そんな戯言通用せんぞ…君は昨日の時点で社会的にも肉体的にも私のものになったのだ」 「な・なんという事だ…つまり俺はパパになってしまったって事なのか」 「そして私の夫でもあるのだ」 かくして私こと『玄田ジュン』は『椎名ミキ』の夫となりミキのお腹の中の子のパパになったのである happy end... 819 名前:『10年前の約束』 ◆DT08VUwMk2 [sage] 投稿日:2007/09/15(土) 02 43 27 ID mGHngbhz 終わりです。 SS初心者がエロシーンを書くのは難しい… なんか色々と詰め込みすぎた感が… 820 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/15(土) 04 04 10 ID 947lHiU2 乙。短くまとまっていて良かったと思います。 初心者ということなので、文法的なことを少し。 句点をつける、中点(・)が変、!や?は全角で後ろに文を続ける場合は全角スペースを入れる あたりに気をつけたらどうでしょうか。 次作を期待しています。 821 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 07 14 20 ID +HQDoMH8 主人公の一人称がばらばらなのが気になる 822 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 08 12 05 ID njSA0iaP 814 「メインディッシュはこれから。早く目覚めてね、キョウ……」 ……逃げてー!主人公逃げてー! 819 昔の約束を律儀にも守り続けてきた女の子に犯されるなんて。 テラウラヤマシス 823 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 10 00 56 ID ZVppQa9C 819 激しくGJ 824 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 10 09 28 ID ZVppQa9C 今思ったんだけど男と女二人ともヤンデレ同士だったらどうなるの? 825 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 10 33 48 ID LJm03Qbx 須藤兄妹や上書きの島村さん惨殺エンドみたいになるんじゃないか 826 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 12 17 06 ID lkxf8zB8 824 お互い一途に愛し合うので修羅場も発生せず、周りの人もふたりも幸せなハッピーエンドに向かうでしょう。 827 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14 25 30 ID McevAqgl 824 障害がなければ問題なさそうだが、家柄・兄妹などの理由による周りの反対や第三者のヤンデレなどの障害があれば虐殺エンドや二人だけの世界に旅立つ結末になりそう 828 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 14 33 16 ID 5ni+yub8 お互いが監禁・拘束して餓死しそう 829 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 15 14 22 ID 7CppxBG9 アホすぐるwwwwww 830 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 16 12 15 ID n90UWyOA 依存したり嫉妬深かったり自虐的だったり好戦的だったり電波っぽかったりツンデレから裏返ったり、一口にヤンデレといっても色々あるけど、 最もスタンダードというか王道的なヤンデレってどんなのだろう? 姉妹が遊びで話す『手錠で拘束して逆レイプと媚薬盛って暴走させるのではどっちがいい?』レベルの話で 831 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 16 32 01 ID 9GoX9VVv 王道か。難しいねぇ。 ヤンデレは行き着く先があまりはっきりと決まっていないから、道の引き方も色々あるし。 でも 830が挙げた属性はどれもスタンダードに為り得ると俺は思う。 ……個人的にもっとも重視したいのは依存だなぁ。 832 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 20 25 21 ID LJm03Qbx 漠然としているからなんとも言えないなあ。 ヤンデレに望むものは、と言えば一途さになるんだが。 833 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 21 05 16 ID 5ni+yub8 いやヤンデレは一途だからこそヤンデレなのでは 834 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 21 09 16 ID MzCfn9yQ ヤンデレが先か一途が先か 835 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 21 11 21 ID 7sd9CGV8 まあつまり 830に答えると一途である事がヤンデレの王道、か? 836 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 21 12 01 ID Vf9FEtI5 831 お前さんは依存スレもいってほうがいいんじゃないか? 依存娘がいっぱいいるぞ 837 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 23 47 09 ID zkTJugfB ただ依存系じゃない一途なヤンデレって、どうも元から狂気な女の子のイメージがあるからなぁ 838 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 01 36 29 ID VATY24fe 元から凶器の女の子って定義から外れるんだっけ? ……テンプレみたら外れてたよ。危ない危ない。 839 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/16(日) 03 12 47 ID XhI6Pjwi 昔書いた話を書き直してみたので、投下します。 まだ途中ですが、どうぞ。 840 名前:羊と悪魔[] 投稿日:2007/09/16(日) 03 14 13 ID XhI6Pjwi 質問です。あなたにとって親友とはなんですか? 私の学校には、とても目立つ髪の色をした女子がいる。 名前はたしか、石橋あきら。「たしか」なんて使うのは、私が彼女の名前をろくに記憶していなかったからだ。 そして、これからも彼女の名を記憶することはないだろう。 結果から最初に言ってしまえば、彼女は死んでしまった。 頭からその髪と同じ色の血を流しながら、殺された。 841 名前:羊と悪魔[] 投稿日:2007/09/16(日) 03 14 47 ID XhI6Pjwi 出会いは、小学校。私がいた小学校では四年生になるとクラス替えをする。 目立つ髪をしたあきらのことは前々から気付いていたけど、同じクラスになったときは、なんとなく気に喰わなかった。 クラス委員長の私。クラスメイトや、他のクラスの人とも仲良しな私。勉強だってみんなよりも得意な私。 そんな私よりも目立っている彼女が、妬ましかったのだろう。 でも、そんな嫉妬の感情はあっさりと消えた。ほんの二日三日彼女の立ち振る舞いを見ていて、どう考えても私の方が目立っていると確信したのだ。 あきらは目立とうとしない。 誰よりも目立つ髪の色を隠すように、いつも帽子を被っていた。勉強は得意そうだったけど、私に敵うものじゃあなかった。そして、いつでも一人ぼっち。 そう、私の方が彼女よりも圧倒的に優れていたのだ。ただ髪の色が違うというだけで、彼女は私よりも格下なのだ。 その頃は、そう思っていた。そう思っていたからなのか、何かにつけ彼女をいじめた。 いじめた理由はよくわからない。ただ、何故かいじめたかった。きっといじめやすかったのだろう。 あきらは大人しかった。不気味すぎるほど大人しかったことに、私は気付けなかった。 燃えるような赤、ではない。鮮血のような赤。 あきらの髪は、とても赤かった。非現実なほどに。 842 名前:羊と悪魔[] 投稿日:2007/09/16(日) 03 16 04 ID XhI6Pjwi あきらをいじめる口実は、いつも決まって「親友だから」。 たとえば給食で嫌いなもの(そういえば当時は魚類が食べられなかった)が出たら、それをあきらの机に置く。 「私たち親友でしょ?」 そう言えばあきらは何も言わず、黙々と食べてくれる。自分のことだけど、酷い子供だ。 借りたものを返さないことも多かった。教科書、鉛筆、消しゴム、彼女が大切にしていた小物。多分あきらは困っていただろうが、お構いなし。 「親友だもんねぇ?」 私はことあるごとに親友という言葉を使っていたが、彼女を親友であるとは思っていなかった。 責任転嫁もよくやった。 男子が掃除中にふざけて箒を振り回して、窓ガラスを割ったとき、私の提案であきらが割ったことにしたのだ。 すぐにやってきた先生に、 「あきらちゃんがほうきで割りました」 と言ったら、先生は何もしていないあきらに説教をし始めた。あまりの先生の怒りっぷりに、さすがに私も罪悪感が芽生えた。 しかし、もっと多くの手段で彼女をいじめていた気がするのだが、どうしてもその内容が思い出せない。思い出す必要がないと、私の脳が判断したのだろうか。 843 名前:羊と悪魔[] 投稿日:2007/09/16(日) 03 16 39 ID XhI6Pjwi 中学生になり、大人になったような錯覚を抱いて登校する私の姿は輝いて見えたであろう。 しかしすでに内面と外面を切り分ける術を手に入れていた私にとっては、輝いていた私は偽りである。たとえ外面は意気揚々と学校へ向かうように見えていたとしても、内面は意気消沈していた。 中学生になってもみんなの中心にいた私は、毎日のように恋愛の相談を持ちかけられ、正直疲れていた。よくもまぁそんなに異性のことを好くものである。恋愛をしたことがない私にそういうこと聞かれても、根拠のない励まししか出来なかったのがうしろめたい。 そんな私の初恋が担任の先生であったことは、青春の思い出として、苦い恋の思い出として、タキシード姿の彼と隣に並ぶウェディングドレスの美人のツーショットとともに、今も大切に記憶の中にしまい込まれている。先生、末永くお幸せに。 ところであきらのことだが、なんとまた私は彼女と同じクラスになった。私のいた中学校にはクラス替えが無いので、これから彼女と三年間付き合うことになる。 そのころにはもうあきらをいじめることはなくなった。というか、無視することに決めた。相談されたり勉強したりで忙しくて、もう彼女の相手をしている暇は無かったからだ。 三年間のあきらはおとなしく、誰よりも先に学校に来て、自分の席から動かず、時々自費購入したと思われる何かの小説を読み、そして誰よりも早く帰路に着いた。 いつの間にか、同じ教室にいながら、彼女の存在に気付かないようになっていた。 彼女がいじめられ続けていることは知らなかったし、彼女の机が罵詈雑言や中傷で埋め尽くされていることも知らなかった。 844 名前:羊と悪魔[] 投稿日:2007/09/16(日) 03 18 58 ID XhI6Pjwi 再び彼女の存在を思い出すのは、高校受験のときである。 私は県立の有名校を志願した。偏差値は相応に高く、並の点数ではあっさりと不合格になってしまうが、私の成績なら確実に合格できるという程度の高校である。 受験当日、試験会場であるその有名校の昇降口で、私は赤い髪の少女の姿を見た。小学生の頃から変わらない、前髪だけが少し長いショートヘア。鮮血のように赤い髪が、冬風に吹かれていた。 あきらだ。 驚き立ちすくむ私に気付き、僅かに顔を向けるあきら。その口元には、うっすらと笑みを浮かべていた。 試験用紙の空白を埋めている間もずっと、あの笑みが頭の中に刻み付けられて離れない。思い出すたびに、何故だか背筋が冷たくなった。 そうして私は合格し、あきらもまた、合格した。 845 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/16(日) 03 19 54 ID XhI6Pjwi とりあえずはここまで。続きは期待せずにしばらくお待ちください。 846 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 03 22 00 ID QTVGEQzh とりあえずサゲよう。な? 847 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 03 22 15 ID wjDjI3Y7 まずはsageろ 話はそれからだ 848 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 03 38 50 ID XhI6Pjwi と、失礼。 次からは気をつけます。 849 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 03 47 29 ID IN3/w7GF 845 好みです 続きも期待しています 850 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 03 52 02 ID ml728Za8 殺された、とあるから自殺じゃないんだろうな。 まだ序盤みたいだからなんとも言えないが、生贄を連想させるようなタイトルが物語にどう関わってくるのか楽しみだ。 799とかもそうだが、こういう幼さ故の残酷な仕打ちって読んでるとやるせなくなる。 続き期待してます。GJ! 851 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 20 10 41 ID XhI6Pjwi 小さい頃に読んだ絵本の登場人物は、みんなとても穏やかな目をしています。 私はそんな穏やかな目を見たことがありません。 私が暮らす家には、父親という名前の他人と、母親という名前の他人がいます。二人とも私を見るたびに、険しい目になります。 絵本の登場人物は皆、誰かを愛しています。とすると、父親と母親という他人は、どうやら私を愛していないようなのです。 学校の先生という名前の他人も、クラスメイトという名前の他人たちも、私に向ける目は険しく、きっと私を愛していないのでしょう。 困りました。絵本によると、愛されない人は悪魔らしいのです。愛されない私は悪魔なのでしょうか。 悲しいことに、きっと私は悪魔なのです。だって皆とは違う髪の色をしているのです。 こんなに赤い髪をしている私は、悪魔以外の何者でもないのです。 私が悪魔だとしたら、悪魔は何をすればいいのでしょうか。本屋さんでなにやら難しそうな、悪魔と書いてある本を探して、なけなしの小遣いをはたいて購入し、家に帰って読んでみました。 しかし当時小学生だった私には読めない漢字が多く、頑張って解読しようと辞典辞書を持ち出して、なんと書いてあるかを必死で調べていました 幸いカタカナを読むことはできたので、悪魔の名前を知る程度はできました。 たとえば6番目の悪魔ウァレフォールは盗みがたいへん上手な悪魔であるとか、17番目の悪魔ボティスは友人や敵の調停(よくわかりませんが、きっと仲直りさせてくれるのでしょう)を行うであるとか。 どうやら悪魔というのは、人に迷惑をかけるだけのものではないようなのです。私は少し感動しました。 72もいる悪魔のうち、24番目まではどんな悪魔かはわかりましたが、25番目の悪魔を解読している途中で、父親という名前の他人に悪魔についての本を取り上げられてしまいました。 25番目の悪魔は一体どんな悪魔だったのでしょうか。 名前だけは憶えているのです。カールクリノラースという名前だけは。 852 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 20 12 31 ID XhI6Pjwi 小学生のときの思い出は、きみこちゃんが全てです。 誰もが赤い髪の悪魔に話しかけないのは当然のことなのですが、きみこちゃんだけは違いました。 私のことを『親友』だと言ってくれたのです。 友達どころか、まともに話す相手もいなかった私を親友だと言ってくれたのです。 そのときの喜びをどう言い表せばわかりません。私の語彙が足りないせいです。ただ、家に帰るとそのときの感情を何度も思い出して、嬉しくて涙が出てしまいました。 『親友』。 そう、私ときみこちゃんは親友です。彼女のためなら何でもしてあげたい、いえ、何でもすると誓います。私の全てはきみこちゃんのものであり、私の思い出の全てはきみこちゃんのものなのです。 永遠に、私の親友はきみこちゃんだけです。神に──いえ、私は悪魔です。ならば何に誓えばいいでしょうか。 そうだ、私は悪魔なのですから、悪魔に誓えばいいのです。悪魔に誓うだなんて不吉な感じがしますが、悪魔は人に迷惑をかけるだけのものではないはずです。 誓います、悪魔カールクリノラース。 私はきみこちゃんを裏切りません。 絶対に。 永遠に。 私の上履きが隠されました。何回目でしょうか、もう私は数えるのを諦めました。多分どこかのゴミ箱から出てくるでしょう。 教科書や筆箱が消えています。何回目でしょうか、最初から数えていません。やはりどこかのゴミ箱から出てくるはずです。 私の持ち物はいつもすぐに隠されます。 上履きを履かずにいると、先生という名前の人間が上履きはどうしたのかと尋ねてきます。失くしましたと言えば怒りだし、黙っていれば怒りだし、隠されたと正直に言うと人のせいにするなと怒りだすので、私にはどうすることもできません。 教科書もそうです。教科書が無いと怒られます。 あの先生という名前の他人は、私を怒鳴ることで生きているのではないか、と時々考えてしまいます。 給食のときにみんなが嫌いな食べ物が出ると、私の机はその食べ物で埋め尽くされます。クラスメイトという名前の他人が置いたものなら手をつけませんが、きみこちゃんが置いたものなら喜んで食べます。だってきみこちゃんは親友ですから。 きみこちゃんが欲しいものは何でもあげました。教科書だって、鉛筆だって、消しゴムだって、なんだってあげます。きみこちゃんが欲しいものなのです、惜しくはありません。 トイレに閉じ込められてバケツ満杯の水をかけられても、掃除用具入れに放課後まで閉じ込められても、きみこちゃんがやったことなら、許せます。きみこちゃんがやったことなら、耐えられます。 853 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 20 13 04 ID XhI6Pjwi だから、あのときのことは忘れません。あの日から、私はほとんど眠れなくなりました。頭と喉、胸が針を刺されたように痛みます。 掃除の時間のときのことです。私が箒で塵を掃いていると、大きな音とともに窓ガラスが割れていました。何があったんだとすぐに先生という名前の他人がやってきました。 教室が他人たちの声でざわめく中、きみこちゃんがこう言ったのです。 「あきらちゃんがほうきで割りました」 私は、ただ箒で掃いていただけのはずです。私は窓ガラスに触れていません。 でも、きみこちゃんが言ったのです。私が割ったに違いありません。どうやって割れたかは問題ではないのです。 それでも、私はきみこちゃんを疑わずにはいられません。私は何もしていない。でも、きみこちゃんの言うことは全て正しいのです。 どうすればいいのでしょう。親友を疑うなんてこと、あってはいけません。 私が悪いのです。私が悪いから、きみこちゃんはあんなことを言ったのです。きみこちゃんが正しいから、悪いのは私なのです。 ごめんなさい。私は悪魔です。人に迷惑をかけるだけしかできない悪魔です。 ごめんなさい。親友を疑う私は悪い子供です。 ごめんなさい。きみこちゃん、ごめんなさい。 854 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 20 13 35 ID XhI6Pjwi 中学生の記憶は、ほとんどありません。 きみこちゃんが話しかけてくれなくなりました。 私は、何も憶えていません。 私の机に何か書かれていようと、私には見えません。 私が何をされようと、何も感じません。 きみこちゃんが全てなのです。同じクラスにいようと、きみこちゃんの近くにいられないなら、その部屋には誰もいません。 きみこちゃんがそこにいないなら、私に生きている意味はありません。 家の中でうずくまって家とはなんだったのか思い出せなくて喉が痛くて頭が痛くて部屋は暗くて。 父親という名前の他人の声がうるさい母親という名前の他人の声がうるさい別の部屋の声が私の耳元で聞こえる。 助けてたすけてたすけて誰も助けてはくれません私は悪魔だから私は悪魔だから私は悪魔なのです。 気付いたら、部屋の中は暗くなっていました。誰の部屋だったかも思い出せません。 ベッドの中で泣いていた私の目の前に、黒い人影がありました。 「あなたは誰?」 影は答えません。でも私にはわかっています。影は悪魔です。私の望みをかなえてくれる悪魔です。 悪魔カールクリノラース。そう、私はあなたに誓ったのです。 「私はどうすればいいの?」 影は答えません。でも私にはわかっています。 いつしか私は、笑い叫ぶ自分に気付いていました。 855 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 20 14 41 ID XhI6Pjwi 高校受験は、きみこちゃんと同じ高校を選びました。きみこちゃんの行く高校は、カールクリノラースくんが教えてくれました。 きみこちゃんは小学校のときからずぅっと同じクラスだったのです。いつまでも一緒です。 だって私ときみこちゃんは、親友なのですから。 私のすべてはきみこちゃんのものです。きみこちゃんの言うことはすべて正しいのです。 きみこちゃんと一緒にいられるなら、私は何もいりません。私の望みは、きみこちゃんだけです。 だから、同じ高校を選びます。また同じクラスになりましょう。また私に話しかけてください。 私ときみこちゃんは親友です。 そう、永遠に。 そうして私は合格し、きみこちゃんもまた、合格しました。 856 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 20 18 18 ID XhI6Pjwi 羊と悪魔、続きです。あきらの視点からです。 ただの電波少女になってるような気がしないでもないですが。 狂気を表現するのは難しい。 857 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 20 31 56 ID BsFiQyRc 856 GJ だがカワイソス(´・ω・)すぎて鬱になりそう。 858 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 20 34 35 ID pUAdnNH8 856 結末に行き着くまでが非常に気になる 859 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 21 21 56 ID wCWGdWi4 GJ! ヤンデレの¨ヤン¨の部分はかなりの出来映え。 ここからどうやってデレ要素を絡ませるのかに期待。 860 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/16(日) 23 31 34 ID FwL/juTF そういや次スレってもう立ってるの? 861 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 00 27 37 ID kpUuvuMC まだ立ってないし、立てるのにはもう少し待ってもいいと思う。 まあ俺はスレ立てられないんだがな。 862 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 02 34 39 ID 5xT8VqoK そうか いや残り24kしか残ってなかったから疑問に思ったんだお 863 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 02 47 46 ID kpUuvuMC あ、ほんとだ。申し訳ない。見てなかった。 864 名前:sage[] 投稿日:2007/09/17(月) 03 21 50 ID Sf6DhUew 投稿したいと思うのですが、次スレにした方がいいでしょうか? 865 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 22 38 ID Sf6DhUew あげてしまった 申し訳ないorz 866 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 25 24 ID zt9lqecl 865 じゃあスレ立てしてくる。 867 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 31 21 ID zt9lqecl スマソ、無理だったorz 他の人頼む 868 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 32 12 ID Sf6DhUew 866 サンクス できるかわからないけど、自分でやってみます 869 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 37 16 ID Sf6DhUew たてました。 次スレに投稿したいと思います。 870 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 41 47 ID zt9lqecl 869乙! 誘導用 ヤンデレの小説を書こう!Part10 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1189967712/ 871 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 46 04 ID 5xT8VqoK うわ…すまん、気づいたときにやっとくべきだったな… 869乙 872 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 03 51 51 ID Sf6DhUew 870 871 いえいえ、恐縮です。 873 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 10 17 45 ID TuxvL6RR 埋め 874 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/17(月) 21 01 15 ID V1H/GQFF 830 オーソドックスだとか王道と言うつもりはないけど、 行動に愛する者以外を排除しようとする衝動や愛する対象への独占的志向を伴うことが多いと思う。 それが嫉妬だとか、障害となる人物に対しての病的なまでの衝動的行動に繋がるんじゃないかなと。 電波や狂気は必ずしも要素となるわけではないけど、伴うことも多い気はするなぁ…。 例えば、ある時期からの思慕・恋慕の暴走だとか 妄執・虚構を精神的支えとするようになったりして行動がエスカレートして行ったりとかね。 875 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 14 27 18 ID 5utCdqo2 ふむ、みんな新スレに移行しているみたいだから埋めついでに言うと 詳しく読むとヤンデレ大全はひどい点がかなり目立つ。 安易に暴力や病んでしまうことを肯定する傾向が特にマズい。 この手のヒロインには愛情が裏にあるから良いわけなのにさ…… 大全発売後に「男のヤンデレ」を語るやつが急に増えたのも、そういう項目が書かれているからだろう。 女性向けの漫画とかで病んだ男キャラがいるとしても、そういうのをヤンデレと言うわけでもないのにな。 なんでもかんでもヤンデレかよ。 おまけ 水銀燈の項目について。 ローゼン(父)に対する愛情(デレ)で真紅たちに対する敵意(ヤン)という解釈だった。 なにがなにやら。 オーベルテューレでの描写によれば姉妹シリーズの中で真紅に対して もっとも信頼を寄せていたわけで、それなのに正式にローゼンメイデンに なったことを真紅は歓迎してくれない。つまり好意が裏返って憎しみになった。 この流れをヤンデレと言うなら納得だけど、そもそも名キャラには色んな要素があるだけだと思う。 なんでもかんでもヤンデレっていう態度を助長するだけだよな。 リストに関しては「大全」の本質なので、しっかりして欲しいもんだ。 もちろんコラムも詳しく読めば、わかってない感が匂うけどな。 もう頼りになるのは、おまえらとかVIP発のゲームぐらいだ…… 876 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 16 19 16 ID 4h8cVc6u 875 確かにアレは酷かった。あと、ひぐらしのレナ。彼女も違うってw …まぁ、言葉とかねーちんについての項は良い感じにまとまっていたけど。 むしろ、ヤンデレにはグロが付き物って勘違いして、 耐性がないなどの理由でやたらと敬遠する人がいないかの方が心配かも。 要素の1つとして含み得る事が多いだけなのに。 877 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 16 22 02 ID 25UrQT2s チラシの裏でしっかりしてほしいだ頼りになるのはお前らだけとか やっすい居酒屋でクダ巻いてるオッサンかあんた。 でもなきゃキモイワナビ。 878 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 16 50 08 ID TVRvhzOe お前はガキだ 879 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 17 01 48 ID 5utCdqo2 すまない。埋め用のチラ裏だったが確かに愚痴りすぎたな。 877は大全の出来についてどう思う? 880 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 17 49 30 ID E4VOTvFP 877 「頼りになるのはもう○○君だけなんだよぉ」とか言ってる子に脳内変換するんだ 881 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 19 02 09 ID 8ancfqVs 875は涙でぐちゃぐちゃにした顔で笑顔を浮かべた。 「もう、頼りになるのは君だけなの。私には君だけしかないの。だから――お願い」 細い腕が、俺へと伸ばされる。微かに震える 875の腕を俺は―― →はねのける 引き寄せる ねじ上げる 無意味にこんな妄想をした。 882 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 22 28 54 ID 4h8cVc6u 最近発売されたエロゲだと、(最近?) 聖なるかなののぞみんこと永峰希美は 結構当てはまるキャラなんじゃないかと個人的には思った。 ヤンデレ的要素が少なすぎて、修羅場止まりになってるのが残念すぎる位。 883 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 01 11 28 ID GMksHyfi ここ数日で東方の二次創作読み始めたんだけれど、 アリスというキャラの話にヤンデレっぽい描写が多いみたい。 ググってみれば、原作や公式本ではちょっと嫉妬深い友達の少ない子程度らしいから不思議だぜ。 以下、みかけたヤンデレっぽい二次創作 少女の現 ttp //coolier.ath.cx/~coolier/l_sosowa/anthologys.cgi?action=html2 key=20070918010651 ttp //coolier.ath.cx/~coolier/l_sosowa/anthologys.cgi?action=html2 key=20070918010826 白百合畑でつかまえて ttp //coolier.ath.cx/~coolier/l_sosowa/anthologys.cgi?action=html2 key=20070825205140 log=2007082605 ttp //coolier.ath.cx/~coolier/l_sosowa/anthologys.cgi?action=html2 key=20070825205510 log=2007082605 884 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 06 24 06 ID uogKhxla 東方なんて二次設定がほとんどだろ 885 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 11 27 02 ID zvZ3s/iJ 883 嫉妬深い子もキャラとしてはヤンデレ的な素質有りと考えやすいからかな、 原作の設定をどう解釈するかにも依るけど。 あと、友達の少ない子ってのは、ほぼ間違いなく準原作の萃夢想からだと思うw (準なのは、原作者も携わってるけど、制作のメインは別サークルのため) 886 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 13 30 55 ID SqEQRvN3 ヤンデレの基本形態はボーダーにあると思うのだがどうだろう 887 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 14 03 37 ID zvZ3s/iJ 886 ボーダー?と思いきや、境界性/境界型パーソナリティ障害か。 基本形態というよりも、言動理念の下地になることが多いんじゃないかな。 必ずしも症例に当てはまるわけじゃないし。 888 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 14 07 48 ID SqEQRvN3 そうだなぁ もっと深いところの、思考の原点みたいなところに根付いてるんだろうなぁ 普段は抑えてるけど抑えられなくなった時に吹き出る感じが強い 889 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/22(土) 23 04 58 ID P0GDI/4D ヤンデレ大全、持ってる人に読ませてもらった。 「質量、つまり重さなんだ」って書いてある本を受験時代に読んだのを思い出した。 890 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/23(日) 01 07 48 ID 1iYDTokz 質量と重さを同一視しているようにヤンデレと気違いを同一視しているという意味? 891 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/23(日) 08 42 48 ID qa6xZ0XM 機知外はヤンデレでいうデレが無い 892 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/23(日) 10 03 41 ID Kna1APRe 質量 物体固有の量 重力が違う星に行っても変わることはない 重さ 地球上で物体にかかる力の大きさ 故に地球上以外だと意味がない ヤンデレ 愛してるが故に病んでしまった 病むほどに愛してしまった状態 愛する人を手に入れるためなら手段をえらばない 病むほどに愛してる人以外には愛情を向けられない キチガイ 最初から病んでいる どう考えてもメンヘラ 最初から病んでるが故にヤンデレでいうデレがない状態 愛情と別世界の何かを履き違えてる子 893 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/23(日) 12 02 41 ID JttUnon9 はいはいループループ 894 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 01 36 13 ID yTBfmvEc 質量があるヤンデレだと!? 895 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 02 17 40 ID FSk+QK4k 鉄仮面吹いたw 896 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 04 01 26 ID vfTFPQf5 いやオマエラ、F91ネタなんて振られても普通分からんだろう? 897 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/09/24(月) 05 12 45 ID 1/SzMPCC へすゅ 898 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 06 13 42 ID BVtDnDGO 891 デレがあろうとなかろーとkitty guyはkitty guyでしかなくヤンデレとは別物だ ヤンデレは常時ヤンでるよりもまともな部分とのギャップを楽しむものだろうに 899 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 14 10 28 ID 2ctenXgW 898 それはどうかなぁ? ここのSSだって登場からendまでぶっちぎりでヤミッぱなしのヒロインもいるし一概には言えないと思う 900 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 15 09 12 ID OEH+DIM2 ↑おまえみたいなのがいるからヤンデレが勘違いされる 898の言ってることは ここのssがどうだといってるわけじゃない。 901 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 15 40 27 ID f1DN3ppp ↑おまえみたいなのがいるからスレが荒れるんだ 新スレに持ち込むなよ 902 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 16 04 35 ID 8OwSMHiH ↑おまえみたいなのがいるから話がおわらないんだ スルーしろよ 903 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 17 44 45 ID EgwybuVN 話の終わらないさまはまるでヤンデレとの会話のようだな 904 名前:埋めネタ~ヤンデレ家族~[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 23 07 02 ID 44vDg8Ym 俺の家には5人が同時に暮らしている。そして俺以外の4人全員が何かしらおかしい。 まず、父と母。実の両親である。 俺にとっては両親であるが、実を言うとこの2人はただの夫婦じゃない。 別に父親がヒーローだとか、母親が裏世界のドンだとかいう意味ではない。 もうちょっとレベルの低い意味でただの夫婦ではない。 別の言い方をするならばベクトルが違うとでも言うのだろうか。 俺の父と母は、兄妹だ。 嘘ではない。どうしようもなく、本当のことである。 なにせ、両親の母――俺にとっては祖母である――から聞かされた話だ。 祖母はまだ50代である。まだ呆けていない。会社にだって務めている。 俺自身、祖母の言ったことを全く疑っていない。 俺が、兄妹で子供を作ったというにわかには信じがたい話をなぜ疑わないかというと、 たった今、壁一枚隔てた向こう側から、それを証明する声が聞こえてくるからである。 「おにいちゃあん! いいよっ! イイよぉっ!」 この声は母の声だ。実の息子である俺が言うのだから間違いない。 ちなみに母の年齢は……怖くて未だに聞けていないが、父の年齢が36歳ということから考えて、 30代前半だと考えられる。 俺は現在17歳。となると、母は少なくとも18の頃には俺を産んでいたと言うことになる。 なんということであろうか。 兄妹で子供を作ったというだけでもトンデモ話だというのに、このうえ10代で出産していたとは。 その事実を知ったときにはさすがに自分の耳、もしくは脳が損傷していないかを疑った。 「――っく、イクぅっ! あ、ああああああっ! いっぱい出てるうぅぅっ!!」 ……ふむ。 改めて考えてみると子供が起きているというのに、隣室でまぐわっている夫婦の 片割れである母(父の妹)が嬌声をあげているというのも変な話である。 そして、30代子持ちで『おにいちゃん』と言う母の精神年齢の低さも異常である。 俺は母の嬌声なんぞ聞きたくもないし、聞いても全く嬉しくない。 人間の耳に、聞きたくない音声をシャットダウンできる機能があればいいのに、と俺は切に願う。 母にセックスするのをやめてくれ、もしくは回数を減らしてくれ、と頼むことはできない。 以前さりげなくそう言ってみたら、「私とおに――お父さんのスキンシップを邪魔するの?」と言いつつ、 母が俺の首に手を伸ばしてきた。 その場は父がおさめてくれたが、もし父が居なかったらと思うとぞっとする。 本人に言っても無駄なら、それこそどうしようもない。 俺は夜ごとにひたすら頭のおかしい母と、父のまぐわう声を聞き続けなければいけないのだ。 これからもずっと。 父と母の話はこれぐらいにしよう。この家に住んでいるもう2人の話をする。 その2人というのは、俺の弟と妹だ。弟は1つ下、妹は2つ下。 弟は俺のことを慕ってくれる。あまり学校の成績がよくない弟はテストの度に俺を頼ってくる。 そこそこ勉強ができる俺は同じ高校に通う弟の勉強をよく見ている。 その際、弟の勉強を見ている俺を、妹が後ろから見つめてくる。 これが2つ離れた俺の尊敬の眼差しであれば嬉しいのであるが、そうではない。 妹は俺を睨んでいるのだ。それも血走って濁った目で見てくるのだ。 その瞳に何が篭っているのかなど、考えるまでもない。 俺に対する、憎悪である。 妹は、弟を独占する俺を射殺さんばかりに憎んでいる。 とは言っても、それは勉強を見ているときだけのことである。 勉強が終わってしまえば妹は弟にすぐさま飛びついて甘える。見ていて微笑ましくなるほど、激しく甘える。 妹のデフォルトは、弟にくっついている状態なのである。 長男としては少しばかり悲しくもある。だが妹の興味が弟に全ていくならそれでもいい、とも思う。 905 名前:埋めネタ~ヤンデレ家族~[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 23 08 13 ID 44vDg8Ym その理由には、俺の趣味が関係している。 俺の趣味はプラモデルを作ることだ。そのため、部屋に立ち入ってもらったら困るのである。 せっかく上手く塗装できたプラモデルに指紋などつけられては大変なことになる。 具体的には飯も食えなくなるほどに俺がへこむ。 しかし、母は父の部屋にしか入らないし、妹は弟の部屋にしか入らない。 俺の部屋に入る人間は、俺以外にいないのである。 たまに父や弟が入ってくることもあるが、俺が部屋にいる時に限るのでいたずらされる心配がない。 というわけで、今の俺は明日学校があるにも関わらず、小言を言われずにプラモデルに色など塗れるわけだ。 ああ、なんという幸福な生活であろうか。 同居人の誰にも邪魔されずに趣味に没頭できる。趣味に生きる人間にとってこれ以上の幸せがあるだろうか? いや――ない。 たとえ寂しい人間と言われようと、今の俺は幸せだ。 それは父と弟という人身御供のおかげであるのだが、とにかく俺は幸せだ。 今は幸せなら、それでいい。たとえ、これからは幸せでいられないとしても。 * * * * * 朝になった。 俺は部屋の隅に畳んだまま置かれている布団に身を預けるようにして眠っていた。 夏というのはありがたい。寝るときに布団を敷かなくても風邪を引かないからだ。 立ち上がり、学生服に着替え、部屋を出て、洗面所へ向かう。 顔を洗い、少しばかり寝癖のついていた髪を水のついた手で撫でる。 それで寝癖が直るわけではないのだが、一応やっておく。 洗面所の次に行くところはリビングだ。 リビングの入り口の扉を開けると、朝食の匂いがした。 リビングのテーブルにはこの家の同居人である四人がすでに食事を始めていた。 母と、母にあーんをされている父。妹と、妹にあーんをされている弟。 二組はテーブルを挟んで向かい合って座っていた。 ちなみにテーブルに備え付けてある椅子は四脚。全ての席は既に埋まっている。 俺の席は当然無い。朝食も当然用意されていない。 こめかみを押さえて目を閉じる。そして自分に向けて暗示をかける。 ――これはいつも通りの光景だ。今日もいつも通りで安心した。 ――いきなり俺の朝食が用意されていたら、どうリアクションをとればいいかわからない。 ――だからこれでいいのだ。 ……よし、暗示終了。 キッチンに入り、冷蔵庫の中を開ける。 買い置きのプリンがまだあった。これと、あとはトーストを焼いて食べるとしよう。 キッチンに置いてある小型の椅子に座り、焼いたトーストにマーガリンを塗り、食す。 冷蔵庫に背を預けてよりかかり、もくもくと咀嚼しながらテーブル席についている四人を観察する。 「あなた、どう? 今日のお味噌汁」 「ん……まあまあ、かな」 「え? まあ、まあ?」 「はっ! 違う違う。うん、サイコーだよ。やっぱりお前を嫁にもらって成功だったよ」 父が歯の浮くような台詞を言いながら母の頭を撫でた。 母はにこにこ笑いながら父に体をすり寄せる。 見ている方が恥ずかしくなるバカップル、じゃなくおしどり夫婦、もとい仲のよい兄妹ぶりである。 906 名前:埋めネタ~ヤンデレ家族~[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 23 09 43 ID 44vDg8Ym さて、もう一組、こちらは弟と妹の組み合わせである。 「お兄ちゃん。あーん」 「……あーん」 妹が差し出した卵焼きが弟の口の中に入った。弟はもぐもぐと顎を動かす。 「うん……ちょっとしょっぱいけどおいしい」 「ホント!? じゃあ、もっとしょっぱくしても大丈夫?」 「いや、気持ち塩を少なめにしてもらえるともっと美味しくなると思う」 「そう? お兄ちゃんはその方がいい?」 「うん」 「わかった。明日からはそうするね。もう一つどうぞ。あーーん」 こちらも両親に負けず劣らずの仲の良さを見せつけてくれる。 これが兄妹同士でなければ兄としては安心できるのであるが……今となってはどうしようもあるまい。 言うだけ無駄だ。よって何も言わないことにする。 四人を見ていて、いつも思うことがある。 父と母。弟と妹。四人はまったくそっくりである。 兄妹という構図もそっくりであるが、その容姿すらもそっくりなのだ。 父と弟はほぼ同じ顔だ。母と妹だってそうだ。 このままいけば、いずれ弟と妹は、両親と同じ道を辿るのではないだろうか。 ありえない、と言えないところが恐ろしい。 実際に妹の行動は、兄妹は仲良くしなければならない、で説明できる行動の範疇を超えている。 高校一年生と中学三年生の兄妹といえば、とっくに兄妹離れしている年齢である。 それだというのに妹は弟にくっついたまま離れようとしない。 これはブラコンの一言で片付けていいものなのであろうか。 俺の本能は否、と言っている。このままではいけない、と言っている。 だが、同時に本能が告げるのだ。妹の邪魔をすべきではない、無理矢理に弟と妹を引き裂けば俺の身に危険が及ぶ、と。 弟のテスト勉強を見ているわずかな時間でさえ俺に譲ろうとしない妹を見ていると、その警告にも納得ができる。 弟と妹にまっとうな人生を歩んで欲しいと俺は願う。両親のように歪んだ夫婦にしてはいけない。 そうは思うものの、我が身かわいさ故にどうしても2人を放っておくしかできない。 だが、いつか弟と妹が両親のように道を踏み外そうとしたら、その時は止めようと思っている。 それが兄としてできる精一杯のことである。 朝食を食べ終えた後、食器を片付けていると電話機が電子音を発した。 リビングに視線を向ける。ピンク色の空間に居る両親と弟と妹はベタベタくっついたままで、電話をとろうとはしない。 もちろんそれはいつものことである。朝食の時間に電話がかかってきた際に応対するのは俺の役目なのである。 いつからそうなったのかはわからない。 もしかしたら自分から望んでそうするようになったのかもしれないが、とうに忘れてしまった。 廊下に出て、受話器をとって耳にあてる。 「もしもし」 「あ、お兄ちゃんの方かな? 元気?」 電話の相手は祖母であった。 祖母と言うには若々しい声である。還暦を迎えていないので、おかしいとは思わない。 「うん。元気だよ。どうかしたの、こんな朝から」 「今日は誕生日だったでしょう。だから電話をしておこうと思ってね」 壁に貼ってあるカレンダーを見る。確かに今日は俺の誕生日であった。すっかり忘れていた。 「ありがとう、お婆ちゃん」 「もしかしたら、まだお兄ちゃんにお祝いしてくれないんじゃないかと心配になったんだけど。 どう? むす――じゃなくてお父さんとお母さんにおめでとうって言われた?」 「うん。それに、今日は朝から大好きなフレンチトーストを作ってもらったから」 「……そう、よかったね」 「うん」 907 名前:埋めネタ~ヤンデレ家族~[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 23 14 10 ID 44vDg8Ym ちくり、と胸が痛んだ。俺は祖母を騙している。朝食は自分で作って食べていたのだから。 けれど、ああ言わざるを得ないのである。 祖母は実の息子と娘が肉体関係を結んでしまったことで、心に傷を負ってしまっているのである。 盆や正月、親類の結婚式の時や法事の際に再会した祖母の顔は若々しくもあったが、同時に深い哀しみも湛えていた。 そんな祖母に、心配させるようなことを言えるわけがない。 もしかしたら祖母は俺の偽善――真実を伝えられないという思い――を見抜いているのかもしれない。 それでも、俺にはこうするしかないのだ。なるべく心配をさせないよう、演技をしていくしか道はない。 「弟くんと妹ちゃんは元気?」 「元気がありあまって、こっちが参るくらいだよ」 「……仲が良すぎたりはしていない? たとえば妹ちゃんが弟くんと一緒にお風呂に入ろうとしたりとか」 「ううん。ちゃんと別々に入っているよ」 これも嘘である。弟と妹は一緒の風呂に入っているし、さらに妹は弟に髪を拭いてもらっている。 祖母がこんなことを聞いてくるのは、前例があるからである。 祖母の息子と娘、つまり俺の両親のことであるが、2人が肉体関係を結んでいたことに、祖母は気づけていなかった。 その苦い思いが、二度と同じ過ちは繰り返したくないという思いが、孫へと向けられているのだろう。 だが安心して欲しい。弟と妹がもし過ちを犯しそうになったら、俺が止めるから。 「お兄ちゃんは、どう? 怪我とかしてない?」 「心配性だね。どこも怪我なんかしてないよ」 「無理はしないでね。……あの人も、昔……」 俺は、祖母の声を遮るように声を出した。 「あ、ごめん。もうすぐ学校に行かなくちゃいけないから。また、帰ったら電話するから」 「ええ、気をつけて行ってらっしゃい……」 祖母の言葉を聞き終えてから、受話器を置く。 祖母が言っていたあの人。それは祖母の夫、俺にとっては祖父に当たる人のことだ。 俺は祖父に会ったことが一度もない。俺が生まれたときには、すでに祖父は帰らぬ人になっていた。 俺はそのことを、幼い頃は別におかしいことだと思っていなかった。祖父を早くに亡くしている人はこの世に大勢いる。 祖父の死に疑念を抱き始めたのは、数年前のお盆のことだった。 久しぶりに祖母の家に遊びに来た親戚が、俺に向けてこう言ったのである。 『あら、おじいちゃんにそっくりね』 その場に居合わせた母は、俺の顔を掴みながら睨み付けるように目を剥いた。 祖父の死に疑いを持ち始めたのは、それからである。 もしかしたら、祖父は両親の関係を引き裂こうとして、母に殺されたのではないかと。 母が恨みを込めた目で俺を見たのは、祖父が再び目の前に現れた、と考えたからではないだろうか。 一度考えると、全てを疑わずには居られなかった。俺は祖母に内緒で、祖父の死について調べ始めた。 祖父が死んだのが、俺の生まれる10ヶ月前であること。 祖父の死因は、病死でも事故死でもないこと。――祖父は通り魔に遭い、殺されたということ。 それらを知る頃には、俺はすっかり母への疑いを強くし、祖母を頼るようになった。 そして、俺は母を避けはじめ、間もなくして母から避けられるようになった。 プラモデルを趣味にし始めたのも、母がシンナー系の匂いを苦手にしていると祖母に聞いてからだ。 この家で、俺と母は見えない戦いを繰り広げているのだ。 「兄さん、電話誰から?」 リビングの扉を開けて、弟が廊下に現れた。左腕には妹がくっついている。 「お婆ちゃんからだ。元気にしてるか、って聞かれたから、元気だっていっておいた。お前達の分も」 「そうなんだ。ありがと」 「ありがと、お兄さん」 妹は俺をお兄さんと呼び、弟をお兄ちゃんと呼ぶ。お兄さんと呼ぶときのニュアンスが暗いのは毎度のことである。 「さて、そろそろ行かないと遅刻するな。先に行っているぞ、弟よ」 「ああ、兄さん待って」 玄関に置いたままの学生鞄を掴み、靴を履いて玄関から出る。 ――うむ。今日も朝日が眩しい。快晴だ。 908 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/24(月) 23 15 07 ID 44vDg8Ym 終わりand埋め! 909 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 00 19 58 ID 4RTA4Mqv お兄ちゃんカワイソス しかしこの展開だとそのうち婆ちゃんがお兄ちゃんに(ry と、本気で思ってしまった俺はもう駄目かもわからんね。 910 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 00 23 52 ID WTG2t2lJ 澤越止の血脈と比べたらこんなものは児戯に等しいわ 911 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 00 45 49 ID GpM69Zni 両想いでどんなにどんなに相手の側が愛してくれていても、 それを上回るくらいに相手への愛が強すぎて、 愛しても愛しても愛しきれないと病んでいくのはヤンデレとは違うかな?
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1090.html
801 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/02(月) 01 02 00 ID LzUN6Ghd 「私、知っているのよ。一昨日のこと」 一昨日というと、えっと、昨日が十五日だから十四日。バレンタインデイだ。 「あなた、チョコレートを貰っていたでしょう?」 「……なんで知ってんの?」 「すり替えたから。私のオレンジのと、入ってたワイン色の箱」 「なぜ?」 「なぜって、そんなの…………許せないからに決まってるでしょ!」 超至近距離からの音波が聴覚をかき乱す。 いかれたのは左耳。しかし耳に手を当てようにも左手はすでに葉月さんに掴まれている。 左手を引かれ、振り回される。落ち着いた場所はベッドの上。 葉月さんは、右手で俺の左手を、左手で俺の肩を押さえ込み、上から被さっている。 要約すると、俺は押し倒されていた。 「いつのまに受け取ったの? 私はあの日、教室に飛び込んできたあなたから一目も離さなかったのに」 「あの、信じてもらえないかもしれないけど、あれは弟がギャグでよこした代物で」 「見え透いた嘘を吐かないで! 弟君がそんなわけわからないことするはずないでしょ!」 葉月さんの中にある弟の像がそうでも、リアルの弟が阿呆なことをしたのだから、俺に文句を言われても困る。 しかし、思ったことを口にできない俺がいる。ほんと、弱いね。 「きっとあの子よ。木之内澄子よ。あの子に受けとったんだ」 「違う。澄子ちゃんは弟のことが好きなんだ!」 葉月さんが息を呑んだ。 ただそれだけなのに、より気配が不穏になる。 「なに…………それ。ちゃん付け? 私には、名字にさん付けなのに。 あなたと木之内澄子は、そこまで仲良くしていたの?」 最悪だ。てめえで悪化させてりゃ世話ねえ。 特別に仲が良いわけじゃないけど、ある程度の関係があると知られてしまった。 一般的にはちゃん付けなんて、かなり親しくないとできないものだと認識されている。事実、俺だってそう思う。 こうなると、もはや手を付けられない。 澄子ちゃんは弟を好きなんだと主張しても、そんなものではちゃん付けのインパクトを消せない。 反転した状態からさらに半回転したのか逆に回ったのか、ともかく普段通りになった葉月さんの声が耳に届く。 「呼んでよ。私の名前、呼んで。 葉月さん、じゃだめ。葉月、もだめ。 他の誰でもない、私のためだけにある、特別な名前。 呼び捨てにして。いっぱいいっぱい、どんな言葉よりも多く口にして。 家族に呼ばれるのと、あなたに呼ばれるのとじゃ全く違うの。 ずっとずっと、好きな人から呼ばれていないから、乾いてるの。飢えてるの。 満たしてくれたら、許してあげる。心から、あなたの全てを、私は受け入れる」 甘い誘惑。口に含んだら抵抗なく溶けてしまいそう。 受け入れずに拒むのが惜しい。 ――そもそも、拒んでどうする? 意味があるのか? 名前を呼んでいいのなら、それでいいじゃないか。 友達同士で呼び合うのは普通のことだ。それ以外の、例えば友達ですらない花火を俺は呼び捨てにしている。 葉月さんの名前を呼び捨てにするのは構わない。 構わないなら、そうしてもいいはずなのに、どうして俺はそうしていないんだ。 「やっぱり恥ずかしい? なら、こうしよう。 私もあなたの名前、呼び捨てにする。二人で一緒なら、問題ないでしょ。 ずっとずっと、ずーっと二人きり、いつまでも何も変わらなければいいんだよ。 ここで決めちゃえば、困る事なんて無くなる。 私が、ずっとあなたを助けるから」 俺は助けられたいんじゃない。守りたい。 学校で会う友達、毎日の生活、そして家族。 葉月さん。あなたは俺以外にも、俺が守りたいものも守ってくれるのか? ――――違うどころか、もし俺と俺の大事なものを引き離すなら、あなたの願いを俺は叶えない。 802 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/02(月) 01 03 09 ID LzUN6Ghd 着メロが鳴った。 聞き覚えのある音色。数年前に放映された戦隊モノのオープニングテーマ。 俺が、自分の手で自分の携帯電話に設定した音だった。 「携帯電話、たぶん俺のだ」 「どうでもいいじゃない。それより、早く答えて欲しいな」 「どうでもよくはないよ。もしかしたら弟からかもしれない」 可能性はゼロに限りなく近いが、嘘ではない。 「まあ、いいよ。でも見終わったらすぐに返事してもらうから」 葉月さんが取り出した携帯電話を受け取り、開く。 すでに音は鳴りやんでいる。届いていたのはメールだった。 送り主は――誰だ? メールアドレスが表示されているけど、これは一体誰のだ? それにタイトルもない。無題だから、迷惑メールの類ではなさそうだが……。 「早く見て。あんまり待たせて欲しくない」 頷いて、メールを開く。 中身を読み、すぐに送信者と、送信者がどんなつもりで送ったものかわかった。 世界中にただ一人、俺のことをこう呼ぶ人間がいる。 おにいさん、と。 ちょっとだけ他人行儀だけど、たまに呼ばれると無視はされていないのだと安心させてくれる呼び方。 そう呼ぶ人間からメールを受け取ったのは今が初めてだ。だからメール送信者が不明だった。 頭を下げてでも聞いておくべきだった。 あいつが――――二つ年下の妹が、俺にメールを送ってくる。 そんなことが起きるのはたった一つ、緊急事態が発生したときだけなのだから。 タガが外れた。目的と目的地だけしか頭に浮かばない。 体の上に乗った葉月さんも、ちょっと動かしてしまえばすぐにどけることができる。 葉月さんの背中に手を回す。すると拘束する力が一瞬緩み、油断が生まれる。 左側へ押しやり、ベッドに押し倒す。 葉月さんの顔が紅くなった。だが、そんなことはどうでもいい。 ベッドから飛び降り、保健室のドアを力ずくで開き、下駄箱へ向かって突っ走る。 背後から呼び止められようと、追いかける足音が聞こえようと構わない。 靴を履いている時間がもったいない。一刻も早く、向かわなければ。 妹、変なメールを送ってくるんじゃないよ。 おにいさん助けて――――なんて、普段は絶対に言いやしないくせに。 803 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 01 05 11 ID LzUN6Ghd 今回はここまでです。 冒頭の部分はノリで書きました。あまり深読みなさらないように。 804 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 01 13 37 ID Wr7YWjJB どうしよう…なんだか葉月さんのデレにキュンキュンきてる…… GOD JOB 805 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/02(月) 01 27 22 ID Abj9im7l 妹が心配で眠れない。 806 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 02 26 18 ID fxUq7nQY GJ! しかし、お兄ちゃん。唇を奪われてしまった以上はちゃんと責任をとらないとダメだ。 それなのに逃げるなんて……。 807 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 02 48 32 ID cMCvg7c4 GJ! お兄ちゃん、兄としてカッコイイが墓穴掘ってるぞw 808 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 02 51 30 ID 8AgYHon3 GJッス! ちゃん呼びの所からの展開がマジツボでしたwwww つーか兄貴カッケェよー 809 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 05 10 01 ID QW9b70Y9 GJ! また葉月さん可愛すぎる けど報われないなw 810 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 10 22 26 ID WPrbWoGX GJ! 放置された葉月さんはどう動くのかも気になる。 そして妹に何があった!? 811 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 16 26 14 ID KNux1fxl GJ! 兄は兄としては合格だけど男としては失格だな 812 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 17 49 26 ID o7292MkC 786 ずっとまっていました! GJ! かわいいよ、かわいいよよづり 813 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 20 18 06 ID VBF9iMnm GJ!!!! 兄貴、最高だ。 妹に何があったのか。そして葉月さんが何やらかすか、楽しみだ。 814 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22 02 17 ID C4Ud7Gyk よづりも傍観者も来てたのか。両方GJ! よづりかわいいよよづり さて今回も兄レーダーが働くのか? 815 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22 59 08 ID 9fMee8Rr 葉月さんお願いだからここは耐えてくれ・・・・。 妹の命がかかってるんだ。 816 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 02 47 30 ID Kr5Qq8x5 問4 以下の事態が起った場合を想定せよ。 (例) 最近、主人公が泥棒ネコと仲が良いのでその泥棒ネコを退治したいヤンデレヒロインがいます。 けれど、その泥棒ネコは実は不死身の怪物で、とても殺せそうにありません。 仕方がないので主人公を自分だけのものにしようとしますが、 泥棒ネコの差し金か、主人公もまた死なない存在になっていました。 ヒロインは殺せない。主人公も殺せない。 そんな状況に陥った場合、ヤンデレヒロインはどんな行動を執るか? 817 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 07 15 24 ID vWXUZ86s 主人公の手足をもぎ取って、飼い殺し または泥棒ネコの手足をもぎ取って、売り飛ばす もしくはヤンデレヒロインが不死身の怪物をも殺す異能者 818 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 07 57 22 ID uZYUB6tn 最近起こったそれに近い例で考えれば… A.泥棒猫との戦いを放棄し全力で彼と引きこもる 819 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 08 16 45 ID OULmyzZU 817 両儀式はヤンデレですねわかります あーなんか変な記事思い出したぜ 820 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 09 42 59 ID zHjzU52F 816 「あの女本当に不死身だったんだね、刺しても潰しても切り落としても生き返るからびっくりしちゃった」 「でもいくら不死身でも力がそのままじゃ私の○○くんに対する愛に勝てるわけないよね」 「え?あの女は今どうしてるかって?さあ…」 「確か崖に吊るして禿鷹につつかせたか、1㌧の重り付けて海に沈めたか、どっちかだったよ」 「そんなことより…○○くんも不死身、なんだよね」 「ずっと私が好きになった時の姿の○○くんでいてくれるんだよね」 「死ぬまで…ううん、死んでも離さないからね、○○くん♪」 こうですかわかりませ(ry 821 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 11 05 35 ID OpitbDKy 式はツンギレだと公式発言が(ry 822 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 13 18 31 ID Sp9ZqmUr 流れぶった斬って悪いんだが…とうとうヤンデレの夢をみた 知らない女に監禁される夢をみた。多分あれがヤンデレなんだなってわかった なんかスタンガンで気絶させられて連れ去られて監禁されたらしい そんで「心配しないで。○○は私が一生世話してあげるから」とか笑顔で言ってくんの… ヤベーぞマジで…アレはヤバイ…。知らない部屋で目が覚めて知らない女がなんかもうあんな…… 俺ずっとこのスレ見てきたけどさ、しばらくこのスレ見るの止めるわ。ヤンデレマジ怖ぇ… 仮に知ってる女がヤンデレになっても怖いわ。お前らマジで気をつ 823 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 14 13 09 ID WSYGH40K 無茶しやがって・・・ 824 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 14 23 06 ID hx5RGoIg 俺なんて血の海で微笑む彼女の夢を見た。 手には俺が愛用していた文化包丁が… 足元には友人と事務の女の子達が… な夢だった。 825 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 15 13 07 ID bKvB5Ed4 お前らそれを絵か文にするんだ。そうすれば神が現れるはずだ 826 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 15 25 53 ID Sp9ZqmUr 822だがなんで最後の二文字が消えてんだ…? とにかくお前らヤンデレには気をつけろ。ヤンデレになりそうな女にもマジで気をつけろよ リアルな夢だったせいか二つの意味で目が覚めたわ 827 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 15 44 08 ID mGqGZrk3 826 俺は夢の中のヤンデレとはバカップルになったが愛が足りないんじゃないか? 828 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 19 07 29 ID 8VlfHGxk 俺も監禁される夢を見たけどやっぱ良かったよ 2人だけの世界。誰にも邪魔されることなく2人の愛を育むんだぜ やっぱ愛の究極体だと再認識した 829 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 19 20 03 ID PHJo/ds8 夢の中へ 夢の中へ 行ってみたいと思いませんか 830 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 19 51 25 ID Iwe3MX0J 多分、俺には彼女がいるからヤンデレの夢が見れないんだな・・・・ よし、彼女とちょっくら別れてくるわ。 831 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 20 01 46 ID 1pmV62+0 この間書いたけど、ヤンデレが行方不明になり自分がヤンデレ化した悪夢を見た俺にとっては羨ましい限りだな。 ところで話は変わるが、日本の音楽ってほとんどの曲が恋愛が絡む曲だよな。 で、その内のかなりの曲はヤンデレ化するぐらいの想いって解釈できる歌詞である気がするんだが、気のせいか? 実際、聞いている連中にはヤンデレ化なんざ絶対しないスイーツ(笑)だらけだと思うけど。 832 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 20 02 45 ID L3zIrt2D 830 あばよノシ 833 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 20 07 52 ID hZBelY/p 830 来世で会おうな 834 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 20 19 45 ID 2pgfSEJ5 監禁されるシチュでふと思ったんだけど いずれは俺も歳をとるわけだしおまえは爺さんになっても愛してくれるのかと詰問したい 途中でやっぱり解放してあげるとか言われても何年も監禁された後だったらどうやって一般社会に復帰すればいいのかと まぁでもこんなのは杞憂でしかないかもな ヤンデレに監禁されて何年も生きていられるものかと(ry 835 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 20 24 14 ID /8kx1Uub ヤンデレの愛は永久不滅だと信じてる 836 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 20 40 29 ID bKvB5Ed4 その前に一緒にあの世行きだろ 837 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 22 00 56 ID 5wIRqtHn 828 わがままな俺は外出許可を付け加えた監禁生活を夢の中でおくったw なんでも現実的にとらえてしまうからな・・・。 「食費はどうしよう」とか、夢がなくていやだね。 830 待て!よすんだ!!! 「すまない、俺と別れてくれ・・・・・・・・うわお前なにをすrgl;skhzsh!!!!」 ・・・遅かったか(´・ω・) 838 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 22 07 37 ID YUSBdCkw 夢の中で育てた脳内彼女 最初はもてない自分をせめて夢の世界だけでも慰めるための道具がいつしか現実へも影響を・・・ 839 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 22 35 00 ID /ox9h0K9 それはヤンデルのがお前だw 840 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 22 40 03 ID hx5RGoIg 最近このスレ見すぎてヤンデレの夢しか見れなくなった。 ある日女の子に地下に監禁されて、長い時間が経ち、気づいたらその彼女と陽の当たる生活に戻っていた。 だが、彼女に似た子供が三人もいた。 …そんな夢を昨晩は見た。 今晩も別のシチュ楽しんでくるわ。 841 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 22 53 34 ID ///IRyiF 「その女の子をよく見ると実はおまえのオカンだった」ていう呪いをかけた。 呪いを解くにその夢の詳細語るがよろし さすればNA☆N☆ZIの呪いを解いてあげるにゃ~ 842 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 23 13 11 ID qhKzKw8H Giftのきりのんはマジでその呪い使ってたな 恐ろしすぎるw 843 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 00 41 15 ID /87ejD5N 841 ママン属性のある俺にだったら呪いでもなんでもないぜ リアルママンは勘弁だけどな 844 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 13 27 27 ID VeqZuhpd てか気付いたら477 KBじゃないか。 次スレ立ててくる 845 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 13 32 12 ID VeqZuhpd 立ててきました ヤンデレの小説を書こう!Part16 http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1212553842/ 846 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 16 46 10 ID Uy46LI9k 845 よくやった、うちに来て妹とファックしていいぞ 847 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 18 01 04 ID mbzFOIlZ 846 さっきお前の妹がお兄ちゃん殺すとか私が他の男にとられてもなんともないのねとか、まあそんなことをブツブツ言ってたよ。 大丈夫? 848 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 18 01 24 ID mbzFOIlZ ってことで 845、うちに来て弟とファックしていいぞ 849 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 18 07 30 ID pMEAyevw 今「○○君、悪のお兄さんを倒してあなたを取り戻しにいくから!」って 近所のお姉さんが果物ナイフを手に走っていった 850 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 19 03 01 ID LXSyLgA2 845 よくやった、うちに来て俺とファックしようぜ 851 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 19 25 05 ID +K8JEFvF 「男の癖にお兄ちゃんと……許せない。あの泥棒ネコ!」 852 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 20 41 47 ID 4nQ+dUVr 845 冴えない俺の親父をくれてやるよ 853 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 20 54 46 ID IQBXz1if 845 それじゃあ俺は俺のケツ毛タップリのケツを差し出すよ。クソ以外未使用の新品だぜ!! アッ-!! 854 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 21 43 58 ID WJt629y0 こんな流れじゃ次スレに寝取られちまうぞw 855 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 22 17 38 ID IQBXz1if 俺のせいでか…orz 856 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 23 21 38 ID xQPlCaxQ 855 抱いてやるから泣くなよ 857 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 23 49 08 ID K5VTB6ZJ 黙って見てたい俺だが、敢えて言わせて貰う。 この中にヤンデレ女がいるはずだ。多分… 858 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 00 47 31 ID rO2B0yGr ヤンデレ女と一緒にいられるか!俺は自分の部屋に戻る! 859 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 01 00 38 ID AwCX94OM そして部屋で待ちかまえてる妹 「そうだよね。あんな女といっしょにいられないよね。 お兄ちゃん、やっとわかってくれたんだ。 手錠の鍵は捨てちゃったから、もうこれからはずっとわたしといようね」 860 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 01 27 59 ID CYnUDJa/ 859 しかしお兄ちゃんがアンチェインな件 861 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 01 32 45 ID 8gem6Dvc 890 妹は史上最強な件 862 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 01 55 48 ID /h5+wShI お似合いじゃないか 863 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 21 02 08 ID mpULLbbf こういうのは邪道かもしれないが、最初は嫁に愛され年齢と共に娘に愛され 更に過ぎて孫に愛され、最後には曾孫に愛されながら死ぬのが理想だよな もちろん性的な意味でな 864 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 21 14 49 ID OpvA6YDa お前の嫁(志望)が包丁を研いでいた、とだけ言っとく 865 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 21 31 09 ID y1eBWgBv 曾孫が泥棒猫化するもんだから長年連れ添った婆さんに今更無理心中させられるんですね 866 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 22 27 16 ID mA5cRH/E あぁ、もし違っていたらごめんなさい。 ここはヤン・ウェンリーとフレデリカの小説を書こうスレでよかったんですよね? 867 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 22 47 28 ID HqLQi5da だとしたらこのスレのスレタイはヤンレデのはずだな 868 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 23 00 33 ID mA5cRH/E じゃあ、ヤン・ウェンリーがデレデレするスレでいいんですね? 869 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 23 02 39 ID HeK9cz40 つまらん 870 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 23 26 34 ID KVdcLESn まぁたしかにフレデリカはヤンデレの素質はあるとおもうぞ たった一杯のコーヒーからよくもまぁあそこまで 871 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 00 48 12 ID OS6pBQPi 447 名前:名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage] 投稿日:2008/05/27(火) 01 33 55 ID a6RHAiAi フレデリカ「ヤン提督、監禁したいなぁ…」 フレデリカは14歳のときヤン注意に一目惚れし、以来ヤンを追って軍人になるわ 父親のコネを使ってヤンの副官になるわ、生活無能力者のヤンを公私で世話を焼くわ 最後には結婚までこぎつける ヤン デレです。 872 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 13 52 51 ID r8G+1LF1 ロシアン・ティーを一杯。ジャムではなくママレードでもなく愛液で 873 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 22 21 17 ID 1cGAP53x 青い液ならばございますお客様 874 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 22 50 37 ID +StkkcT6 愛液でも青い液でもロシアン・ティーじゃないから それに、入力したのはフレデリカじゃなくユリアン 875 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 03 23 24 ID ylTgfrSo きみきみ何を言ってるのかわからんぞ 876 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14 33 48 ID OaF49gUe 今日はいい感じの天気だから、ストーカーするほうもされるほうもほのぼのするでしょうね。 877 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 07 04 10 ID Rivw5zkW 埋めネタ待ち、保守 878 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 00 08 48 ID uiXYhhC2 てす 879 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 16 56 18 ID J8eccUW0 そうか、すでに次スレがたっていたのか。気づかなかった。 880 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 17 09 39 ID nTOThXgv グルーピーとヤンデレの違いは何かあるかいな? 881 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 00 10 01 ID hgEnhONI グルーピー ただステータスに反応しているだけのバカ。また、一時的 ヤンデレ 究極の純愛。また、その想いは死ぬまで、場合によっては死んでも続く 882 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 08 16 04 ID tQt/gO0Y 俺としては病むまでの過程、病んでいく過程、病んでから起こす行動について注目している 病んでいくところが良いんじゃないか?ホラー映画の緊張感にも似たあの感じがたまらんのだ じわじわ病んでいき、そしてどんな行動を起こすか分からないワクワク感 病的なまでに愛される主人公を羨ましくも感じ、不憫にも思ういたたまれないこの感覚 すべてはヤンデレだからこそ味わえるんですよ グルーピー?なにそれ?腹壊した時の腹の音ですか?違いとか比べる以前の問題ですよ 分かったら 880は近所の本屋にヤンデレ大全と未来日記でも買いに行きなさいってこった 883 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 08 28 30 ID bMn2oDm9 ヤンデレは恋だけにその身を捧げるって感じかなぁ グルーピーは病んでるっていえば病んでるけど、なんともな まぁ、物語次第だとは思うけれど 884 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 11 57 34 ID hgEnhONI 882 ヤンデレ大全も未来日記も、模範的なヤンデレからは外れてるような…… 885 名前:ヤンデレ妻と初詣[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 12 08 11 ID qqyAx98Q 埋め代わりにヤン妻小ネタを投下だよ エロ?無いよ 1月某日 晴れ 「あなた、そろそろでかけないと…せっかくの初詣なのに、人混みでおまいりできなくなっちゃいますよ」 もたもたと出かける準備をしていると、むくれた様子の妻に抱きつかれた。 あまり初詣に気が乗らない俺とは違い、妻はいつの間にか着物まで着て準備万端なようだ。 そういえば、妻の着物姿を見るのは結婚式の白無垢以来か。 今しがたのんびりするなと怒られたばかりだというのに、普段とは違う雰囲気の妻に思わず見とれてしまう。 …それにしても珍しい色の晴れ着だ。緋色…血色? 俺が不思議そうに晴れ着を見ているのに気付いたのか、 「これ、おかあさまからおくられてきたんです。いい染料がてにはいったからって」とはにかみながら答えてくれた。 よりによって俺の実家から…着物のことは詳しくないからよくわからないが、 染料というのは一般家庭でも簡単に入手可能なのだろうか。 「そうですね…素材ならそこらじゅうにいるんですけれど、やっぱり連続で狩るとさわぎになってしまいますから… けつえk…染料を一滴のこさずしぼりとるのもたいへんですし。 おかあさま、必要なだけあつめるのに何ヵ月もかかったらしいですよ」 松茸並に貴重な染料だ。 「あ、でも後始末はすっごくたのしかったっておっしゃってました!」 わたしもおてつだいしたかったです、と何故か目をきらきらさせている妻に、 それならそのうち休みをとって一緒に里帰りしようかと提案する。 「えっ!ほんとうですか?」 この上なく嬉しそうな笑顔。言ってみて良かった。 そうこうしているうちに妻に手早くコートを着せられ、ぐいぐいと外に連れ出される。寒い… 神社に到着するまでの間、妻はずっと「トランクをひっぱりださなくちゃ」だの、 「お着物のつくりかた、おしえてくださるかしら」だのとはしゃいでいた。 早速里帰りする気満々になっている妻には悪いが、 正月明けでまとまった休みをくれるほどうちの部長は甘くない、と言い訳しておく。 「とれますよ、おやすみ」にこにこと微笑む妻。 「部長さんも……きっと、あなたにおやすみあげなきゃって、おもってますよ、うふふ」 もうすぐ仕事に追われる予定の俺を慰めてくれるのだろうか。 妻の優しさに感謝しながら、それなら神様には「休みが欲しい」と頼もうかなどと軽口を言い合う。 程なく神社に到着。 早めに来たせいか思ったよりも混んではいない。少し並べば境内まで辿り着けそうだった。 妻と参拝客の列に並びながら、今年の願いは何にしようかと思案する。 「休みが欲しい」も叶えてほしくはあるが、やはり新年最初の願い事なのだから もっと優先度の高いものにすべきだろう。 あれこれと考えていると、突然「あなたあぁ」と助けを求める妻の声に我に還った。 何事かと妻の方を見ると、妻は何故か帰りの参拝客の列に巻き込まれそうになっていた。 慌てて妻を引っ張り出す。どうやら俺と同じように考え事をしているうちに列に紛れ込んでしまったらしい。 ……正月早々うっかりしているものだが、おかげで今年の願い事を決めることが出来た。 『妻とずっと一緒にいられますように』…恋愛ドラマのようで照れ臭いが、これが一番の願いなのだからしょうがない。 たぶん、妻も同じことを願ってくれるだろう……もうはぐれないようにと差し出した手を、 恥じらいながらもしっかりと握り返してくれる妻を見る限り、 それは自惚れではないと期待しても良いのかもしれない。 おわり 886 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 12 55 20 ID HON6d3AO なんといういい嫁 887 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 18 56 08 ID i3O3xPD3 884 また定義ですか…確かに大全はひぐらしのメンヘラ達まで一緒にしてる感はあるが…未来日記はそんな外れてないだろ 888 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 19 08 50 ID MVeB4yc1 なんという猟妻賢母。 ご馳走様でした。 889 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 19 48 51 ID nh0hWvET 888 誰が上手い事を言えと 890 名前:名無しさん@ピンキー[ ] 投稿日:2008/06/13(金) 14 06 37 ID SzR3tARl llllll lllllll ll . ハ ヾ iヽ, リ . i l . ヽi llllll llllllll lll . i i i ハ i ヽ, y l リ l i. ヽ lllll ,llllllll llll . リ i . l y リ, ヽ,.iヽ、 . リ i l i ト、 llllllllllllllll lllll . iハi ヽ i `. i _,,... -=- ..,リ . i . l i ヽ iヾ lllllllllllllllll lllllll . l 丶 ` ,r ,~- 二._ -._丶ハ リ. . i. ! l l ヽ llllllllllllllllll .llllllllllll, . . i ,r ,r ,.- ~ `ヽヽ,丶ノ ハ y ! リ、i i llllllllllllllllllll lllllllllllヽハ . l 7´ i ,,;;;;;,, `l i ヾリi ノ /. l /イ i l llllllllllllllllllllllllllllllll ; ヽ、i 、 .i l ;;;;;; i l ,.リ ,y ./. l / リハ i lllllllllllllllllllllllllllllllヽ,ヾ、 ヽ、 .` ヽ, ヽ, ,y ,i _,/ノ / . r lllllllllllllllllllllllllllll “”,; .. ...丶., ` -=- _.r - / 7. l llllllllllllllllllllllllllllll # , ....` ー= rr‐ i ノ /. イ l llllllllllllllllllllllllllllll * ¨ ℡, r . i i i llllllllllllllllllllllllllllll. ;〟r . i l . .l llllllllllllllllllllllllllllllll . , 〟 叮フ . イ l .l . i llllllllllllllllllllll,.;.._lll . ¨$,¨ 〝 y イ. / i.i l . l llllllllllllll_,rニ-..,,,__,,..,_ ;;,_ ㌔ .r№i / イi l l lllllllllllll、-ー─ ─一-  ̄,7ニ- ´ ; # ;i l y ! l ... l lllllllllllllllll`- ._ _,,r- ´ , \〟;〝 ヽ i .l . i llllllllllllllllllllll,,,  ̄ ,... .. # *i㍼〟 ; ,. ~` l . l lllllllllllllllllllllllllllllllllllll ,. ... %〝 / . l i 891 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 14 28 06 ID gtLM6YAs . ハ ヾ iヽ, リ . i . ヽi . i i i ハ i ヽ, y リ i. ヽ , . リ i . y リ, ヽ,.iヽ、 . リ i i ト、 . iハi ヽ i `. i _,,... -=- ..,リ . i . i ヽ iヾ . 丶 ` ,r ,~- 二._ -._丶ハ リ. . i. ! ヽ ., . . i ,r ,r ,.- ~ `ヽヽ,丶ノ ハ y ! リ、i i ヽハ . 7´ i ,,;;;;;,, ` i ヾリi ノ /. /イ i ; ヽ、i 、 .i ;;;;;; i ,.リ ,y ./. / リハ i ヽ,ヾ、 ヽ、 .` ヽ, ヽ, ,y ,i _,/ノ / . r “”,; .. ...丶., ` -=- _.r - / 7. # , ....` ー= rr‐ i ノ /. イ * ¨ ℡, r . i i i . ;〟r . i . . . , 〟 叮フ . イ . . i ,.;.._ . ¨$,¨ 〝 y イ. / i.i . _,rニ-..,,,__,,..,_ ;;,_ ㌔ .r№i / イi 、-ー─ ─一-  ̄,7ニ- ´ ; # ;i y ! ... `- ._ _,,r- ´ , \〟;〝 ヽ i . . i ,,,  ̄ ,... .. # *i㍼〟 ; ,. ~` . ,. ... %〝 / . i 892 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 14 43 55 ID ps8TDVn8 美月さん何やってんすか 893 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 15 03 18 ID 2KCyxknW そういやダブルキャストの美月はヤンデレではないが それに近い恐ろしさがあったな デッドエンドで惨殺しまくりとか包丁ギラリとか返り血ベッタリとか 主題歌も素晴らしい良い曲だった ヤンデレでないのが今思えば残念だが 「病んでいた」という部分ではひぐらしのごとくヤンデレに扱われてもおかしくない いや、やっぱヤンデレじゃなかったな このスレで「ダブルキャスト」を知ってる者はどれほどいるのだろうか 894 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 16 27 19 ID ntZ3+9nL 聞いたことはあるような無いような。 895 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 17 58 27 ID YRtmc0Fq 893 買おうか迷った あの時はギャルゲーには興味があったけどかえなかったな 896 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 19 15 16 ID pKFaG90O 894 895 是非とも買うべし! 元値が安いくせにクオリティが異常というひぐらしの選択肢ありバージョンだ ゲームは単純で選択肢によってストーリーの展開が変わっていくマルチエンディングってやつ ダブルキャストはノベルゲームではなく、それが全部アニメーションってのが特徴 ちなみにこのダブルキャストは「やるドラシリーズ」ってので、他に季節に合わせた三作品がある サスペンスホラー+恋愛でバッドエンドの数の多さはスクールデイズとFate並みにある 買って損はしない。10年ほど前の作品だが今でも楽しめるはず。マジでおすすめする ヒロインが1人だけなんだがマジ可愛いぞ。そんで怖い。ヤンデレ半分メンヘラ半分って感じだ (ネタバレになるからこれ以上言わないが) 俺はギャルゲーと気付かず買ったがやってみるとギャルゲーとは思わないと思う とにかく安いし面白いし俺が唯一100%達成したゲームだからおすすめする 一昔前の「コレもヤンデレと言えるのではないか?」と考えさせられる作品だ 確かプレステで2500円くらいだった。今なら中古でどんくらい安いか知らないが絶対損はしないぜ ちなみにフルコンプするには鬼の忍耐力が必要。この意味はやってみれば(やった人には)分かること ヤンデレ好きには是非一度やってみてほしい。夏にピッタリなゲームだ。主題歌もマジおすすめ 897 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 19 26 18 ID JFhrwf0n 宣伝乙 898 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 19 28 37 ID KdrY9QLj 896 うるせえ、鎮静剤打つぞ。 その前にちょっと買ってくる 899 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 19 33 07 ID ntZ3+9nL 896 アマゾンで見てみたら結構安いし買ってみるわ。 最近はやりたい物とか読みたい物が多いから買うのはちょっと先になりそうだけど。 900 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 19 36 22 ID DzslZQO8 『季節を抱きしめて』もお薦め 女友達が一人しかいない、非モテ鈍感主人公が記憶喪失の女子高生を拾って、 そしたら女友達に凄い勢いでなじられるゲーム。 「ただの友達でセックスどころかキスもしてない相手になんでそこまで言われにゃならんのだお前頭おかしいのか」と思うぐらいなじられる。 901 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 20 25 33 ID ZsLHhhoS 900 ほう。 それはつまり、そのたった一人の女友達は主人公のことが好きということだな。 そして、主人公を独占したいから周りにいた女友達を排除して、自分がオンリーワンになった、と。 902 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 21 16 11 ID nvJ9ILRk ダブルキャストは本気で主人公死亡率高くて泣いたw 903 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 21 40 42 ID Jo7R3qnC ヤンデレ出演ゲームやらアニメやらって全然見たことないなあ… いつもこのスレで萌えるか脳内妄想だ ダブルキャストは入門には良い方?いきなりスクイズあたりだと強烈だろうとは思うけど 904 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 21 45 30 ID afDzE8xj 入門ならSHUFFLE!見とけ 905 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 22 05 25 ID 8dC7soxp ここを見れば、ダブルキャストがどんなゲームかわかるぞw ttp //www.nicovideo.jp/watch/sm218037 906 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 23 35 04 ID Jo7R3qnC 904 SHUFFLEか、タイトルだけ知ってるわ。TSUTAYAにあるかな。今度借りてみる 905 中身見なくてもサムネで病んでるってわかるとか凄いw 調べたらダブルキャストってPSPでも出てるんだね。 深夜布団の中で一人ヤンデレと対峙ってのも良いな…寝オチしたら二度と目が覚めなそうだけど 907 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 23 57 47 ID pKFaG90O 898 899 お買い上げありがとうございまーす!大人気ですからお早めにどうぞ~ 903 ダブルキャストのヒロインをヤンデレと言っていいかどうかは難しい。定義が確立していないからな 入門なら 904の言った作品がおすすめ。しかしダブルキャストも侮り難し 安いから試しに買ってみることをマジおすすめします 908 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 01 25 41 ID blJKgIWB ,.-ー─- .,_ _,,.-=  ̄`=-、 ,. / ., _ ` - .,_,.., / ~ 丶 i- | / ヾ i y - ., イ, r-、.,_ _,.~ ヽi .,_ ,i´ `i.,_, -ー-i ,. ,i ~`-i ,.- `- r`i__,,.r l l ~ ,r - ヽ、 . i l l , , ,,i ㌻ , , r .! i , ` ~ヽ, l . i ~` ´ .,r ´i ,.、 , .i l l .. , ヽ、 .l .. _ i /~ =- .._ ,r `´t ,.. . . ,.- .l .. ヽ、.. . ヽ, . l _,r- `ヽ, ,i ヽ、 i .. l `´i .i , l `ー-..,ゞ、 ,.r ` ヽ, レ- _,...-=-.., i, ,r ,-、_ ,ヘ, i ,.ー-、 l .. ..l i \´ ,.r ... .. ゝ y l ,r i Y _,y i ; i -、_T´ r ,っ .ヽ、i、 l `ー-= ... _r- ~ヽ, .. _,r ,r= ヾ,_く..,_ i,` └イ Y__,..,r ヽヾ .i ヾ _,.-vニ.., 、ヽ` ri . ,.- i ,. . ~`-..,y_ ,、_ r 」 `i、 ヾ、 ヽ、 .. _,.トv ヽ, ヾ_ `i y_r _,. - l r `ー- ~ i ヽy ,. ヽ、 _,r ~ r ` , ヽ,- i, .i .... ~` ,r-;ゝ-;、 ,i l ヽ、 ,.~ ヾ,._,.r,.- ,. `l l ... ,. ,y _,.-__ヽ、 l l ヽ 、 ` / ー - ...,_ l ! . / , r ~フ~=- ..,_t, ! 丶t-=..,_ _ .. _,.l ,i .. / i r ` 、 ,. l _,.-┘  ̄~` ー .,__,r-ー .l l ,. .. ... i . i .... . ..ヾ _,.レ ~ i ./ .. .l ... i_ , ._ _,..- フ~ ...... l .ヽ、 r ` ̄  ̄ _,r l
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807 :名無しさん@ピンキー :2007/01/23(火) 22 14 34 ID +4orXTIq それだけが願いだったのに それだけが叶わなかった。 愛されたくて愛されたくて。 愛してるだけでいいと思った日もあったよ。でも笑ってる顔を毎日みて。 いつの間にか会いたいと思うようになった。会いたいよ。 必死に隠したけど会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい。 鏡に映った私は酷い顔してた。濁った瞳。あははは、仕方ないね。般若の気持ちがわかったよ。 私はきっともう壊れちゃったんだろう。壊れたんだね。あなたのせいだよ。 愛して。ねえお願いだから愛して。 会いに行くから。そしてもう離さない。待っててよ。あなたの胸にこの刃を突き立てて桜の木の下に埋めてあげる。 みんなこのスレ埋め立てようぜ。
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1 名前: ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 23 43 ID 3F4iYY5m ・このスレッドはヤンデレの小説を書くスレッドです。 ・プロット投下やニュースなどのヤンデレ系のネタ大歓迎。 ・ぶつ切りでの作品投下もアリ。 ・作者のみなさんはできるだけ作品を完結させるようにしてください。 ヤンデレとは ・主人公が好きだが(デレ)その過程で心を病んでしまう(ヤン)状態の事をさします。 (別名:黒化、黒姫化など) ・ヒロインはライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつ確実に病んでいく。 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することがある。 ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 http //yandere.web.fc2.com/ 前々スレ ヤンデレの小説を書こう! http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148704799/ 前スレ ヤンデレの小説を書こう!Part2 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169476735/ 2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 28 10 ID yPOnFcDW 1 乙! 関連スレ 嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 修羅場の28 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1170714407/ 3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 28 58 ID wqvf+upe 1にして作者どの、乙。 4 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 35 14 ID pr+Lavid 1乙~ ところで、最近このジャンルに入ったばかりの新参で悪いのだが… 「好きだった相手が、不慮の事故や殺人によって殺されて、闇落ちしてしまう」 ってのはヤンデレに入るんだろうか? 5 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 23 39 02 ID zj6Fc85K 4 入ると思う。まぁ展開にも依ると思うけど。 6 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 00 12 ID eRVaRylj 1乙です。 小説の方も楽しみにしています。 4 闇落ちして何らかの行動を起こせばヤンデレだと思います。 7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 03 00 ID tmOEM4/d 4 大河内さんが一番近いかも… 8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 05 11 ID dJAJczQi 4 それなんて園崎詩音 9 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 00 57 14 ID Cp55S9g9 なんだ・・・ ヤンキー娘がデレるって意味だと思ってた・・・ 10 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 01 01 17 ID ITwVDmp/ 古いネタをww 11 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 01 11 45 ID EIaTgmpr 9 ふん、なによ、勝手に誤解して勝手に失望しちゃって! 貴方なんかこっちからお断りよ! その点○○君は私に優しいし、明日もふたりでデートするんだから♪ねぇ?○○君。 ………え?○○君、なによその顔、わ、私とのデートが、い、嫌なの!? なによそれ!私はもう明日デートするつもりで予定立てたのよ! え?『そもそも彼氏じゃない』ですって?そんなこの前ケーキ食べながら告白してくれたじゃない! 『ケーキが好きって言ったけど君が好きだとは言ってない』ですって? …………………あ、あはは、あははははは!な、なにを、なにを言ってるのよ○○君! 私は○○君が好き。○○君も私が好き。私は○○君が好き。○○君も私が好き。 私は○○君が好き。○○君も私が好き。私は○○君が好き。○○君も私が好き。 私は○○君が好き。○○君も私が好き。私は○○君が好き。○○君も私が好き。 ○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君 ○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君 ○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君○○君………………あはっ♪ 12 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 02 11 47 ID 0mRpN3BG 4 僕は事故に遭った……らしい。 らしい、と言ったのは、僕に記憶が無いからだ。 僕が覚えているのは、デートの後、彼女─美月に手を振りながら横断歩道を渡ろうとした所までだ。 家族の話によると、その時に横から突っ込んできた車に挽かれ、病院に運ばれた後、3日も寝ていたらしい。 怪我は、と言うと、両足複雑骨折。 正直に言って、再び歩けるようになるのは難しいらしい。 まぁ、僕は小説家になりたいから───と強がりを言ったところで、もう歩けない事に対する喪失感は拭えなかった。 僕を挽いた車を運転していたのは、近くの会社に勤めるOLらしい。 今回の事故は僕が全面的に悪いので、本当にいい迷惑だったと思う。 まあ、そんな事があって、僕は入院中だ。 そこに、彼女の美月が見舞いに来た。 旅行用のトランクをもって。 「駿!心配、したんだからぁっ!」 そう言って抱き付き、泣きじゃくる美月に、僕はごめんと言って背中をさする事しか出来なかった。 「あのね、駿に朗報があるの!」 「それはねぇ……ほら!」 美月が差し出したのは、トランク。 それを開けると──── 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 08 14 38 ID j908xWak 12 その中に入っていたのは人の顔だった。 ・・・・・・・・・・・・。 よく見ると少し違った。 中にはもう一つトランクが入っていた。それに人の顔が書いてあったのだ。 「あははは! うわぁぁぁぁぁぁ!!! だって! 何驚いてるのよ。人間の頭でも入ってると思った?」 「お前なあ・・・・・・」 美月はにやりと笑うと僕に向かってこう言った。 「うふふ。朗報っていうのはね、その中に入ってるのよ。開けてみて」 「まったくお前ってやつは・・・・・・」 もう一つのトランクを開けると、中に入っていたのは―― 「――――――え?」 14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 08 45 06 ID gnRHxdtb 13 小さい小さい箱だった。この形の箱はドラマとかでよく見かける。 そう、プロポーズのシーンなんかで、よく―― 震える手でそれを開けると指輪が入っていた。銀色のシンプルなものだ。 「駿、あのね、結婚しよう」 美月はつっかえながら必死に続ける。 「あのね、わかってる。普通これは女がやるもんじゃないってわかってるの。 こんな時までカケラも大人しくなくてごめんなさい。でも、考えたの」 もうほとんど彼女は泣きそうだった。 「私はね、あなたが、あなたがどんなになってもそばにいたい。私は駿のお嫁さんに なりたい。歩けないなら私が支えるから一緒にいて欲しいの。駿と一緒に生きたい」 美月はもう泣いていた。それでも彼女は必死に続ける。 「駿が死んじゃうかもしれないって思った時本当に怖かった。離れるぐらいなら死にたいと思った。……もう離れない。離さないから……け、け、結婚して」 残りの言葉は僕の口唇のなかに吸い込まれた。 僕はこの時最高に幸せだった。 この時は、まだ自分と周りがどんな状況なのか全く把握していなかったからだ。 15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 12 55 37 ID DsXBobEd 美月からプロポーズを受けて数日がたった この数日間は幸せだったと断言出来るだろう 美月は僕の事を献身的に介護してくれたし朝早くから来て面会時間ぎりぎりまでいてくれた。帰る時にはいつも名残惜しそうに 「駿、明日も絶対くるからね。だからちゃんと待っているんだよ」 と言ってくれた。 毎日美月にこの言葉を言われるたび、僕はなんとなく幸せな気分になった。 今の僕は美月を必要としている。そして美月は僕を必要とし助けてくれる。 とても理想な関係だったと言えるだろう この関係はこの先ずっと続くだろう しかしこの関係がヒビの入ったガラス細工のような物だったことに僕はまだ気付いて無かった。 そして僕はその事を思い知らされることになる 16 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 13 56 52 ID ZLb7CIwF 書きながら投下するのは止めてくれませんか もし携帯からならメモ帳なりメールに書き溜めてから投下して下さい 17 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 01 08 ID bM3OW3V5 1 乙! 16 おまえは何を言っているんだ 18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 13 59 ID 40K7HDry まあ、とりあえず前スレ 777 伊南屋氏投下щ(゚Д゚щ)カモォォォン 19 名前:13[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 17 24 ID j908xWak まあ、書き込みづらい空気になってたかもな。 みんなすまん。 20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 32 24 ID DsXBobEd 16 あれって全員別の人が登校したんじゃないのか? だからID(?)がバラバラなんだと思うんだが 21 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 46 38 ID ITwVDmp/ ROCO氏GJ!! この女性視点のエロさがたまらないですね。 もともとこの属性は無かったのですが、今から芽生えてきそうです!! 22 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 49 25 ID ITwVDmp/ スマソ。 スレ間違えちまったんだよ……(´・ω・`) 23 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 50 00 ID ZLb7CIwF ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい 死ぬから、今すぐ死ぬから嫌いにならないで!! あはっ、あはははは 『グサッ』 あはははははははは!! 『グサグサグサグサグサっ!』 短絡的で本当にすまんかったorz 24 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 15 08 56 ID FnEeh2NW 23 あんたのせいで・・・あんたのせいで途絶えちゃったじゃないの! どう・・・、どう責任とってくれるのよ・・・。殺してやる・・・コロ・・・シテ・・・ サクッ 25 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 15 21 25 ID DsXBobEd 24 貴女がそんなこと言って良いのかしら? 貴女だって 23と同じ雌豚なのよ。 貴女たちがいるから、七志君は怖がって出てこれないの、でも安心して七志君。今この豚を殺してあげるから… 26 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/13(火) 17 14 46 ID odr1Uu9e 新ジャンルの『素直狂う』ってヤンデレ? 27 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 17 30 34 ID EIaTgmpr 26 狂人が男に惚れるのと、男に惚れるあまり狂うのは別物です。 28 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 18 02 36 ID dyXsTalx ヤンデレの定義も難しいよな… 愛した男が死んで、それを認められずに 「あはは、もう、早く起きないと遅刻するよ?」 と、誰もいないベッドに毎朝男を起こしに来たり、 「今日はご馳走にしたんだぁ」と、自分しかいないテーブルに 二人分の食事を用意してる。 これはヤンデレなのか痛キャラなのかどっちなんだろ? 29 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 18 33 07 ID v4rGzLRf 俺が思うに ・主人公に対して愛情をもっている ・狂っているのでは、と思わせるほど精神が病んでいる ・しかし生まれつき狂ってはいない。どこかで狂った ・ヒロインが美少女である の基本さえ押さえていればヤンデレなのではないかと。 あとは魅せ方次第だと思う。 28もそこに至る過程次第でどう見えるか変わるだろうし。 30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 18 38 51 ID EIaTgmpr 28 その場合男の生前にどうやって狂ったかじゃない? 出会う前から狂ってれば痛女だし、男と出会って狂えばヤンデレ。 男の死が原因で死後に狂ったのならヤンデレだと思う。 あと痛女とヤンデレの区別の基準のひとつに、「男以外への接し方」がある。 たとえば誰彼構わず痛い行動を繰り返しているのならただの精神病or痛女だし、 男と、男が絡む事情にだけ過敏に反応するのはヤンデレになる。 31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 19 06 45 ID 1TzDS62S 基準なんて少ない方がいいんだよ 作品の幅が狭まるだけだ 病んでいる、そして主人公にデレている。 これで十分 32 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 19 10 24 ID 1TzDS62S てわけで痛女はヤンデレの一部分だと思います 33 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/13(火) 19 46 23 ID Jcwk0VJZ 31 そう! 頭で考えるんじゃない。 心で感じるんだ!! 34 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 19 50 27 ID gnRHxdtb 33がいいことを言った。 35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 20 52 20 ID HbS1YR/w ここを見るまでヤンデレってヤンキーなデレかと思ってた。 普段ヤンキーっぽいけど時々デレるみたいな。 36 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 21 01 45 ID v4rGzLRf 10w 37 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/13(火) 21 25 54 ID Jcwk0VJZ 35 そ、それはそれで… 「ぎ、義理なんだからねっ!……カン違いしないでよねっ?」 …スマソ、これではツンデレだ……orz いよいよ明日だ!! 頭にバのつく婦女子が溜まりに溜まった想いをカフェインを 炭水化物と共に摂れる形でその他色々なオプションを付けて そんでもって場合によっては血の雨が降ったりなんかもする日は!!! 38 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 21 26 06 ID dyXsTalx まあ、こういう話をすると荒れる原因だと思うが、 「痛女はヤンデレを内包している」 と思うんだよな。 痛女のカテゴリーの一つとしてヤンデレがある、というか。 まあ、結論は 31って事には激しく同意だがなッ! 39 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 21 27 57 ID 4vxG40j9 もて王の綾はヤンデレ? 40 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 21 30 15 ID 91rHc3Xx 35 つ ttp //ashigaru.f-adult.com/index.html こちらの「成人向けオリジナルに」にある「喜多さんと僕」シリーズがお勧め 41 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/13(火) 21 31 16 ID Jcwk0VJZ 残り二時間と半… -2:30- 42 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 21 35 29 ID v4rGzLRf 37 誰か俺宛に食べきれないチョコレート送ってくれないか? 俺は会社入って一度も貰ったこと無いし。 いや、もらったらお返ししないといけないから貰いたくは無いんだ。 しかしチョコは欲しい。俺が毎月チョコレートにかけている金額は 相当な額になるから少しでも食費を浮かせたいのだ。 愛は要らん。女も要らん。セクロスも要らん。 ただチョコレートをよこせ。俺がバレンタインに言いたいのはそれだけだ。 まあ、明日はSSが投下される確率大だからな。 今から楽しみだ。 43 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/13(火) 21 41 25 ID TiStBspt 闇討ち/須藤冬華 http //imepita.jp/20070213/779790 イベント絵らしきものシリーズ 44 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 22 02 38 ID J4YNFArw 冬華ちんはもっとロリ上品なサイ娘なんだい! 45 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/13(火) 22 04 34 ID Jcwk0VJZ 残り二時間 -2:00- 46 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/13(火) 22 22 45 ID TiStBspt 44 イメージにそぐわなかったようでスマヌ。功夫が足りんかった。 とりあえずカラーも出来たので一応は置いとく。 http //imepita.jp/20070213/803910 47 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 22 24 06 ID ofO+wJaT 46 これは怖可愛いですね((( ;゚∀゚)))ガクブルハァハァ 48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 22 36 36 ID v4rGzLRf 46 クンフーが効いておりますな。雰囲気充分です。 49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 23 10 24 ID eRVaRylj 46 カラーだと様になるw 50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 23 36 59 ID 8Irdrcd7 闇打ちウサギの妄想では目が最後らへんのアンデルセンみたくなって鼻の頭に筋が浮かんでたヤツ手を挙げろ お願い……私を一人にしないで…… 51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 23 49 09 ID 3QD6tNG5 個人的な嗜好だが、ヤンデレは 「幸せな一時があって、それが一方的に理不尽に奪われ、ゆえに狂うしかなかった」 という展開がツボ。 てか、ちょっとネタ思いついたんで形にしてくる 52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 23 50 14 ID TiStBspt 期待してる 53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 07 47 ID eRVaRylj 51 新たな職人誕生か!? 54 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 09 37 ID dy7nRHr9 メリーバレンタイン! というわけで女店長のSSを投下します。 55 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 10 20 ID dy7nRHr9 ことのはぐるま番外編~女店長・越えられない壁~ 日本のある町にコンビニエンスストアがありました。 その店は胸の大きな女性が店長を務めています。 胸がどれぐらい大きいかというと、成人男性の手にも収まらない くらいの大きさをしています。 お店にやってくる男性たちは店長の胸元に釘付けになってしまいます。 ときどき、店員の女の子がその胸を見てため息を吐いています。 その女の子のバストサイズは日本人の平均以上ありますが、それでも店長の 胸の大きさにはかないません。それほど大きいのです。 今日は2月14日。 バレンタインデー当日です。 コンビニエンスストアの店内にもチョコレートのコーナーが設けられ、 女の子たちはそこで義理、または本命の相手に贈るためのチョコを選んでいます。 胸の大きい女店長は楽しそうな女の子たちを事務所の監視カメラから観察しています。 物憂げな眼差しは見る者全てを恋に落としそうな色気を放っています。 「懐かしいわ。わたしもあんな頃があったわよね・・・・・・」 彼女が物憂げな視線で女の子たちを見つめているのには理由があります。 遠い昔を懐かしんでいるわけではありません。まだ20代ですから。 バレンタインデーは彼女にとって特別な日です。 今でも愛している彼の心を射止めた記念日なのですから。 あれは三年ほど前のことです・・・・・・ ・ ・ ・ 56 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 10 59 ID dy7nRHr9 当時の女店長は店長ではなく、コンビニのアルバイト店員でした。 この回想の中では便宜的に裕子と呼ぶことにします。 本名ではありません。仮名です。 大学を卒業後、彼女はフリーターとして生計を立てていました。 就職はできなかったものの、勤労の喜びを味わいながら日々楽しく 暮らしていました。 ある日のことです。 時刻は夜八時数分前。裕子は退屈そうにバイト終了の時間を待ちながら レジ当番をしています。 すると店内にスーツ姿の男性が入ってきました。 「いらっしゃいませこんばんは!」 裕子は元気良く挨拶します。 彼女の挨拶はお店に入ってくる人にはっきりと聞こえます。 その男性にももちろん聞こえました。 男性は裕子の方を向いて微笑を浮かべながら会釈を返しました。 優しい微笑みでした。その笑顔を見て裕子はどきっとしてしまいました。 (か・・・・・・かっこいい・・・・・・) 清潔感のある短い髪に、穏やかな微笑み。 すらりとしたスーツをかっこよく着こなした男性の姿を見て、 目を離せなくなってしまいました。 57 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 11 43 ID dy7nRHr9 「これ、温めてください。袋は結構ですので」 「はい! かしこまりました!」 男性がレジに弁当とお茶を持ってきました。 レジを挟んで裕子と男性は向かい合っています。 (はああ・・・・・・いい匂い) 男性を目の前にして、裕子は緊張したり興奮したりと大変です。 (そうだ・・・・・・) お弁当とお茶にシールを貼ってから男性に差し出します。その場で彼女は あることを実行することにしました。 両手で弁当を差し出して、男性が手を出した瞬間にその手を握ったのです。 「う、うわっ?」 「あ・・・・・・ごめんなさい!」 裕子は謝りながら男性を上目遣いで見つめました。 ぶりっ子全開、おとす気満々の瞳です。 男性は軽いパニックになって慌てています。 「ええっとあの、その・・・・・・」 「ごめんなさい! 間違って握っちゃいました。 ほんと、ごめんなさい! う・・・・・・ぐす」 今度は下を向いて嗚咽を漏らしました。 もちろんうそ泣きです。 「いいえ! 全然怒ってませんから! 気にしないでください! そ、それじゃ、失礼しますっ!」 男性は弁当とお茶を持って慌てて店から出て行きました。 (やった! これで顔を覚えてもらえたわ!) その時点でバイトが終了する時間になったので、事務所へと入っていきました。 58 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 12 20 ID dy7nRHr9 かつてないほどの速さで着替えを終えた裕子は外へ飛び出しました。 何故かと言うと、先ほどの男性と会って話をしたかったからです。 (まだそんなに時間は経ってないから、その辺にいるはずよ) 目を鋭くして、周囲をきょろきょろと見渡しています。 男性はすぐに見つかりました。コンビニの外に設置してあるベンチに座って 弁当を食べています。 裕子ははやる気持ちを抑えてゆっくりと男性に近寄っていきます。 「こんばんは」 「むぐ? ・・・・・・さっきの店員さん?」 男性は箸を止めて裕子の方に振り向きました。 「隣に座ってもいいですか?」 「ええ。構いませんけど」 男性は腰を浮かせて左側に空間を空けました。そこに裕子は座ります。 二人の太ももが密着するかどうかという距離を空けて。 「う・・・・・・」 裕子の行動に男性は戸惑ってしまい、弁当を食べる動きが緩慢になりました。 それを見て取った裕子は、すかさず男性に話しかけます。 「私、裕子っていいます。お名前教えてもらっていいですか?」 「荒川修二です」 「私ここでバイトしてるんです。荒川さんはなんのお仕事をしてるんですか?」 「そこの高校に今年から教師として赴任しました。今日は残業していたら いつもより遅くなってしまってこんな時間になっちゃったんですよ」 「高校の先生ってやっぱり大変なんですね」 あっさりと男性の名前・おおよその年齢・職業を聞き出しました。 たたみかけるように裕子は次の行動を開始します。 59 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 13 02 ID dy7nRHr9 「あ。動かないでくださいね。ご飯粒が・・・・・・」 「うわっ!」 裕子がご飯粒をとろうと体をくっつけてきたので、修二はまた慌てました。 豊満なバストの谷間に左腕が埋まってしまったからです。 ご飯粒を取ろうとして動くたびに大きな胸が形を変えます。 「ああん、動かないで。取れないですよ」 「いや、どこについてるか言ってくれたら自分で・・・・・・」 「いあ・・・・・・ん。むぁ・・・・・・そんなに抵抗しないで。私・・・・・・」 「へ。あ! すいません!」 「あ、取れました」 今度はご飯粒を指に取り、修二の目を色っぽく見つめながら口に含みます。 ぺろり、と。 裕子はここまでの一連の行動で修二を完全に手玉に取ってしまいました。 しかし続けて攻勢にでることなく・・・・・・ 「それじゃあ隣、ありがとうございました。 またお店に来てくださいね! バイバイ修二さん!」 「え・・・・・・あ、はい。さようなら・・・・・・」 修二の隣から立ち上がり、その場を立ち去りました。 修二はおあずけを食らった犬のように物足りない顔をしています。 「・・・・・・なんだったんだあの人・・・・・・」 ちょっと興奮してしまった自分を恥ずかしく思いながら、修二は弁当の残りを 食べ始めました。 60 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 13 44 ID dy7nRHr9 その夜、修二が電車に乗って家に帰り着く頃には十時を回っていました。 部屋に入った修二はすぐにシャワーを浴びにいきました。 「・・・・・・ふう」 シャワーを浴びながら修二は今日あったことを思い出していました。 (今日はいつもより長く残っちゃったけど・・・・・・いいことがあったな。 裕子さん・・・・・・結構美人で、なにより胸が・・・・・・) 左腕に胸を押し付けられたときの感覚を思い出すと気分が昂ぶってきました。 そのとき。 がたん (―――っ!) 部屋の方から音がしました。 まさか泥棒?鍵はかけたはず。いやしかし開けようと思えば本職の強盗であれば 簡単に開けられる。忍び込まれたかもしれない。嫌な想像が頭をよぎります。 シャワーを止めて、入り口から見えない場所に隠れながら耳を澄まします。 ですが、一向に音が聞こえてきません。それどころか人の気配すらも感じられ ません。 静かに浴室から出て、バスタオルを体に巻いたまま部屋を覗きますが、何も 変わった様子はありませんでした。 「なんだ。音がしただけか。びっくりさせないでくれよ」 そう呟いてから体を拭き、寝巻きに着替えると歯磨きをせずにベッドに 倒れ込みました。 「今日はいつもと違うことばっかり起こったなあ・・・・・・」 そしてそのまま胸の大きなコンビニ店員の女性のことを最後に思い出してから 眠りにつきました。 61 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 14 33 ID dy7nRHr9 深夜。修二はなんとはなしに目を覚ましました。 枕元の時計を見ると夜の二時。まだ眠り始めて三時間しか経っていません。 もう一度目を閉じました。 ・・・・・・・・・・・・。 ごそ ごそ する する (・・・・・・ん?) ベッドの下からかすかに音がしました。衣擦れのような音が。 そういえば以前『ベッドの下に殺人鬼が潜む』という都市伝説を聞いたことが ありました。もしや・・・・・・と思って耳を澄ましますが、しばらく待っても何の音も 聞こえてきません。 自分が動いたときに布団が衣擦れの音をさせたのだろう。都市伝説なんか 所詮作り話だよ。そう納得して眠りにつきました。 ―― 『修二さん。私、私ね・・・・・・今日、一目あなたを見たときに恋に落ちちゃった みたいなの。こんなの初めて』 修二は巨乳の女店員が出てくる夢を見ていました。 『信じてもらえないかもしれないけどね・・・・・・私、今まで男の人と付き合ったこと、 一度も無いの。 だから、ちょっとだけ不器用なアプローチしちゃうかもしれないけど許してね』 そう言うと女の子は修二の唇に顔を寄せてきました。 その唇と修二の唇が近づいていきます。 『修二さん・・・・・・』 ―― 「ちょ、ちょっと! 裕子さん待って!」 修二は叫びながら飛び起きました。 ・・・・・・・・・・・・。 自分が見た夢の内容を思い出して、頭を抱えています。まさか昨日初めて会った 女性の夢を見てしまうとは。しかもいきなりキスを迫られるなんて・・・・・・。 「大学卒業してから彼女なんかいないけど、いくらなんでもこれはなあ。 ・・・・・・・・・・・・はあ。仕事行くか」 すでに時刻は朝六時。 修二は気分を入れ替えて学校へ向かうことにしました。 62 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 15 29 ID dy7nRHr9 その日の満員電車の中にて。 修二は勤務先の学校へ行くために今日もいつも通りの電車に乗り込んでいました。 去年の春から毎日のように乗り込んでいるので、すっかり我慢も覚えました。 そう。今のように女性と間違われて痴漢されてしまっても、我慢できるのです。 すり すり すり 「(うええ)・・・・・・」 痴漢がお尻を触っています。両手で太ももと臀部を揉んだり、さすったり。時々 痴漢が下半身を擦りつけて来たりします。 やめてくれよ・・・・・・俺は男なんだから。そう思っても痴漢は察してはくれません。 今度は前のほうに手が回ってきました。股間を探るように執拗に触ってきます。 今まで触っていた相手が男だということを確認しているようです。今までに女性と 間違われたときはこの時点で終わっていました。 ジィィィィィ (は!?) しかし、今回の相手は違いました。なんとスラックスのチャックを下ろしたのです。 そのまま下着の上からペニスを撫でてきます。 この時点で修二にも限界が来ました。ペニスを撫でている痴漢の手を掴み、その手を 見て――最初に浮かんだのは疑問でした。その手は男にしてはやけに細かったのです。 (女の人の手?) ということは痴漢ではなくて――痴女?そういえばさっきから背中に柔らかい二つの 感触がある。ああ、至福・・・・・・いや、それどころじゃない! 修二は混乱しています。男であれば駅に着いたときに駅員に痴漢として突き出せば いいのですが、今回の相手は女性です。それにそのまま握っていれば自分が痴漢扱い されかねません。 修二がその手を離したとき。 ぷしゅーーーーーーー 電車が駅に到着し、ドアが開きました。そしてそのまま人の流れに押されてホームに 投げ出されました。 辺りを見回してもすでに誰が同じ電車に乗っていたのか分からないほどごったがえして いたので、修二は痴女探しを諦めました。 ふと気がつくと、数人の女子高生が自分の方を見てくすくすと笑っています。なにやら 下半身に目がいっているような―― (いいっ!?) さっき痴女にチャックを下ろされていたことを忘れていました。修二は慌ててチャック を上げて、下を向きながら恥ずかしそうに早足で歩き出しました。 63 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 16 14 ID dy7nRHr9 時刻は変わって、夜八時。 アルバイトを終えた裕子はコンビニの外に設置してあるベンチに座って修二を待って いました。今日は修二がお店に来なかったので、昨日より遅い時間にやってくると思い 待ち伏せているのです。 (早く来ないかな修二さん。たくさん話したいことがあるんだから) それに今日は渡したいものがありました。バレンタインデーのチョコレートです。 なんと彼女は会って二日目で修二に愛の告白をしようと考えていたのです。 「(もしOKをもらえたら家に連れ込んで・・・・・・)うふふふふふふふふ」 何を想像しているのかはわかりませんが、不埒な想像をしているのは間違いありません。 身悶えしながら笑い声をあげているということはきっとそういうことなのでしょう。 しかし10分、30分待っても修二は現れません。これはもしかしたら今日は会えないかも。 そう裕子が考えたとき――口論しているような声が聞こえてきました。 その声が聞こえてくる場所へ向かうと、修二と数人の男が向かい合っていました。しかも 男の一人は修二の胸倉を掴んでいます。 (あのアホザルども! よくも修二さんに!) 頭に血が上ってそのまま乱入しようと思いましたが、思い留まりました。 相手は男三人。彼女一人が加勢したところで状況は変わりません。しかし。 (このまま見過ごすなんてできないわ! 待ってて修二さん! すぐ戻るから!) 裕子はひとまずその場に背を向けて立ち去りました。 64 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 18 13 ID dy7nRHr9 とりあえず前編投下終了です。 本当はこんなに長くするはずじゃなかったんですけどね。 後編はまたあとで。多分夕方になります。 65 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 18 29 ID m5YUejK5 リアル遭遇 66 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 20 15 ID sR1tpHco GJ!後編楽しみにしてます! 67 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 00 31 47 ID 3wpUmH2H 後編楽しみにしてます。 もうチョコは諦めましょ…orz 68 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/14(水) 02 20 42 ID nhia5pcM 67 あきらめるのはまだ早いぞ! きっとすてきなヤンデレが今日の帰り道に…… 69 名前: ◆choco.get. [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 02 57 09 ID acjIks4q 皆、今日はこのトリを付けようぜ。 つ【#h|,yJ6n 】 70 名前: ◆choco.get. [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 04 12 02 ID 4m57XWYr 関連スレ候補 ほのぼの純愛 9スレ目 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171372657/ 71 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 37 11 ID nKGnbif8 チョコが貰えないなら自分で買えばいいのよ。 では投下します。 72 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 37 47 ID nKGnbif8 コンビニ裏の空き地で修二は不良三人に因縁をつけられて絡まれていました。理由は 分かりません。ですが不良たちにとっては目の前にスーツ姿の男性がいたというだけでも 絡む理由になってしまいます。つまりはその程度の理由で絡まれていたのです。 不良たちは三人。それに対して彼の味方をする人間はいません。辺りは暗く、月明かり しか彼らを照らすものはありません。 (昨日から厄日続きだ。変なことばっかり起こる) 胸の大きいアルバイトの女性店員にくっつかれたり、その人が夢にでてきたり、朝から 痴女に会って、しまいには不良に絡まれる。修二は我が身の不幸を呪いました。 修二はすでにかなり弱っています。追い討ちをかけるように不良の一人が脅迫の言葉を かけます。 「はやく金を出せ。はやくしねえと二度と町を歩けなくしてやるぜ」 三人に囲まれながらそう言われたらどうしようもありません。 修二が諦めて財布を取り出したそのとき。 73 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 38 35 ID nKGnbif8 がたがたがた! がたがたがた! がたがたがた! がた! 何かが暴れているような音がしました。ドアを無理やりこじ開けようとしているような。 そして。 ばぁん! 大きな音とともにコンビニの裏口が開きました。 誰かが出てくる!不良たちは身構えました。何が来てもいいように。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 しかし、いつまで経っても裏口からは誰も出てきません。 「なんだよ脅かしやがって・・・・・・」 そう呟き裏口に背を向けた瞬間。 『お離し・・・・・・』 『お離し・・・・・・』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 女の声が聞こえてきました。 消え入りそうな声です。 しかし、その声はだんだん大きくなります。 『お離し・・・・・・ お離し・・・・・・・・・・・・ お離し・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 ・・・・・・・・・・・・。 『早く、お離し!!!!』 どばぁん! 怒鳴り声が聞こえてきたあと、裏口が勢いよく閉まりました。 ・・・・・・・・・・・・。 彼らが後ろを振り向くと、 裏口には白い服を着た女が立っていました。 74 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 39 16 ID nKGnbif8 『お離し・・・・・・』 ぺた・ぺた・ぺた 女はゆっくりと歩いてきます。 一歩一歩近寄るたびにぺた、ぺた、と音がします。 白い服はところどころ黒く汚れており、長い髪は顔の前に垂れ下がっています。 女は前かがみの状態で下を向きながら彼らに向かってきます。 ぺた・ぺた・ぺた ゆっくりと、ゆっくりと。 『お離し・・・・・・ お離し・・・・・・』 「こ、このアマ! なんのつもりだ!」 不良の一人が声を荒らげます。 恐怖に駆られないよう、必死になって虚勢を張っています。 「ふざけてるんならこの辺で――」 『ひああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああ!』 びたんっ! 叫び声を上げながら前のめりに倒れました。 倒れた勢いで両腕と長い髪を地面に投げ出しています。 ・・・・・・・・・・・・。 そのまま動きません。不良の一人が女に近寄ります。 しかし、すぐに女が体を起こしました。 がばあっ!! 「っ・・・・・・!」 体を起こした女の顔を見て四人は絶句し―― 「うぎゃああああああああああっ?!」 一拍置いて今度こそ悲鳴を上げました。 女の顔は赤く染まっています。 比喩ではなく、赤い絵の具をそのまま塗ったように赤く。 その顔に水に濡れた長い髪が貼りついて奇妙な模様を描いています。 目は瞳孔が開き、感情を宿していません。 そして額には二本の角が。 女は鬼の顔をしていたのです! 75 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 39 50 ID nKGnbif8 びだんっ! びだんっ! 女――いや、鬼は両手を使って動き出しました。 上体を浮かせて、腰から下はひきずりながら、不良たちに近づいてきます。 びだんっ! ずるり 少しずつ。 びだんっ! ずるり ・・・・・・ びだんっ! ずるり ・・・・・・ 少しずつ。 『お離し・・・・・・ お離し・・・・・・』 鬼はうわごとのように『お離し』と繰り返します。 その場に居た男四人は何のことを言っているか理解できません。 そのいでたちと、奇怪な動きは男たちの思考を完全に止めてしまいました。 「うああ・・・・・・」 『お離しいいいいいいいいいいいいいいっ!!』 ばんっ! ぶあっ!! 鬼が両手で地面を叩き、男たちに向かって飛び掛りました! 「ひいいいいいいいいいいいいっ!」 どちゃり! しかし、鬼の腕は不良の足を捕らえることなく空を切りました。 倒れながらも顔を上げ、叫び声をあげます。 『早く! 早く! 早く! 早く早く早く! 早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く! 早く! お離しいいいいいいいいいいいいいいいいっ!』 「!・・・・・・あ・・・・・・う・・・・・・ひ・・・・・・ う、うああああああああああっ!」 至近距離で鬼の顔を見せられ、同時に叫び声を浴びせられました。教師の胸ぐらから 手を離し不良たち三人は逃げ出しました。 76 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 40 30 ID nKGnbif8 修二は不良の腕から開放され、支えを失って尻餅をつきました。 「あ、・・・・・・ああ」 『・・・・・・・・・・・・ひひ』 鬼が声を漏らしました。 『ひあああああああっはははははははは! あはははははははは、はははははははは! きゃはははははははははははははははは、は、は』 おぞましい笑い声をあげた鬼が、修二を見つめています。 『ようやく、離したねえええええええええっ!』 ばんっ! 修二に向かって襲い掛かり、今度は空を切ることなく肩を掴みました! 鬼の顔が近づいてくる! 「ぎゃあああああああああああああっ!」 修二は悲鳴を上げて気絶してしまいました。 「あちゃあ。やりすぎちゃった・・・・・・かな?」 鬼は自分の顔を掴み、耳の後ろに引っ掛けていた輪ゴムを取り外しました。 現れたのは、裕子の顔。 鬼の正体は変装した裕子でした。 「そんなに怖かったかな? 節分用の鬼のお面と、汚れたボロ布の組み合わせって」 彼女はそう言っていますが、少しだけ違います。 その変装もそうですが、叫び声や動きが真に迫っていたからこそ不良たちは 逃げ出し、目の前にいる男性も気絶したのです。 「でも・・・・・・これはチャンスだわ。 最高よ。うふふふふふふふふふふ。 あっははははははははははははははは!」 鬼の面をしていないというのに裕子はまたしても笑い出しました。 ・・・・・・もしかしたら、あれは彼女の本来の性格だったのかもしれません。 77 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 41 13 ID nKGnbif8 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「う・・・・・・ん?」 修二が目を覚ましたとき、目の前は真っ暗でした。 「あれ? 俺・・・・・・あの時、鬼に食べられそうになって・・・・・・!」 自分の体が無事かを確認しようとしましたが、動けません。両手は縛られて頭の上に 回された状態で固定されていました。足首は縛られていて、股を開いた状態にされています。 「目が覚めましたか? 修二さん」 女性の声が修二の耳に届きました。その声を修二は聞いたことがありました。蝋燭に火が 灯り、女性の顔がぼんやりと見えてきました。 「もしかして・・・・・・裕子さんですか?」 「はい。覚えててくれたんですね」 「ええ。それはもちろん・・・・・・って! なんて格好してるんですか!」 「格好? 何も着てないだけじゃないですか。何かおかしいですか?」 裕子は一糸纏わぬ、生まれたままの姿で修二の目の前に立っていました。 細い足首と締まったふくらはぎ。肉感的な太腿から臀部へ続く緩やかなカーブ。芸術的な くびれを描いているウエスト。 そして芸術的なウエストの上には裕子の大きな身体的特徴である二つの大きな膨らみが。 とても扇情的な姿です。修二が今までに経験してきた女性たちの中でも彼女ほど美しい肢体 を持っている女性はいませんでした。 そのため、修二はその姿を見ただけで激しく興奮してしまいました。 「・・・・・・うふふ。修二さん。すっごく興奮してますね」 「え、何でそれが・・・・・・え、ええっ!」 修二も服を着ておらず、全裸の状態です。そのため彼の陰部が勃起しているのも裕子には 丸見えです。そのことに気づき慌てて隠そうとしますが――四肢を縛られていてはどうにもなり ません。 「隠さなくてもいいでしょう? これからすることを考えたら・・・・・・」 「何をするっていうんですか・・・・・・」 修二も当然気づいてはいましたが、一応とぼけてみせます。 「男と女が裸になって密室でふたりきり。何をするかなんて決まっているでしょう?」 78 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 42 01 ID nKGnbif8 裕子は薄く笑いながら修二に体を重ね合わせてきました。二人の手と手が、足と足が重なり ます。そうすると当然裕子の胸も修二の胸とくっつきます。修二は二つの乳房が潰されていく のを目にしました。胸にとても気持ちのいい感触が二つあります。 「裕子さん。離れて・・・・・・」 「正直になっていいんですよ? ほら、ここはとっても正直ですよ」 裕子が太腿で勃起した陰茎を挟んできました。素股の体勢です。 しかし裕子がその状態で全く動こうとしないので修二はだんだん物足りないものを感じて きました。とはいえ自分から動くこともできず、おあずけを食らった状態です。 「あれえ? 修二さんなんだかもぞもぞ動いてませんか? それに、またおっきくなってますよ」 「くう・・・・・・・・・・・・」 動きたい。けど自分から動くわけにもいかない。 どっちつかずの状態に置かれて修二は呻いてしまいました。 「動いてもらっても私はいいんですけど・・・・・・」 「え・・・・・・」 「でも先にやることがあるので、おあずけです」 そう言って裕子は立ち上がって床から何かを拾いました。黒い四角形のものです。かすかに 甘い香りがただよってきます。 「もしかして・・・・・・チョコレートですか?」 「はい。今日はバレンタインデーですから。今修二さんに食べてもらいたいんですけど。 いいですか?」 それを食べたらさっきの続きをしてもらえるかもしれない――そう考えた修二は答えました。 「・・・・・・構いませんよ」 「うふふ。じゃあ、さっそく・・・・・・」 裕子はチョコレートを修二の口に――入れることなく、自分の口に含みました。それから口の 中で咀嚼しています。 そして修二の顔に近づいてキスをしました。 「ん、んぅ・・・・・・」 「うむうう?! う、ぅぅぅ・・・・・・」 裕子が噛み砕いて溶けたチョコレートが修二の口内に注がれました。突然甘いものを口に 注がれて、大量の空気と一緒に飲み込んでしまいました。ごくり、と。 「はあぁぁぁ・・・・・・美味しかったですか? チョコレート」 「こほっ、こほっ ・・・・・・んん、・・・・・・ええ」 その答えを聞いて、裕子は満足そうな笑顔を浮かべました。 79 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 42 54 ID nKGnbif8 「続き。してほしいですか?」 修二は無言でうなづきました。それを見て、裕子は腰の上に跨ります。 「実は私経験したことないんです。だから・・・・・・」 「大丈夫ですよ。・・・・・・優しくします」 「いいえ。あ、それもですけど・・・・・・初めてをもらうんでしたら、 最後まで責任をとってほしいんです」 「え?」 修二の耳元に口を寄せ、ささやきました。 「結婚してください」 「・・・・・・はい?」 「聞こえませんでしたか? 最後まで責任をとるという意味で、 結婚してくださいって言ったんです」 修二はぽかんと口を開けています。まさか女性からプロポーズをされるとは思っていなかった ようです。 「私と結婚するのはいやなんですか?」 「いや、そんなことは無いです。でもそれだけの理由で決めるのは・・・・・・」 「・・・・・・もっとわかりやすく言った方がいいみたいですね」 裕子の声が半音下がりました。修二の首に手を当てながら言葉を続けます。 「殺されたくなかったら、結婚してください」 (え・・・・・・・・・・・・?) 「今自分の置かれた状況を理解できていますか? 手足を縛られているんですよ。 私がこのまま力を入れたらどうなるかは・・・・・・わかりますよね?」 軽く指に力を込めました。 「私は修二さんのことが好きです。愛してます。もうこの気持ちは止めようがありません。 それなのに、修二さんが受け入れてくれないんだとしたら・・・・・・生きていけません。 でも、一人で逝くのは寂しいから・・・・・・修二さんも一緒に連れて行きます」 「・・・・・・・・・・・・」 「返事は、YESですか? NO、ですか・・・・・・?」 修二は逡巡してその結果・・・・・・ 「YESです。・・・・・・僕も裕子さんのこと、好きですから」 命が惜しいので彼女のプロポーズを受けました。 80 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 43 44 ID nKGnbif8 その後で、二人は結ばれました。 「はああっ! もっとぉ! もっと突いてくださいぃ! ああ! おくに、奥に当たってるううっ! はぁあぁっ!」 裕子は獣のように修二の体を貪り、 「あ、・・・・・・ぐああ・・・、・・・まってゆうござ、ん。 も、じゅっがいめ・・・・・・あ、ぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」 修二は死にそうになりながらも彼女の猛攻に耐え抜きました。 本当はチョコレートを修二の体に塗りたくったり、裕子の胸を使って羨ましい事をしてもらった のですが、それはこの哀れな雄の心の中にしまっておいてここでは語らないことにします。 裕子はこのようにしてバレンタインデーに愛しの男性を射止めたのです。 ・ ・ ・ 「あの子たちも幸せになってほしいな・・・・・・」 監視カメラに映っているアルバイト店員の男の子と、彼をときどきちらちらと見つめている もう一人のアルバイト店員の女の子を見ながら女店長は呟きました。 男の子が女性客と話をしている姿を女の子はじーーっと見つめています。 「そうねえ。あの子にアドバイスしても面白いかもしれないわね」 あの男の子の鈍感さは異常だし。 言葉には出さずにそう思い、女店長は女の子にアドバイスするためにレジへ向かいました。 不器用な女の子の恋を応援するために。 81 名前:越えられない壁 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 44 44 ID nKGnbif8 そのあと。 「あ、ねえ! キミ!」 「ん? どうした?」 「お、お離しぃぃっ! がおーーーーっ!」 「・・・・・・鬼の面なんか被ってどうしたいんだ?」 「あ、あれ? ・・・・・・おかしいなあ。店長の話では気絶するはずなのに」 「お前は俺を気絶させてどうしたいんだ・・・・・・」 「うぅぅ・・・・・・キミなんか鬼店長に喰われちゃえーーっ!」 「なあっ!? 豆を投げるな! 痛い、痛いって!」 こちらの女の子は女店長のように上手くできなかったようです。 皆さんはこんな女の子がいたら気絶してあげてくださいね。 メリーバレンタイン! 越えられない壁・終 ---------- 終わりです。 ああ、最後はなんだかグダグダになってしまった・・・・・・ 自分でチョコ買ってくるよ ノシ 82 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 15 50 54 ID gomY7YCo 81 リアルタイムGJ!! まあ、お離しって言われただけで逃げちゃう不良はお話にならないな 83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 16 14 13 ID sR1tpHco 後編キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! GJ! 女店長さんは人妻なんですか!?(*´Д`)ハァハァ 84 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 17 47 58 ID D5SoExi7 ぐっじょぶ(*´ρ`*) 82 熟成されたヤンデレのオーラが出てたら結構怖いと思うんだが…… オーラがないと「お離し」が「お話」に聞こえたりなんかして……意味不明か。 85 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 18 11 15 ID ZzD7HcjX 三月兎/眠らないヤマネ バレンタインネタ描こうかと思ったけど誰もチョコを贈る場面が浮かばなかった……。 86 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 18 13 06 ID ZzD7HcjX いい加減リンク張り忘れるのをなんとかしろ俺……orz http //imepita.jp/20070214/653620 87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 18 42 46 ID EAK1qzXb __ __ ___ _ _ __ _____ ___ ___ ___ /.. | / / | / | | / ./ | / /__ __/ [][] _| |_| |__ _| |_ . / .| / / ../ / .| | / ./ / / / / | _ | |_ レ ~ ̄| / | / / / /. . .| |/ ./ ./ / | |___  ̄| | / / / /| | . / /| ..|/ // / / /. . . .| / / / \__| | |  ̄ /_ / | |_ / ./..| / ./ / / / / | / / |_| |__|. \/ . / ./. | / / / / /. / ... ..| ./ / / ./  ̄ / / / / ./ / | | / / ./ ./ / /. / | ./ / | |. / | 88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 18 44 45 ID NESgu9dX 83 しかし、随分凄い手で旦那さんゲットしてるなwww 89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 18 48 31 ID 0YzpXEKD 81 GJ!店長可愛いよ店長 86 相変わらずの高クオリティGJ! 90 名前:姉弟:バレンタイン by前スレ367[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 19 10 35 ID GS4dNN5H 佐藤育に取っては、バレンタインという行事は、年に一度のビッグイベントの一つだ。他はクリスマスと正月である。 なにしろ、バレンタインは時に秘めがちな思いを持つ女性には絶好の機会であり、自身の思いを確かめる重要なときであるからだ。 チョコを作ったり、買ったりする。そしてそこで思う。コレをあげていいのか、あの相手にと・・・。そう言う葛藤の中、自身の暴走や思いの強さを持って行動する。 そしてまた自分に気づく。その思いの弱さ。その思いの強さ。 育の思いは、当然強いものだった。 彼女が弟にチョコをあげたのは、中学1年の頃。授業で作ったのをあげたのが始まりだった。 それからはまるで惰性の様に続いているが、受け取る方はともかく、作るほうは真面目だった。 育は材料を買い、その梱包を一つ一つ解いて行った。銀紙を破り、チョコを砕く。溶かし少量のミルクを加える。 くどいチョコは好みではない。ミルクの味は強すぎない方がいい。彼女なりの経験から出された結論だった。 攪拌しているとき、育は少し振るえた。 日常の料理を作るではない、違う感覚。特別なものを作ってる自負。 弟にあげるチョコレート。 甘い甘い、私の味のチョコレート 佐藤伸がコンビニに久しぶりに入ると、店の一角にはチョコにチョコがあふれている事に気がついた。 腕時計を見て、なるほど、今日はそう言う日なのか。と理解する。2月14日。バレンタイン。 しかし、彼にとってバレンタインと言うものは、特別な意味を持たない。 幼少の頃から聞き及ぶ行事ではあれど、世間一般でその対象になったことはなく、自身もそれを当然と捕らえていた。 ただ、バレンタイン戦車ってのがあったな。と言うのを思い出すための日。その程度の日だった。 ちなみに、彼がゴリアテ自爆有線戦車を思い出すのはなぜか9月1日である。 コンビニを後にして、車のイグニッションを捻る。直6シングルカム3キャブレターのエンジンがうなりをあげる。 つながる綺麗な音。ロータリーなどとは違う回転感。やはり直6はいい。ココロが洗われる。 時計を見れば夜の7時。 今日がバレンタインと言うことならば、姉はチョコを作って待っているということになる。 こう言う日は何かと早めに帰った方がいいのだが。伸はS30Zに耳を傾けた。 普段は変化の無い顔を少し笑わせる。少し乗ろうか、首都高に。 91 名前:姉弟:バレンタイン by前スレ367[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 19 12 28 ID GS4dNN5H 7時50分頃。 そろそろ弟が帰ってくる頃だと、育はエプロンを脱いだ。 家事を一段落下と言うことで、椅子に座り、安堵のため息を付いた。 テーブルには夕食がすでに準備してあり、チョコレートも冷蔵庫に叩きこんである。 残念だが、漫画のような「私を食べて」などという事はしない。溶けたチョコは熱いのだから。 そんな事を考えていると、携帯のアラームが鳴った。午後8時。普通なら、もう帰って来ているはずだ。 仕事や渋滞で遅れるときは事前に連絡してくるから、そう言うことではないのだろう。 でもまだ帰ってこない。 メールを打つ。いまどこにいるの? 数分後、メールが来る。今帰ってるところ。 早く帰ってきて。 なるべく速めに帰る。 一度携帯を畳む。 聞こえないはずの、秒針が動く音が聞こえる。 カチ、カチ、カチ・・・・。 ちょっと遅くないかな? カチ、カチ、カチ・・・・。 おそいよ。 カチ、カチ、カチ・・・・。 おかしいよね。こんなに遅いんだから。 もう一度メールを打つ。 誰かとあってるの? 否、帰り道に居る。 カチ、カチ、カチ・・・・。 やっぱり遅い。 カチ、カチ、カチ・・・・。 遅いよ。遅い。 カチ、カチ、カチ・・・・。 遅い。 遅い。 遅い。 遅い。 遅い。 92 名前:姉弟:バレンタイン by前スレ367[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 19 13 55 ID GS4dNN5H ひどいよ。お姉ちゃんはこんなに待ってるのに 聞きなれた音が、育の耳に入った。 今の車ではない特徴的な音。 弟が乗っている車の音だった。 やっと帰ってきた。 でも駄目、こんなに遅いんだもん。 少し、叱らないとだめだよね。 そう思って、育はフラフラと玄関へ歩いて行った。 時計は8時6分を指していた。 ヤンデレと言うよりは、メーンヘルして来た気が・・・・。 スイマセン、板違いかも知れませんね。 それでは 93 名前:前スレ367[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 19 15 45 ID GS4dNN5H そうそう、姉からチョコ頂きました。 リアルで 94 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 19 31 20 ID dy7nRHr9 スリルライダー(仮)の人ですね。グッジョブ! 車好きの匂いがプンプンします。 あと、次回からトリップつけてもらえると嬉しいです。 93 姉は高確率でくれますよね。 まあ、うちのはキモ姉じゃありませんでしたが。 95 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 19 32 07 ID ZzD7HcjX 俺も。 その後二人でチョコ食った。 ……おかしいな、彼女いるのに彼女とは会ってすらいない……。 96 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 19 38 07 ID 7yfauPfh 95 大丈夫だよ。きっといつの間にか後ろにチョコとバールのようなもの持って立ってたりするよ。 97 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 19 39 09 ID SVZ16bUg 95 後ろを向いて見て!きっと生き霊だか思念だかがあなたをつつんでるよ! 98 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 21 34 55 ID sR1tpHco 前スレ367氏GJ! キモ姉育かわいいよ(*´Д`) …ついさっき、ハサミ落として足の甲にぶっ刺して一人で流血沙汰の俺……痛いよー 99 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/14(水) 23 21 19 ID 3wpUmH2H 81 旦那も逃げないんですねw 92 姉は今頃何をしているんだか…。 明日にでも一日送れのバレンタイン短編書きたいです。 無理でしたらごめんなさい…。 100 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 23 24 52 ID ZzD7HcjX 99 期待して待ってる。 101 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 23 26 41 ID WcOgEC9V さっき発作的に書き始めたバレンタインSS完成したので投下しまーす どうだろう、キモウトではあるけどそんなに病んでないかも・・・ 102 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 23 27 14 ID WcOgEC9V 玄関の扉が開閉する音がして、針先のように研ぎ澄まされていたわたしの集中は、やや散ることになってしまった。 といっても、それで都合が悪いわけじゃないんだけれども。 ちょうど味の調整を終えたところだったし、何より、集中したままで兄さんの帰宅に気づかないものなら、妹の沽券に関わるというものだ。 わたしはコンロの火を止めて、玄関まで小走りに移動した。 「お帰りなさい、にいさん」 常々心がけているように、わたしの用意できる最高の笑顔で、世界で一番大切な人をお出迎えする。 もっとも、兄さんの前なら、そう意識するまでもなく自然と笑顔になれるけれど。 「お、いつもより早いんだな」 兄さんもまた、笑顔で応じてくれる。いつものことだけれど、やっぱりうれしい。 ふわりと温かくなるわたしの心はしかし、洗濯物に落ちない染みを発見したときに似た不快さに襲われた。 いつもより少し浮かれた、兄さんの態度。 言うまでも無く、兄さんが浮かれること自体が不愉快なわけじゃない。兄さんがうれしいときは、大概わたしもうれしい。 だけどやはり、何にでも例外はあるもので。 兄さんの明るい態度が、何やらいびつに膨れたカバンの中身にあるとなれば、わたしとしては嬉しがってなんていられない。 というか――切れて、しまいそうだ。 誰の許可を得て、兄さんにチョコレートなんてあげたんだ、淫売どもめ。 例年通りなら、兄さんの消化器官を汚染するこの汚物は、わたしが責任持って闇に葬ったのだけれど、今日は早退したから……。 ――ああ、忌々しい。 靴を脱いでいる兄さんの背中を眺めながら、わたしは考える。 いくら今日をもってわたしの永久的勝利が確定するといっても、あのメス豚たちの目論見をかなえてやるのは些か以上に不愉快だ。 ごめんなさい兄さん、ちょっと意地悪をさせてもらいます。 「ねえ兄さん、今日ってバレンタインデイだよね?」 「んー? ああ、そうだな。ふふふ、そうだともさ!」 兄さんの声は弾んでいる。その原因を思うと、わたしの中の深淵から何かが這いずり出てきそうになるけれど、ここは我慢。 「バレンタインデイの豆知識、教えてあげようか」 靴を脱いで、廊下に上がった兄さんの後ろについていきながら、わたしは言う。 軽く首をかしげて、兄さんは、 「豆知識? ふうん、もう節分は終わってるけどな」と言った。 いや――それ上手くないよ、兄さん。 およそ天から必要なものは全て授けられている兄さんだけれど、ギャグセンスはもらえなかったらしい。 「そう豆知識。ジャニーズ事務所にはね、それこそトラック何台って単位のチョコが届くんだけど、誰も食べたりはしないんだって。 ……どうしてだと思う?」 リビングに入った兄さんは、いつもより丁寧にカバンをソファに置いて、照明を仰いで慨嘆する。 「もったいねー! 愛情こもったものを無碍にするとは! そりゃ、一人頭でも糖尿病になっちまうくらいの量あるんだろうけどさあ」 どすっ、とソファに腰を下ろし、さも嘆かわしいといった顔でこちらに一言。 「やっぱ、あれかな。ファンの作ったものなんざ食えませんな! フハハ下賎な端女どもめ! みたいなノリなのかね」 わたしは苦笑する。顔も見たことの無い女の子たちの愛情の行き場なんて、心配しなくたっていいのに。そういうところ好きだけれど。 「さあ――そこまで酷いことを思ってるかはわからないよ。では正解を発表するね」 103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 23 28 22 ID WcOgEC9V 台所に戻りつつ、歌うように言う。 「色々入ってるケースが多いから、なんだってさ」 色々……? と、よく分かってない様子の兄さんの声を背に受けながら、わたしは正答を述べる。 「髪の毛、爪はまだ序の口。涎に血液、果ては……えっちな液体までが、チョコに混ぜられてるんだってさ」 自分で振ったネタでアレだけれど、最後はちょっと恥ずかしかった。不覚。 そんな羞恥心はさておき、ここで芸能界という異次元の話題を現実世界に繋げる台詞をいわなくちゃ。 でないと、それこそわたしのかいた恥はただのかきっ放しになってしまう。 「――好きって感情は往々にして自己満足に陥るってこと。きっとわたし達の学校でも、そういうことは確実にあるよ。 ところで兄さん。チョコもらえた?」 わたしはくるりと振り向いて笑顔を向けた。 兄さんは自分のカバンに目をやっている。狙い通り。 「ああ、もらえたよ……3つ。でもまさか、これになんてことは無いだろ」 ここは肯うところだろう。わたしはそう判断した。 「もちろんだよ。兄さんに贈る人だもん、常識くらいあるよ――」 ――食べてみないことには、分からないけどね。 そう付け加えることは、忘れなかったけど。 「だよな。心配なんてするまでもないわな……」 わたしは、この急ごしらえの稚拙な策が完璧に奏功したことを悟った。 兄さんの声からは、台詞とは裏腹に、さっきまでの高揚が見事に消えうせていたからだ。 「ごめんね、兄さん」 台所に向き直り、湯煎したチョコを型に流し込みながら、わたしは小声で呟く。 いくらメス豚どもの作った、飼料に等しいチョコでも、やさしい兄さんにとっては嬉しい贈り物だったのだろう。 受け取った高揚を冷ましてしまったのはちょっと心が痛まないでもない。 けれど、全然問題ないんだよ、兄さん。 じきに、どんなものも比較にならない幸せが兄さんのもとに到来するんだから。 だってそうじゃないかな。 兄さんは今晩、わたしを抱くんだから。 わたしのまだ誰にも手をつけられていないカラダを、好きなようにできるんだから。 常識者の兄さんでも我慢できなくなるようなキツい媚薬をたっぷり入れられたチョコだもん、わたしを襲ってくれるよね? 効果はわたしで実証済み。怪しげな通販で買ったものだから不安だったけど、効果はてきめんだった。 ……ちょっと、てきめん過ぎたかな。 一時間で20回もイッちゃったの初めてだから、だいぶ焦ったよ。 でも、これくらい強烈なのじゃないと、理性の壁は壊せないから結果オーライ。 チョコの味が壊れないように、こっそり早退してからずっと味の調整を続けてきたけど、ようやくさっき完了したし。 まあ、何度も味見したものだから、わたしのあそこはすっかりぐちゃぐちゃになっちゃったけど……。 「…………」 ちら、と振り返って、兄さんがこちらに意識を向けていないのを確認してから、スカート越しにあそこを触ってみる。 指先が二枚の布越しに、わたしの硬くしこった肉芽にちょこんと触れた。 「――ひっ、――――っ――――――――――――――♪」 がくがくがくっ、と膝が笑った。 「ちょっ、と……出ちゃったじゃないの……っ」 おしっこじゃなくて潮でよかった。というか効果強力すぎ。そしてわたしは浅慮すぎ。 よく考えれば、夜になれば兄さんからたっぷりしてもらうのがほぼ確定してるのだから、ここで浅ましく快楽を貪る意味はない。 たくさんほじってもらえるんだ。奥までぐりぐりしてもらえるんだ。 その想像でまたわたしは達しかかったけど、今度は自制して、チョコを冷蔵庫にしまう。 固まるのを待って、ラッピングして、それで完成だ。 髪や爪をいれるような自己満足ののものとは一味違う、わたしのチョコ。 共利共栄の一品だ。 ひとたび食べれば、わたしも――兄さんも大満足である。 104 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 23 29 00 ID WcOgEC9V リビングに戻り、わたしは兄さんに問いかけた。 「あとでわたし特製のチョコレートを差し上げます。楽しみ?」 兄さんはだいぶげんなりした顔になる。 「お前ね。さっき自分がした話、覚えてるか?」 「あはははは、タイミング悪かったかな。でも大丈夫。いかがわしいものなんて、何にも入ってないからね! 原材料は、砂糖、カカオマス、ココアバター、バニラ。まさにチョコレートそのものだよ」 あとは、隠し味。 「隠し味ぃ?」 訝しげな顔。ちょっとさっきの薬が効きすぎたかな。まあ、食べれば気にならなくなるよ。 「そう。たぁっぷりの、愛情!」 そして、たぁっぷりの、媚薬。 105 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 23 55 17 ID OGmIT4jF 妹描写の秀逸さに鼻からチョコ吹き出した エロい!キモウト! 106 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 00 03 59 ID 0bxx7mci 104で終わりなのか、コレ? 107 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 00 58 53 ID OBfj+6I8 GJ!キモウトエロかわいいよ! 続きあるのかな? 108 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 01 18 ID Cp9k98Uq GJ!!!!漏れもこんなキモウト欲しい・・・ あーあ どっかにキモウト落ちてねーかなー 109 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 47 11 ID ZcwGpxUe 時期ネタ無視してしまいましたが…… いない君といる誰か、投下します 110 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 47 57 ID ZcwGpxUe 蛆虫が湧いてくる。 ぞわりぞわりと、肌を這うようにして蛆虫が生まれてくる。手錠で欝血した手首を食い破っ て、化膿にした肉を食料にして、ぞわり、ぞわりと、蛆虫がわいて出てくる。皮膚を一枚また 一枚と食い破られる感触。繊維をちぎりながら肉の中を這う感覚。 幻覚だ。 幻痛だ。 そんなものが生まれるはずがない。まだ一日しか経っていない。この暗闇の地下室に閉じ込め られてから、一日と経っていないはずだ。その期間で蛆虫が生まれるような怪我はしていない し、欝血する手錠もきつくない。光一つない地下室の中にいるせいで、想像力が暴走している だけだ。 そう、わかっている。 わかっているのに――否定できない。 繋がれている腕が見えないせいだ。暗闇の中では、何も見えないせいだ。視覚が閉ざされて いる分、他の感覚が鋭敏になる。想像力が膨大になる。このまま狂ってしまいそうになる。 自分が狂っているのか、狂っていないのか、判断さえできなくなる。 暗闇の中で『何もない』というのが、ここまで心にくるとは思わなかった。 考えること以外に何もできないせいで――思考だけがどこまでも暴走しそうになる。 狂って、しまいそうになる。 まだ、一日しか、経っていないのに。 いや。 本当に、一日しか経っていないのだろうか。 暗闇の中。太陽の光も、時計も、何もない。そんな中で、精確な時間なんて分かるはずもな い。まだ五分しか経っていないのかもしれないし、すでに何日も過ぎているかもしれない。神 無士乃はあれから一度もやってきていないし、点滴をつけられていることもない。腹の調子か ら考えれば、一日と経っていないはずだ。 はず、だが。 自信は――まったく、ない。 いくらなんでも、こんな状況は初めてだ。クラスメイトに突然鋏を突きつけられるよりもあ りえない。幼馴染に、地下に監禁されるなんて。 そもそも……ここ、どこなんだ? 神無士乃の家に地下室があるなんて知らない――いや、そもそも。 僕は、神無士乃のことを、知らない。 如月更紗のことを知らないように。 姉さん以外のことに、興味がなかったから。 神無士乃が、僕の目の届かないところでどんな人間だったなんて、考えたことすらなかった。 「先輩。生きていますか?」 111 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 48 31 ID ZcwGpxUe 声がして。 顔をあげると、光があった。天井の一部がぱっかりと開いている。そこから漏れこむ光が、 地下室の一部を照らしていた。もっとも光の範囲が狭すぎて、奥につながれる僕のところまで は届かない。薄い光に照らされているのは、神無士乃の姿だけだ。 いつもの制服姿じゃない。デニムの短パンと、ノースリーブのヘソだしシャツ。夏らしい、 涼しそうな部屋着だった。 涼しそうという意味では、如月更紗には敵わないけれど。 澱んでたまっていた空気が、あいた天井から上へと抜けていく。けれど、新鮮な空気は降り てこない。扉が小さ過ぎて、遠すぎて、ここまで空気が循環しない。ねっとりと、空気が肌に 張り付くような気がする。 とん、とん、とん、と折りたたみ式の梯子を降りてくる神無士乃は、片手で器用にお盆を持 っている。上に皿が載っているが、この位置からだと中身は見えない。 食べ物、だろうか。 「ぎりぎりでな。あんまり大丈夫じゃない」 「それは大変ですね」 「大変だろう?」 「主に後始末をする私が大変です」 「…………」 さらりと酷いことを言う。 何の後始末だ、と聞くのは躊躇われた。答は一つしかないし、その答を想像するのが怖かっ た。 こんな地下室で朽ち果てるなんて、冗談じゃない。 「冗談ですよう先輩、そんな顔しないでください。私が、先輩に死んで欲しいだなんて思うわ けないじゃないですか」 笑いながら、神無士乃がとん、と地下室の地面に降り立つ。天井の扉は閉まらない。けれど、 電気をつけることもしなかった。明暗のはっきりした立ち居地。 神無士乃は、光の下に。 僕は、光の外に繋がれて。 別れて、向かい合う。 「うっかり死んじゃうかもしれないぞ」 「うっかりじゃ人は死にませんよ」 あはは、と神無士乃は笑い、 「でも、すぐに死んじゃうんですよね、人って」 笑ったまま、そう言った。 「…………」 それは、脅しなのか。 ただの、経験談なのか。 父親のいない、神無士乃の、経験談なのか。 それとも。 それとも――誰かを殺した、経験談なのか。 僕には、分からない。 112 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 49 45 ID ZcwGpxUe 「でも、先輩に死んで欲しくないから、こうしてご飯持ってきました。喜んでください、手料 理ですよ?」 「へぇ。神無士乃、お前料理作れたのか」 「お母さんの手料理です」 「お前のじゃないのかよ!」 思わず突っ込んでしまった。 その文脈だと、誰だってお前の手料理だと考えるだと……ていうか、そうじゃなかったらお 前、コンビニ弁当でも食わすつもりなのか。 ある意味お似合いのシチュエーションかもしれない。 地下室で、コンビニ弁当。 …………。 よく考えるまでもなくキャンプ場でフランス料理くらいありえない組み合わせだった。 「まあなんだって、食わせてくれるなら、食うけどさ」 「ええ。食べさせてあげます。ちゃんと、私が」 言葉と共に、神無士乃は笑う。 蜘蛛のように。 絡み付くような、笑みだった。 「……手錠解いてくれたら、自分で食べるんだけどな」 「あららー、駄目ですよ先輩」 笑みが深まる。 神無士乃は一歩こちらへと近づきながら、逃げることもできない僕へと近づきながら、 「そんなことしたら、先輩、逃げちゃうでしょう?」 「…………」 「私、先輩がどんな人間か、ちゃあんと知ってますもん。もし両手が自由になったら、先輩、 私なんてこきりとやっちゃいますよね」 「やらねえよ」 こきりってなんだ。 お前の想像の中の僕は、平気で首でも折る人間なのか。 首でも――斬る人間なのか。 「そんなこと……するやつがいるはずないだろ。他人を殺す人間なんてそうそういないぞ。人 間の命ってのは大切なものでな、それをあっさり消せるなんて――」 「頭の壊れた人間にしかできない、ですか?」 僕の言葉を遮って、神無士乃が言う。 核心的に言って、確信的に笑う。 「狂気倶楽部の人間みたいに、ですか?」 「――――」 空気が、固まった気がした。 どうしてお前がその名前を、という疑問と。 まさかお前も、という疑問が浮かんでくる。 113 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 50 25 ID ZcwGpxUe 狂気倶楽部。 狂人たちのお茶会。まともでいることのできなかった少年少女の最後の拠り所。終着駅。終 了地点。行き詰り生き詰まった子供の溜まり場。底の抜けた楽園の底。 姉さんがいた場所。 如月更紗がいる場所。 「お前は……」 お前は。 お前は何だというのだろう。何と言おうとしたのだろう。 けれど、そこから先の言葉は出てこなかった。何を聞こうとしたのか、心中でもはっきりと しない。気付けば、そう言葉が出ていただけだ。 僕の表情から何かを読み取ったのだろう。神無士乃は笑い、 「先輩、安心していいですよ。私は、あんな狂ったヒトタチとは違いますから」 「お前は――違うのか?」 狂ったヒトタチと違う。 そう、神無士乃は言う。 この状況のどこをもってして、何が違うのか、僕には分からない。 狂人は狂っていることを認めないという、例のアレだろうか。 「神無士乃。お前は、狂気倶楽部の人間じゃ、ないのか?」 どうにか、その質問が、カタチになった。 狂気倶楽部は狂人の行き着く果て。ならば、こんなことをしでかす神無士乃が所属していて もおかしくはない。狂気倶楽部は秘密主義だから、幾ら幼馴染とはいえ、気付かなくてもおか しくはない。ましてや、神無士乃に対する興味なんて、ほとんどなかったんだから。神無士乃 の正体がチェシャでも、僕は驚くだけで、その後で納得しただろう。 けれど。 「まさか」 即答した。 神無士乃は、即座に、首を横に振った。 「あんな狂ったヒトタチと――一緒にしないでください。あんな弱いヒトタチと、一緒にしな いでください」 「…………?」 前者は分かる。 狂ったヒトタチ、といわれるのは仕方がない。姉さんを思い出しても、如月更紗を思いうか べても、否定などできない。 後者は、どうなんだろう。 弱いヒトタチ。 姉さん。 神無士乃。 アリス。 弱い――? その言葉は、到底結びつかない気がした。 僕の疑問に気付かず、神無士乃は、うっとりと、僕を見つめて言った。 「私はただ、先輩が好きなだけです」 114 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 51 03 ID ZcwGpxUe 「…………」 「それ以外に、必要なものなんてないんです。あのヒトタチみたいに、どうしようもなくなっ たヒトタチが群れるなんて、私にはいらないんです。私には先輩がいればいいし――」 ――先輩には、私だけがいればいいんです。 そう、神無士乃は言葉を結んだ。 笑顔のままに。 本心を、吐いた。 「お前だけの、僕か」 「そうです。でも、先輩はお姉さんのものでしたよね。里村春香さん」 「…………」 その通りだ、と心の中で思った。 僕は姉さんが好きだった。 姉さんも僕を必要としていた。 少なくとも、姉さんが『三月ウサギ』になるまでは。 「それはまだ良かったんです。先輩とお姉さんはがっちりかみ合ってて、それで一つのモノで したから。お姉さん以外に何も持たない先輩の――一番でいれれば、それでよかったんです」 よかったんです、と。 過去形で、神無士乃は言う。 その意味に、僕はもう気付いている。次に誰の名前が出てくるのか知っている。 「あの女が――出てくるまでは」 神無士乃の言葉は、予想の通りだった。 「横からいきなり出てきて……とんびみたいに、先輩を攫っちゃおうとしました。いきなり出 てきて酷いですよね。私なんて、何年も何年も、ずっと先輩の側にいたのに。お姉さんがいな くなって、その代わりに、先輩と一つになろうと思ってたのに」 神無士乃は笑っている。 その笑いは、少しもおかしくない。 光の下、心冷えるような笑みを浮かべて、神無士乃は立っている。 「横から攫われるなんてごめんです。だから――私が先に、攫わせてもらいました。こうすれ ば、先輩にあの女に近づくことがないですから」 「それが……お前の善意か?」 「いえ、恋心です。ほんとは、もうちょっとロマンチックな告白がしたかったんですけど」 「地下室で鎖につながれた相手に告白するのは、結構ロマンチックだと思うけどな」 「むしろマロンチックって感じですね」 「栗っぽいのかよ……」 「刺々しい先輩にぴったりですね」 「上手いこといったつもりか!」 というか、ただの皮肉じゃねえか。 うまくもなんともねえ。 115 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 51 38 ID ZcwGpxUe 「でも安心してください先輩。あの女からも、アリスとかいう人からも、私がちゃあんと匿 ってあげますから――守って、あげますから」 「…………」 守ってあげる。 身の安全を保証してあげる。 それは――如月更紗の言ったことだ。 如月更紗が言ったことと、同じだ。 似ている、のだろうか。この二人は。如月更紗と、神無士乃は。 僕のことを好きだといって。 僕のためだと言って。 動悸は同じだ。 行為は似ている。 けれど。 似ていても――同じだとは、思えなかった。 如月更紗のそれと、神無士乃のそれは、決定的に何かが違うような気がしてならなかった。 「そんなわけで、ご飯です」 かつん、かつんと、お盆を持った神無士乃が近づいてくる。その音で、彼女が靴をはいてい たことに気付く。 ……室内じゃないのか? 見れば確かに外靴をはいていた。地下室の床は冷たいから、そのせいだとも考えられるが ……ひょっとしたら、ここは神無士乃の家の地下ですらないのかもしれない。 じゃあどこかといわれたら困るけど。 光の下から、暗闇の中へと、神無士乃が踏み込んでくる。彼女の姿が曖昧になる。光を背に しているせいで、どんな表情をしているのか、よく見えない。 気付けば。 すぐ、触れそうなところに、神無士乃は座っていた。触れそうな、といっても、手は後ろで つながれているので、どうあがいても触れることはできないけれど。 薄暗い闇の中でも、ここまで近ければ、表情くらいはかろうじて分かった。 動けない僕を見て――神無士乃は、笑っていた。 嬉しそうに、笑っていた。 「はい、どうぞ」 「……。神無士乃、どうぞって言われてすむなら警察はいらないんだ」 「ここに警察はいませんよ?」 「警察と弁護士が必要な状況だとは思うがな。とにかく――どうやって食べろっていうんだ、 この状況で」 じゃり、と手を動かしてみる。触れた鎖が小さな音を立てた。 音を立てる程度にしか動かない。とても、前へと手を運ぶことはできない。せめて足の鎖が なければどうにかなったのかもしれないが――両脚はしっかりと木箱にくくりつけられていて 、足を閉じることすらできない。よく考えれば股間のアレは出っ放しなことを今更思い出す。 時間がたって萎えてしまったとはいえ、むき出しなのは流石に恥かしかった。 見ているのが、神無士乃だけだとしてもだ。 116 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 52 13 ID ZcwGpxUe 「あはは。言ったでしょ先輩、私が食べさせてあげますーって。もう忘れちゃったんですか?」 「ああ……そんなことも言ってたな」 「先輩……酸素欠乏症に……」 「マニアックを通り越してメジャーになったネタはいいから」 「フリマノリカル・クリプトノークにかかって……」 「マイナーすぎて突っ込みにくいネタはやめろ!」 なんでそんなマニアックな単語がさらっと出てくるんだ……ああそうか、一緒に見たからか。 こいつ、僕と一緒に過ごしたことなら、大抵憶えてるわけか。 些細なことであっても。 どうでもいいことでも。 一つ残らず。 「はい、あーん」 手に持ったシチュー――ジャガイモやらニンジンやらがごろごろと浮いている――を掘りの 深いスプーンですくって、神無士乃は僕の前へと差し出した。 食べろということだろう。 ごくり、と喉が鳴るのが分かった。考えてみるまでもなく、あの夕方から何も食べていない 。胃の中にはほとんど何も残っていないだろう。このまま放っておかれたら、まず間違いなく 飢え死にする。 あーん、と食べさせられるのは、屈辱的でもあったけれど。 それでも――空腹に、打ち克てるはずもなく。 「…………」 せめてもの抵抗で、神無士乃を睨むようにして食べる。もっとも暗くて、睨むように見ない とはっきりと表情が見えないのだが。 神無士乃は、笑っている。どこまでも楽しそうに。この状況を幸せだと感じているのだと、 彼女の笑みは物語っている。 スプーンが口の中に入る。微かに傾けられ、スプーンの中に溜まっていたシチューが注がれ る。ごくりごくりと、喉が勝手に蠢き出す。温いシチューは、けれど、何よりも美味しく感じ られた。空腹は最高のスパイス、というやつだろう。 「あんまり熱いと、火傷しちゃいますからね」 言って、神無士乃はスプーンを引き抜き、新たにシチューをすくった。そのスプーンから、 目を逸らすことができない。早く二杯目が欲しいと、喉が訴えている。 そんな僕の目を――神無士乃は、まっすぐに覗き込んでいた。 「もっと食べやすいようにしてあげますね」 悪戯っぽく、そう言って。 神無士乃は、僕の見つめるそのスプーンを、自身で咥えた。 「……!?」 お前が食べるのかよ、という突込みをしようとした。けれど、シチューを嚥下したばかりの 喉からは、ひぁ、という奇妙な音が出るばかりだった。 うまく、言葉が出せない。 117 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 52 52 ID ZcwGpxUe 神無士乃は僕の見る前で、ぬるりと、唾液に塗れたスプーンを引き抜いた。そのくぼみには もはやシチューは残っていない。 ――子供のような嫌がらせだった。 そう、思った瞬間だった。 「んーん」 あーん、と言ったのだろう。 その意味を理解するよりも早く――神無士乃は僕に覆いかぶさるようにしてキスをした。如 月更紗と同じように、自分から、強引に。けれど如月更紗よりも巧く、何よりも、目的が違っ た。 触れ合った唇の向こう、神無士乃の舌が僕の唇を上から割っていく。舌を伝うようにして降 りてくるのは、神無士乃の唾液と混ざり合ったシチューだ。 ――口移しで、食べさせようとしている。 口内へと侵入した舌が、ぐちょぐちょとシチューをかき混ぜながら奥へと進む。上から下へ と零れ落ちるようにくるせいで、喉に直接シチューと唾液が落ちていく。 神無士乃の一部だったものが。 僕の胃の中へ。 混ざり合うように。 溶けるように。 「ん……ん、ん……」 ねっとりと舌が蠢く。シチューを効率よく運ぶはずだったそれは、獰猛に僕の舌を絡め取っ ていた。目的と手段が狂っている。初めから狂っている。 何もかもが狂っている。 シチュー味のキスが長く長く続く。空腹が舌を動かす。ごくりごくりと喉が動き、より多く、 もっと食べたいと主張する胃が、舌を衝き動かす。シチューの染みた神無士乃の舌目掛けて、 意思とは関係なく僕の舌は進む。 ざらりと。 神無士乃の舌と、僕の舌が、からみ合う。舌の感触。舌に染みたシチューの味。 神無士乃の味。 姉さんのとも、如月更紗とも違う。 神無士乃との、キス。 地下室で鎖につながれた僕は、幼馴染と、シチュー塗れのキスをしている。 滑稽だった。 馬鹿馬鹿しい。 そしてそれこそが、今の現実なのだ―― 「ん……んぁ、」 神無士乃の舌が僕の口内から抜け出し、触れていた唇が離れる。つぅ、と シチュー交じりの唾液が糸を引いた。「おご馳走様でした」 どこか蕩けた瞳で、神無士乃はそういった。 幸せそうな、顔だった。 118 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 53 52 ID ZcwGpxUe 「ご馳走したのは……お前の、方だろう……」 息も絶え絶えに、僕はそう答える。やられっぱなしというのは性に合わないが――おなかが 減って力もでない。ましてこんな、吸い取るようなキスをされては、どうしても疼いてしまう。 昨日のあれを、思い出して。 「先輩……気持ちよかったんですね」 くすりと。 笑って、神無士乃の右手が走る。チャックの開いたままだった僕のズボンへと。萎えていた はずのそれは、今のキスで、硬さを取り戻している。 それをそっと、神無士乃は左手で握った。冷たくはない。どこか熱い感触があった。触れら れたことで、びくりと震えてしまう。刺激が脳まで一気に走る。それだけで達してしまいそう なほどに。昨日と同じことを、心のどこかで望んでいる自分がいた。 その全てを、きっと、神無士乃は把握している。 把握していて、神無士乃は、笑う。 「でも駄目ですよ先輩、今はご飯の時間なんですからね――」 そう言って神無士乃は、右手でシチューをすくい、再び自身の口にいれる。その間にも右手 離れない。ゆっくりと、時計の短針よりもゆっくりと、上下運動を始める。 股間に意識が集中し、 「ふぁひ、んーん」 意識の集中を奪うように、神無士乃の口移しが始まる。ゆっくりと股間を弄くりながら、獰 猛に舌が蠢き出す。両方からくる快楽が、脳を縛り付ける。 間近に見えるのは、神無士乃の笑い顔。 それ以外には――何も見えない。 何も、見えない。 結局、この日も達することのできないままに――拷問のような快楽は、シチューがカラになるまで続いた。 終わる気配を、見せぬままに。 119 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 02 57 42 ID ZcwGpxUe 以上で終了です。 ジャンル関係 狂ってるほど純粋に愛してて、両思いならなお良し……かなあ あんまり細分化しないほうが楽しめる気がします。色々内包。 伊南屋 氏 GJ! こんな日本人形があったら即買う あとヤマネがすごく可愛い。グリムとあわせていつか過去編を書こうかなあ…… 120 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 03 18 52 ID jl1vSxW7 119 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! GJ! やはりただ者ではなかった神無志乃の独占欲がステキです 121 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 04 56 37 ID IqXQXTK1 GJ すげえ、正気な人間が一人もいない(褒め言葉) 122 名前:慎 ◆lPjs68q5PU [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 05 41 41 ID DyjwA65W 書いてたSSのファイル消えたorz 119 いつもどうりすばらしい・・・GJ 神無志乃・・・恐ろしい子! 123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 08 01 08 ID Bqb7COKn 保管庫のBBSに姫野姉妹のイラストが投下されてた。 皆気づいてた?俺は今気づいた。 124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 08 15 44 ID HV5+WC/H やばい。 123の書き込み見てようやく気がついたぜ。 125 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 09 53 06 ID 0bxx7mci 119 GJ! これ置いときますね。 5月生まれの三月兎/須藤幹也 http //imepita.jp/20070215/354380 126 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 11 00 54 ID LH4E1jJ0 123 ちょっ………俺も気づいてませんでした。無駄に長文になるんであっちのBBSでレスします! お茶会の方 神無志乃は本当に何者なんだ……あんなエロい食べさせ方はただもんじゃないですね! 伊南屋氏 GJ!!仕事の綺麗さ早さは見習いたい限りです…… 127 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 11 12 45 ID LH4E1jJ0 ……と思ったんですが携帯から書き込めないようなのでここで。 私信っぽく使って本当に申し訳ありません。 ……俺の通信環境が悪いんだろうか 描いてくれた方本当にありがとうございます!! 死ぬほど感激しました。真弓なんかイメージ通り過ぎて怖いぐらいです… ……でもごめんなさい、亜弓姉の髪は真っ黒なんです… 偉そうに注文つけて本当にごめんなさい…… 不快なんて本当にとんでもないです!!嬉しくて狂うかと思いました。 128 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 14 19 41 ID Bqb7COKn こんな感じでいろんなSSのキャラを描いてくれる絵師さんが 増えてくれたら嬉しいな。 ………と。 129 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 16 16 59 ID 6Dgs4qNv みんなに質問があるんだ 実は今日知り合いに線路に落とされかけたんだ。 ついでに死にかけた。 まあここまではどうでもいいんだが この時なんかが弾けてこの事件をベースに作品を書こうと思うんだ。 それでだヤンデレは泥棒猫や主人公を線路に突き落とすのは入るか? 130 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 16 51 26 ID 1SykPIUw 1、泥棒猫を突き落とす→修羅場スレ向け 2、独占欲や嫉妬心が強すぎず、ただ純粋に主人公の事が好きな女の子を突き落とす→ギリギリヤンデレ? 3、主人公を永遠に自分の物にするために突き落とす→ヤンデレ 4、主人公と二人だけの世界を創るために、二人で飛び降りる→ヤンデレ!!! 1の場合は修羅場スレ向けになるので要注意。 131 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 16 57 34 ID 2GB3l3et >実は今日知り合いに線路に落とされかけたんだ。 >ついでに死にかけた。 >まあここまではどうでもいいんだが どうでもよくねえよww 132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 17 02 40 ID ey4itAyd 死にかけても「どうでもいい」の一言で片付ける 129の正体は須藤幹也君と予想 133 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 17 48 42 ID 6Dgs4qNv 縺セ縺よュ」逶エ驕九′濶ッ縺九▲縺溘s縺 蛹怜嵜縺縺九i髮ェ縺ァ關ス縺。縺滓凾縲∬。晄茶縺悟ー代@邱ゥ蜥後&繧後◆縺・ 關ス縺。縺溽キ夊キッ縺ォ繧・▲縺ヲ縺上k髮サ霆翫′譎ョ谿オ繧医j・大・縺サ縺ゥ驕・°縺」縺溘@縺ュ縲・ 縺薙%縺ョ菴丈ココ縺ッ縺ソ繧薙↑縺・>螂エ縺縺ェ縲√%縺ョ縺薙→繧堤衍繧雁粋縺・◆縺。縺ォ隧ア縺励◆繧峨梧ュサ縺ュ縺ー濶ッ縺九▲縺溘・縺ォ縲阪▲縺ヲ縺・o繧後◆縺・ 蟆代@諢溷虚 菴懷刀縺ォ縺、縺・※縺ッ縲∝ョ梧・縺セ縺ァ譎る俣縺梧寺縺九j縺セ縺吶・縺ァ譛溷セ・○縺壹↓蠕・▲縺ヲ縺ヲ縺上□縺輔> 134 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 17 49 48 ID m0zLYvRF 133 日本語でおk 135 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 17 55 37 ID 6Dgs4qNv 今回は運が良かったんだ。 北国だから雪で落ちた時の衝撃が少し緩和されたし、落ちた線路にやってくる電車が普段より1分ほど遅かったしね ここの住人はみんないい奴だな。 今回のことを知り合いに話したらみんな「死ねば良かったのに」といわれたよ冗談である事を願うが なんといいますか君達に少し感動した。 日本語へんですまん 作品の方だが完成まで時間はかなり掛かると思うんで、期待せずに待っててください 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 18 05 35 ID m0zLYvRF 135 作品の方だが完成まで時間はかなり掛かると思うんで、期待せずに待っててください そう言われても期待して待つのがこのスレのクオリティ。 それより 133はどうやって・・・・・・いや、なにも聞くまい。 たぶん右手に武器を持ったキモウトの呪いであろう。 137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 18 45 43 ID nLUbH4Ai これが、 135の最後の書き込みになるとはこの時誰も予想していなかったのです。 つか冗談抜きにして身の安全を図れ。 138 名前:屍[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 18 50 20 ID OBfj+6I8 127◆5PfWpKIZI氏 BBSに書き込めないという事でこちらでレスさせて頂きます。私信で申し訳ない。 温かいお言葉ありがとうございます、屍と申します。 亜弓さんは髪は真っ黒でしたか!散々迷ったのですが妹が少し薄い茶色という事で茶系にしてみたんです。 またお言葉に甘えて描かせて頂く際には真っ黒でいきます。 保管人さんも保管して頂いてありがとうございます。それでは。 139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 18 52 57 ID ZF5bLrb4 130 いや、一番上でもヤンデレじゃねーか? 恋敵を追い払おうとは思っても普通殺傷したりしようとは思わんよ。 そもそもこの二つのスレには大きな境界はないしな。 単にここは単独でも恋敵ありでもOKな場所であって。 140 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 20 40 28 ID gKBRDiCF 風邪ひいた… どこかに解熱剤と称して媚薬飲ませたり百度参りと言って チンピラ100人狩るヤンデレな女の子いないかな…ゴホッゴホッ orz 141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 20 53 10 ID dmh4t4BB こう考えるんだ 風邪菌がヤンデレなのだと 142 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 20 56 52 ID m0zLYvRF 毎年タイプが変化する面白い女の子ですね。 そんな女の子がいたらぜひお誘いしたいものです。 143 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 21 09 59 ID ZF5bLrb4 前スレにて、ヤンデレオンリーイベントが開催されるらしいが、 ヤンデレを理解している奴がいるかどうかってあったが、 ほらな、やっぱりな。ただ病めばヤンデレって思ってる奴がいる。 ツンデレがただの捻くれ者になってる時代だもんな。しょうがないよな。 ttp //www.new-akiba.com/archives/2007/01/post_6406.html 144 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 21 40 25 ID m0zLYvRF 病んでいるキャラクターが1 人でも登場する創作物が1作品でもあればご参加できます。 ふ ざ け る な ! デレがないやん・・・・・・全然デレ必要とされてないやん! デレが無きゃただの狂気に侵された人間であって萌えないやん! また条件を満たしている作品が1 作品以上あれば他作品の頒布物があってもかまいません。 そんなんただの同人誌即売会とかわらへん! どういうことですのん!これがミクシィのクオリテ(ry どんなものも広まっていくにつれて底辺に合わせていくからなあ。 ヤンデレはマイナーな方がいいと思うんだが。特殊な性癖の持ち主が萌えてるだけだし。 ・・・・・・まあ、ヤンデレの意味を理解している人たちだけが参加していると期待しよう。 145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 00 31 ID ZF5bLrb4 これも酷い。 ttp //yami.yakiuchi.com/ >むしろ病んでるだけでもオッケー キチガイ同盟でも作ってろや( ゚д゚)、ペッ 特に下の、何だありゃ。なんかの女性雑誌の特集みたいだな。 実際に勘違いした雑誌に掲載され、デレも知らん馬鹿女がマネし始め・・・。 犯罪者を増やす気か。糞が。 146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 08 22 ID HV5+WC/H ヤンデレを布教するつもりらしいが、こいつが布教したら「ヤンデレ亜目キチ○イ種」とかそんな感じになりそうだな。 147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 09 07 ID UZweTjAT ツンデレは ツン→デレ あるいは ツン⇔デレ だけど ヤンデレは 病ん+デレ だと思っている 病んでる女の子が狂的なほどに純粋に愛情を向けるのがいいんじゃないか 148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 21 22 ID ZF5bLrb4 ツンデレイプみたいなわけわからんもんがあったが、 ヤンデレイプなんてもんが出たら俺が病みそうだ。デレ抜きで。 いや、病む過程にてレイプがあり、あくまでそれがおまけ程度ならありって人もいるだろうけど。 149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 22 42 ID ZF5bLrb4 でも、ヤンデレに逆レイプされたいなぁ・・・。 150 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 26 58 ID nnEuGBry ヤンデレなら逆レイプもありだが それはあくまで愛あってのものでないと なんというか「気に入らない」 俺は愛ゆえに病んでいくのがみたいなぁ 151 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 28 31 ID 2GB3l3et 146 そのうちヤンデレカフェとか出来たらどうしようかなんて思った。メニュー想像したくねぇw よもや出ないとは思うが、それはツンデレの時もそうだったしなぁ…… 152 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 29 02 ID m0zLYvRF 149 うん。おまいが怒っているのはよくわかる。 どのリンク先もひどいことばっかり書いてあるからな。 俺も神無嬢に逆レイプされるのならば本望だと思っている。 大河内嬢でもかまわない。 だがヒートしすぎだ。茶飲め。 つ旦 旦 旦 153 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 52 33 ID UZweTjAT 115 「はい、これサービスです」 席を立ち上がろうとした瞬間、給仕のお姉さんが席に寄ってきてそう言った。 白と紺のメイド服。喫茶店の制服というよりは、本当にメイドのそれに近い。過剰な装飾の ない分だけ、逆にお姉さん本人の可愛さがよく映えていた。 「はあ、どうも……」 浮かしかけた腰を下ろす。サービス。この店にきたのは十回目だが、そんなものは一度としてなかった。 ――まさか、そういって金を取る気じゃ。 絵画の販売などで、サービスといって金を取るところがある――そんな話を思い出した。コーヒー一杯、ケーキ 一つとはいえ、法外な値段が吹っかけられないとも限らない。 そんな思いが、顔に出ていたのだろうか。 給仕のお姉さんは、心配を吹き消すようににっこりと笑い、 「今日、十回目のご来店ですよね? いつも来てるの、なんとなく目で追っちゃうんです。 私からの、個人的なサービスです」 「…………」 そういわれて、悪い気がするはずもない。 メイド服のお姉さんは可愛くて、そんな風に微笑まれたら、それだけで陥落してしまいそうになる。 いや、ここは陥落していいのだろう。目で追っていた、ということは、気にされていたというわけだし。 「じゃあ、お言葉に甘えて」 浮かしかけた腰を沈めて、ケーキとコーヒーに手をつける。コーヒーはともかく、ケーキは一度も店で 見たことがない。多分、このサービスのためだけに創られたものなんだろう。 「あ、分かります? それ、私の手作りなんです」 お姉さんが嬉しそうに笑う。店員としてではない、個人的な笑みに見えた。 「うん、美味しいよ」 答えて、ケーキを半分ほど食べ、コーヒーへと手を伸ばす。 伸ばした手が、コーヒーカップをつかめなかった。 「……?」 おかしい。 視界がゆれている。コーヒーカップへと伸ばした手が、斜めに傾いでいく。意識がはっきりしない。 揺り籠の中にいるように、体がふらふらと安定しない。 意識と視界が揺れる中で、笑ったお姉さんが言う。 「サービスで、色々と入れておきました」 ――色々? そのことについて疑問に思うよりも早く、意識が薄らいで。 「駄目ですよ、かってに帰っちゃ。もっとずっと、ここにいてくださいね。 いっぱいいっぱい、料理作ってあげますから――」 それが、最後に聞いたお姉さんの言葉だった。 154 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 54 09 ID UZweTjAT ヤンデレカフェってこんな感じだろうかと妄想五分 初めの内は普通なのに、常連になると店から出ることすらできなくなる 155 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 22 58 08 ID m0zLYvRF 154 これが営業スタイルだとしたら笑えねえwww まるで都市伝説だ。GJ!! アンカーは 151向けだな。 156 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 00 31 ID ZF5bLrb4 152 ああ、スマン。怒りで俺がヤンデレかしてたぜ。デレ抜きで。 デレ抜きのヤンデレって、飯抜きの牛丼みたいだ。 157 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 09 09 ID 0bxx7mci また幹也置いときますね。 怠惰に沈む兎/須藤幹也 http //imepita.jp/20070215/830780 またのタイトルを“ヤンデレ王子の退屈な午後”……いやウソだけど。 158 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 38 00 ID LH4E1jJ0 157 ヤンデレ王子キタ――(゜∀゜)――GJです!! ↓それでは投下します。 159 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 39 05 ID LH4E1jJ0 「おはよう、祐人」 聖祐人が目を覚ますと姫野真弓が制服姿で笑みを浮かべて上からのぞきこんでいた。 「今日は祐人はとりあえずお留守番ね。学校と真綾には連絡しておいたから。 でもこれでやっと恋人同士の生活が出来るね!!」 そうだ、真綾とこいつの家に来て紅茶こぼされて、それでココア……! そこまで思い出した祐人は跳ね起きた。 「ぐぇっ」 正確には跳ね起きようとして首輪に締められて昇天しかけた。 「だめだよ祐人、危ないから。とりあえず起きられないようになってるからね。 トイレとか行きたくなったらお姉ちゃん呼んで」 混乱する。首輪がついていてそのおかげでベッドから起き上がることは出来ない らしい。手足も同じように拘束されていた。 「本当にごめんね。昨日どうしても疲れちゃってさ。本当はもっと色々準備してた んだけど今日はとりあえずこれで我慢して」 そう言って真弓は心底申し訳なさそうな顔をした。 「ちょっ……待てよおい!!」 呼び戻そうとしても彼女は笑って手を振りながら去っていった。 ■■■■■■ 160 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 40 25 ID LH4E1jJ0 ■■■■■■ ゆるゆると時間が過ぎていく。真弓が出て行ったあとしばらくは拘束が緩まないかと もがいてはみたがどうやら無駄なようだった。 見える範囲の視界から得られる情報によると普通の女の子の部屋のベッドに 寝かされているようだった。真弓の趣味なのだろうか全体的に黄色やオレンジ色の 小物が多い。特に変わったものは見当たらない。 そう、取り立てて変な箇所など無い。普通に机があって上にはファイルや教科書が 並んでいて。床にはいくつかクッションが転がっている。チェストがあって鏡が あってアクセサリーや香水か化粧水か何かの瓶がいくつか前に無造作に並んでいる。 淡いオレンジのカーテン越しに差し込んでくる陽の光は柔らかい。 普通の、可愛い女の子の部屋だ。少年がベッドに拘束されていることを除けば。 少年が……というよりは俺が、か。祐人はそこまで考えてバカバカしくなった。 他にも考えることはあるだろうと自分に言いたくなる。 真綾については真弓が何とか言いくるめているのかもしれない。学校にだって熱を 出したと言えば二、三日はごまかせるだろう。だが両親はどうだ。友達の家に泊まった と言ったところでもう既におかしいと思い始めるんじゃないか。何とか切り抜けても 普通の状態では二日連続の泊まりは有り得ない。電話がかかってくるなり何らかの アプローチがあるはずだ。そうすれば聖祐人がどこにもいないことが何とか 露見するんじゃない……だろうか。 ならこの状態は両親の行動力にもよるが三日から四日、長くて一週間程度で 終わるだろう。それまで生きれば良いだけだ。祐人はそう見当をつけた。 ■■■■■■ 161 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 42 43 ID LH4E1jJ0 ■■■■■■ 真弓が出て行ってから何時間たったのだろうか。残念ながら祐人の位置からでは 時計は見えなかった。もう何十時間もたったような気さえする。物音一つしないのだ。 おまけに体はほとんど動かない。体が動かないことがこんなに辛いとは知らなかった。 無理な姿勢を取らされているわけではないがそれでも体がゆっくり固まって行く ような、体内の流れが壊死していくような感覚を覚えた。 本当に物音一つしない………そこにもう何度目か思考がたどり着いた時、一つ おかしいことがあると気づいた。真弓は確か姉がいるようなこと言った。 ならもう一人この家に人がいるはずだ。 ではこの静けさはなんだ。人が生活をすれば何らかの音がするはずだ。 ……もしかして本当はいないのか? だが真弓は……確かにそう言い捨てた。 一度気になると他に考えることも無いので俄然引っかかってきた。確かめる方法は 簡単だ。呼んで見れば良い。 「あ……あの」 声がかすれて上手く出ない。なのにだれもいない空間にはやけに響いた。 「あの……お姉……さん?いらっしゃいますか?」 監禁されている身で敬語を使うのも変な気がしたが会ったことも無い相手で、年上 であるという事実が何となく優先された。 応答は無い。それどころかいまだに物音一つしない。 「あ……あの」 「なに……?」 突然、何の前触れも無くドアが開く。黒髪の、真弓にどこか似ている暗い感じの 女性が立っていた。どこかで見たような気がするが思い出せない。 「なに……?」 自分で呼んだのに祐人は何を言ったらいいかわからず口をパクパクさせていた。 ■■■■■■ 162 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 44 57 ID LH4E1jJ0 ■■■■■■ 「真綾いる?」 「あ、真弓だ~ごめんね昨日は」 「全然気にしてないから大丈夫だよ」 「それとね、あの、祐人なんか今日休みなの。高校生にもなっておたふくだって」 「本当に?あれ子供じゃない人がやると大変みたいだよ。大丈夫かしら」 「ぅん、祐人にもうつるとヤバいから見舞い来るなって言われちゃった」 「行かない方がいいと思うよ。かかるとかなり酷い顔になったりするし。 そうなると真綾の可愛い顔も台無しだよっ」 「もう、やめてよ真弓……真弓の方が可愛いよぅ」 学校の昼休みは極めて平和に過ぎて行った。 ■■■■■■ ■■■■■■ 「じゃああの電話は偽物だったんですか!?」 「ええそうよ……そんなに驚くことかしら」 亜弓と祐人も平和な昼を過ごしていた。取りあえず精神的には。 祐人は今度はリビングで椅子に両手両足を拘束された状態だった。さっきまで 亜弓に実に一日ぶりの食事をさせてもらっていたのだ。妙に人に食べさせるのに 手慣れていた亜弓は手際よく食器を――物音をほとんど立てずに 片付けると祐人の向かいに座った。 「驚くことですよ……どうやってかけたんですか」 「それは言えないわ……企業秘密よ」 そう言うと亜弓は少し笑った。 なんだ、笑えば綺麗じゃないか。 黒い影みたいな人だと思ったが、割と普通の人かもしれない。 163 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 46 35 ID LH4E1jJ0 「ずいぶんと余裕そうね……真弓のものになるのに」 「そんなこと無いですよ。一応焦ってますけど今は動けないですし」 「真弓が誰かを好きになったのは初めてだから確かなことは言えないけれど…… あなたの見通しは甘いと思うわ」 そう言って亜弓はまた微笑んだ。さっきより綺麗に。 ■■■■■■ ■■■■■■ 「ただいまー!!」 「お帰りなさい真弓」 「祐人?祐人生きてる?ひょっとして食事してない?学校でそのこと思い出したんだけど」 「亜弓さんに食べさせてもらったから大丈夫だよ」 椅子に拘束された状態で祐人は答えた。亜弓はいい意味でも悪い意味でも祐人に 興味が無かった。だからのほほんと話していられたがこいつは違う。出来れば穏当に 行きたいと祐人は思った。 「祐人……ただいま」 真弓が抱きついてくる。椅子に座った人間に立っている人間が抱きついているため 首に腕を回しているだけだが。 「今動きやすくしてあげるからね!」 真弓はかなり予想外の言葉を口にして身構えた分拍子抜けした祐人を置き去りに 自分の部屋に何かを取りに行った。 ■■■■■■ ■■■■■■ 「はい、これで一心同体かな。動く時は気をつけてね。首締まると苦しいから」 祐人の右手は真弓の左手と手錠で繋がっている。更に左手はギリギリ体の幅程度の 長さ、両足は歩幅を狭くすればギリギリ歩ける程度の長さの鎖で祐人自身の右手と 繋がれていた。 164 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 47 30 ID LH4E1jJ0 そして、首輪。祐人の首にも真弓の首にもお揃いで。普通のベルトの形状をした ものなのだが、金具に通しただけできちんと留められていない状態だった。つまり 端を引けば首が絞まる。鎖が端に繋がっていて、必要以上に首輪が緩まないように 一カ所大きな金属製の球がついていた。一メートル半程度の鎖が祐人と真弓の首の 間に渡っている。鎖の長さ以上離れれば真弓の首も祐人の首も絞まるだろう。 「はい、お互い動く時は気をつけようね」 至極楽しそうに全ての拘束具を付け終わると真弓は祐人をで椅子から解放した。 「……何がやりたいんだ」 「え?祐人と一心同体。恋人だしね!新しい生活にはイベントが必要かなと思って」 祐人の中に怒りがわいて来る。 「いつ俺らが恋人になった?」 眠らされて拘束されて。 「やだな祐人。いつ、とかそんなんじゃなくて必然じゃない」 一体なにをされるのかと思えば笑って恋人同士だと言う。 「それは一方的な思い込みだろう」 何度も言ったはずだ。真綾が、彼女がいると。 「もう。ツンデレもいい加減にしないと怒っちゃうよ?」 上目遣いで軽くにらんで来る。 165 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 49 03 ID LH4E1jJ0 「いい加減にしろよっ」 「……っ」 怒鳴ると同時に思い切り鎖を引いた。真弓の首が絞まる。 「祐……人、くるし……」 「お前いったいなんなんだよ!笑わせんなよ。恋人同士じゃねえよふざけんな!!」 真弓は涙目で顔を赤くして鎖を引いている方の手を掴んで離そうともがく。 「人の話聞いてるか!?そもそもお前のやってるこれはただの誘拐だろうが! こんな恋人いねえよ!!意味わか」 「……祐人くん。鎖から手を離しなさい」 そこまでまくし立てたところで祐人はそれ以上言葉を継げなくなった。 亜弓がいつの間にか背後に移動して、祐人の首を絞めていた。 「祐人くん」 亜弓は淡々と絞める力を強めていく。祐人はあっさりと鎖を手放した。真弓が解放 されて膝をつくのが目の端に映った。 だが亜弓は力を緩めない。 「ねぇ祐人くん……真弓に危害加えたらダメよ……恋人なんでしょう? 真弓のものなんでしょう……?」 無理やり亜弓の方を向かされて目を真っ直ぐ見られる。いや、亜弓の目は祐人など 見ていない。祐人のいる空間を見ている。同じことなのだが何かが決定的に違う。 冷たい目、ゴミを見るような目などですら無い。怒りも蔑みも害意も敵意も一切の 感情が無く、こちらを認識していないような暗い目。 祐人はもう意識が飛びそうだった。 166 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 49 58 ID LH4E1jJ0 「仲良くしなきゃだめよ……」 亜弓が更に言葉を継ごうとした時。彼女を酸欠から復活した真弓が蹴り飛ばした。 「お姉ちゃん。いくらお姉ちゃんでもやっていいことと悪いことがあるよ」 その割に真弓の声音は怒りを含んでいなかった。むしろ困惑したような。 「もう。恋人同士の邪魔するなんて最低だよ?そりゃお姉ちゃんは保護者なんだから 心配なんだろうけど。でも邪魔は禁止!」 「そうね……悪かったわ。ごめんなさい」 「ごめんね祐人。お姉ちゃんが邪魔するとは思わなくて……」 真弓は困ったような少し照れたような笑顔を浮かべた。普通の女の子が浮かべる 照れ隠しの表情だ。少なくとも手錠で誰かを拘束したりするような人間の それには見えなかった。 この2人は違う。住んでいる世界がそもそも違う。酸欠で飛びかけた祐人の頭でも とにかくそれはだけは理解することが出来た。 ■■■■■■ ■■■■■■ 167 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 53 23 ID LH4E1jJ0 今回はここまでです。 描写力低くくてごめんなさい。 168 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 55 38 ID 9vC+17RH 167 リアルタイムGJ! 姉妹怖いよ姉妹(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル 169 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 59 09 ID m0zLYvRF GJ!! 姉が特に恐ろしいですな。 デレを向けていないヒロインがここまで怖くなるとは。 イラストを思い浮かべながら読むと本当に雰囲気でるなあ。 170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/15(木) 23 59 32 ID QBW4PxWe ところで、急に話は変わるがデレ描写とヤン描写。 デレのほうがヤンのほうより多くなってるのはどう思う? 試しに書いたら病み描写がデレ描写の1/3くらいになってきたんだが。 171 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 21 10 ID VNEswL9I 二日遅れで申し訳ありません。 やっと書き終わりましたのでバレンタインの小説投下します。 とりあえず上書きの番外編と捉えてください。 172 名前:甘い世界 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 25 25 ID VNEswL9I 「加奈~!早くしないと先行くぞ~!」 「ちょっと、もうちょっとだから待ってよ誠人くんー!」 今日もいつもと変わらないやり取りで朝が始まる。 半開きのドアから漏れる声が朝の寝惚けてる耳に心地良い。 加奈を迎えに行って登校するまでのこの些細な一時の幸せを噛み締めつつ、俺は手でメガホンを作って声を通す。 「置いてくぞ~!」 そんな気持ちはさらさらない、加奈が隣にいない通学路なんて考えられない。 それでも、俺のこんな一言を単純に信じてくれる加奈の反応を期待すると、つい意地悪な気持ちになる。 「お願いだからー!もう少しだけ!」 加奈の声の震え具合いから必死さを感じ取って、制服に手を通しながらトーストをくわえてる様子が浮かんだ。 そんな情景を思い描けただけで辛い朝の早起きが苦に感じなくなる。 やがて半開きのドアが勢い良く開く。 全開のドアから居心地の良い慣れた匂いが流れ込む。 そして、目の前には少々息荒げにこちらを見つめてくる加奈の姿が映る。 口元がやや不器用に動いている、どうやら俺の想像は当たってたようだ。 数秒間お互い目を合わせたまま制止し、しばらくしてから加奈が口の動きを止め、真剣な眼差しを送ってくる。 「ごめーん!」 手を合わせ頭を大袈裟に下げると、その長い黒髪が一斉に垂れる。 姿勢を低くしてるからか、地面についてしまいそうだ。 「気にすんなよ、いつもの事だ」 「”いつもの事”ってどういう意味よ!」 「そのまんまの意味だよ」 「もう!」 顔を上げ頬をわざとらしく膨らませてこちらを睨んでくる加奈、口元が笑っているのが微笑ましい。 「さ、行こうか」 すぐに踵を返し、手慣れた通学路へと足を踏み入れる。 すると加奈が何かを思い出しのか、「あっ!」と珍妙な奇声を発した。 「誠人くん!取ってくるから待ってて!」 そう言い残すと慌ただしく再び家に入っていった。 しかし”何を”取ってくるのかが分からない。 鞄は今目の前に置いていったし…なんて思案する間をほとんど与えず加奈は戻ってきた。 靴を履き直してるその隣には、小さな可愛いらしい袋が一つ置いてあった。 こんな袋には最近見覚えがある…というより袋の中央にデカデカと英語で文字が書いてあった。 「それじゃ行こ!」 袋を大事そうに右手で持ち、残った方の手で軽そうな鞄を持ち上げている。 その間もその袋を見てニヤニヤしている姿を見て、俺まで思わずニヤけてしまった。 「今日はバレンタインか…」 物欲しそうな態度でいるのはなんだか格好悪いので、加奈に聞こえない程小さな声で囁いた。 173 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 27 10 ID 6lP41cJS 170 構わんさ。むしろ微かなヤンの恐ろしさを引き立てる。 174 名前:甘い世界 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 32 07 ID VNEswL9I 「ルン・ルルン・ルルン・ル・ルルルン~♪」 俺の隣で気持ち良さそうに鼻歌を歌っている加奈、いつも先を歩く俺をスキップして自然に抜かしている。そんな子供みたいな態度を、子供みたいな体で取るか ら本当に子供みたいに見える。 背中に美しく垂れている長い黒髪がかろうじて2、3歳大人びさせている。 「誠人くん~」 突然後ろを振り向く加奈。 歩き始めてからずっと鼻歌を歌っていたから通学路での会話は今日がこれで初めてだ。 「何だ?」 「今日何の日か知ってる~?」 終始笑顔の加奈。 何かを期待している表情を浮かべている。 ニコニコこちらを伺っている加奈を見てなんとなくわかった、どうやら加奈は俺の口から”バレンタイン”という単語を出させたいらしい。 きっと俺の事からかいたいのかななんて思いながら、反抗期の子供のような対応をしてみる。 「セント・バレンタインが殺された日だろ?」 「…」 無言の加奈、俺の回答を聞くと一瞬ジト目で見つめながら、すぐに背を向けてしまった。 俺の答えが気に入らないらしい、当の俺はそんな加奈の反応がおかしくて仕方がない。 加奈とはクラスが違うから知らないけど、クラスでもこんな感じなのかな? 「嘘だよ」 「別に嘘じゃないでしょ。2月14日はセント・バレンタインさんが殺されちゃった 日だよ…」 俺と目を合わせる事なく答える加奈。 まいったな、本当につまんなそうな感じだ…。 本当に子供じみてるというか、純粋というか騙されやすいというか…そこが好きなんだけどね。 当然そんな事恥ずかしくて言えないので、僅かながら譲歩してやる。 「今日はバレンタインですね!私、沢崎誠人はその恋人の城井加奈様からチョコ が欲しいです!」 言い終わって予想以上に大きかった自分の声に驚く。 周りに人がいなかったから良かったものの、駅でやっていたら赤面ものだ。 若干うつ向く俺の反応に満足したのか、下から覗き込むようにして見上げた加奈の顔は満面の笑みで彩られていた。 白い歯が溢れる。 何秒か俺を見ながらクスクス笑った後、加奈は徐に大切に提げていた袋の中から更にもう一つの袋を取り出す。 綺麗に装飾が施された袋の中から僅かにメインの物が見えた。 それをわざと凝視してやると、そんな俺の様子を加奈が楽しそうに見つめている。 これでとりあえずはご機嫌が取れたなと思った。 ホッと胸を撫で下ろす俺をよそに、加奈はその袋と俺の顔を交互に見返す。 意地悪そうな、悪巧みを企んでいる子供の目だ、完全に。 「沢崎殿、欲しいですか?」 そう言うと加奈は見せびらかすように袋を持った左手を動かす。 ようやく気付いた、これがしたかったんだなって事に。 普段少し意地悪な俺への細やかな復讐って訳か…。 いつもなら”やっぱいい”と言ってコンビニのチョコを買ってやるところだが、今日は特別な日だ。 特に女の子にとっては、自分の意中の相手へ”想い”を形にして贈る訳だから、非常に重要なイベントのはずだ。 俺は手を合わせ軽く頭を下げる。 「とても欲しいです、加奈様」 「3個か!?甘いの3個ほしいのか?3個…イヤしんぼめ!!」 楽しそうに勝手に自分の中で話を進めていく加奈、「1個しかないだろ」とツッコんでやりたかったが、わざわざ気分良さげな加奈が作ったこの空気を壊す必要もない。 親指、人差し指、中指の3本を立て「うお」と連呼する。 「誠人くんおかしい~!」 腹を抱え笑う加奈、しかし不思議と不快な気分じゃない。 加奈の幸せそうな顔が見れた事で俺の心は満たされていた。 この笑顔が見られるなら加奈に一生ついていくのも悪くないなと思った。 175 名前:甘い世界 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 32 43 ID VNEswL9I ようやく笑いの収まった加奈が真剣な面持ちになり、一度気をつけの姿勢を取った後、小学生が卒業証書を受け取る時のようなガチガチの動きで俺に袋を明け渡す、勿論無理のない最高の笑顔を添付して。 「誠人くん、バレンタインチョコ受け取って下さい!」 差し出された袋を手に取る、そこから袋の中に入っていながらも甘いほのかな香りが漂う。 「ありがとな、加奈」 さっきのお返しとばかりに俺も最高の笑顔を加奈に贈る。 そんな俺を見て、加奈は俺に抱きついてきた。 頭を俺の首下辺りに猫のように擦り付けてくる。 「えへへ」とはにかむ、そんな汚れを知らない無垢な少女の姿を見て、それとは逆に思わずよこしまな事を考えてしまう。 危ない妄想を寸でのところで止め、俺も加奈を抱き返す。 「本当にありがとな…!」 「誠人くん、好き!」 物欲しそうに抱き締められたまま俺の顔を見上げる加奈。 今日は特別…だから加奈の期待通りな事をしてやるべきだ。 「俺もな」 「あたしの方が誠人くんの事好きだよ?」 「何を言う!俺の方がお前の十倍は好きだな」 「じゃあたしは億倍だよ!」 「急に桁変わったな!」 互いにおかしく思い笑い合う。 こんな馬鹿丸出しの俺ら、周りから見たら冷やかしを喰らう、絶対に。 でもいいんだ、俺らは俺らの”世界”にいるんだから。 誰も入り込めない俺と加奈だけの”世界”にいるんだから…。 「じゃ早速貰おうかな」 俺が袋を開けようとする、それを加奈がやや緊張しながら見つめてくる、そしていよいよ袋を開ける―――――――――― 176 名前:甘い世界 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 37 08 ID VNEswL9I そこまでしか俺は想像できなかった…。 幾ら甘い幻想…いやきっと現実になったはずなのに…目の前にいる目の輝きを失った少女の圧倒的存在感に想像はストップする。 「早く早く早く!!!早くしないと誠人くんがっ!」 さっきまで俺が作り上げた理想像…その本体はあまりにも狂気的な目線で俺を襲う。 俺の家の裏でさっきから加奈に殴られ続けている鼻からはとめどなく血が流れる。 それでも加奈にとってはまだ足りないようだ………”上書き”し切れていないようだ。 永遠にも感じられる苦痛の惨劇に俺が踊らせているのには、れっきとした理由がある―――――――――― 今日の朝の朝食は…何故にか”チョコ”だった。 母親が何かの会に入会しているんだが、その会の集まりでバレンタインの日に女性会員が男性会員にチョコを振る舞う事になったらしい。 年甲斐もなく俺の母親もそんなイベントに参加しようとしたらしいが、十何年ぶりのチョコ作りとあってか、作り過ぎてしまったらしい。 その超過分の消費役として朝から父親と一緒に無数のチョコを食らわされた訳だ。 確かに美味かったが、チョコなんて飯の代わりになる訳がない。 甘ったるい気持ち悪さにさいなまれる中、何とかして親から掲示されたノルマをクリアした俺は、慌てて加奈を迎えに行こうと思ったその時、驚く事に加奈が俺を迎えにきたのだ、いつもなら今頃慌てて準備しているって時に。 「加奈、どうしたんだよ?今朝はやけに早いな」 「だって今日は…」 モジモジしている加奈を良く見て、手に持った小さな紙袋を確認し、そして理解した。 わざわざ俺に早く渡したいから早起きしたのかと感動している矢先、加奈が突然表情を曇らせた。 「誠人くん…甘い匂いがする…」 「えっ!?」 177 名前:甘い世界 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 37 44 ID VNEswL9I 俺と目を合わせず言う加奈に不安を覚えた。 まさかしっかり歯磨いたというのにまだ匂いが残っていたとは…油断したと後悔した。 とりあえず、本当の事を伝えようと思った、”変な誤解”されたらかなりヤバいと直感が告げたからだ。 「加奈!これは確かにチョコの匂いだが、朝飯で食っただけだからな!あっ、決してバレンタインに自分でチョコ買ったなんて思うなよ!母さんが作り過ぎてだな………って加奈?」 俺が我に帰ると、その時既に加奈の目に色はなかった。 こんな表情の時の加奈はとにかくヤバい…でも、そんな顔させるような事俺はしてないはず…何故? 自問の答えは簡単だった…。 加奈が俺の顔に突然触れた、下から掬い上げるように。 その手に付着している”もの”を見た瞬間、背筋が凍った。 「…血…?」 自分で顔を手探りしてその手を見ると、加奈と同じように血が指先を染めた。 そしてようやく鼻に鼻水の時と同じ違和感を感じ確信した…俺が鼻血を出している事。 アホらしい話だった、今時チョコ食って鼻血なんて聞いた事もない。 しかし、あれだけの量なら納得は出来た…。 「ハハ…アハハッ…」 「…加奈…?」 加奈は笑っていた、目を除いて。 肩が上下し、俺を見ているはずなのに視線が交錯する事はない。 壊れたラジオのように繰り返しただ笑っているだけだ。 「加奈、違うんだ!これは…」 「アハハ!」 俺の声を笑い声で吹き飛ばし、想像のつかない無尽蔵の握力で俺の腕を掴むと、そのまま家の裏まで半ば引きずられるような形で連れていかれた。 この間俺の頭にあったのは、ただ絶望感…。 (終わった…) 178 名前:甘い世界 ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 41 55 ID VNEswL9I 裏まで連れていかれた俺は壁に押し付けられる。 笑うのをやめた加奈にこれから何をされるのかにただ脅えるだけだ。 目を閉じ天命を待つ事数秒………何もアクションが起きないので加奈の方を細目で見ると、「早く」と小声で呟きながら先程まで大切そうに持っていた紙袋を引き千切って何かを取り出そうとしている。 強引に袋を破り、中から出てきたのはチョコだった。 僅かだが、ハートマークの真ん中に俺の名前が書いてあるのが見える。 それを俺が確認した瞬間、加奈はそのチョコを俺の口をこじ開けねじこんだ。 さすがに予想外の行動に驚く俺。 ポカンとしながら加奈を呆然と見つめていると、「早く食べて!」と加奈が怒鳴ってきたので慌ててそのチョコを飲み込んだ。 飲み込むまでの間、僅かだが加奈のチョコの甘い味を噛み締められた…それが嬉しかった。 どんな形にせよ彼女からのチョコを食べられたのだ、男にしてみれば最高の気分だ。 もしかしたら、これが加奈にとっての”上書き”なのではなんて今飲み込んだばかりのチョコより甘い想像もした…それは一瞬で打ち砕かれた。 「そんな…!あたしのチョコ食べても血出さない!これじゃ誠人くんの鼻の傷” 上書き”出来ない!」 加奈にとって、今俺にチョコ食わせたのも、あくまで鼻血を出させて自分がしたように”上書き”するたもの手段に過ぎなかったんだ…それに気付いて一気に現実に突き落とされた。 今の加奈の頭には俺の傷を”上書き”する事しかない…それがわかって絶望した。 「そうよ…!大丈夫大丈夫大丈夫…誠人くん、痛いのはすぐ終わるから大丈夫だ よ…アハハ!」 だから…加奈が笑いながら俺の鼻を拳で殴りかかってきてもあまり動揺しなかった―――――――――― 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!」 加奈が謝っている…本当に深刻そうに…。 意識朦朧とした頭で必死に状況を整理した。 先程、鼻から鈍い音が響き、血が制服を真っ赤に染めるところまできて、ようやく加奈は満足したのか、俺を殴るのを止めた。 血の出過ぎで思考が上手く出来ない。 それでも、俺の血で真っ赤に染まった手で必死に俺の顔を擦る加奈を見て、許してやるべきだって事だけは理解出来た…。 むしろ悪いのは自分なのだ、加奈が悲しむような事をしなければ加奈がこんなに必死に謝る事も、俺がこんなにボロボロになる事もなかったんだ…そう頭に念じながら、やっとの思いで腕をあげ加奈のフワフワした髪を撫でる。 「ごめんな…加奈。折角のバレンタインだったのに…」 「誠人くん泣かないで!あたしが全部悪いの…ごめん…!」 加奈に指摘され目を擦ってみる、でも付着したのは血だけ…必死に笑ったつもりだったが、泣いているのだろうか…俺は…? 「すぐ手当てに行こ!あたしの家でしっかり治療して…」 そう言って家へと向かおうとする加奈を俺は何とかスカートの裾を掴む事で止めた。 「止めてくれ…」 ただ懇願した。 「でも!早くしないとこんなに血が…」 「このままお前の家行ったらおばさんに見つかる、そしたらどう説明するんだ!俺は加奈と別れたくないよ…お願いだよ…」 情けない話だが、今度こそ俺は泣いていた。 加奈と別れるなんて嫌だ、加奈はいつも俺と一緒にいた存在…離れるなんて…悲し過ぎる。 「誠人くん、ごめん…ありがとう!ごめん…」 いつの間にか泣きじゃくる加奈を見て、残された力でその小さな体を抱き締めた。 「もう謝るな…」 「ごめ…ありがとう…ありがとう…!」 俺の言葉を聞いて加奈が笑顔になる。 これが俺にとって最高の至福だ…。 「加奈、チョコ美味かっよ、ありがとう…」 「誠人くん…」 涙目で笑う加奈を見て、理想通りにならなかったけど、この笑顔が見れたんだからそれでいいやと思った。 口の中に残るかすかな甘味を思い出しながら、俺はお返しにその味を加奈にも教えてやった。 甘い世界 END 179 名前: ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 44 35 ID VNEswL9I 投下終了です。 しかし本編では死亡フラグ立ててバレンタインではこんな目に…。 誠人も救われないですね。 167 こんな姉がいればとつくづく思いますよ…。 180 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 00 46 21 ID PK44QiOg 179 GJでした! 小ネタまでに キャラアイコン/須藤幹也 http //imepita.jp/20070216/017870 キャラアイコン/須藤冬華 http //imepita.jp/20070216/018360 キャラアイコン/里村冬継 http //imepita.jp/20070216/019220 キャラアイコン/神無士乃 http //imepita.jp/20070216/019960 キャラアイコン/対比図 http //imepita.jp/20070216/020540 神無士乃が設定上は一番背が低いのに、直立ツインテールのせいで一番大きくなっている残念な代物。 181 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/16(金) 00 55 10 ID 0z9e1zEO 179,180 GJです! 182 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 01 31 57 ID 6lP41cJS 179 割り込みスマソ。番外編もGJです! しかし毎度毎度思うんだが、普通好きな人が痛めつけられたら、 許せない!仕返しにお前を痛めつけてやる!ってするのが普通なのに、 許せない!私の方がもっと痛めつけれる!って凄い病みっぷりだwww こんな秀逸な病みっぷりのアイデアが出るなんてまさしく天才だ。 183 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 08 07 29 ID yLrdk++1 SS保管庫のレイアウトが少し変わってる。 管理人さん毎度ごくろうさんです。 あと姫野姉妹のイラストも新しくなってるぜ。 184 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 11 11 24 ID UIlcnd9e 871 名前: 名無しさん [sage] 投稿日: 2007/01/24(水) 01 41 58 ID VXxEampY 境界例だけはマジでヤヴァイ。 もし惚れた女が境界例だったりしたらホント悲惨だ。 ……俺は、境界例の女を妻にして自殺したヤツの話を大学時代の恩師から聞いた。 872 名前: 名無しさん [sage] 投稿日: 2007/01/24(水) 03 51 44 ID ijcZX38U まあボーダーに普通惚れないだろうがね・・・・ 876 名前: 名無しさん [sage] 投稿日: 2007/01/25(木) 04 42 34 ID Jzh74VUK 872 ・・・いや、何故かボダ女には男を引き寄せる何かが出てるとしか思えねぇ 一見、隙のある、か弱い女、 保護欲なのか、妙な求心力があり、簡単に深い仲になるが、一旦捕まると、底なし沼 先に吸い尽くされ、壊されるのは、男とその周囲 しかもその男が一人、ということは大抵無い 呼吸するように嘘をつき、信じていたことは簡単に裏切られる 浮気をしても、いつの間にか悪いのは男の側になっており、謝されるのは、何故か男の側 で、数時間もすれば、何も無かったようにラブラブ そうかと思えば、何年も前の、どうでもいいようなこと(ラメーンに勝手にネギ入れた、とか)で 急にキレだす 自分が悪いの!と言いながら絶対に自分が悪いと思っていない精神構造 男がマトモであればあるほど、壊れる時は派手にブッ散らばる 壊れ切るまで、その地獄は終わらない、徹底的に吸い尽くされる で、数週間も経たないうちに「私って、こんなに悲劇のヒロインなの~」と、新たなターゲットに・・・・・・ 185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 11 55 11 ID 9fvV01KX 184 876がやけに生々しいというか、経験者は語るっぽい件について。 186 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 12 20 00 ID rDJr3cBG それただの痛女じゃないか 187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 12 21 50 ID EN/ShLSh 三次元は地獄だぜ! フゥハハハーハァー 188 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 12 32 46 ID El5OIu9X 痛女 → 簡単に捨てる ヤンデレ → 愛さないと殺すor死んでも愛す そういやグリムって死んだ『お兄ちゃん』は忘れちゃうんだっけ? ……ああ、だからぽっと出てすぐに消えて行ったのか…………。 189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 12 49 35 ID uhNARlLb そもそもヤンデレは 「あまりにも一途過ぎるがゆえに狂った」でしょう。 境界女とは似て非なるものだと思う 190 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 13 03 06 ID SkBsN2/6 189 確かに。それらしいが別物だな。 191 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 13 24 35 ID rDJr3cBG (恋愛以外でも)最初から狂ってる女が男に惚れる → 痛女 男を思うあまりに(恋愛に関係ある部分が)狂う → ヤンデレ 個人的にはこうだと思う 192 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 13 50 14 ID baXMLX+H 投下しますよ 193 名前:『首吊りラプソディア』Take3[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 13 51 15 ID baXMLX+H 「また、か」 管理局からの報告書を読んで、舌打ちをした。くわえていた煙草に火を点け、煙を深く 吸い込み吐き出す。メンソールの刺激が粘膜の弱い喉を痛めつけてくるが、このくらいで ないと吸った気にならなかった。局長の影響だろうか、俺の考え事をするときの悪い癖で、 どうしても煙草を吸ってしまう。殆んど無意識の行動だが、喉の軽い痛みのお陰で仕事を している、と実感出来るからだ。気のせいかもしれないが、喉の痛みを自覚すると思考が 上手く回転し、考えがまとまりやすくなる気がしてくるのだ。 「これで八百人目、随分と頑張っているもんだな」 「全くです」 コピーを指輪で読んでいたサキが、溜息を吐いて頭を掻いた。こいつはもっとクールな 女だと思っていたのだが、それを保てない程に参っているらしい。最初の無表情で無口と いう印象が強く、また会っていたときもそれを崩さなかったのでこいつはクールな女だと 思っていたのだが、どうやら根っこの部分はそうでもないらしい。サキに対する印象が、 ほんの少し変わった。悪い意味ではなく、人間らしいと思ったからだ。機械人形も感情を 持つこのご時世に随分と無感動な人間も居たものだと認識していたが、それは仕事をする 為に被っていた仮面だったのかもしれない。 「それ、一本貰えますか?」 黙って煙草を渡すとサキは口に挟み、指輪を起動させた。続くのは野球ボールサイズの 小爆発、それで煙草に点火をして煙を吐き出した。一瞬遅れて、熱量の風で舞い上がった 前髪が降りてくる。煙草などにこんな大きな火を作る必要などないのに、本当に微調整が 苦手らしい。昨日の茶も、この調子で冷ましたならば氷浸けになっていたことだろう。 194 名前:『首吊りラプソディア』Take3[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 13 52 49 ID baXMLX+H 横にずれかけた思考を戻し、犯人像を考える。 今回の被害者の数は二人、そのどちらも残虐な殺され方だ。片方は両手両足を折られた 上で窒息死をさせられているし、もう片方も全身を火達磨にされての焼死となっている。 過去の殺し方も今回のものと同様に惨いものばかり、軽くても全身骨折だ。 いつの間にか普段の無表情に戻っていたサキを見て、吐息する。 「どんな奴だと思う?」 「そうですね。まず殺し方ですが、可能性は大きく分けて二つあります。一つは微調整が 苦手な、私のようなタイプの人間。これは厄介です、いざというときには大破壊が起きる かもしれませんし、暴れなくても全身が重火器のようなものですから」 「もう一つは、カオリのようなタイプか」 自分で例に出して、少し嫌な気分になってしまった。立場的にはカオリの調査をする為 にここに入ってきた訳だが、心情的には無罪だと示す為に来ているのだ。それなのに背を 押すような例えを出してしまうのは、何だか具合いが悪い。この場に居ないカオリに心の 中で謝り、サキに説明の続きを促した。今俺に出来ることは、地道な捜査だけだ。 「先程先輩が言ったカオリさんの例えですが、まさにその通りなんです。上の方では寧ろ、 こちらの線を推しています。例外もありますが、様々な殺し方をしている以上、必然的に 確率システムを使うのが上手い人だという考えになります。前者では、火力が高いけれど それだけの人間だという考えの方が強くなりますから」 195 名前:『首吊りラプソディア』Take3[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 13 53 31 ID baXMLX+H 成程、だからカオリがマークされたのか。最初にそれを知らされたときは怒りが沸いて きたのだが、今の説明で理解が出来た。納得は出来ていないが、理屈だけは分かる。 要は、化物並に確率システムの制御が上手いからなのだ。 普通の人間ならば打ち出すことが出来ないどころか、空気を固めるのも不可能な空気弾。 それを平然と行うことが出来る程に確率システムの扱いが上達したのを見たら、容疑者と なってしまうのも無理はないのかもしれない。刃物などの道具を使った物理的な殺し方を しているのならば殺害方法や傷の深さ、角度などで大体の身長や体格を測ることも出来る。 だが全てにおいて確率システムを使われている以上、人種や身体的特徴などは分からない。 ならば扱いが上手い奴が候補者に上がるのは、道理というものだろう。俺だって幼馴染み でなければカオリを容疑者に選ぶだろうし、そこを探ろうと思う。まぁ、その幼馴染みを 幼い頃から見てきて、性格を熟知しているからこそ俺は違うと思ったのだが。 だが現実は非情なもので、更に不味い状況にさせているものがあった。両親の死に方だ。 カオリの両親は、『首吊り』をして死んでいた。形式的には自殺と発表されているが、 本当のところは不審死となっている。カオリに容疑がかかったものの、決定的な証拠が無かったので有罪判決は出されて おらず、仮入獄という形でここに入れられているのだ。 196 名前:『首吊りラプソディア』Take3[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 13 56 39 ID baXMLX+H 『首吊り』の根本的な部分にその死に方が関係があるのかは分からないが、『首吊り』 という単語と確率システムの組み合わせで考えれば該当する者は殆んど居ない。だから、 カオリの方に容疑の矛先が向かってしまったのだろう。 嫌な話だ、と思って報告書を読み進めていると、手が止まった。 「読みましたか」 「さっきの話、犯人は後者だったみたいたな」 立ち入り禁止のテープと一緒に起動させていた侵入者排除の為のブログラムが、綺麗に 消されていたというものだ。本当に『首吊り』がやったのか証拠は無いが、被害者の片方 が殺された現場はテープが貼ってあった場所のすぐ近くだったので間違いは無いだろう。 何の痕跡も残さずにプログラムが消されていたことから、確率システムの扱いが下手では ないことが分かる。これで、只でさえ小さくなっていた前者の可能性が殆んどなくなった ことになる。全く、厄介な話だ。 「カオリさんのことですか?」 感情が顔に出ていたらしい。 「違う、カオリは絶対に『首吊り』じゃないが」 捕まえるのが、厄介になった。 正体がカオリじゃないにしても、面倒なことになるだろう。今回も例によって、証拠は 何一つ残していないらしい。それだけでも頭が回る奴だということは分かるが、それだけ ではなく、奴には確率システムという武器がある。仮に正体を突き止めて逮捕するという ことになっても、強大な武力が立ち塞がるのだ。 197 名前:『首吊りラプソディア』Take3[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 13 57 56 ID baXMLX+H 可能性のもう片方だった、火力だけの素人ならまだ良いだろう。もっと強い火力で抑え 込むなり、プログラムに割り込むなりをして、幾らでも被害を食い止めることが出来る。 だが扱いが上手い玄人だった場合、それが出来ないからだ。『首吊り』は様々な殺し方を しているが、それは出来ることの幅が広いということでもある。こちらが何かを仕掛けた ときには上手くいなされ、逆に相手の攻撃に対応出来ないというケースも発生する可能性 があるからだ。どこまで考えても救いがない、そのことに肩が落ちる。 軽音。 気が付けばカオリが訪ねてくる時間だった。俺は慌ててベッドの下に報告書を蹴り込み、 立ち上がる。髭はきちんと剃っていたので問題ない、煙草の煙が充満していたので急いで 窓を開けて換気をした。副流煙は主流煙よりも遥かに有毒だ、これでカオリが肺癌にでも なられたら困る。カオリには、いつでも健康でいてほしい。 他におかしいところは無いか、部屋の中を見渡した。 「先輩、さっきよりも真面目ですね」 「黙れ」 一通りチェックを済ませて、漸くドアを開いた。 「おはよ、虎吉ちゃ……」 何故かカオリの笑みが固まった。 「何で手錠してるの?」 いかん、管理局に行ったとき偽装用に付けていたのを外し忘れていた。 「先輩の変態的な趣味の一つだそうです。私も見たくなかったのですが、変態には逆らう ことが怖くて何も言い返せませんでした。全く、厄介ですね」 「そうなんですか」 何だそのフォローにならないフォローは、と思った直後、 「虎吉ちゃんの馬鹿ぁァッ!!」 壁まで吹き飛ばされた。 198 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日:2007/02/16(金) 14 00 10 ID baXMLX+H 今回はこれで終わりです 『首吊り』の正体は…… まぁ、どっちでも良いじゃないですか 199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 14 02 11 ID 3+u/wwcS 有名だと思うけどSoundHorizonのArkって曲、これ重度のヤンデレじゃね? 歌詞出していいかわからんから大まかな内容を書くと、 ・「妹」は脳の海馬いじられっ娘 ・「妹」と「兄」はガチでまぐわう関係だった ・だがある時「兄」は嘘を付いて「妹」を拒絶する ・「ねぇ何故変わってしまったの? あんなにも愛し合っていたのに」 ・「妹」は妊娠していた説アリ ・「兄」と「妹」は同じトラウマを持っていたらしい ・「兄」に拒絶された「妹」は、ナイフで「兄」を殺害する ・「さあ、楽園に還りましょう。お兄様…」クスススス… あー。歌詞にしないと曲だけを聴いてもわからない部分は多いから難しいな 歌詞はググればある。曲は知らんがようつべで探せばあるんでないか 200 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/16(金) 14 04 27 ID 3+u/wwcS ってキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! しかし虎吉…不遇wwwwwwwwwww
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1064.html
1 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 18 08 45 ID du6FDjhP ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。 ○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど) ○ぶつ切りでの作品投下もアリ。 ■ヤンデレとは? ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。 →(別名:黒化、黒姫化など) ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。 ■関連サイト ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 http //yandere.web.fc2.com/ ■前スレ ヤンデレの小説を書こう!Part8 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1182914768/ ■お約束 ・sage進行でお願いします。 ・荒らしはスルーしましょう。 削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、 削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。 ■投稿のお約束 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため) ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。 2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 18 23 50 ID hH0uY2t4 2get 3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 18 34 38 ID h+IXzE7Y 1乙! 4 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 23 04 59 ID YnoCnSSM 1乙 5 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 09 12 46 ID Rh28Ktfn 1乙 そして、件の大全関係貼り。 ttp //crusherfactory.net/~pmoon/mt/001571.html 6 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 15 28 22 ID TxBBfj/e 1乙 7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 19 56 05 ID N0q73xgb あんまり話題に上がらないから心配になってきたんだが、 ジョジョ4部の山岸由花子ってヤンデレだよな? 8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 20 19 09 ID BpnCPs7O 1乙 9 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 20 46 20 ID XSks2dAr 7 ただのヤンデレってレベルじゃねえぞ! 最後は想い人と結ばれたし、スタンドは強力だし最高だぜ 10 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 22 20 16 ID dNVPHguz コミケ行く人はこれの報告よろ。 ttp //nekomarudow.com/y/ 11 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 23 07 28 ID WH3emu5i そういえばさ。 保管庫のBBSに「リンクにVIP発のヤンデレゲームを入れないのか」って書き込みがあ るんだけれど、これってどうなん? VIPがどういう所なのかはよう知らんのだけれど、人によってはえらい嫌悪の対象に なるとか聞くし。 12 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 23 33 19 ID JbHFGntF 10 一応買いに行くけど、なんか勘違い臭がするんだよなぁ。 単に俺がこの絵柄嫌いなだけだろうけどw 13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 23 41 55 ID QkQ98/Oz 前スレ 614のように言葉様を知らないって人が現れているぐらいだから。 良くも悪くもジャンルとして広がりだしているんだろうな。 14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/08(水) 23 56 19 ID gpyZgAvT やっぱりスクールデイズやったほうがいいのかな。 鋸と飛び降りと包丁はようつべで見たんだけど。 エンディング知ってると買う気がなくなるんだよな。 15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 00 03 16 ID /ZCC4tXO そこに辿りつくまでがいいんじゃないか 16 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 00 41 14 ID 2HXuWWMA 11 2ちゃんねるの荒らしの9割はVIPの仕業 17 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 02 06 14 ID UJPFoL5q 11 なんかVIPもそうなんだが、ただ最近のヤンデレブームに乗っかってるだけの感じがする 他にもヤンデレ同盟(笑)とか、ここの住人からしたらミーハーに見えるんじゃないかな? 18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 02 19 12 ID RJI7AEsp まあ別に、このスレがヤンデレ総本山とかそういうわけでもないからそこらへん肝に銘じとこうな 19 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 02 21 52 ID O7fPZZcP そんな事、思ってる奴が居るのかww 20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 02 46 53 ID rebm2sMX 11 荒らししか能がないような糞野郎もいれば神みたいな奴もいる。無論普通の人間も。 人種の坩堝というかカオスというか……それがVIP。 21 名前:名無しさん@ピンキー[jtccy068@] 投稿日:2007/08/09(木) 02 53 16 ID 9e6YIyQ9 プロットを投下させていただきます。 ―――プロットの主軸――― 公立高校の2年生に進級した主人公がクールな幼馴染みとツンデレ生徒会長に挟まれ、 主人公をどちらが独占できるかを争い、最終的にヤンデレ化し BAD END(このスレ的にはHAPPY ENDか?)を迎えるという話。 最初のうちは二人を交えて修羅場を展開するが、途中からどちらかのルートに移動する というところまで思いついたが俺には難易度が高すぎたため力尽きた…… 一応ある程度の流れと登場人物達の設定、オチまでは考えついたので載せたいと思う。 できれば悪友が欲しかったなぁ…… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 主人公 ・いつもニコニコしてのほほんとした態度の少年で周りからの評判は比較的良好。 できるだけ前向きに物事を考えようとするが実はネガティブ思考の持ち主。 ・今年、皆(特にツンデレ生徒会長とおもしろがった友人達)にはめられ 生徒会副会長になってしまったが「…まぁ、いいか。」と本人は思っている。 ・顔は決してイケメンではないが不細工でもない。勉強もスポーツもそこそこのでき。 ・現在ボロアパートに一人暮らし中で仕送りはあるものの、かなり生活は苦しい。 家事全般は並みのできだが、たいてい金欠の危機にあっているため生活は乱れがち。 ・恋愛に関してはかなり疎く、自分に対する好意にとても鈍感で 無意識に好意を自覚するのを恐れているふしがある。 しかし無自覚に女性に対して親切な行動を取るので実は意外とモテる。 そのせいでヒロイン達は日々イライラしている。 ・小2の頃に両親が事故死し、祖父母に引き取られる。 そこで暖かい祖父母の対応や友達になってくれたクールな幼馴染みによって 一旦は立ち直るものの、中学の時告白した女の子にOKをもらった直後に彼女も事故死。 自分と親しくすぎる人は死んでしまうと思い、 高校入学をきっかけに祖父母宅を出て一人暮らしをするようになる。 それ以来周りの人間とは表面だけの付き合いに抑えているが、 クールな幼馴染みは例外で唯一の心許せる親友。 ・ツンデレ生徒会長のことはきついけど結構いい人、ほっとけない人だと思っている。 22 名前:名無しさん@ピンキー[jtccy068@] 投稿日:2007/08/09(木) 02 57 33 ID 9e6YIyQ9 クールな幼馴染み ・性格はクールだが結構思いこんだら一直線なところがあり、実は照れ屋さん。 ・元々あまり社交性がない上にズバズバと歯に衣着せぬ言い方をするため、 周りの多くは彼女を敬遠し、友達は少ない。 尤も本人は暁人以外はどうでもいいと思っているため気にしていない。 ・家は結構裕福な方だが両親は仕事でいつも家を空けているため孤独。 ・料理はほとんど家に一人の状態のため上手いが、 やる気が起きないので出前やコンビニですましてしまう。 ・主人公とは同じクラスで席も隣同士。 自宅が主人公のアパートと近いのでよく一緒に帰ったりする。 周りに暁人とはよく彼氏彼女の関係なのでは邪推されたりする。 一応否定はするが彼女自身は内心まんざらでもないと思っている。 ・頭脳明晰、スポーツ万能、容姿端麗、グラビアアイドル並の体型と まさに天から二物も三物も与えられている天才肌タイプ。 ・当然もてるのだが告白に成功した者は未だかつて存在しない。 そのため主人公によく『自分なんかに構ってないで早く彼氏を作って欲しい』と心配される。 ・ヤンデレ化すると狂気を孕みながらも完璧に冷徹そのものの思考で どうしたら主人公を自分の元に縛り付けておけるかを考えるようになり、 彼の良心さえもそのためには利用しするようになる。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ツンデレ生徒会長 ・ツンデレでプライド高いけど根は優しいはずの超お嬢様で生徒会長。 かなり素直じゃなく人の感情を逆撫でするような発言と行動を取るが、 それは彼女自身の自尊心と生来の無器用さのせいである。 しかし可愛い動物や子供などには優しい一面を見せたり、 自分の無礼な発言や行動を後で悔やんだりと 本当は脆い一人の泣き虫で優しい少女である。 ・勉強、スポーツも相当でき、もちろんスタイルもいい。 しかしそれは彼女の血の滲むような努力の賜であり、 彼女が影でものすごく努力していることを知るものは少ない。 ・彼女の持つ高貴なオーラのせいか絶大なカリスマ性を誇り、 生徒はもちろん、教師までもが彼女にはうかつな態度を取ることはできない。 ・去年も生徒会に入っていて、今年の生徒会長に賛成率100%で選ばれた。 ファンクラブが存在するほどの美人で、男子にも女子にもモテモテ。 尤も本人はかなり迷惑に思っている。 家の関係もあってかなり顔が広く、それなりの男女交際をしたことはあるらしいが、 皆自分に合う男じゃなかったと速攻で振っている。 恋愛に関して本人は否定しているが結構ロマンチストな面がある。 ・ある財閥の一人娘で家はハンパじゃないほどのお金持ち。 そのため両親はほとんど外出中で広い家には使用人と自分だけという かなり孤独な生活を送っているため、本当はかなり愛情に飢えている。。 そのために今のようなひねくれた性格になってしまったらしい。 ・ヤンデレ化すると元のプライドが高かったところと実は孤独を恐れているところの両面がエスカレートしてしまい、 非常に傲慢で一度キレると相手がボロボロになっても暴力を容赦なく振るう凶暴な一面と 自分がしたことに恐れおののき、主人公に拒絶されたくない一心でひたすら泣き叫びながら 許しを請おうとする非常に人格が不安定な状態になってしまう。 23 名前:名無しさん@ピンキー[jtccy068@] 投稿日:2007/08/09(木) 03 00 12 ID 9e6YIyQ9 ―――クールな幼馴染みサイドの話――― ・小2の時転校してきた主人公の暗い様子に共感を抱き、 何かと構ううちに仲良くなり無二の親友となる。 そのまま彼女が主人公に抱く気持ちは恋になる。 しかし主人公が中学の時ある女子に告白し、OKをもらったのを目撃。 怒り狂った彼女は女子の跡をつけ、道路に突き飛ばし彼女を殺害する。 前述で述べたとおり、次第に人を避け始める主人公に 『昔から仲がよかったけど自分は死んでいないし、これからも死なない。 自分だけは大丈夫だ、ずっと側にいてあげる』 と彼を慰め、主人公と親しい人物を自分だけにすることに成功した。 ・昔から主人公宛のラブレター、チョコ等は即処分、仲介は全て断り、 直接告白しようとする女子には何らかの方法で全力を持って妨害と、 努力を欠かさなかったおかげで今まで彼には自分だけだった。 自分から告白するのは女が廃ると思っているので 後は主人公が告白するのを待つだけだと余裕な態度でいたが、 最近彼の周りに女の影(特にツンデレ生徒会長)がちらつくことに クールな仮面の下でかなりの焦燥感を感じるようになる。 初めのうちは嫉妬に狂う自分の姿を見せまいと何もないような振りをしていたが、 主人公が他の女(特にツンデレ生徒会長)と楽しそうに喋る姿に耐えきれず、 取り乱したまま告白してしまう。 しかし主人公に 『幼馴染みを今更そんな目で見られないし、今のままの関係が心地よかった。 だから友達のままでいよう。』 と断られた瞬間に彼女の中の何かが壊れた。 いきなり主人公に拒絶されたのなら生きている意味など無いと 手首を持っていたカッターで切り裂く。 当然主人公は彼女を説得するため『好きだから落ち着いてくれ!』等、 その場逃れな事を言って彼女の家まで行って治療する。 そして彼女は『自分を殺させたくなかったら自分を愛せ』と 脅迫まがいなことを言って、断り切れない主人公を逆レイプする。 コトが済んだ後に彼女は自分が自傷しない代わりに 主人公を自分の元で管理、拘束するための条件を彼に突きつけ、 彼女の狂気を孕んだ完全なる冷徹な瞳を見た主人公は何も言えず、為す術もなく条件を呑む。 翌日で主人公は自分の腕にべったりとくっつき登校する彼女を見た周りから好奇の視線にさらされる。 学校に着いてからも彼女は主人公が側から離れようとしたり、他の女子と少し喋ったり、 触ったりしただけでも、彼だけに見える位置でポケットの中からカッターをちらつかせたり、 昨日までは着けていなかったリストバンドを外し、生々しいリストのカットの痕を 狂気を孕んだ微笑みを浮かべながら見せたりするようになった。 そして彼女は主人公に再度例の脅迫まがいのことを暁人の耳元に囁き、 彼が仕方なくそれに従うのを見るとクスリと暗く微笑み、主人公に体を擦りつけ、そっと口付ける。 彼女に全てを拘束されてしまった主人公は、この先も自分は彼女に縛られ続け、 生きていくという予感を感じながらも、黙って押し倒されるしかなかった。 24 名前:名無しさん@ピンキー[jtccy068@] 投稿日:2007/08/09(木) 03 07 29 ID 9e6YIyQ9 ―――ツンデレ生徒会長サイドの話――― ・彼女は生まれ待った容姿やカリスマ性によって周囲からいつも高い評価を受けていた。 それは彼女にとって当然で誇りであるが、反面評価を下げるわけにはいかない、 周囲の期待に応えなければいけないという重荷でもあった。 しかし今年クラスのある男子が自分に対して全く好意を抱かないという 彼女にとってはあり得ない事態が起こった。 しかも自分の弱い一面を偶然主人公に見られ、取り乱し泣き出す彼女。 しかし自分がいつも周りのプレッシャーに苦しんでいることに気付いているのか、 それとなく優しくされ、彼女のプライドは深く傷つけられる。 主人公に対して強く興味を持った彼女は彼について調べ尽くすことを決意し、 皆を扇動して彼を生徒会副会長にまでしてしまう。 しかし今までの男とは全く違うタイプの彼と一緒にいると なんだか胸の奥が暖かくなるということに彼女はまだ気付いていなかった。 ・主人公のことを想うだけで胸が苦しくなり、彼が他の女といるだけでも女を殺してやりたくなるほどの嫉妬心に身悶えし、 持ち前のプライドの高さで何とか自分を保っているほどの状態になりながらも、自分が主人公のことが好きだと言うことを プライドの高さと仮面の下の自分に対する自信のなさのせいで認められずに苦しみ続ける。 しかしその間にも主人公が他の女(特にクールな幼馴染み)と 仲良くしているところを見せられ続け(主人公にその気は全くないが彼女はそう感じた)、 次第に彼に対して 『なんで私がこんなに苦しまなきゃいけないのよ!?全部あんたのせいよ!責任取ってよ!』 と全て主人公に責任という名目で怒りを押しつける気持ちと 『このままじゃ主人公を他の女に取られちゃう…暁人に捨てられたくないよ!何とか、何とかしなくちゃ…!』 と異常なまでに主人公に捨てられるのを恐れる気持ちが生まれた結果、彼女は狂った。 25 名前:名無しさん@ピンキー[jtccy068@] 投稿日:2007/08/09(木) 03 09 41 ID 9e6YIyQ9 ・主人公にちらつく女(特にクールな幼馴染み)の影に異常に怯え、 なりふり構っていられない彼女は無理矢理主人公を自宅に連れ込み、 『そうよ、私は別にあんたのことなんか好きでも何でもなくてあんたが私のこと好きなんでしょ?! それをわざとごまかして他の女といちゃついてるんでしょ?!そうよ、そうに決まってるわ! 私への性的な欲求を抑えきれなくなったあんたが狼になって 他の女の子に被害を出すと夢見が悪いから仕方ないわね! 私が付き合ってあげてもいいわよ?さぁ、早く告白なり何なりしなさいよ!』 とかなり自意識過剰なことを突然言ってくる。 当然主人公は意味が分からず、しかもその傲慢な態度に少し腹の立ち、 『別に自分は君のことを恋人という意味では好きではないし、 そんなことを言う人のことを好きになれそうにもない。』 と本当のことを言って彼女の家から出て行こうとする。 すると逆上した彼女は突然スタンガンを主人公に押しつけ、身動きがとれなくなったところを血反吐を吐くまで暴行を加える。 主人公がもう声も出せないほどボロボロになったところで突然我に返った彼女が 自分が主人公を殺す一歩手前まで暴行を加えてしまったことにショックを受け泣き叫ぶ。 突然の彼女の変わり様に主人公が呆然としていると 彼女は泣きながら必死に謝罪を繰り返し、許して欲しい一心で自分を傷つけ始める。 主人公がありったけの力を振り絞って彼女の自傷を止めようとするが 彼女は『何でもするから捨てないでください!』と泣き叫びながら懇願してくる。 このままの状態では危険だと判断した主人公は いったん彼女を落ち着かせるために仕方なく交際を申し込む。 すると途端に彼女は笑顔になり、主人公を強引に自室に運び、手当てをしている最中に欲情し、 ボロボロな上に先ほどの様子から拒否しきれない主人公は抵抗もできないまま彼女に犯され、気を失ってしまう。 そして目が覚めると彼女はいつもの意地張りだけど可愛い彼女に戻っていた。 安心した主人公に彼女は『付き合ってくれと言われたからしょうがない』等、 散々言い訳しながらもベタベタとくっつき、そのまま登校。 しかし彼女は主人公が側から離れようとしたり、他の女子と少し喋ったり、 触ったりしただけでも怒り狂い、人気のないところに連れて行くと容赦なく暴力を振るい、 我に返って自分がしでかしたことの現状に気付くと、 また泣き叫びながら許しを請うといった行動を繰り返すようになる。 彼女が作り出した暴力と贖罪のループに取り込まれてしまったことに主人公は気付き、そして悟った。 自分が死ぬまで決してこの無間地獄からは逃れられないと。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 以上で投下終了です。 長々と5レスも使って申し訳ありませんでした。 26 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 04 01 46 ID f8/BqFnw ああ、かわいいなあなんて思ってしまった自分は 人として何か致命的にやばい気がする。 自分的に好みはクール幼馴染かなあ。 黒さはもとより、冷徹な分、アクションにも対応してくれそうだ。 ヤンデレの一番の醍醐味はあの鋸とナイフのバトルだと思うんだ。 ああ、あと前スレの 614氏。 言葉様はオーバーフローのスクールデイズのヒロインで SHUFFLEの楓様とならび、ヤンデレブームの火付け役となられた方だと 思うのだがいかがだろうか? 鋸をご利用なされ怨敵を抹殺された素晴らしいお方であられる。 ちなみに言葉様はFDともいえる次作サマーデイズにも出演なされ、 そちらでは確かに本当やゴルフクラブをお使いになっていたはずだ。 27 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 08 01 28 ID JLqFsbCv 保守用に短編で書いてみました。 私のお婆ちゃんは呪い師だった。 お婆ちゃんは言っていた。女はミステリアスじゃなくちゃいけないと。 馬鹿馬鹿しい。私が望むのはそんなのじゃない。 お婆ちゃんは私に人を呪う方法を教えてくれた。 相手の腕を破壊する呪い。相手を不幸にする呪い。そして惚れさせる呪い。 そしてお婆ちゃんは言っていた。 人を呪う時はじわじわとゆっくり呪えと。 馬鹿馬鹿しい。私は誰も恨むつもりは無い。 高校に入った時、私は文芸部に入った。 そこで出会った憧れの先輩。でも……先輩には恋人がいた。 胸も体もその先輩が優れてたし、私はそっと身を引く事にした。 でも私は見てしまった。あの先輩の恋人が浮気をしていた事に。 「でもアイツ馬鹿だよねー。私があんな奴に引かれると思ったのかしらー」 許せない………許せない………。 思いっきり掴んだ拳から血が流れ落ち、その血が呪いを受けて立ち上がる。 「シネ」 次の日、先輩の恋人は学校に来なくなった。なんでも見知らぬ男と駆け落ちした……。 という事にしておいた。だって、先輩が彼女の事を考えると私が付け入る隙がなくなるし……。 「お弁当なんてラブラブじゃん」 「ううん……別にそんなのじゃ……」 ニタリ(計画通り) 28 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 09 04 13 ID SSojZFno ちょwwwwwww月オチwwwwww GJ 29 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 10 33 35 ID PE9VewkI 25 乱暴な言い方になるけど そこまで出来てるなら自分でやれ、主人公の名前も決まってるようだしな それと、目欄にはsageだ 30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 10 42 05 ID Tn8UOx7q ここまで書いときながら後を自分で書かないやつはいないだろwww 他人に丸投げするには要らん情報ばかりだぜwwww 31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 12 45 50 ID Zn8YyRNC 誰かに書いてもらおう、そう思ってシナリオみたいなのを書いて投稿した 25 しかしそのあと返って来たレスはお前がやれ^^見たいなレスだった。 そして 25は自分のシナリオを自分で書く羽目になった。 25は中学2年生で早くも大人の世界を知ってしまった夏休みの日だった。 32 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 12 48 32 ID /PW8D9Pi 「ねえねえ、名無し君」 「ん、なんだ」 「今日も、おうちに居てくれるの?」 「ああ」 俺の答えを聞くと、女は蕩けたような笑顔を浮かべ抱きついてきた。 この女は、俺のストーカーだ。 いや――ストーカーだった、というのが事実としては正しいだろう。 今では俺の恋人、もっと変わった言い方をすれば内縁の妻だ。 同じ屋根の下で暮らして、同じ釜の飯を食って、同じベッドで抱き合いながら眠る。 夫婦の実態など知らないから断言できないが、夫婦生活というのはこんなものだろう。 俺は今年の1月後半から、望んで女に監禁された。 監禁される前日まで、この女はずっと俺をストーキングしていた。 俺が住んでいた家に女がやってきた時点で、すでに俺はかなりおかしくなっていた。 それまでも大量の手紙、帰宅したとき勝手に用意されている夕食、携帯電話へのモーニングコールなど、 それ以外にもいろいろされてきた。 しかし俺は、それらに参って監禁されたわけではない。 俺はSSを書くのが好きだった。 仕事に行っている間も、ずっとSSのことばかり考えていた。 仕事に行かずにずっとパソコンの画面と向き合い、キーボードを叩き続けていたかった。 ある時、俺はその望みを叶える方法に気付いた。 ――この女に監禁されてしまえばいいのだ、と。 それ以来俺は家から一歩も外に出ず、SSを書くか、女と寝るか、ご飯を食べるか、という単純な生活を送っている。 最初は社会や友人への未練もあったが、今ではもう全て吹っ切れた。 SSを書いて居られれば、俺はそれで良かった。そのことに、気付いたから。 擦り寄ってきた女の体を抱き締める。 とても柔らかい。安らぐ。そして――暖かい。 「名無し君……」 「今から、いいか?」 「うん……いっぱい、して」 「ああ……」 ずっと、こうやって暮らしたい。 こんな妄想が浮かんだ俺はもう駄目かもわからんね。 33 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 12 56 36 ID kLSf/QTT 残念ながら手遅れです。 早く妄想を書き起こす作業に戻って下さい。 34 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 13 36 50 ID WDDO1uxc 残念ながらておくれです むしろこちらとしてはありがたいwww 35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 13 48 48 ID T70IeYgw 32 つまりこの先SSに嫉妬して書くのをやめさせようとする女とスレ住人との修羅場が(ry 36 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 14 44 51 ID zlyI91+F 何故ヤンデレに出てくるヒロインが総じて武装してしまうのか たまには敵女を精神崩壊させて廃人にしてしまうのもいいんじゃないかと思う ヒロイン1 高校生 主人公と付き合っている 清楚なお嬢様タイプ 黒髪ロング 綺麗というより可愛い 大きすぎず小さすぎない胸、美乳 主人公は清楚なところに惚れた しかし、彼女は激しい性衝動に悩まされており主人公を襲いたくなるが嫌われたくないため我慢している ヒロイン2 主人公の妹 兄を異性として愛しており、兄と付き合いだしたヒロイン1を憎んでいる 二人を別れさせるため暗躍する 37 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 14 51 04 ID SSojZFno 36 理論武装してんじゃん 38 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 14 51 26 ID zlyI91+F 妹はヒロイン1の内に秘める性衝動を見抜きそれを利用する ヒロイン1、凌辱、調教される 理性では拒否しながら体は受け入れてしまう 精神の崩壊を防ぐため、次第に凌辱、調教を受け入れるようになる 凌辱されることて自分の性衝動が満たされることに気付く ヒロイン1淫乱化 主人公、ヒロイン1が乱交している場面に遭遇 ヒロイン1は主人公を見てもセックスをやめない 「君も私を気持ち良くしてくれるの~?」 と言われる 主人公、変わり果てたヒロイン1に絶望する ネトラレ発生 39 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 14 53 18 ID PE9VewkI NTRはちょっとあれだなあ・・・ 40 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 15 15 43 ID QKqHVZKj ヒロイン陵辱系はヒロイン同士の殺し合い以上に拒否反応の出る人が多いから 気をつけたほうがいいな。注意書き推奨。 まあ殺し合いは許容(あるいはむしろ望む所」ってのは ヤンデレというジャンルの愛好者の中でだけしか通用しないけどwww 41 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 18 06 17 ID lbEKnMoy 保管庫のトップページの更新履歴が新しくなっている! 管理人さん、おつかれさま! 42 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 18 53 33 ID zhjaQg+4 40 俺はNTRでも歓迎だけどね。 展開にもよるんじゃないか? 泥棒猫ヒロインBの罠で幼なじみヒロインAが陵辱される。 ヒロインA淫乱化、でもやっぱり主人公が好き。 なんだかんだで主人公とヒロインAがセクロス 血が出ない、ヒロインAが処女だと思ってた主人公はショックを受ける。 ヒロインAは「ち・・・、ちがうの!初めてでも血が出ない人もいるのっ! 私、他の男の人となんてこんなことしないよ・・・」 などと嘘をつく。 最悪な雰囲気のところに颯爽とヒロインBが登場、主人公に全てを話す。 「だってねぇ、その女は他の男と ” ~ ~ ”して” ~ ~ ”なんだものっ!アハハハハ」 ヒロインA崩壊、 「いや・・・ぁ・・・ち、違う!違うよっ! ○○さんは嘘をついてる!○○さんは嘘をついてるよっ!!」 みたいなのならどうだろう。 つーか、書いてて変な気分になってきた。 43 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 19 11 25 ID RJI7AEsp ( A`)ヴェロア 44 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 19 16 22 ID Zn8YyRNC 32 けど本当にお前が大量の手紙を送られたりしたらさぞかし嫌がるんだろうなwwwww 45 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 19 38 17 ID Lk6Td3z0 42 それ魂響のかすみと紅そのまんまじゃねーか!陵辱じゃなくて和姦だったからさらに鬱 46 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 19 58 58 ID zlyI91+F 45 詳しく聞こうか 47 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 20 26 05 ID Lk6Td3z0 46 主人公と両想いな妹(かすみ)が主人公にベタボレなヤンデレフタナリ(紅)の罠にはまり 紅の部下のイケメン男(こいつは実はナイスガイ)と和姦。ちなみに処女。 終盤に主人公とセクロスするんだけどそのときまさに 42そのまんまの状況になります。 最後はショックを受けすぎた主人公が紅を受け入れて二人で去っていく。残されたかすみは絶望してEND イケメン男はかすみの友達とできててかすみとの関係が見られてその子に刺されて死亡。 ついでにその友達の姉も主人公に惚れてるんだけど紅の罠にはまって陵辱されます。 他にもENDあるけどどれも紅が勝つENDでかすみは絶望。 48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 20 37 41 ID zlyI91+F 主人公にベタ惚れなのにイケメンと和姦?凌辱じゃなくて? 何故…あぁ罠か 罠にしろ和姦にもっていくのは無理がなくないか さっき感想サイト見てきたんだけどアンチ冬馬が多いね 49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 20 58 49 ID Lk6Td3z0 48 主人公はへたれっていうかダメ人間すぎるからね・・ 罠っていうか精神的に追い詰められちゃって(陵辱されかかったり主人公と友達の姉の和姦現場みたりその他諸々) 紅に無理やり命令されたイケメンに口説かれて兄さんのせいなんだから・・ってなって和姦。みたいな流れ。 イケメンは紅に薬つかってかすみを輪姦させちゃうぞって脅迫されてそれなら・・ってかんじ。 今考えると紅は相当なヤンデレだったな。スレ違いでごめん。 50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 21 18 18 ID RJI7AEsp 49 主人公と友達の姉の和姦現場みたり ちょ、お互いさまじゃねえかwww 俺はバハラグのトラウマのせいでどうしてもNTRは駄目だ……( A`) 51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 21 55 44 ID 3jVxKJf9 沙羅曼蛇ーより……はやーい! 52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/09(木) 23 15 01 ID g0JYvsBM いや、そこは逆に考えるんだ。 「あんなド腐れ糞女、こっちからお断りに決まってんだろうが!」と思うんだ。 それにビュウはまだ良いよ。フレデリカやメロディア(それとセンダック)にも好かれてるし、これから幸せになる事だって十分可能なんだから。 本当に不幸な奴って言うのは、オルステッドみたいな奴の事を言うんだよ……。 53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 00 40 12 ID ygQsKTfe 愛してるって言葉だけでは、信じてるって思いだけでは、人の心を捉えておくことなんて出来ないのよ 54 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 00 57 46 ID MHlURQeR 愛してるってのは言葉にしなければ伝わらないのに 愛してないってのは言葉にしないでも伝わってしまうんだ そう、あいつがあんな事になってしまったのも… 55 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 00 59 53 ID ZC9BzT8U ならば愛などいらぬ! 56 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 02 10 46 ID X0ipuJOe お兄ちゃん、お兄ちゃんはお父さんとお母さんと、学校の先生に怒られちゃったの? わたしはお父さんとお母さんと、あと友達とかにまでいろいろ言われたよ。 もうあんなやつら友達なんかじゃない。 お父さんもお母さんもひどいよ。 でも、だれもわたしとお兄ちゃんを知らないところに行けば問題ないはず。 名字が同じなんだから、夫婦で通るよね。 ご近所に初々しいご夫婦ねとか言われちゃって… それでもし知ってる人が来たら×しちゃえばいいよね。 だから一緒に行こう? ほら、旅支度して、えへへ 大丈夫、ちゃんと出発前の「お掃除」はしといたから。 さ、お兄ちゃん? 57 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 04 47 22 ID T3u2U/DN 56最高だ。ぜひSSにしてくれ。 ヤンデレ喫茶で全裸で待ってるから。 58 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 09 08 08 ID CVisOHdf 57 無謀すぎるぞw そういえばヤンデレ喫茶の発端となった人、未だに連絡がないな。今頃どうなっているんだろう? 59 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 12 30 52 ID DZ/Jpqrn おそらく10回目に行ったんだろう 60 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 16 28 47 ID po6vV3lt http //mup.vip2ch.com/dl?f=17193 保管庫見た限り絵でもいいみたいだから投下 61 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 16 30 12 ID S2YDE8KX 60 よくやった! 62 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 16 43 27 ID JtQNUzuc 60 (・∀・)イイ! でもこれ、どのSSの絵? 63 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 18 19 52 ID XiGo3Ehp SSの絵とは限らんだろ 64 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 18 43 18 ID JtQNUzuc となるとさすがに板違いではあるまいか。 でも逆にこの絵に合うSSを考えてみるという方法もあるか? 65 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 20 02 55 ID ifK0gDAa 64 空気ぶっ壊すようなレスしないで>< 60 GJ乙 66 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 20 03 00 ID po6vV3lt http //mup.vip2ch.com/dl?f=17199 大河内さん 60 板違いなことしてごめん 67 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 20 31 32 ID aGrF5+Bw 65 ( ^ω^) ……。 66 大河内さんのイラストGJ。 68 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 20 38 51 ID ajGkr/+J 半角二次元ならばオリジナルおk、 っていうか大歓迎何だぜ。 69 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 20 54 33 ID Sl9mxWwF ま、ここは昔からヤンデレ系のネタなら何でも歓迎だったし 気にする事はないんジャマイカ 66 久しぶりの大河内さんktkr! 何かもう必死な所がカワユス 70 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21 18 46 ID aGrF5+Bw あれ? 保管庫の中の人、ご乱心?? 71 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21 20 19 ID Sl9mxWwF ん? なにかあった? 72 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21 24 11 ID aGrF5+Bw 何か、リンク集がめちゃくちゃになってるキガス。 73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21 25 48 ID Sl9mxWwF 久々に見たらリンクがずいぶん充実してるな 単にリンクが増えたから編集方法変えただけなんジャマイカ? 74 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 21 37 48 ID aGrF5+Bw ああそうだったのか。 無駄に騒いでスマソかった。 75 名前:素敵な顔が見たいから ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/08/11(土) 06 02 57 ID ikuyr0LK 短い話を投下します。 76 名前:素敵な顔が見たいから ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/08/11(土) 06 05 03 ID ikuyr0LK 携帯電話を取り出して時刻を確認します。AM5 55。 のんちゃんが起きる5分前です。 あと5分、そう、あと5分待つだけで朝イチの、のんちゃんの顔を拝めます。 のんちゃんはいっつも早起きさん。 私が朝お家に入って朝食の準備や制服のアイロンがけや部屋の掃除をするようになってから、 どんどん早く起きるようになっています。 最初の頃は嬉しかったです。 だって、私のおかげでのんちゃんの生活リズムが整って、健康になっていくんですから。 でも、さすがに最近は早過ぎです。 前は早くてAM7 40、遅くてAM8 10に起きていたのに、昨日は6時起き。 このペースでいくともしかしたら5時には起きちゃっているかもしれない。 さすがにそれはやめてほしいです。 いくら私でも5時までにのんちゃんを迎えにいく準備は終えられません。 え、何の準備か? それはもちろん、血と愛液の準備ですよ。 朝食とお弁当に混ぜるだけの量をとるためにはせめて30分は欲しいです。 のんちゃんが朝早起きするせいで、今でも40分くらいしか時間がとれてないんです。 楽しむためには、一時間あっても足りないのに。 ポケットから合鍵を取り出して、玄関の鍵を開けます。 この合鍵は一ヶ月前、のんちゃんが渡してくれたものです。 あの頃ののんちゃんは照れ屋さんでした。 私に合鍵を渡すために、わざわざペットののりちゃんの小屋の中に入れていったんです。 そんなに恥ずかしがらなくても、のんちゃんがくれるものなら私、なんだってもらっちゃうのに……。 一番欲しいのはもちろん、初めてと白い精液とムスコさんですけど。 ほかには、のんちゃんの愛情も肉体も心も視線も優しさも――全部、ぜーんぶ欲しい。 少しでも取り残しがあったら、他の女の子に取られちゃいますから。 家の中に入ったら、のんちゃんを起こさないよう、這うようにゆっくりと廊下を進みます。 廊下の突き当たりを右に曲がって、その先にある部屋へと、ひたり、ひたり。 このときの私は、自身の呼吸で空気を震わせてのんちゃんを起こしてしまうんじゃないかと思うほど、荒く息をついています。 だって、もう少しであのはにかんだ笑顔が――! もうだめです! のんちゃん、今すぐ行きます! ドアを乱暴に開けて、ベッドの上で布団の中に籠もって待つのんちゃんに、ダイビング! 掛け布団の上から覆い被さって、私はのんちゃんの体を抱きしめて……って、あれ? 「のんちゃん、どこ行っちゃったんですか~?」 布団はぺしゃんこにつぶれました。 別に私が重い訳じゃないですよ?のんちゃんが布団の中にいなかっただけです。 「のんちゃーん! 愛しのハニーが来たっていうのに、どこに行ったんですかー!」 「……ここです、先輩」 のんちゃんの声です!振り返るとのんちゃんのまるでテディベアみたいに愛らしい顔が、顔が! ああ、その寝ぼけた顔なんかまるで女の子みたい! 私の服、着せてあげたい!ううん、着せてあげます! 77 名前:素敵な顔が見たいから ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/08/11(土) 06 07 46 ID ikuyr0LK 「のんちゃん、ミニスカートとブラウスの組み合わせって好きですか?」 「え……まあ、その格好が似合う人が着てるんなら何でも好きですけど。 ――じゃない! もう来ないでくださいって行ったじゃないですか! 今の先輩、ストーカーそのものですよ!」 「え~、違いますよ。私は、のんちゃんの恋人ですよ?」 「なっ……、本気で言ってるんです、か……?」 のんちゃんの顔が青ざめました。 もちろん本当に青いわけじゃないですけど、言葉にするとそんな感じです。 でも、本当に顔が青くなってものんちゃんはのんちゃんだから、私の愛は変わりませんよ。 「のんちゃん、青が好きでしたよね?」 「え? はい、結構好きですけど……」 「じゃあ、私がのんちゃんを青くしてあげます!」 顔と、髪の毛と、体と、爪と……あと、目にもカラコン入れたほうがいいかな。 青いのんちゃん、楽しみです。 「青く、って……もしかして、赤マントとか……青って答えたら、血を抜かれるとか、そういう……意味で……?」 のんちゃんが腕をさすってます。あ、鳥肌びっしり。 風邪かな?おなか出して寝るとそうなっちゃうんですよ。 やっぱり、早くのんちゃんを説得して一緒に寝てあげないと。 「青いマントでも赤いマントでもいいから、とにかく横になっているときは着とかないといけませんよ?」 「……っ! やっぱり……そういう、ことか……先輩は、血をどうするんですか」 「血? 血は……」 あれ、昨日のお弁当のケチャップにたっくさん血を混ぜてたのに気づいてたんですか。 何事もないように食べてたから気づいてないと思ってました。 私もまだまだです。もっとのんちゃんをよく見とかないと。 「実は、私……」 「……はい」 「ご飯作るときに、よく使うんです 「――っ! ……う、く……」 のんちゃんが息を呑んで私の言葉を聞いてます。まじめな顔も、好きです。 「今日もいっぱい、いっぱい使ってあげるから、楽しみに――」 「う、あああ、うわあああああああああああ!」 のんちゃんが突然駆け出しました! 部屋の外に出て、ドアを音を立てて勢いよく閉めたら、また声を張り上げました。 「もう、許してください! 僕は、なにも悪いことをやってないじゃないですか!」 どたどた、という足音が遠ざかっていきました。 続いて、玄関が閉まる音が聞こえました。 何がしたかったんでしょう、のんちゃんは。私をこの部屋に閉じこめて……。 あ、もしかして私を監禁するつもりだったんじゃ?! え、でも私はどちらかというとのんちゃんを監禁したい方で……でも。 「のんちゃんにしつけてもらえるなら、監禁されてもいいかも。――うふ」 あのテディベアみたいな顔が、残虐な顔になったら、また可愛いかもなあ。 見たいなあ。よし、来月の目標はそれにしましょう。 でもその前に、一度めちゃくちゃにしてもらいたいですけど、ね。 78 名前:素敵な顔が見たいから ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/08/11(土) 06 10 29 ID ikuyr0LK 今日の通学路では、のんちゃんと一緒に歩けませんでした。 私がお弁当を作っている間、外で待ってくれているかと思っていたら、先に行っているんですもん。 つまらないです。のんちゃんの無防備な眠そうな顔も、ふらふらとしながら歩く姿も見られない。 あの、ため息を気だるそうに吐くときの横顔が見られないなんて。 今日は他のところでいいことがあれば嬉しいです。 お昼になりました。 私の席は教室の廊下側の一番前。チャイムが鳴ったら先生より早く、誰よりも早く教室を後にします。 もちろん、のんちゃんの元へ向かうためです。 きっとのんちゃん、朝ご飯を食べてこなかったからお腹を空かせてます。 コンマ一秒でも予断は許されない状況です。だから急いでいるんです。 生徒や先生を蹴散らしながら、ようやくのんちゃんのクラスへたどり着きました。 「あ、先輩。今日も来たんですか?」 声をかけてきたのはのんちゃんではなく、ついさっきまでのんちゃんと同じ時間を共有していた忌々しい女子生徒でした。 今日のように急いでいなかったら無視するんですが、今日は状況が違います。 「ええ。のん――野村君はいる?」 「えっと……あれ? いないな、どこ行ったんだろ。さっきまでテーブルに突っ伏してたのに」 のんちゃんが、いない? そんな、どうして!どこに行ったの? こうしては居られません。教室にいないとわかった以上、ここには用なしです。 教室を背にして、すぐに探しに向かいます。 今日のお弁当の酢のもの、自信作なんですから――絶対に、食べてもらわないと。 のんちゃんは屋上にいました。もちろん一人です。 よかった。誰か他の女と一緒に昼食をとっていたら朝の苦労が無駄になるところでした。 今まで他の女に向ける憎悪を抑えつけてきた努力も無駄になるところでした。 のんちゃんはフェンスの金網を掴みながら中庭を眺めていました。 「のんちゃん、ど、う、し、た、の」 「うわっ、うわわわあああ! せ、先輩っ!」 声をかけた瞬間にのんちゃんが振り向いて、あとずさりました。 後ろは金網ですよ?その先にはただ空があるだけですよ? さらにその先には――死が待っていますよ? もう、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。 「うふ。はい、これ」 「なんですか、これ……いや、聞くまでもない、か……いつもの……」 「はい。私の愛情入りのお弁当。今日のメニューはね……」 「あの、作ってきてくれて、ありがとうございます、とは思いますよ。けど……もう、こういうのやめてもらえませんか」 「え?」 やめる、ってお弁当を作ってくることを? 「馬鹿いっちゃだめですよ。これからもずっと、私がのんちゃんのお弁当を作ってきてあげますから。 いっぱい食べて、栄養つけて。じゃないと、今日の夜、体がもちませんよ?」 「また、やるんですか……アレ」 「うん」 アレっていうのは、いかがわしいことじゃないですよ?私とのんちゃんの鬼ごっこのことです。 ずっと昔、私とのんちゃんが小学生のころから毎週欠かさずやってきたイベント。 日付が変わるまでずっとのんちゃんが逃げ回って、私がのんちゃんを追う。どこまで逃げてもOK。 それだけの他愛のない遊びです。 けど、私にとっては大事な一週間のしめくくりなんです。 79 名前:素敵な顔が見たいから ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/08/11(土) 06 13 05 ID ikuyr0LK 「もうやめましょうよ。二人とも高校生になったんだし、それに幼なじみなんて言っても、もう……」 「幼なじみなんかじゃないですよ~。こ、い、び、と」 そう。恋人。のんちゃんを独り占めにしてしまえる唯一の存在。 その席にいるのは私だけ。もうきっと――誰もそこに座ろうとはしません。 他の女は私の愛の前にひれ伏して、みんなのんちゃんの前から立ち去りました。 もし誰か近づいてきても、私は絶対に負けたりなんかしませんけどね。 のんちゃんがまた怯える表情を見せました。 「もう、やめてくださいよ」 「やめる? なにを?」 「そんな……ストーカーまがいのことなんてっ! 迷惑でしかないんですよ!」 「違うってばあ。怒りますよ、のんちゃん。私はのんちゃんの、たった一人しかいない恋人、なんです」 「そういうところがストーカーっぽいんです! さようなら!」 のんちゃんは私を突き放すと、すぐに屋上から立ち去りました。 うふ。照れてる照れてる。もう、本当にかわいいったらありゃしない。 いじめたいなあ。手と、足を縛って、公園の木にくくりつけて、アソコを扱いてあげますよ。 出そうになったら一回止めて、言葉責めにして、収まってきたらまた……って。 でも、やっぱり気持ちよくさせてあげたいな。 ――そうだ、お尻。お尻の穴に挿れられると男の人も感じるって聞いたことがありました。 じゃあ、私の方からのんちゃんのお尻を犯してあげればいいんですね。 のんちゃんの喘ぐ声、可愛いんですよ。 先輩、許して。ごめん、好き、好きですから……もう、やめて……。 あ……想像しただけで、アソコがとろけそう。 駄目だなあ。のんちゃんのことを考えるだけで、どんどん愛が深くなってく。 今はまだ平気だけど、この調子だといつか愛情のダムが決壊しちゃう。 そしたら、本当になりふり構わなくなって、のんちゃんを犯しちゃうかも。 でもそれじゃダメ。やっぱりのんちゃんからしてもらいたい。 いっぱいいっぱい中出ししてもらって、いっぱいいっぱい撫でてもらいたい。 子供もいっぱい欲しいなあ。みんな男の子がいい。 小さいのんちゃんがいっぱいいるなんて、夢みたい。 「えへ」 顔が勝手に緩みます。 「えへへへへ」 唇が横に広がるのを抑えきれません。 「えへへへっ……私、すっごい幸せ者だあ……」 約束された未来。その時がくるまでずっと待っているのは辛いけど、待ちます。 私の人生は、のんちゃんのためにあるんですから。 のんちゃんを手に入れるためにあるんですから。 80 名前:素敵な顔が見たいから ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/08/11(土) 06 15 07 ID ikuyr0LK 走る、走る、走る。 のんちゃんが逃げる、逃げる、逃げる。 ああ、楽しい。まだ今は夜の8時。これから4時間ものんちゃんと遊べます。 最近はのんちゃんどんどん足が速くなってきてて、少しでも油断するとすぐに逃げられちゃう。 隠れながら逃げるのも上手だし、人ごみの中を突き進むのも手馴れてる。 でも――まだまだ甘いですよ。 「のーん、ちゃーん!」 「ヒッ……!」 のんちゃんを捕捉しました。現在5メートル前方を疾走中。 私、足には自信があるんですから。 もちろん足の長さにも自信がありますけど、走りにも自信があります。 「ほらほら、早く逃げないと、捕まえちゃいますよぉ?!」 「……はっ、はっ……も、やめて……くださいよぉっ……」 ああっ、いいです、その声! 勝手に頬が吊り上ってきますよ! のんちゃんを追い詰めてくこの気持ち、最高です。 逃げ場を失って、絶望するのんちゃんの顔も見たい。 誰にも頼れなくて、迷子の子供みたいな顔でさまようのんちゃんの顔も見たい。 今からスピードを上げてのんちゃんを捕まえたら、凄くいい顔が見られるかも……。 でも、まだしません。私には計画があるんです。 のんちゃんとの結婚式当日、式場に来ない私。 当然のんちゃんは私を探しにでかけます。もちろん花婿姿で。できたら和服がいいですね。 今にも泣きそうな顔で、私を探して奔走するんです。 私はのんちゃんと初めて出会った公園で待っています。 そこへのんちゃんがやってきます。 このときののんちゃんの顔、きっと凄く輝いてます。 私を見つけられた喜びと、いまだ残り続ける不安と涙でぐしゃぐしゃです。 のんちゃんが私を抱きしめます。そして涙声でこう言うんです。 僕、君がいないとだめなんだ!僕の前から居なくならないでくれ!なんでもするから! これが、私にとって本当に嬉しいプロポーズの言葉になるんです。 私は焦らしながら、のんちゃんを少しずつ許していきます。 結婚式の前に愛を確かめるのは当然のことですよ。 ねえ、のんちゃん? 「く………………かす、み……」 「霞ちゃん? 今度はその子?」 「あっ……!」 えへへ……口が滑っちゃいましたね、のんちゃん。 あの眼鏡かけてる小さい女の子のことですね。いいこと聞いちゃいました。 「先輩、霞に、は…………近づかないで……」 「ど、う、し、よ、う、か、な」 あの子をいじめたら、またのんちゃんの泣きそうな顔が見られますね。 今度はどれぐらい持つかな?せめて一週間はもってほしいです。 「お願いです。せんぱい……」 えへへ。逃げ切ったら、考えてあげますよ、のんちゃん。 簡単に捕まっちゃだめですよ? 私は、ずっとのんちゃんの怖がる顔が見たいんですから。 絶望のその先にある、誰も見たことのないのんちゃんの顔を引き出したいんですから。 「愛してますよ、のんちゃん」 おしまい 81 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 06 18 34 ID ikuyr0LK 66 あなたにとても感謝しています。昨日はもだえ死にそうになりました。 自分で思っている大河内の1000倍は可愛かったです。しかも絶対領域装備。 じっと見ていると、なんだか紙から出てきそうな気さえしました。 描いてくださって、本当にありがとうございました。GJでした。 82 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/08/11(土) 08 03 48 ID 79UZaX18 81koeeeeeeeeeeee!!!! 悪寒が走った。GJ! 83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 08 17 26 ID DKssVyJa このぐらいの短編もさらっと読めてイイ 先輩可愛いよ先輩 84 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 08 37 53 ID IUHSesRp これは良い病みっぷり 85 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/11(土) 10 19 57 ID f39bCfLr 遅くなりましたが新スレ&保管庫更新乙です 86 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 11 40 10 ID VSc9Q6o5 面白かったけど、主人公は鍵をとりかえろとw 87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 12 46 42 ID WjGyOkCV 86 ヤンデレに開けられない鍵は無い 88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 14 06 40 ID Pj9z1oJc 87 鍵職人かよ。 89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 15 08 49 ID AltSWpRB 86 鍵を変える→窓から侵入 防犯ガラスにする→電話がくる 全てシャットアウト→外に出たところをヤられる 回避不可能です。諦めて下さい。 90 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 16 23 20 ID qK5ppGc2 俺の心の鍵だけは、開けさせないぜ! 91 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 16 37 18 ID mJK9qYpo ガイシャの死因は胸部を刃物で・・・だそうです 検死の結果、心臓が無かったそうです どうやら彼女は鍵ごと盗んだようですよ 92 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 17 54 39 ID YeQ6rTD3 この事件は猟奇殺人事件ではありません、強盗殺人事件です。 え?心臓がえぐられただけで金銭は盗られていない? いいえ、彼女は大切な物を盗んでいきました。 被害者の「ハート」ですよ 93 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 18 23 03 ID Pj9z1oJc 89 やられるって殺されるのか・・・ 94 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 18 24 40 ID Pj9z1oJc どうでもいいけど1980年代の映画ってよくこの女ヤンデレじゃね?って言う映画あるよね。 95 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 19 13 12 ID 6km7k7AE 恋愛至上主義のあの頃は好きな男のためなら待ち伏せや付きまとい、 泥棒猫を絞め殺すのも許されたんだぜ。 96 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 20 29 17 ID vW8nGX+q とりあえず、好きな相手の後をつけてしまう行為が 秘めた一途な愛だと思われてた時期は確かに存在した 97 名前:緋口宗一[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 20 32 34 ID taAnTlBK 殺し屋1の垣原はヤンデレだと思うんだ。 というかあれがラブコメであることに映画作った人は気づいてない 気がしたんだ…マー君は「うおっ、アブねー、当たったらどーすんだよwww」 とか言わないよう… ところで、「えっちシーンよりも暴力シーンでハァハァしてしまいます」 とこゆってる米倉けんご先生はヤンデレに入りますか? 98 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 21 42 08 ID PVzS/T5h 97 (;^ω^)…… 99 名前:緋口宗一[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 23 00 34 ID taAnTlBK 引かれてもこりずに逝きますよ! いい長門を見つけたので。 ttp //codechaos.blog104.fc2.com/blog-entry-183.html 100 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 00 18 11 ID eb7F4FqQ 荒らしだったのか、こいつ……。 101 名前:緋口宗一[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 00 41 00 ID UtyKZcDX ち、違う… わりと真面目にヤンデレ好きで前にSS書こうとしたけど 速攻で詰まって3,4か月放置してる酔っ払いです……! 99に挙げたやつの関連として 「愛しの彼が殺せない_朝倉涼子VER_」 もまあまあかと思ったのですがいかがでしょう。 ニコニコ動画でみれます。 102 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 00 48 06 ID k3RwQWsl 101 短編SSでも良い。お前の妄想、俺達に分けてくれ 103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 01 05 40 ID gSlJSsbC 鬱陶しい自己顕示野郎だな 104 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/12(日) 10 28 14 ID OYdhnwg0 まあ酔っ払ってるからなんだろう それしてもスレの流れが速いな 105 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 00 56 24 ID EArCiYNm そうかあ? 106 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 03 31 ID cdP6PCyt 「……というわけで、魔法使いは自分の家にいる、髪長姫と王子様が逢引していることを快く思っていなかった事が最大の原因でした。髪長姫は…」 妹の理沙が延々と、しかし当の本人は飽きることなく、寧ろその時間一刻一刻を楽しみとしながら、僕をその膝の上にのせながら、本を読み聞かせている。 最初は妹の行為に対していささかばかりの抵抗をしていたが、すぐに妹の気性からその抵抗の無意味さを悟り、彼女の話す物語を聞いていることにした。しかし、時計の長針が一回り半する頃になると、病人であるが故に睡魔が襲ってくるようになった。 いつもなら、理沙はそんな僕から眼鏡をはずし、そのまま眠りにつかせてくれるのであったが、今日はそうではなく目を醒ましていることを強要してくる。 北方さんから貰ったしおりを一片の仮借なく破り捨てたり、無理なことを強要したり、言動においてもやや常軌を逸していたりと、理由なく強引な手段を取らないはずの理沙であったにも関わらず、今日はその性格を異にしているようだ。 ただ、その理由に全く心当たりがないわけでもなかった。 近頃の僕は理沙を軽んじすぎていたのだ。北方さんと話をする機会が増えた分だけ、妹である理沙と過ごす時間が減少したのだ。だから、理沙は寂しく思ったに違いない。 寂しいなどという品格のない形容では名状しがたい感情が苦しめていたのだろう。 それゆえ、このような行動を取っているのだと取れば、納得がいくというものだ。 だから、罪滅ぼしになるとは重いもしないが、敢えて僕は北方さんのくれたしおりを破り捨てた際も決して怒らず、 突発的に湧き上がった恐怖心から軽薄な抵抗はわずかばかりしたが、それもすぐにやめ、こうして理沙の話す物語に眠らないように必死になって耳を傾けている。 107 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 04 42 ID cdP6PCyt それから十数分間の間、理沙は話を読み進めていたが、何を思ったのか、真紅の本を棚に置いた。 「お兄ちゃん。」 そう、今までになく甘えるような声で僕を呼び、覆いかぶさるようにして上からその焦点を僕の瞳にあわせてきた。 僕は理沙を下から仰ぐようにして目と目が合った状況で、僕は先程感じた謂れのない妙な恐怖心を再び感じた。 冷や汗が背筋を伝うのと、電流のように恐怖心が体中に伝播していったこととで思わず、僕は肩をすくめてしまった。 「あはは、お兄ちゃん、どうしたの?そんな怖がっちゃ駄目だよ~。」 理沙は僕の恐怖を少しでも和らげようとしている為か、優しげな微笑を口元に浮かべてから、ゆっくりと安心するように静かな声でそう言った。 しかし、そうした行為の間も理沙の目は僕の目から離さずにいた。 そして、何よりも特筆すべきことは、彼女の目は笑っていなかったことだ。 そう、顔は笑っていても目は笑っていないのだ。 そのギャップから生じる不協和音が僕に一層の恐怖感を与え、後ずさる場所もここがベットの上であることからないため、殻に篭るようにさらに強張った身体を収斂させる。 そして空調の稼動する音、秒針の規律正しく時を刻む音、医療機器からわずかにもれ聞こえる音、それらのいつもは気を払わないわずかな音一つ一つが僕の心を揺さぶり、針のように突き刺した。 自分の妹に対して何故、これほどまでに恐れる必要があるのかわからなかった。 自分が病人で、彼女に逆らえない状態であることに加えて、今日は理沙が強引な行動を取っているからだろうか? それもあるかもしれないが、それ以上に何か危険が自分に迫っている事を本能的に感受していたような気がする。 だから、相手が妹といえども強い恐怖心を抱いたのだろう。 そして、その予想は当たっていたと言わざるを得なかった。 108 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 06 27 ID cdP6PCyt 「どうして、怖がるの?お兄ちゃん?」 「……。」 無言の答えを返す僕に対して、毛ほどの慈悲も与えることなく続けて言った。 「お兄ちゃんが怖がっている理由、私は知っているよ。私ね、お兄ちゃんのことならなーんでも、知っているんだから、当たり前だよね。」 次の瞬間、取り繕われていたわずかばかりの微笑みすら消えてしまっていた。 「お兄ちゃんはあの忌まわしい雌猫に汚されたことだって!」 激昂した理沙の目には既に狂気が宿っていた。その怒気迫る表情に恐れをなすあまり、彼女が言っている汚された、という語句に注意が行き届かなかった。 「ごめんね、お兄ちゃん。思い出したくもない事を話して。でもね、私はお兄ちゃんが私を怖がっている理由、北方さん、いや雌猫にあると思うの!」 そうではない、僕自身も彼女の事を愛しているのだ、と弁明しようとしたが、崖を加速しながら進む岩のように語気をより強めながら話している理沙の発言に対して、 割って入ることが火に油を注ぐことになるのはわかっていたので、できなかった。 「雌猫はお兄ちゃんの心をコントロールしているの!だから、お兄ちゃんはお兄ちゃんの為を思って行動しているのに、私が悪だと思うの!」 僕のためかどうかは、彼女にとっては正直なところ、北方さんに僕が奪われるよりはまともだと考えた結果、軽視したのだろうか。 「理沙、僕は理沙を悪だと決め付けてなどいない。それから、北方さんを悪く言うのはやめなさい。」 理沙が北方さんを対して並々ならぬ嫌悪を抱いているのは既に解っていた。そして、自分に少なからず、その責任があることも。 そこまで知っておきながら、兄としての立場を理解していながら、怪我をしても何もしなかった自分は愚かなのかもしれない。 しかし、ここまで大切な北方さんを誤解、否、悪意にとっているならば、とにかくその誤解を解きたいという気持ちが先走った。 これ以上、無意味な対立を原因としてこの前のようなことが起こるのは耐え難いのだ。 109 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 08 06 ID cdP6PCyt 理沙をたしなめようとしたその時、理沙は身軽に僕に覆いかぶさり僕の発言を妨げるように、唇を塞がれた。 唇を重ねているだけでなく、理沙は舌を僕の口に潜り込ませ、あまつさえ僕の舌に絡めてきた。 次第に頭がぼんやりとしてき出して、真っ白なもやがかかったようになっていった。 今、強引に身体を重ねてきている相手が自分の実の妹であることは、当然把握できていた。 しかし、それに対して抵抗することができなかった。明晰な意識状態にあり、十人並みな倫理観があるならば、そうしていただろうか? しかし、今の僕には前者が欠けていたのだろう。 理沙は病弱な体とは思えないほどの力で覆いかぶさって、僕を動けないようにすると、あらかじめ用意していたのか、 几帳面に整えられている制服のポケットから短めの縄を数本か取り出した。 「お兄ちゃん、少し痛いかもしれないけど我慢しててね。」 そう言う声はいつも僕に昼食を作ってくれたり、僕の制服のボタンを付け直してくれたりした、優しい妹そのものであったことに、 背筋の凍りつくような恐ろしさを感じた。 110 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 10 16 ID cdP6PCyt 気がつくと、もう既に背中には噴き出した気持ちの悪い汗がつたっている。 そんな中、僕の体の上に乗っている妹は手を動かしている。 「や、やめなさい!」 そんな発言など問題ないかのように、手際よく両手と両足をそれぞれ縛ると、一旦僕から離れて、 通学用鞄から長めの縄を取り出して、ベットと僕の体を縛り合わせた。 その作業の間、僕は抵抗し続けたが、両手両足の自由を奪われている以上、そんなものは蟷螂の斧でしかなかった。 「さて、と。準備はできたね。」 妹はこれ以上、が無い程の満面の笑みを浮かべている。これほどまでに妹が喜んでいる姿をいまだかつて僕は見たことが無かった。 そう、僕が理沙を映画や買い物に連れて行ったときも、理沙がよく私服につけているブローチをあげたときも、 こんなにうれしそうな顔をしていなかった。 それがただただ悲しい。 「お兄ちゃん、これから何をするかわかっているよね?」 あはは、と笑いながら僕に尋ねた。 「………。」 「今から、あの雌猫の毒を抜いてあげるんだよ、お兄ちゃん?それにね、お兄ちゃん、私ね、お互いの事をもっとよく知るべきだと思うんだよ。」 拘束された僕の眼前でおもむろに、制服を脱ぎ始めた。 悠々たる態度で一糸纏わぬ、生まれたばかりの姿になった。 そして、理沙は手早く脱衣した制服をたたんだ。 理沙は抵抗しようが無い僕から夜着の下衣に手を掛け、下着ごと脱がして僕のソレをあらわにする。 111 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 11 34 ID cdP6PCyt 「本当にやめなさい。こんなことして、何の意味があるんだ!実の妹じゃないか!」 「大丈夫だよ、何もお兄ちゃんは怖がる必要は無いんだからね。すぐに楽になるよ。」 「僕の話を聞きなさい!」 そういう僕を尻目に夜着の上衣のボタンを一つ一つ丹念にはずしていき、それらをたたんで棚に置いた。 そうしてから、彼女は再び動けない僕の体を覆い、唇を重ね合わせた。 「んちゅ………ぴちゃ……」 理沙はそのごく小さな舌の動きを止めずに先程以上に執拗に、ねじ込むようにして絶えず僕の口内を舐め回し、舌に絡めてきた。 「はぁ……くぅぅ……り、理沙……」 そうしながらも、空いている手は僕のソレへとのばされており、どこで覚えたのか解らないほどの技術で強烈な刺激を与えた。 「ちゅ……んっんー……」 それが如何に罪深いことであるか解っていたが、理沙がとめどなく与え続ける二つの刺激にただただ壊れてしまった人形のように、 身体を震えさせることだけしかできなかった。 当然、こみ上げてくる快感を押しとどめることはできず、抵抗するどころか、あまつさえもっとそうして欲しいとすら思ってしまう。 112 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 13 19 ID cdP6PCyt 抵抗がとまったことに満足したのか、僕にかける理沙の力が幾分か減り、一層気持ちよく感じられてくるのだった。 軽い電流が流れ続けて頭が灼かれるような、そんな感覚が僕を狂わせていく。 抵抗せずこのままなされるがままでいるのも悪くない、寧ろ今のこのひと時を楽しんでもいいんじゃないかとすら、感じた。 先程抱いていた背徳感なぞ陽炎のようなもの。 夕方だというにも熱い外気によって生み出された陽炎のようなものに違いないのだ。 そう思い出した頃から、理沙は僕のソレへと伸ばされている手の動きをより早く、過激なものにしていた。 その心地よさに僕は麻薬か覚醒剤でも投与されたかのように痙攣した。 気づけば、理沙も心なしか震えている。 拘束の補助として使われていた片手が理沙のソレへと伸びているのに気がついた。 距離というべき距離が無くなって、僕の目を見つめていた理沙には、僕の心境の変化を見通していたのかもしれない。 「お兄ちゃん、ダメだよ~正直にならなくちゃ。お兄ちゃんは私の事をじらしているんだよね、だってそのほうが私だって楽しめるからだよね、あはは。」 うれしそうな声がはかなく霧と消え去ってしまいそうな意識の中で聞こえ、それは天啓か何かのように聞こえた。 そうだ。お兄ちゃん、と慕ってくれる妹と愛し合うのが何がいけないのか? 113 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 15 29 ID cdP6PCyt 「あ、あ、あ、あああ……」 理沙が切ないあえぎ声をあげている。 そして、緩やかだった僕のソレに添えられていた手の動きも既にかなりの速度になり、当然のように絡みつく舌と舌。 「んん……ちゅぅぅぅ……ちゅぷぅぅ……」 そう、それはもはやキスと呼べるようなものではなく、唇と唇が重なり乱れあうだけの貪りあいに相違なかった。 僕の中で何か熱いものが体中を速い速度で駆け巡り、ソレにだんだんと集まっていき、臨界点へと達しようと少しずつ限界を告げる。 「お兄ちゃん……お兄ちゃん……はぁぁぁ……」 「ううっ……あああっ……理沙、僕は…」 「お兄ちゃん……はあぁぁ………私も…もうちょっとで……はぁはぁ……お兄ちゃん…気持ちよくなって!」 すぐ目の前に見えた限界を前に、ここぞとばかりに理沙の手が早くなった。 「理沙、理沙、もう………駄目…だ……!」 「お兄ちゃん!…わ、私も……!」 そういうと再び、離されていた唇をそれまでに無く強く重ね合わせる。 「理沙、理沙ぁぁぁ!」 「あああっ! あああああっ……!」 その瞬間に、僕の周辺の世界がすべて真っ白になり、それはディスクが新しくフォーマットされていくような感じだった。 ただ、下半身から熱い塊が放出されていく感覚だけがあり、 それがややぐったりとした理沙のきめ細かな肌にかかるのをどこか現実味の無い世界の事のように眺めていた。 114 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 17 48 ID cdP6PCyt それから、長いことぐったりとしていた理沙は、自分の体と僕の体をティッシュで綺麗にしてから、落ち着いた表情で僕を見つめてきた。 ブロンドの髪に相対する黒曜石のような透き通った瞳に僕は吸い寄せられそうになっていた。 「お兄ちゃん、もう、我慢しなくてもいいんだよ。私だって、お兄ちゃんと無理やりしたくないし、 私もお兄ちゃんを……もっと…もっと……感じたい、から。……その…もっと……して。」 拘束し四肢の自由を奪う、という異常な選択をしていながら、いまさらのように恥らいつつそう言っていたが、 そういいながらも先程まで手の動きの心地よさと絶頂が反芻されて思考を停止させる。 何も考えたくない。 ただ快楽を貪りたい。そう感じた。 それから、理沙は僕の両の腕と胴体そして両足を拘束する縄をベットの近くにある鞄から取り出したナイフで順々に切り落とし、 拘束から僕を解き放った。 115 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 19 32 ID cdP6PCyt 「ねぇ、お兄ちゃん……来て。」 頬を赤らめていつもする照れ隠しのような色合いを見せている。 すぐに理沙のすぐ傍まで来なかったことが、少しじれったかったのか、伸ばしてきた手が僕の腕を掴み、胸に抱き寄せる。 顔のすぐ傍まで小柄な妹にはやや不似合いの双丘が迫り、すぐに暖かい温もりを感じる。 「お兄ちゃん、ギュッと私を抱きしめて。」 そういいながら僕をより強く抱擁する。 理沙の体の暖かさが僕を眠りへと誘う。 優しい温もりと心地よさが先程まで荒ぶっていた僕の心を落ち着かせる。 ずっと、ずっと、こうしていたい、そう思う。このぬくもりはどんな凍てついた心さえも温め、 苦しみをも和らげてくれそうな気がする。 「お兄ちゃん、気持ちいい?今度は……お兄ちゃん…」 116 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 21 41 ID cdP6PCyt しかし、この理沙の温もりを強く感じていながら、今頃になって、このどんな苦しみをもやわらげてくれる温もりが、 傍にいるべき人の温もりが理沙のものであるはずがない、とふと本能的な何かが僕にそう告げている。 そう思ってか、無意識のうちに理沙の体から離れる。 すると、急に理沙への身を溶かさんばかりの幻想が泡沫のように消えていく。 なぜか、胸騒ぎがするのだ。 彼女の父の約束によって、北方さんが僕のいるこの病室に一度もこなくなってからの事について―。 当然、彼女の事だからいつもの能面で過ごしているとは思う。 しかし、これは僕のうぬぼれかもしれないが、きっと心の中では寂しさを感じているに違いない。 むしろ、うぬぼれであって欲しい。 約束を理沙が一方的に破っている事も、釈然としなかった。 落ち着いて考えてみれば、理沙が言うような北方さんが理沙に対して攻撃したことはほぼ無いといっていい。 あるとすれば、あの自衛の為にスタンガンを向けた程度の事であっただろうか。 僕だって、スタンガンを押し当てられそうになったとしたら、北方さんと同じ行動を取っていたのかもしれない。 「……どうしたの?」 それに対して、理沙は北方さんの自転車の細工をしたり、屋上に呼び出して北方さんを襲っている。 そう考えると、どちらが正しいことを言いそうなものかすぐにわかるものだろう。 117 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 22 59 ID cdP6PCyt 北方さん………。 自分の暗い過去を背負いながらも健気に、一人で生きてくることを強いられていた彼女。 そんな彼女が僕が悲しみの淵に立たされているときに、優しく抱擁してくれた。 傍にいる事さえできれば、他には何も望まない、と言った彼女―。 本当は触れたら脆くも壊れてしまう、ガラス細工と変わらないような儚い存在なのに、 僕だけしか守ってあげられる人がいないのに、ただ一人で歩んでいこう、強くあろうとする彼女―。 そして、いままでの思い出一つ一つが紡ぎ出されていく。 僕も彼女の事を愛しているのだ。それはおそらく、今も変わらない。 最も守るべき彼女をないがしろにするわけにはいかない。 僕が守らなくてはならないのはあくまでも北方さんなのだ。 彼女を守らなくてはならない僕が、彼女が望むように一番、傍にいてあげなければならない僕は、 彼女を裏切るような真似は絶対にできない。 どうして、さっき、僕はこんな単純な事に気づかなかったのかと思う。 それで、僕が気づいたときには妹と過ちを犯す一歩寸前まで来てしまっていたのだ。 さっきの自分の考えこそが陽炎であったのだ。その陽炎はもう跡形も無く消えてしまった。 だから、今からでも遅くない―。 118 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 25 25 ID cdP6PCyt 「お兄ちゃん、どうしたの?大丈夫?」 急に黙りこくってしまった僕を本当に心配するように理沙が尋ねる。 今ならば、まだ、やり直せる。いや、やり直さなければならないのだ。 このまま、理沙と体を重ね、交わることで何かが終わってしまう、そしてそれからは破滅が始まるのだ、とそう何かが強く警鐘を鳴らしている。 「…お兄ちゃん……お兄ちゃん、私のこと、嫌い?」 理沙が僕の名を呼び続け、自然な微笑みを浮かべながら僕にそう尋ねる。 それでも、僕はやはり理沙に拒絶の意を示さなければならない。 「理沙の事は好きだ。しかし、僕は北方さんを愛している。その上に理沙、僕はお前の兄だ。だからこれ以上は……できない。」 そう、理沙の黒曜石の瞳から目を放さずに自らの決断をかみ締めるように言った。 その深刻そうな表情に理沙は狼狽の色を隠せない。 「……、ど、どうして。私はお兄ちゃんのことが好きなんだよ!」 狼狽していることがその震えた口調になって現れる。 「理沙、お前が嫌いだと言っていないよ。でも、僕は気づいたんだよ、自分のすべきことに。」 「やはり僕は北方さんを裏切ることはできない。」 119 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 26 56 ID cdP6PCyt 続けざまに発せられた僕の発言は、肩を体全体を震わせながら、泣くことをぎりぎりのところで止めていた堤防を破った。 「どうして!あんな、あんな雌猫なんか!お兄ちゃんは操られているんだよ!どうして、どうして、お兄ちゃんは私の言うことを聞いてくれないの……お兄ちゃんは私だけのもの…なのに……。」 「………。」 それは、病弱な妹が今まで見せたことが無いほどの取り乱した姿だった。 興奮したためか、理沙はぜいぜい、という荒い息を肩でしていた。 おそらく、喘息の発作が出たのであろう。 ここで生半可な優しさを見せることは逆効果だとは思いつつも、 自分の身勝手とも言える行動のせいでこうして発作が出てしまっているのだと考えると、 発作のときにいつもそうしていたように、手を力いっぱい握ってやりたいという気持ちがして、手を伸ばしかけた。 が、妹はその手に手を伸ばそうとはせずに、喘息の発作で苦しそうな表情のまま、制服を静かにそして手早く着ている。 「………。」 うつむき加減の妹が苦しげな表情に混ざって悲しそうな表情をしているのがわかって、また罪悪を感じたが、自分が罪を犯していたことの罪悪を考えて、何とか我慢しようとした。 やがて、服を着た理沙は恐ろしいほど物音一つ立てないほど静かに、ナイフでちぎれた縄の残骸を拾い、広げられたいくつかの道具と荷物を鞄にしまって帰る仕度をした。 それを僕は無言で見送っているだけだった。 それに対して、妹の理沙も何も言わずにただ背を向けて、この部屋を出て行ってしまった。 120 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 28 04 ID cdP6PCyt 年のわりに白髪が多く、ごま塩頭のようになっている男が、泊まり先のホテルの一室で、手の中のCMで宣伝されている機種の携帯電話を耳に当て続けている。 しかし、その男は一度も電話の相手と話していないのだ。 着ているスーツの趣味のよさと身のこなしからそれなりの身分の人間であることを匂わせるその男はこの数日間、同じ相手に電話をかけ続けていた。 しかし、その相手は出ないのだ。その相手の母親が電話に出ることがあっても、相手に取り次ぐことは一度としてなかった。実際にその相手の家に向かっても、取次ぎはしない。 なぜかは解らない。 しかし、いずれにせよ言える事は彼は焦っていた、ということだ。 この賭け、そして彼自身に残されている時間がもうわずかしか無いのだから―。 彼は自分と同じ悲劇を他の誰かが味わうことを望んでいなかったから―。 121 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 28 54 ID cdP6PCyt 彼は当事者同士を会わせないようにして、各個分断することにしたのもそのためだ。 しかし、各個分断して秘密裏に解決しようとした本命の相手に何度電話をかけても相手は出ようとしない。 電話が八十ほど鳴った頃、彼は諦めて携帯の通話を切った。 そして、再び今度の商談についての書類が置かれている机の上へと視線をやった。 そこには、無機質な数字と文字の羅列された商談についての書類が広がっていたが、 机の端に診断書と大病院の院長へ宛てられた推薦状が入った紙袋がさりげなく、商談の書類に隠れるように存在していた。 自分と同じ思いをさせたくない、そういう気持ちと度重なる厳しい仕事がその病院へ向かう機会を一回、また一回と潰していった。 もう、治らない、そういう諦念が彼に少なからずあったことも原因であった。 それだけに、彼は娘とその愛する人、そしてその妹、三人のうち誰一人として、悲劇に見舞われないようにしたいと逸り、 気ばかりが急いてしまうのだった。 122 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 30 28 ID cdP6PCyt 13話でした。 では、また。 123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 02 54 58 ID wBRw5ZnH GJ!!!!!!!! 124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 03 22 00 ID AaUZ52oK ぐっじょ!早起きは三文の得と言うが、本当だな 125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 07 25 36 ID biuWRhh3 途中までヘタレ全開の松本君 が、誘惑に耐えてよくがんばった! 感動した! 126 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/08/13(月) 18 53 05 ID DnG/MSwT 投稿します、以下長文乱文誤字脱字はご容赦ください。 キ道戦士ヤンダム~狂戦士 それから三日後、パプアニューギニア沖における極東アジア軍と北イタリア及び欧州連合軍との戦いは熾烈を極め、 両軍のロボットの残骸と兵士の死骸で南方の海は覆い尽くされていた。 しかしそんな中でもくじける慶介ではなかった。慶介は沙紀とともに覇洋で前線を戦い抜き、ようやくヤンダム搭載船 の確保に成功した。 「これで…ようやく沙紀が救われるのか」 手にはさっそくコンテナから取り出したヤンダムのアンプルを握って呟く慶介…しかし残念なことに 船を確保するまでに覇洋は装備と燃料を使いきり、その自慢の右手は完全に破壊されていた。このまま追っ手が迫れば、機体で 逃げ切ることのできない二人はただではすまないだろう。 「…すまない沙紀、こんなところで…後一歩ってところで俺と心中することになるなんて…」 「…ううん!希望を捨てないで慶介少尉!ほら、あれを使えば!」 彼女の指差す先には、カーゴトラックに載せられたロボットが一台あった。 「…いや、あれは調べてみたんだが…どうやら、ヤンダム常用者専用の機体らしくてな…お前や俺が 飲んでいるような強化薬での反応スピードじゃあ…」 「…なら、私が飲んでみる!」 「そんな…使用分量もきちんと量ってないってのに…第一拒否反応が出たら最悪お前が廃人になっちまうぞ!」 「いいの、それに私…いつも慶介に守られてばかりだったから…」 そういうと沙紀は慶介の手からアンプルを奪い取って一気飲みし、そのままロボットのコックピットに乗り込んだ。 「…沙紀…」 慶介は複雑な気持ちを抑えつつもロボット…後に慶介によってヤンダムと名づけられた白銀の機体…に乗り込んで 操縦用コンピューターを起動させた。 「…あはははは、こんなシステムで動くのこれ?はっきり言って覇洋のシステム性能がゴミに思えてくるよ!これなら 敵機の百や二百…ははははははは!!!」 あははあはは…と、テンションの高い沙紀のオペレート操作に不安を感じながらも慶介は必死に追っ手の敵ロボットと 交戦した。結果、敵側の新型機体であるペスカトーレMRB≠003五機は自軍の極秘開発された最強兵器であるヤンダムのビーム チェーンソーによって海の藻屑にされてしまった。 後に海中世紀戦争での極東アジア軍の完全優位を決定させる事件…ヴァリアント攻防戦である。 127 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/08/13(月) 18 56 27 ID DnG/MSwT 「ねぇねぇ慶介、こうしてお買い物するのって久々だよね~」 それから数日後、シンガポールに寄航したヴァリアント号のメンバー は久々の休日を楽しんでいた。 「うん、俺もすごく嬉しいよ…でも、さぁ…」 「へ?どうしたの慶介?…何か…まさか何か不満でもあるのかなあ?」 ほえほえとした声で答える沙紀、しかしその眼差しはどこか光を失ったような、とろんとした目に なっていた。 「手をつなぐなんて…その…恥ずかしいって言うか…」 「嫌なの!?」 「嫌違う!嫌じゃない!俺はこのままがいい!」 すばやい沙紀の反応に慶介は即答した、それを聞いて、よかったよ~と沙紀は表情を綻ばせた。 …おかしい、この反応は異常だ…慶介はここ数日の間…ヤンダムを服用してからの沙紀の異常 行動に恐怖を感じていた。 服用薬をヤンダムにしてから、確かに彼女は以前のように発作を起こすことはなくなった… しかし、普段は災害にあった当時のことを思い出すからやめてほしいといって握らなくなった自分 の手を、彼女は四六時中握り始めるようになったのだ、戦闘場面ではさすがに控えてくれと言って はいるが、それもなかなか聞き入れないくらいに…彼女は自分をもとめ始めた。 更にそうなると隊内にもからかいのうわさが流れ始める、…そのことを訂正させようかとたまたま声を かけてきた女性仕官達に話しかけたところ…。 「なんで…そんな女と話してるの!!!」 沙紀は一気に慶介に詰め寄った、もちろん普通には詰め寄らない、軍服の襟部分 をつかんで軽がると慶介を持ち上げたのだ…そして自分の目を見つめること数秒後。 「…そうだよね、慶介少尉は私しか見てないものね、あの女たちが勝手に少尉に 迫ってきたんだよね…なら、そんなビッチは粛清したほうがいいよね…あは☆」 そういうなり沙紀は腰元の拳銃を士官達に向けようとした、あわや大惨事になる ところだったが、慶介の必死の説得でその場は事なきを得たのだ…そして、その後 自室にてある程度落ち着いたところで彼女は…一気に慶介の唇を奪ってこういったのだ…。 「慶介…もうずーっと私から離れないでね…」 隣にいる沙紀の笑顔を見るたびに、彼の頭の中にはその記憶が浮かんだ…自分は彼女以外 の人間とは最初から付き合う気はなかったのだが、こうも日々疑われてはたまらない。 「なあ沙紀…言っておきたいことがあるんだ…俺はお前をー…!?」 沙紀を見つめようとして振り向いた慶介…その視線の先には信じられないものがあった。 商店街のショウインドーに…今はこの世にいないはずのあの人物が写っていたからだ。 「沙紀!こ…こっち来い!!」「うわあ!!何なのいきなり!!」 「今…あそこに妹が…七海がいたんだ!!」 「…ナナミチャンガ…ナナミチャン…」 ぶつぶつとそう繰り返す沙紀を尻目に慶介はショーウィンドーに駆け寄った、災害に 巻き込まれてもう死んだ妹が街中に立っていたのだ…たとえそれが他人の空似であった としても興奮するのは無理もない。慶介花は妹らしき人物に急いで駆け寄ってこう叫んだ。 「おいアンタ…ひょっとして…七海じゃあないのか?」 「…お兄ちゃん?」 ショーウインドーで物欲しげに服を物色する少女…、彼女のお兄ちゃんと呼ぶその言葉の 先にいるのは間違いなく慶介だった。 「生きてたのか七海…心配してたんだぞ」 128 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/08/13(月) 19 00 12 ID DnG/MSwT 「生きてたのか…七海…七海!!兄ちゃん、ずっとお前を心配してたんだぞ!そうだ、 母さんは!?」 妹に会えた嬉しさなのか、それとも気が緩んでいたのか…とにかく慶介は気づいて いなかった、最愛の妹の目が…ヤンダム常用者特有の…死んだ魚のようなとろんとした 目になっていることに…。 「じゃあ行こう、お母さんも待ってるよ」 ドゴッ!!…慶介に近寄ってきた七海は…慶介に抱きつくと見せかけて一気に鳩尾に拳を打ち込んだ。 「かはっ!!…なな…み…!?」 「ゴメンねお兄ちゃん、でも大丈夫だから、基地でお薬をもらえばお兄ちゃんも楽になれるよ…」 「う…おがぁ…」 声を上げれずにのた打ち回る慶介…おかしい…こいつはおかしい…何があったんだ七海 …しかも基地って…。 ぱあん!!「きゃあ!!」 七海の悲鳴が聞こえる、のた打ち回る慶介の背後に拳銃を持った沙紀が仁王立ちしていた。 「…何してるの慶介…何でそんな妹なんか相手に何してるの!?」 恐ろしく低い声で沙紀が静かにしゃべりかけた。 「沙紀…お姉ちゃん…ふうん、そうなんだ…」 「や…やめ…」ごん!!、と。 両者に抵抗の意思を示そうとした慶介の頭部は沙紀の強力な蹴りを食らい、軍人としての 鉄壁の意思はブラックアウトした。 「おお、お目覚めか少尉…」 気がつけば慶介はヴァリアントの医務室のベッドの上にいた、松高に聞いてみるとどうやら ぼろぼろの沙紀が自分をここまで運んでくれたらしく、彼女もここにたどり着いてすぐにダウンしたそうだ。 「そうですか…しかし一体何が…」 慶介は混乱する頭を何とか落ち着かせようと松高に一部始終を話してみた、もちろん沙紀の無断発砲 のことは伏せておいたのだが。 「やはりか…ヤンダムの副作用がそこまで迫っていたとは…」 「副作用?なんですかそれ…だってヤンダムは!?」 「あれは普通の人間にはそれほど影響はないんですよ …普通の精神状態を保った人間が使用すればね…しかし依存心の強い人間が使用した場合…」 「何だよそれ!それじゃ沙紀はもう…一生あのままだってのか?じゃあ俺は何のためにあんな 大量のヤンダムを…何のために…」 「戦争に勝つための任務でしょう?それ以外の何者でもない」 「あんた!!…っつ!!」 激情に任せてつかみかかる慶介の腕を押さえて、松高医師は続けた。 「…退役を進めますよ、もうこれ以上貴方がたはここにいるべきじゃあない… これ以上服用を続けたらあなたまで…いや」 松高は慶介の腕を振り解くと、医務室のドアを開けた。 「もう貴方は自分の心の深い穴に飲まれている…それからもうひとつ、多分貴方の妹は 敵国の兵士…スパイかなんかだ…もうこれ以上ここでは戦わないほうがいいかもしれない、それじゃあお大事に…」 ガチャリと医務室のドアが閉じた…考えをまとめるはずが余計に混乱した慶介は、意味もなく頭を掻き毟り始めた。 「何だよ俺…俺は沙紀が救いたいだけだったってのに…くそおおお!!」 「…うん…慶介」 慶介が叫んだ声でおきたのか、傍らのベッドで横たわっていた沙紀はむっくりと起き上がり…。 ドグシャア!!…右ストレートで一撃で慶介をノックアウトさせた、沙紀はそのまま混乱している慶介に 馬乗りになった状態で次々に鉄拳を食らわせた。 「あははははは!なんで妹なんか見てるの?どうして私を見てくれないのあはははは!!やっぱりお仕置きだよね!! だっテ慶介悪い子だもん!!あはははははは!!妹だいすきなんてゆるさないもんあははははははは!!!」 その後、慶介は意識が吹き飛ぶまで沙紀に殴られ続けた、ヤンダムによって強化された筋力での打撃は凄まじいものだった。 129 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/08/13(月) 19 01 54 ID DnG/MSwT 「うぐ…ひぐ…ごめん…なさい…」 「いや、お前に悪気があってやったことじゃあないんだ、気にするな…」 ひとしきり慶介を攻撃した後、薬が切れたのか沙紀は急におとなしくなった …そして冷静になった沙紀の思考は一気にパニックになり…こうなってしまったのだ。 「ぐず…でも…慶介が誰かにとられちゃうって考えたら私…」 「いや、もう何も言うな沙紀…」 そういって慶介は沙紀を押し倒した。 「俺がお前を守る、傷ついても、お前に傷つけられてもだ、もう俺はお前 を裏切らない…妹のことは…いざとなれば俺が始末をつける…だから…俺を信じてくれ…沙紀」 「うん…はあ…」 沙紀は全てを悟ったように目をつぶり、慶介の唇と、舌を受け入れた。 「大好きだよ、慶介」 数日後、慶介たちはパプアニューギニアからオーストラリア沿岸に攻め入るべく、ヴァリアント号 での上陸作戦を刊行していた…。 「うおおおお!!これで十機!」 相変わらず絶好調の慶介と沙紀のヤンダムコンビは、新兵器であるヤンダムのビームチェーンソーで 次々に敵を撃破していった。 「いけるぞ沙紀!あと少しであの艦隊を!!…」 「待って慶介!!後ろに敵が!!」 ザシュ!!…ビームチェーンソーを構えなおそうとしたヤンダの右腕は一気に切り落とされた。 「くそ!ブースタージャンプだ!!沙紀、ほかに武器は?」 「待って!今右手にビームクッキングナイフを装着させるから!」 ジャンプで一気に距離をとったヤンダム、しかし背後の機体はそれを構わずに脚部からミサイル を連射した。 「何だあれは…赤い機体、新型か?」 敵と正対したヤンダムがメインカメラでその姿を確認する、敵機体は赤く、その姿はまるで 鎧武者のような無骨なものだった。 「くそ!多弾数型の機体に勝てるかよ」 「慶介!敵が…無線を出してる…っ!!」 敵の無線回路をキャッチしたラジオシステムが、メインディスプレイに敵の姿を映し出す。 「お前は…」「うそ…そんな」 敵パイロットの顔は紛れもない…慶介の妹である南 七海だった。 「お兄ちゃん…また会えたね、それじゃあまずは…悪い虫を駆除しなきゃ」 ドゴゴゴゴゴゴーン!!!七海の乗る機体は、次々にミサイルを放った。 「大好きだよ、お兄ちゃん…だから私のために…怪我して降伏してね」 慶介は自分の顔から血が引いていくのを感じた、そして沙紀の…顔を見ることすらできずに 操作ハンドルを動かした。 130 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/08/13(月) 19 02 51 ID DnG/MSwT 以上です、取り合えずまだ続きます、長文失礼しました。 131 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/13(月) 21 13 49 ID YonNNA9T solaの蒼乃さんはヤンデレか?? ただ少しおかしいだけか? 132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 00 54 04 ID 2eB85pXZ 病んでる上にキモ姉という高スペックぶりです。 133 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 01 46 48 ID fnnoyqLU 病んでる部分言いたいが言えば完全なネタバレ 御新規さんさよーならーになるなw 134 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 02 57 13 ID dfewTpoc sola、つまんなかったから序盤で切ったんだけど ヤンデレあるならみときゃよかった。 ちょっと後悔。 135 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/14(火) 22 06 13 ID XydL8BOW 約束だよ・・・ずぅぅっと一緒にいてね。どんな事があっても私、あなたの側にいるから・・・ね?だから・・・約束して。 な ん で は な れ ち ゃ う の? や く そ く し た よ ね? 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 00 20 00 ID mX38doh6 ごめんなさい 137 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/08/15(水) 03 36 22 ID thLtn+NQ 保守 138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 06 41 35 ID jgb9sudi 135 落ち着いて聞いてくれ。 俺は君も大事だが君の姉妹も大切にしたいんだ。 だからまたには修羅場スレやキモ姉スレに行くことを許して欲しい。 だからその手に持ってる包丁を下ろしt(ry 139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 08 51 52 ID /jbeJCDx 138 ふーん・・・あの娘の所行っちゃうんだ~ あ の ド ロ ボ ウ 猫がッッッッッッ!!! 返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ私の大切な 138を返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!!!!!!!! ヤンデレの道は長く険しいぜorz 140 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 10 11 58 ID mX38doh6 ヤンデレってちゃんと嫉妬もするんだな。 141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 11 03 27 ID ffyW8e9T 140 というか起承転結がないと話に読み手を引き込めなくね? 起 へぇ~○○さんと仲いいんだね。私、そういうのって面白くないなぁ。 承 どうしていつも○○さんなの・・・?どうしてかなぁ、なんでかなぁ。 転 あせdrふじこlp;@ 結 達磨 これぞヤンデレ倫理の黄金律 142 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 13 58 53 ID U0gImoH3 最後に達磨とか書くと、なんか男が悟りの境地に入ってしまったみたいだ。 達磨(達観的な意味で) ニア 達磨(物理的な意味で) 達磨(輪廻転生的な意味で) 143 名前:リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] 投稿日:2007/08/15(水) 15 33 03 ID Pb+pi7en 暑い中ですが取り合えず実験ヤンデレ作品を投下します、乱文長文失礼します。 化け物屋敷と僕 ジジジジジ…音だけで蒸し暑さを象徴させるセミの声が響く中、僕は愛車であるトヨタの古い クーペのドアを開け、車を降りた。 「暑いなあ…」 大学二年生の夏、せっかく尋ねた自分の故郷…T県南部の奥地にある八幡村は、田舎ののどかな村 というかつての面影すら残らないくらいに荒れ果てていた。 見渡す限り山ばかりの平地に聳え立つ茅葺の集落は今にも崩れそうな状態になり、かっての農道は 歩く余裕さえないような獣道と化していた。 「こんなことで研究なんかできるのかなあ…」 もちろん僕がかつての故郷とはいえ、こんな田舎の廃村に来たのには訳がある。僕は大学で民俗学を 専攻しているのだが、その研究の上でどうしてもこの村に来なくてはいけない理由があったのだ…。 八幡村…かつてここは関東随一の「化け物ミイラ職人の里」として栄えていた村だった、わかりやす く言うとこの村は偽者の人魚のミイラなんかを製造して都会で売り払い生計を立てていたらしいのだ。 …なぜ「らしい」と描いたのかというと、実は僕はこの村に両親と住んでいたころの記憶が全くない のだ…十二歳のときに僕の両親はこの村で火事にあい、僕は遠縁の叔父に引き取られたのだが…どうし てもこの村での事と…最後の化け物職人だった両親の事を思い出せないのだ…。 大学での研究のためと、自分の過去を探るため…取り合えず僕は叔父にもらった村の地図を手に、廃 村してから一回も手を付けていないという父の仕事場に向かおうとした…。 「おう、あんちゃん、どこ行くんでや?こんなとこでよ?」 いきなり背後から声をかけられた、ここ特有の方言がきついようだが、声は明らかに子供のものだ。 「うわあ!!…って、君こそなんでこんな所に?」 僕の背後にいたのは、ひどい訛りにもかかわらず見た目の可愛らしいおかっぱの少女だった、服装は白いキャミソールにサンダルと麦藁帽子…夏らしく日焼けした表情は実に可愛らしくて…。 「あれ…君どこかで…?」 「へ?兄ちゃんどっかであったっけ?」 「いや…たぶん気のせいだろう」 彼女の顔はどこかで見たことがある…僕の記憶がそう訴えていた。 144 名前:リッサ ◆TKvIZfGFpk [sage ] 投稿日:2007/08/15(水) 15 35 20 ID Pb+pi7en 化け物屋敷と僕 ② 「へえ、君もこの村の生まれなんだ」 それから数時間後、僕は勝手に父の仕事場まで着いてきた彼女…名前は海晴というらしい…と、父の 仕事場である廃墟で色々な資料などをあさっていた…廃墟とはいえ村人たちは定期的に村に戻って管理 を行っているらしく、小屋が荒らされた様子はなかった。 「まあそう言ってもちっちぇえころのことだからよく覚えてねえけどよ、兄ちゃんはどんぐらいまで ここにいたんでや?」 「まあ、十二歳くらいまでだけど…どうもよくは覚えてないんだけどね…おっと、これは凄い」 うっすらと積もった埃をどけて僕は文机に乗っていた資料を手に取った。本の様子からいって年代も のの本だ…内容はどうやら剥製の作り方らしい。 「そうけ…なーんにも覚えてねえんけ…お、こりゃあ良さげなもんだな」 彼女は悲しそうにそう言うと、近くに落ちていた執刀用の刃物を手に取った…鋭利かつ複雑な形をし たそれは、なぜか錆びひとつついていなかった…。 「これでミイラとかの材料を切ってたんかなあ…どんな気持ちだったんかなあ…」 ぞくり…と、背中に悪寒が走った。刃物を持った彼女の視線はあまりにも鋭い…。 「と、ところで海晴ちゃんは何でこんな所に?」 「ん?爺ちゃんがここの守役なんだけどよぉ、どおも最近足腰弱ってるらしくって、おらっちさが代 わりにきてんさぁ」 「へえ、偉いねえ」 「へ?そうかい?…いやあ照れんなあ」 そんな感じで彼女の視線を刃物からそらしつつ、僕は彼女と他愛のない話をしつつも小屋の整理と資料あさりに没頭していった。 「本当にいいんけ?家に泊まってってもいいんだぜ?」 夕方、彼女にそろそろ家に帰るようにと進めると、彼女はそういった、僕がテントでここに泊まると言い出したので心配してのことらしい。 「大丈夫、君の家には迷惑かけられないし、それに僕は未だやることもあるからね。」 「遠慮しなくてもいいんだぜ、どうせこの村のモンはみいんな家族みてえなモンなんだしよぉ…」 「そう言うなって、じゃあここで」 僕は彼女の家だというふもとの家の前に車を止めた…しかし彼女は車から降りようとせずにこう呟い た。 「…明日もまた遊びに行ってもいいけ?」 「うん、別に構わないよ?」 「ありがとうねお兄ちゃん…じゃ!!」 そう言うと彼女は元気よく僕の車から降りていった…。 「うーん…」僕の頭の中で今朝のデジャビュ感覚が蘇る…一体あの子は誰なんだろうか?もしかした ら遊んでいるうちに思い出すかもしれない…よし、なら明日から彼女に少しづつこの村のことを聞いて みよう。そう考えて僕はまた村まで車を走らせた。 夕暮れ時、家の前にたたずんでいた海晴は…突然その場で笑い出した。 「あはははははははは!みいつけた!みいつけた!あはははははははは!」 ひとしきり笑った後、彼女はこう呟いた。 「愛してっかんね…お兄ちゃん…」 そしてまた笑い出す、それに釣られるかのように夕暮れ時のセミの大合唱が始まった。 145 名前:リッサ ◆TKvIZfGFpk [sage ] 投稿日:2007/08/15(水) 15 37 49 ID Pb+pi7en 化け物屋敷と僕 ③ それから一週間が過ぎた、もともと夏休みを利用しての研究だったこともあって、僕は半分遊び気分 でこの村での資料あさりと研究をしていた。レポートをまとめ終わり、資料の整理が終わるころには彼 女…毎日やってくるようになった美晴ちゃんとも遊びすぎて肌が真っ黒になっているくらいだった。 そんなある日の夕暮れ時、彼女は僕にこんなことを聞いてきた。 「あんちゃんってさあ、彼女とかいるんけ?」 「ん?…いないけどそれがどうしたの?」 僕は彼女の持ってきてくれたスイカをほおばりつつ、そう答えた。 「オラっちさ…兄ちゃんのこと大好きだよ…もちろんラブのほうでな」 ぶっ!!とあわてるあまりに僕はスイカをはいてしまった…おいおいおい、何だか毎日来ていて妹みたいに感じていたけど…ん…妹…。 「お兄ちゃん、愛してっかんね…」 思い出せないはずの記憶がいきなり蘇る…確かマエにもこんなことを…僕は…このことよく似たあの 子に…。 「ん…むう!!」 いきなり僕は彼女に唇を奪われた、もちろんただの唇だけではない、彼女は一気に自分の舌を僕の口腔にねじ込むと、僕の舌と自分の舌を絡ませた。 「んちゅ…んむ…はあ…」「ん…むう」 いきなりこうされてはかなわない、僕は彼女から唇を離すと、興奮を抑えきれずに、そのまま彼女を 押し倒した。 「こうして…いいのかい?」 「うん、お兄ちゃんと…ずっとこうしたかったから…」 そういって目を閉じる彼女の髪をなでると、僕は彼女のワンピースを脱がした。 「はぁぁ…お兄ちゃん…大好き…」 行為の後、そういって眠る彼女を置いて僕は、嫌な予感を抑えつつも父の作業小屋に戻った。間違いない、彼女を僕は知っている…どうも自分の記憶が戻りそうなのだ。 多分彼女は…そう考えながら急いで作業小屋の扉を開けて、父の仮眠部屋である地下室に向かった…そしてそこに置かれた本棚の…昨日偶然発見した本の間に挟まった一枚の写真…それを取り出した。 「やっぱり…そうだったのか…」 その写真には幼い僕らしき人物と、それを囲む家族らしき人物と…海晴ちゃんが写っていた。 「あーらーらー、やっぱり思い出しちったんけ…お兄ちゃん」 その後ろには、空ろな笑顔を浮かべた海晴ちゃんが立っていた。 146 名前:リッサ ◆TKvIZfGFpk [sage ] 投稿日:2007/08/15(水) 15 39 41 ID Pb+pi7en 「ああ…思い出したよ海晴…僕はあの日、火事の当日に…君を犯して両親に殺されかけたんだ。」 八年前のあの夏の日、僕は妹を犯してしまったんだ。理由?…もちろん妹を愛していたからさ、それこそ狂おしいくらいに…彼女が生理が 始まってから色ずいて、隣町の男の子の家によく遊びに行き始めたのに嫉妬したのが原因だったと思う…でも妹はこういったんだ。 「お兄ちゃん嬉しいよ…私も大好きだよ、って…」 相思相愛ならと当然僕らは駆け落ちしようとしたが両親に捕まり、このことが村にばれるのを恐れた親父は僕を殺そうとしてバットで 僕の頭を…。 「そう、だから家に火をつけてお父さんとお母さんを殺したんだよ、お兄ちゃん。」こうすればもう一緒にいられるでしょ…あははは はははははは」 家に灯油をまいて、自殺しようとしたにもかかわらず奇跡的に助かった妹は、病院に入院していた僕に会いにきてくれたが…その心は 完全に壊れていた。もちろんこのことを知った親戚連中はこのことが世間にばれるのを恐れて証拠品を破壊、そして僕と妹を引き離し… 僕は記憶を薬か何かによって奪われていた…。 「でも、なんでお前は…成長してないんだ…それにあの、行為のときの血は…」 「…未だきずかねーんけや…パパ」 …僕は全てを悟った、そうか、そういうことだったのか…。 「ママはおらっちが生まれたころに体壊して死んじまったよ…でもよお、パパを恨まないでって、 ずっと言い聞かせておらっちを育ててくれたんさ」 「…僕を、恨むかい?」 「いんやぁ、パパとママは状況が悪すぎたし、恨むことはねえょお…むしろ…」 そういって間を空けると、彼女はこういった。 「もうどこにも返したくねえぐれえ、パパのことが大好きだからよぉ…あははははは!」 彼女はがちゃり、と地下室のドアの鍵を閉めた。それと同時に僕の目は回り始め、呼吸 が寝息に近くなり始めた。 「愛してっかんね…もうどこにもかえさねえよ…だから」 遅効性の眠り薬でも盛られたのか、僕の体はだんだん動かなくなり始めた。 彼女は…僕の娘の手にはのこぎりが握られていた。 「手足は切らせてもらって…ここで二人でくらすべね…あははははは…あ はははは…」 彼女の笑い声が、大きく大きく地下室に響いていた。 FIN 147 名前:リッサ ◆TKvIZfGFpk [sage ] 投稿日:2007/08/15(水) 15 41 27 ID Pb+pi7en 以上で終わります、実験用の田舎(?)風味ヤンデレ作品でした、長文乱文 失礼しました。 あと最後に言うのもなんですが、一応炉利注意です。 148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 16 11 27 ID 1e/UROVM 147達磨(GJ的な意味で) 149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 16 15 50 ID dYCl7/8q 147 GJ!!暑いはずなのに読んでる間は何故かすぅすぅしたぜ… 150 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 16 17 56 ID NTMO2mqS おうっ、キモムスメ!ぐっじょぶ! どこの方言か知らないけど、そのおかげでなんか田舎っぽい感じがする。 しかしキスされたぐらいでヤっちまうとは。主人公はロリコンだなあ…… あと、SSとは関係ないけど、 長文乱文失礼しました。 これは入れなくてもいいと思いますぜ。そういうあとがきとか嫌いな人もいるし。 長文は望むところだし、話の展開もわかるから乱文ってほどではないし。 151 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/15(水) 18 27 56 ID /jbeJCDx GJ!これ読んでから何故かセミの鳴き声がうるさくなってビックリしたぜ。 152 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 01 39 26 ID wmy+g0B6 短編投下します † これから話すのは、少しばかり奇妙な体験談だ。といっても、私の身に起きた ことじゃない。お話の中に私は登場しないし、したとしても物語の本筋に関係の ない脇役、語り手、通行人、そういった役くらいのものだ。あくまでも主人公は、 私の友人である『彼』で――これは彼の物語で、彼の体験談だ。 他人の体験談を、私が語ることぉお許して欲しい。こればっかりは仕方のないこ となのだ。なにせ、彼はあまり語ることを好まなかったし、そもそも彼の言葉は嘘だ らけで語り手としてはあまり良くはなかったのだから。 当事者は、もう、此処にはいない。 だからこれは、嘘吐きのお話だ。体験談で、昔話で、法螺話だ。 どこか遠くでおきた、いつかちかくでおきた、ほとんどが嘘で、わずかばかりに真実を 含んだ、愛情の話だ。 だから、語りだしは、自然とこうなる。 すべての御伽噺は、こうして始まるのだから。 昔々、あるところに―――――― ■ 狂人は愛を嘯く.Case2 153 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 01 49 13 ID wmy+g0B6 「君は好きな人がいるのかい」 コーヒーカップを机の上に置いて、《彼》は唐突にそう話を切り出した。しばらくの間話が途切れていた だけに、私はいきなりの彼の言葉に面食らってしまう。何を言うのだ、と言い換えそうと思ったが、途中で 馬鹿馬鹿しくなってやめた。 同じように、自分の前にあるカップをすする。 美味くもなく、 不味くもなく。 苦いだけのコーヒーだった。 「藪から棒に」 唇を離し、突き放すように私は言う。まさか彼が、そんなことを言ってくるとは思わなかった。 似合わない。 正直にそう思った。その反面で――彼が真顔で愛を語る姿がありありと想像できた。彼は心に微塵 も思ってない愛を、さらりとすらりと、まるで言葉のように愛を口にするだろう。 私に向かってでなければ、それもまた構わないのだが。 「蛇が出てきたらどうする気だい」 「それはそれで――」彼は言葉を切って、ゆっくりと、膝の上で手を組んだ。微かに膝を組みなおそうと して、すぐにとりやめた動作が見えた。足が悪いのかもしれない。指を一本一本組み合わせながら、彼は どこか穏やかな口調で言う。「――面白いと思うよ」 「……ふぅん」 もう一度、彼の姿を上から下までゆっくりと見る。半袖のポロシャツにスラックス――ただしその色は 八月の炎天下に似合わない黒一色。髪も瞳もまた黒く、外を歩けば熱中症にでもなりそうな格好だった。 もっとも、まあ。 それは私とて、他人のことを言えないので黙っておく。少なくともコーヒーショップの中はクーラーが きいていて、熱射病になる心配はない。僅かな奇異の目が気になるだけだ。 「……君はどうなんだい?」 僅かに興味をひかれて、私は問い返した。 彼――名前も知らない彼に、好きな人がいるのか、気になったのだ。 「僕?」 彼は子供のように首を傾げて、それから、しばらくの間考え込んだ。考え込まなければ 出てこないようならば、間違いなくいはしないだろう。彼が考えているのは人名ではなく、 言い訳の言葉なのだろうから。 私は興味を失い、視線を彼から窓の外へと映す。日中の気温は三十度をこえ、コンクリート からは湯気が立ち昇っているように見えた。 真夏日。 どうして私は此処にいるのだろう――そんなことを、今更ながらに、ふと考えてしまう。 154 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 01 58 56 ID wmy+g0B6 私は彼の名を知らない。否、それ以外の何もかも知りはしない。 私が此処にいるのも、 彼が其処にいるのも、 ただの偶然だ。 私の待ち合わせの相手が《不幸な事故》――これもまた、話すと長くなることなので 割愛させていただく。機会があれば、また別の時に――にあって来られなくなり、独りで 暇を持て余していなければ。 あるいは《彼》が、滑稽にも迷子になっていなければ、こうして向かい合って茶を飲むこと はなかっただろう。あくまでも、ただの偶然だ。私も彼も暇を持て余していたから、とりとめ のない会話を交わして――その挙句に、今のような質問が出たのだ。 この街の人間ではない、と彼は言った。 その言葉に嘘はないだろう。彼には街のにおいがない。この街の臭いが、という 意味ではなく、どこかに居住する人間の、ある種の生活感のようなものが存在しない。 旅をしてきたのか、 あるいは、旅をし続けている最中なのか。 どちらにせよ彼は余所者で、別れてしまえば二度と出会うこともないだろう。彼が幾つか もわからないが、見た目からすればまだ学生で通じる顔立ちだった。夏休みを利用しての旅行―― そう考えるのが、適切なのだろう。 そう考えることができないのは、 彼の持つ――雰囲気のせいなのかもしれない。 「好きな人、か」 彼は繰り返すように言って、それから一度、大きく嘆息した。 疲れを吐き出すような、 哀れみさえ満ちた、 深い深い――ため息だった。 そして息が途絶えた頃に、彼は平然と、当たり前のように言った。 「好きになってくれる人ならいたんだけどね」 「……ふぅん」 伊達男のような、取り様によっては酷く気障ったらしい言葉。 けれど――その言葉は。 酷く疲れて、 惨く感想した、 乾いて砕け散りそうな、声だった。 155 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/08/16(木) 02 00 43 ID LOxMyIYk 出だしどっかで見たな 156 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 02 07 41 ID wmy+g0B6 「恋人に死なれでもしたのかい」 「そんなところかな」 私が嘯くと、彼は飄々と返した。嘘にしか聞こえなかった。嘘だと思う信憑性すらなかった。 嘘でも真実でもなく、ただ言葉を吐いているような――無意味な声だった。 空っぽだ。 言葉が反響している。 経験上――自慢ではないし、全く自慢にならないが、七月の例を出すまでもなく私は『厄介な人種』と めぐり合うことが多い。決して当事者にはならないのだが――こういった種類の人間は、総じてろくでもない。 ろくでもない、ひとでなしだ。 ・・・・・・・・・・ 私がそうであるように。 「……ふぅん。傷心旅行?」 「さぁね」 彼は肩を竦めた。仰々しく、演技ぶった態度が心地良く感じられるのは、私だけなのだろうか。 「傷ついたかどうかも、よくわからないから」 「そういうものかい」 「そういうものだよ」 それは嘘なんだね、と言おうと思ったが、やめた。言うまでもないことだった。私が言わなくても 彼は自分が嘘を吐いていることを知っているだろうし、指摘せずとも彼は認めているだろう。 心は傷つかない。 そんなものは、ありはしないのだから。 「いい子だったのかい」 「もう忘れてしまったよ」 「そうだろうと思ったよ」 私は嘯いて、それからコーヒーを空にした。ほどなく給仕が代わりを注ぎにくる。その間中、彼は黙って 私を見ていた。私もまた、黙って彼の黒い瞳を見ていた。 忘れたよ、と彼は言った。 それは果たして、本当なのか、嘘なのか。 そもそも――そんな恋人がいたのかどうか。 私にはわからなかったし、詮索するつもりもなかった。ただ静かに、代わりが注がれたコーヒーカップを 傾けるだけだった。美味くもなく、不味くもなく、苦く、熱い。 紅茶のほうがよかったかもしれないと、私は今更後悔する。 後悔するのは、いつだって後になってからだ。 終わってからでしか、気付けない。 157 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 02 23 46 ID wmy+g0B6 「ふぅん……それで、君」 「うん?」 「今はいるのかい?」 恋人がかい? と彼は問い返し、私は片思いでも結構だよ、と答えた。他人の色恋沙汰に興味はないが、 《彼》の色恋沙汰には、少しばかり興味があった。初対面の相手にしては珍しいが――逆に、初対面で、 これきりの出逢いだからこそ興味が沸いたのかもしれない。 あとくされがないというのは、良いことだ。 クーラーの中で呑むコーヒーと同じくらいには。 彼は私の質問に、間をもたせるかのようにコーヒーをすすり、ゆっくりとカップを元に戻して、 かちん、と皿とカップが触れる音がして。 その音に被せるようにして、彼は言う。 「好きになってくれる人なら、いるけれどね」 冗談のように、そういった。 それが先の言葉を踏まえての韜晦なのか、それとも真実なのか――まったく関係のない嘘なのか。 真実のように、聞こえた。 なぜなら彼は、自身がその相手をどう思っているかとは、言わなかったのだから。初めの質問である 「好きな人がいるのか」という問いに、彼は微塵たりとも答えていない。はぐらかすような 嘘の返事は――ただの事実でしかないのだろう。 となると、彼はその相手と旅行にきたのかもしれない。 はぐれて迷子になっていたと言っていたから――そのはぐれた誰かが。 彼を好きになった人間なのかもしれない。 興味はあった。けれどその興味は、《彼》に対しての興味よりは薄いものだった。わざわざ それを確めようとも思わなかった。余計なことに巻き込まれるくらいならば、早々に立ち去る つもりだった。 「そうかい……結局、君は誰のことも好きではないないというわけか」 肩をすくめ、ため息混じりに私は言った。話はこれで終わり。そろそろ立ち去るべきか、私はそう思い、 けれど、彼は。 私を見たままに。 薄い微笑みを浮かべ。 「――君のことを今好きになったといったら?」 嘘か本当かわからない言葉を、口にした。 私は驚く。 突拍子のない彼の言葉に、ではない。 真剣みのない、彼の言葉に答えるようにして。 「もしそうなら――兄さん。私はこの人を殺します」 蕩けるような声が後ろからかかると共に、私の首筋に添えられたナイフの光に――私は漸く、驚愕したのだった。 158 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 02 39 52 ID wmy+g0B6 言葉と同時に、重く重く重く体がのしかかってくる。全身を預けるようにして――椅子ごしに 誰かが後ろから抱き付いてきたのだと、すぐに気付く。その誰かが声の主であることも、ナイフ をつきつけた相手であることにも。 わかっていても、動くわけはいかなかった。抱きついてきた誰かは悔しくなる程に手際がよく、 ナイフの刃先を一瞬たりともはなさなかったのだから。それどころか、抱きつきながら逆手に持ち 直すようにし、腕で隠すようにして私にナイフを当てた――傍から見れば、無邪気に後ろから抱き つかれているようにしか見えない事だろう。 言葉も、 行為を挟む暇もない。 流れるように――完璧な。 恐ろしい程に、手馴れた動作。 「ああ」 けれど《彼》は、その行為をすべて眼前にしていたにもかかわらず、眉一つ動かすことなく。 「いたのか」 日常のように――そう言った。 日常の続きであるように。 「探しましたよ、兄さん。何処でお茶を飲んでいたのですか」 「此処で飲んでいたんだよ」 少女のように幼い声も、彼と変わりなかった。私に凶器を突きつけながら、淡々とした 口調で会話を続けている。突きつけられているナイフさえなければ、私はこの二人の会話を、 仲の良い兄妹の会話としか思えなかっただろう。 否。 そうではないのかもしれない。 彼が異質であるように、 彼女もまた、歪なのだと――私は気付いている。 「……はじめまして」 言いながら、私は唯一動かせる瞳だけで彼女を観察する。私に抱きついている腕は少女のそれで―― ただしセーラー服の袖口から覗く左腕は、作り物だった。肩口から、彼女の黒い髪が垂れてくる。 抱きつかれているせいで、少女の香りがする。 甘い、香りが。 腐り落ちる――果実のような。 「はじめまして――」 返事は期待していなかったのに、少女は、律儀にも答えた。 動作と共に。 「――さようなら、誰だかわからないあなた」 ちり、と。 僅かに――肌が避ける感触が、胸元からした。シャツの隙間、隠すようにあてられているナイフが、 わずかに体側にめり込んできている。刃先が皮一枚を破り、肌の上に薄く血が流れる。 彼女は、本気だった。 どこまでも――日常のように。 言葉の通りに、理由もなく意味もなく、一瞬の後には私へとナイフをつきいれるのだろう。 そうならなかったのは。 159 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 02 57 55 ID wmy+g0B6 「おいで」 一言だった。 それだけだった。それ以上でもなく、それ以下でもなく。たったの一言だけ、《彼》は言った。 私にではなく、今にも私を殺そうとしている、彼女の妹に向かって。 効果は絶大で、即効性だった。 私の肉を抉ろうとしていたナイフが止まり――抱きつく彼女が、顔をあげて彼を見る 気配があった。彼女の中で、私という存在の重要性が、瞬く間に塗り替えられていくのを感じる。 彼女の世界では、 兄こそが全てなのだろう。 そう、感じた。 「……でも、兄さん。私は兄さんにすりよる女を、殺さないといけないんです」 「おいで」 「……兄さん……ですから……」 「おいで」 物騒なことをあっさりと言う彼女に対し、彼は同じことを三度繰り返した。そして、三度までが 限度だとでもいうように――彼はコーヒーを空にして、口をつぐんだ。 真上で、気配が惑っているのを感じた。 彼女は私と、彼を交互に見て。 「……もう、兄さんは、卑怯です」 どこか拗ねたような、可愛らしい声でそういった。 同時に――すっと、ナイフが遠ざかる。体にかかっていた圧力が瞬く間に消える。するすると、彼女の手が、 体が離れていく。あとには一筋、胸から血が流れるだけだった。 自由になってようやく――私は顔を動かして、初めて彼女を見た。そのときにはもう、彼女は机を杖がわりにして 反対側へと移動している最中だった。黒いプリーツ・スカートがひるがえる。ナイフはいつのまにか姿を消していて、 彼女はつい先まで私にそうしていたように、《彼》に後ろから抱きつく。 私の傍には、折りたたみ式の車椅子。左手だけでなく、彼女は、両の脚も作り物だった。 まるで、 作り物の人形のように。 現実味のない――兄妹だった。ともすれば、作り物を身につけた妹よりも。生身にしか見えない 兄のほうが、作り物めいているというのは皮肉な話だが。 そんな私の視線を気にすることなく、彼女は彼に抱きつき、後ろからキスをした。《彼》は拒むことなく それを受け入れる。兄妹、という言葉が頭に浮かんだが、それこそ意味のない言葉だろう。 二、三度ついばむようなキスを交わして――ようやく、《妹》は唇を離した。そうして、陶器のように白い頬 をわずかに赤く染めて、 「兄さん、私心配したんですよ」 恋をする少女のように、そういった。 彼の言った『好いてくれる相手』とは、彼女のことなのだろう――私は確信を持つが、それ以上詮索する気にはなれなかった。 否。 これ以上、此処にいる気にはなれなかった。 ここは――異界だ。 私の世界ではない。 彼の世界だ。 彼らの世界だ。 彼はともかく、 彼らは、語り手を必要としていない。 一つの世界で――完結している。閉じきった環に、語り手は必要ない。 暇潰しも、これで終いだ。 160 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 03 17 36 ID wmy+g0B6 それは彼もまた同じことだったのだろう。妹を抱きつかせたままに、彼は椅子から立ち上がった。 後ろから抱き付いていた彼女が、吊るされるようにして地から脚を浮かす。その彼女の脚が再びつく よりも早く――彼はまるで王子様のように、《妹》を抱きかかえた。 御姫様抱っこ。 不思議と、似合っていた。 彼は妹を抱きかかえたままに、私の横を通り過ぎ、 「――ばいばい」 それが、別れの言葉だった。彼は妹を車椅子へとおろし、車椅子を押して、去っていく。 あっけないほどに、あっさりと。 私は。 私は―― 一つだけ、彼に聞いておかなければならないことがあった。 私は座ったままに振り返り、今にも立ち去ろうとしている《彼》の背に向かって、質問を投げた。 「どうして――私を助けた?」 そう―― もし彼が言葉で妹を止めなければ。 ここが人前であるとか、ここが喫茶店の中であるとか、そういったことにまるで関係なく、彼女は 私を刺し殺していただろう。《兄》を奪いかねないという、それだけの理由で。 狂的な愛。 病むほどに一途で、儚い愛情。 妹は、それを持っている。けれど――彼がそれを持っているとは、思えなかった。 だから、訊ねた。 私の質問に、彼は脚を止め。 けれど、振り返ることなく――今までと何一つ変わらない口調で、言い切った。 「退屈しのぎになったから。それだけだよ」 それは。 それはきっと――彼が初めて口にした、嘘以外の言葉だったのだろう。 韜晦でも、 比喩でも、 皮肉でもなく。 彼の本心、だったのだろう。 「……そうかい」 私はそれだけを言う。それ以外に、言うべき言葉はなかった。彼も、彼女も、何を言おうともしなかった。 止めた脚を、再び動かしながら。 彼は、歌う。 「雨に――唄えば――」 退屈しのぎのように唄いながら、古ぼけた唄のサビの部分だけを繰り返しながら、名前も知らない彼と、 名前も知らない彼女は、私のもとから去っていく。 「雨に――唄えば――」 そうして、 彼らは、 恐らくは二度と会うことはない、近くて遠い世界にいきる彼らは――去っていった。 その歌声だけが、彼らの姿が見えなくなっても、私の耳から離れることはなかった。 「……雨に……唄えば……」 彼が口ずさんでいた歌詞を口の中で弄びながら、私は。 遅まきながら、気付く。 「ひょっとして……彼の代金は、私が払うのかい?」 答えるものは、誰もいなかった。 了 161 名前:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/08/16(木) 03 20 34 ID wmy+g0B6 以上投下終了です 書きながらの投下でしたので時間がかかってごめんなさい 162 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 03 26 21 ID AExe0Yt8 161 GJ! すばらしい! というか書きながら!? その速度が心底羨ましい。 163 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 04 44 31 ID WXc4V4QR 161 この二人ってもしかして… 164 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 07 03 27 ID RdaBNi5k 161 久しぶりにヤンデレ須藤兄妹ktkr! やっぱりカッコヨス。 165 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 11 57 17 ID N3TeYklL いや、相変わらずとても面白いです。 あちらの方にも期待させてもらってよろしいでしょうか? 166 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 13 31 19 ID ejVFDsTl GJ!! お茶会シリーズの中で須藤幹也が一番好きだったから久しぶりに彼が見れて良かった。 ヤンデレってる冬華もカワユス。 167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/16(木) 20 42 33 ID toTCstmq GJ キモウトは人類の至宝だとつくづく思った 168 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 00 54 05 ID gvBPpnl5 さて、戦に行く仕度を整えるか ヤンデレ!ヤンデレ! よし 169 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 03 29 33 ID x23Inc8p ゼロ魔のルイズ?は主人公にフラれそうになったらヤンデレ化しないかな 170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 06 04 07 ID BYY7AGdY 169 どっかにそんなSSあったな 171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 09 08 12 ID AkPoR096 sola見たけど殆どの女がヤンデて笑った 172 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 12 24 07 ID x23Inc8p 170 教えていただきたい 173 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 14 47 42 ID gvBPpnl5 ネコマル行くの忘れてたぁぁぁあぁあああぁぁぁ!!! 174 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 18 26 01 ID SZ5VzSqK 172 羨ましいIDだ・・・ 175 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 20 16 41 ID XdWr5G0E やんデレおもすれーwwwww 小説とは違うリアルな雰囲気がたまらんwwww 176 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/08/17(金) 20 20 42 ID k7txHbLf 175 それはちょっと違うだろ・・・ 177 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 20 24 55 ID XdWr5G0E 176 いやだって、きれいなお姉さんがインターホンを何度も鳴らしながら俺を見つめてくれるんだぜwwwww 178 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 20 26 15 ID xn/qNQdj 角煮に行けよ。 179 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 20 55 14 ID c4sprJJn VIPから出てくるなよ 180 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 21 38 10 ID GH4Kvdaz こう…妄想はよく沸き立つんだが 何故か途中で銃器やら鈍器やら刃物やらでドンパチ始めちゃう俺の脳も ヤンデレヒロイン達に負けず劣らず病んでるんだろうな 181 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 21 46 28 ID nm6cuKGO ほととぎすまだかな 182 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 21 48 46 ID Sw57hH4h いやいや、俺も妄想膨らましてSS書こうとしたが 膨らましすぎて最後とか「いくぞゾファー!!」になったw 183 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 00 29 11 ID FSEIve1I メイス持ちのヤンデレヒロインだれかいない? 刃物なんかより魅力的だとおもうのだが 184 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/08/18(土) 00 43 35 ID f52nVz4/ 主人公が事故かなんかで死んだ後のヤンデレヒロイン達(もともとヤンデレでも 事故後にヤンデレ化でも)を見てみたいなと思うのは俺だけか たいがいのエロゲは主人公死亡で終わってしまうから困る 精神的支柱を失った女の子がぶっ壊れていく様ほど悲しく美しいものはないのになぁ 185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 01 00 05 ID JucljkAL 俺もよく漫画とかゲームの主人公が死んだらヒロインがどう壊れていくかを妄想するが ヤンデレとはちょっと違う気がする。それとsageろ 186 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 08 11 21 ID /UVQQRd5 コミケに行った人は 10をやったのかな? 187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 09 48 49 ID W/EPNtzL その話題はこっちでな。 ttp //idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1176207104/ ttp //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1176178896/ 188 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 18 06 53 ID mMp4SPnW 184 つセンチメンタルグラフティ2 189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 18 08 23 ID 4YJiC9Uv 核地雷w 190 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 20 33 27 ID zgtsG9Ec 狂人は愛を嘯く/名も知れぬ少年 http //imepita.jp/20070818/738400 狂人は愛を嘯く/名も知れぬ少女 http //imepita.jp/20070818/737410 久しぶりに描いたなとか思ったり 191 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 20 34 29 ID zgtsG9Ec 190 タイトル逆でしたorz 192 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 20 45 44 ID 1FL9JT6W 190 毎度GJ! でも冬華たんに両腕があるのは(ry 193 名前:慎 ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 22 58 18 ID N9Pvw1hJ うわ…なんか久々にきたらもう9かorzみなさまお久しぶりです。 新しいのを書きました。投下します。 194 名前:慎 ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 22 59 59 ID N9Pvw1hJ 「Versprechung」 序曲 さて皆さんの記憶にはまだ新しいと思うがとある市で市長候補が銃撃され、殺されてしまうというショッキングな事件が起こった。 市民は、犯人の野蛮なテロリズムを憎み、糾弾し、そして現職でもあった市長候補の死を悲しんだ。 悪いことにこの市においては、このような事件は初めてのことではなく、以前にも同じような事件が起こったことがあったため、市民のショックはさらに大きなものとなった。 何故ここの市だけにこんなことが? 繰り返された悲しみの歴史に、人々は翻弄された。 さてはて、すぐに犯人が取り押さえられたこの大事件の裏で一つのたわいもない出来事が起こっていた。 そうそのときはほとんどの人からたわいもないことだと思われていた。 少なくとも、なんらかの特異性、その他異常なことは散見できず、注目すべきことがないが故、人々の関心を引くことはその時はなかった。 しかし、その、一つの出来事は、水面に落ちた水滴のように、徐々に波紋を広げていき、最後には世間の人々の関心をすべて持っていくことになった。 その事件は、事件自体の特異性、また動機の異常性において、昨今の中では、もっとも理解しがたい事件のひとつとして記憶されることになる。 動機も、また目的達成のために起こした事件も、行動も…犯人のすべてが人々にとっては理解しがたいものだった。否理解したくないものでもあった。しかも、その不可解な動機の根底にあったのはは人々が普段何気なくしている…そう、なんんともない、ありふれたものだった。 このようなありふれたことでこの特異なる事件が起きるとはだれも、思ってはいなかったし、想像もついていなかった。それゆえか、事件の全容が明るみに出たときに人々が受けた衝撃は、ここ10年で個人が起こした事件の中では、最上級なものであった。 さてここまで長い前置きを置いたが、この事件における物語は、事件が起こる数ヶ月まえより始まる。しかし、より正確に言うならば、真に始まったのは、20数年前といえる。 そう、この事件はそのときに仕掛けられたタイマーが、息を潜め、ただひたすら時を刻み、そして時を経て発動したに過ぎない。 この事件は偶然に起きたのではなく必然に起きたものだったといえる。 否、偶然に起きる事件のほうが少ないのだろう。タイマーは常にどこにでも設置され、そして時間が設定され、誰に求められなかったそのうちのいくつかが発動するだけ…このような必然的に起きる事件のほうが多いのだろう。 さて前置きはこの変にしてこれから、この事件の顛末について述べていくことにしよう。 195 名前:慎 ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 23 01 46 ID N9Pvw1hJ 宮田秀樹は、冷たい感覚とともに目を覚ました。 冷気に当てられた感覚。 頭が痛い。腹辺りにも痛みを感じる。 自分は今までなにをしていただろうか? たしか、アパートの近くの外の自販機に飲み物を買いにいこうとして、アパートを出て、そして…アパートをでたところでタクシーが止まって道がふさがった。 誰か降りるのかなと思ったら、誰も降りてこない。不思議に思ってたら… そこで記憶が途絶える。腹のほうに激しい痛みを覚えた記憶はある。しかしそれ以上は何も…まったく思い出せなかった。 そもそも今自分がいるこの場所はいったいどこなのか…? とりあえず彼は、自分がおかれている今の状況を冷静なってに考えてみることにした。 しかし状況を把握すればするほど、彼は何がなんだかわからなくなってしまい、冷静さを失われそうになった。 まずここは…光が電灯ぐらいしかなく、外から入る自然光の類はなかった。 換気扇は何個か見受けられるが、窓がこの部屋には一つもない。 そして…今の自分の状態はというと、手を縛られている状態でベットの上に横たわっていた。 俗に言う監禁という状態である。いや、なんともわかりやすく状況把握もしやすい…ということはない。 しかし彼は監禁とわかるとすぐに頭をまわせるようになった。 想定外の事態ではなく…可能性としては低いと見ていたが想定内の範囲だったので、 軽い驚きを覚えた程度ですぐに切り替えることが出来たのだ。 彼は、自分には監禁される理由がそれなりにはあると思っていた。 彼は地元にあるそれなりに大きい会社の社長の息子であり、それでいて成績も優秀で、高校卒業後は現役で地元の大学の医学部に入った。 かといってがり勉というわけでもなく、何でもこなす、秀才といえる存在だった。 現在は、医学博士号を獲るために大学病院に勤務しながら、日夜勉強に、仕事に励んでいる。 まぁ俗に言うお坊ちゃまで、今まで自分の生活には無い一つ不自由を感じたことは無かった。 両親も同じ市に住んでいるが、勉強に集中するためと、もういい年であることを理由に、大学入学の頃から一人暮らしをはじめていた。 現在26歳。親の会社のほうは不況を乗り越えさぁこれからというところ。さてはて自分を誘拐したのはライバル企業か?それとも、まったく関係のない人物の単なる金目当てか? いずれにしてもどうにかこの状況を打破出来ないかな…とまったく当てのないことを考えていると、部屋のドアの外から、階段を誰かが降りてくるような音がした。 階段の音だとすると、この部屋がある階より上の階が少なくともあるようだ。 「誰だ!?」 秀樹の叫び声による問いに答えはなかった。 音の主は無言で階段を降りきってきて、部屋の扉を開けて姿を現した。 どんな輩だと思って身構えていた秀樹は音の主の姿を見て絶句した。 「…お前…なんで…ここに…」 196 名前:慎 ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 23 03 20 ID N9Pvw1hJ 彼はドアを開けた人物を見て大きく混乱した。 なぜその人物がここにいるのか、そして、自分の前に姿を現したのか… 彼には皆目見当がつかなかった。 そもそも、この人物がこのような誘拐、監禁のようなまねをするとは彼は夢にも思ってもなかった。 理由が思い当たらない… 秀樹の頭は混乱してパンク状態になっていた。情報が頭の中をまったくいきわたらない。 「ふふふふふふ、目、覚めたぁ?」 能天気に問いかける、階段を降りてきた者。 「ちょ、放してくれよ。何のいたずらだ、まったく」 幾分か冷静さを取り戻した秀樹はおどけるように言った。 実際何かの冗談だと思っていたからだ。だが、相手からの返事は 「あら、放すわけなんかないじゃない、まだ寝てるの?起きてるなら寝言は無しよ」 だった。彼の望み、要求はさらっと拒絶された。だが秀樹もあきらめない。ここであきらめてはどうしようもない。 彼はとにかくやってみようと、このような状況におかれながらも、少しやる気になっていた 「なぁもういいじゃないか。放してくれよ。もう少しお前のお遊びに付き合ってあげてもいいが、 ほら、俺もさぁ仕事とかあってさ…明日もあるし、な?」 彼はとりあえず穏やかに話してみることにした。まだ相手はふざけているんだ、と信じていたからだ。 おふざけで監禁する人間がどこにいるかともっと冷静に考えれば思いつくはずだが、 彼の思考はすでにこの状況からの脱出にしか向けられていなかったため、そのことにはまったく気付かなかった。 しかしというかやはりというか答えは無情にも 「あら、お遊びじゃなくってよ。何を勘違いなさって?まだ寝たりないの~困ったわね」 というものだった。 どうやらふざけているわけではないらしい。当たり前だが。 さて彼にとっては困ったことになったようだ。 相手は本気で、というと表現がおかしいかもしれないが、自分を監禁しているようだ。 少なくともお遊びではない。今更ではあるが。 そして放すつもりも無い。これも当たり前。 彼女と交わした交わした会話はまだ2回。だがその口調からは強い意志が感じられた。 というか感じられないとおかしい気もしなくもないが。 さてさてこれはどうしたことか。 監禁されるなんて―よもやこの人物に―彼にとってはまったく予想外―それこそ地球がいきなり爆発するぐらい―のことだった。 まったく理由が思いあたらない。何故俺はこいつに監禁されにゃならんのか。さらに頭を回してみる。だが思い当たる節はやはりない。 彼はこれはもう彼女に理由直接尋ねるしかないか、と心の中でため息を吐きながらつぶやいた。たずねてどうするかは、正直疑問ではあるが。 果たして彼女は素直に言ってくれるのやら…彼に確証は無かったがもうそれしか彼には方法が思いつかなかったので、 とりあえずだめもとで聞いてみることにした。 197 名前:慎 ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 23 04 56 ID N9Pvw1hJ 「どうして…俺を…こんなことに?まったくこんなことされる理由が思い当たらないんだが」 彼はどんな理由であれ、今回のものは解決できないものではないだろうと思っていた。 そんなわけあるはずないのだが、常識的に考えれば。しかし、彼はいまだ思考がおかしかった。明らかに混乱している。行動がめちゃくちゃだ。 彼女から具体的な理由が聞ければ対処もできる。今は原因も何もわからない状態。 まずは原因だけでも探りを入れなければ何もできない…と彼は考えてた。 自分の頭はこの緊急事態にも、このように非常に冷静に回っている…と自画自賛。 さぁどんな答えが出てくるか…彼はいろいろな答えに合わせた自分のこれからの行動、言動パターンを瞬時にシュミレートした。 ところが彼に返ってきた答えは彼の期待に反し至極簡単なものだった。 だがこの答えにより彼はさらに混乱することになる。 「理由…そうね…約束を遂行してもらうためかしら」 相手の返答はこの一言だけだった。 「約束だと…っ」 彼はいよいよどうしようもなくなってきていた。 約束…監禁されるなんて約束は当然のごとくした覚えはない。 ほかにこういうことをされかねない約束を交わした覚えもない。 さてはて、理由を聞いたはいいがやはり約束云々以前に、この監禁に関しては彼にはやはりわからないことが多すぎた。 情報の明らかな不足。まずここはどこなのか。 彼女はなぜここにいて、そしてなぜ自分を監禁したのか。 これから彼女は自分をどうするつもりなのか? そして、自分が彼女とした約束とは…? まったくわからない。 彼は深い霧の中を歩いてるかのような感じを受けていた。 前も後ろも、左も、右も…何も見えてこない。 そんなとき、暗闇に差した一筋の光を見つけたかのごとく、ふと彼は突然思い当たった。 一つだけ、理由ではないかと思い当たるものがあった。そこで、彼女に思い当たったことをぶつけてみて探ることにした。 「ほう…ところでよ、俺をこれからどうする気だ?家にでも知らせて金でも取る気か?ん?」 自分の実家と何らかの金銭契約を彼女、もしくは彼女の親あたりが結んでいたのではないか。 しかし何らかの理由でその契約が履行されず、じゃあ強引にでも契約を果たしてもらうために…といった所だろうと彼は予想したのだ。少し発想の飛躍のしすぎな感もあるが、彼にはこれしか思いつかなかった。 さてはて、彼の中のストーリーではそのことを知られたく無いがため、つまり金銭が目的であることを知られないためにに約束という言葉を使ったんだろう、ということになっていた。 なんてくだらない理由だと一瞬思いもした。 だが彼女も職業が職業柄、こういったことも秘密裏にすることも可能なのかもしれないとも思っていたし何より彼の両親は面子を重んじる人物だ。少しぐらいの金なら警察に知らせず、さらっと払ってしまうだろう。 ならば非常に理想的な方法じゃないか…よくわかってるなこいつ…まぁそれも当然っちゃ当然か…と結局は一人で納得してしまった。 198 名前:慎 ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 23 07 49 ID N9Pvw1hJ 納得したところで彼は勝手ながら自分が思いついたここまでのストーリーをまとめてみることにした。 だがその矢先、残念ながらそのストーリーはあっけなく崩れ去ることとなるもだが。彼女が 「あら、家には知らせないわよ」 と言った瞬間に。 彼は大いに疑問に思った。なんだって?何故?何故実家には知らせない? 彼は驚きというものを通り越えて呆れ果てた。 じゃあいったい何が目的なんだ。こうなってくると彼にはその約束とやらには思い当たりがまったくなくなってしまった。もともとないのだから、想像がはずれと確定した時点でお手上げだ。 「そうそう、警察にも知らせないわ…そうねぇ…捜索願扱いということで、まぁ普通の行方不明者として扱ってもらうことになると思うわ、私の予想では」 「ちょっと待て!じゃあ俺はいつ解放されるんだ!お前の気が済むまでか!え!?」 「そうね…交渉の状況しだいだわ」 「ちょっとまて。じゃあその交渉する相手は誰なんだよ!?どこにも連絡しないんだろ!?」 「あらまだわかってないの?」 「あぁ、まったくわからんね。」 「もちろん、あなたに決まってるじゃない。やっぱりまだ寝たりないの?」 交渉相手が自分だと聞かされ、彼はますます打つ手がなくなった。よくよく考えれば、むしろラッキーなはずなのだが、彼は交渉というものを特にやったことはなかったし、どうすればいいかわからなくなったという点では、打つ手がなくなったといえよう。 さてはてこれで彼のさっきの疑問の中に交渉内容はなんなのか?という疑問が追加されることとなった。 もしやその約束とやらと関係が?という確証に近い疑問は持っていた。 とは言っても肝心の約束の内容がわからない。わからないことには交渉のしようがない。 「さてお前と何の交渉をするんだ?そのお前が言う約束とやらに俺は思い当たる節がないのだが。」 彼は彼女に尋ねてみた。あくまで強気で。交渉というものがどんなものかはわからない。 でも足元を見られるとか言う状況だけにはなりたくないという思いがあった…どういう状況かはわかってはいなかったが。 「あら忘れちゃったの?そうねぇ…私が自分で言うのもいいけど、あなた自身でゆっくりでもいいから思い出してもらうほうが私はいいわ。 そう、あなたの自分の力でね」 「思い出せる自信はまったくもってないんだが?」 「安心して。思い出すまでここにいてもらうことになるから。言ったでしょう?私はゆっくり思い出してもらっても構わないから。 思い出してもらうまで私は待つわ。ここでね」 199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 23 08 22 ID 20wzF9he 短編投下 ここへの投下は初めてなんで、ヤンデレとは違うかも。その場合は教えてください。 あと、血とかいっぱいです。 200 名前:慎 ◆UPiD9oBh4o [sage] 投稿日:2007/08/18(土) 23 09 50 ID N9Pvw1hJ 要するに帰してくれないと。こうなるとどうしようもない。本格的に詰み。ようやく彼は自分のおかれている立場というものを理解した。 遅きに失した感はかなり否めない。もはや手遅れである。 ここまでくると彼はしばらくはここにいないといけないであろうことを覚悟せざるをえなかったた。 だが、それもいつまでもは続かないだろうとこの期に及んで楽観もしていた。 何日かすれば、こんな馬鹿げたことに彼女自身が冷めてくれるだろうとも思っていた。 どうやら理由も深刻なものではないようだし。 「食事は持ってきてあげるから。まぁ殺しはしないわ、安心して。ここでまずはゆっくり思い出してもらうわ。約束のこと」 そういい残して、彼女は彼がいる部屋から立ち去った。 餓死の心配はないようだ。特に相手は自分に危害を加えるつもりはないこともわかった。 そこまでわかったからこそ彼は楽観的になれた。まったく無意味なことだが。警 察もさすがに騒いでくれることだろうとも考えていた。人一人急に理由もなく消えたのだから騒がなければおかしいだろうと。 親も恋人もさすがに不審に思うだろうし。そう彼はあくまで楽観的だった。 楽観的だったというよりは、考えることが出来なかったともいえなくはないが。 彼は多くの事実を忘れていた。いや、知らされることのない事実もある。 彼が拉致、監禁された日に、より大きな、この市すべてを揺るがす大事件が起きていたことを。 警察は当然そちらの事件のほうに全力を傾けていたし、 また、彼の親も、恋人も、友人も疑いもせず彼がふらっとどこかに出かけたのだろうとしか思ってなかったこと。 より正確に言うとそう思わされることになる。 このような状況が重なったこともあり結局彼が失踪したとわかるまで時間がそれなりにかかった。 また、このことが事件とわかったときでも、このことのために動ける刑事はたったの2人しかいなかった。 この通り、彼の希望はことごとく潰されていたのであった。 だが彼は当然ながらこのことにはまったく気付かず、救援はすぐ来ると思っていた。 すでに彼女の大きな策略の中に入ってることも知らず… さて様々な宗教で、地獄というものの存在が言われている。罪人が落ちる場所、罪を償う場所。当然ながら、どんな場所かは、現世の人間には想像するのみで、実際のところはわかるはずもない。 そこで日本人は地獄の存在の一つを現世の温泉というものに見出した。 しかし、彼のこの先に待ち受けてるものこそまさに地獄といえるものではないだろうか? 事件の詳細が報道された後、人々は、地獄とは何かを知ることとなる。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1052.html
1 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 11 57 43 ID udCC2KtL ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。 ○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど) ○ぶつ切りでの作品投下もアリ。 ■ヤンデレとは? ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。 →(別名:黒化、黒姫化など) ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。 ■関連サイト ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 http //yandere.web.fc2.com/ ■前スレ ヤンデレの小説を書こう!Part5 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174364890/ 2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 12 08 13 ID p1DwZiHa 1乙! さらに続けて2get! 関連スレ候補 キモ姉&キモウト小説を書こう! http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176013240/l50 3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 12 20 01 ID udCC2KtL しまった……テンプレ切れてたorz ■お約束 ・sage進行でお願いします。 ・荒らしはスルーしましょう。 削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、 削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。 ■投稿のお約束 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため) ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。 スマソorz 4 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 13 37 30 ID Xq+m85Sd 1乙 次スレ立てる時 3も合わせればおk 5 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 13 41 28 ID R6++UpGJ お兄ちゃんどいて! 1乙れない! 6 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 14 57 45 ID kOVTLfn0 スレを立てちゃうような 1には乙しないと兄さんが汚れてしまいますね・・・・ あははははははっ♪ 7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 15 49 16 ID FdqO75qF 男の方が病んでいくのもアリ? 8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 16 52 37 ID baBwxNbN 1乙 7 とうぜんアリ!!! 9 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 18 07 54 ID gnhikWvI 7 でも男だけのヤンデレは荒れるぞ。 女のヤンデレに同調するのならあり。過程をうまく書くのが難しいけどね。 10 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 19 55 59 ID OuzPKYGi 男だけ病むと現実によくいるストーカーになっちゃいます>< 11 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 21 07 41 ID Xq+m85Sd 男女を逆にしてみると「北斗の拳」のシンは究極のヤンデレ って意見をどっかで見たな 12 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/15(日) 22 05 06 ID tPlo66FB 男のヤンデレはただの「ストーキング→監禁レイプ」になるだけだしな 男がやるとキモいっていう感想しか湧かない 性別逆にするだけでこんなに萌えるのはやはり二次の女性表現文化の変なとこ 俺は迎合しまくりだけど 13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 00 13 02 ID pLMuY7OV まあ男って潔さが美徳だろ ヤンデレとか対極じゃね 14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 00 17 18 ID aMyDNClb フィアンセが死んだあともなお愛し続けて剥製にしたとかいう話はよくあるよね そういうのは男ヤンデレでありがちな希ガス 15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 00 24 45 ID u5eP1ttY そもそも狂ってる人間を魅力的に描くのも楽じゃないしね。 まぁ敢えて挑みかかっていった猛者もいるから、やり方次第では…… 16 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/16(月) 10 38 44 ID gDKJiSdv 警告とNGで充分だろ 17 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 21 35 29 ID 2w2VBlqI そういう問題じゃない。 18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 22 55 59 ID jAOVH98f これは理想じゃない。 狙うゴールじゃない。 19 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/17(火) 23 02 33 ID EUD4icZp なんで急にピロウズの歌詞 20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 22 08 47 ID yG92ZErN おーおおおおおー おーちゃーかーいっ おっおおおー さらささらささらさー ささらさららさらさー くらえ!先代ウサギの窓から飛び降り空中殺法! 21 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 22 49 44 ID 0OSRgvHn 技をかける本人が死んだらいかんだろw 22 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 23 07 23 ID uRd9bWG+ 21 いや、死ぬことによって無限の力を得るのだ! オビワンのように! 23 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/18(水) 23 38 11 ID ++wN8WfN オビワンは死んだんじゃなくて自らフォースと一つになったんだよ 24 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 48 16 ID FAD2zTGd 前スレ498の続きを投下します 僕が北方さんの家を出たのは六時半だったが、思ったよりも遅くなってしまい、 家に着いたのは七時過ぎであった。 「ただいま、今帰ったよ。」 そういって、ドアを開けた。ドアの開閉音を聞いたのだろう、 誰かのこちらにかけてくる足音がした。 小柄でブロンドでやや短めに切りそろえられた髪。そして、ごくごく見慣れた顔だが 、いまだにあどけなさが残しながらも、整った容姿をしている。 「・・・お兄ちゃん・・・お帰りなさい。」 妹の理沙だ。よく見ると、小刻みに肩を震わせており、目にも赤みがさしている。 また、言葉もやっとのことで紡いでいるように感じられた。 それらは、ついさっきまで泣いていたことを容易に想像させる。 普通にしていても、やや虚弱体質のきらいがあるためか儚げな理沙だが、 今日は、気を失って倒れこんでしまいそうで、僕のほうが心配になってしまうほどだ。 25 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 49 28 ID FAD2zTGd 「お兄ちゃん・・・・。どうして・・・今日は遅かったの?・・・私ね、とっても心配したの・・・。」 「ごめん。急に図書室の仕事を手伝わされちゃって、時間が・・・」 「でも、お兄ちゃんの授業は四時半に終わるはずだよね。」 「いや、思ったよりも仕事が長引いちゃって・・・」 この子に本当は仕事の後にクラスメイトの女子の家に行っていた、 などとは口が裂けてもいえないので、言い訳がましい事を言った。 理沙は泣き腫らした目をこちらに向け、僕の体の隅々の様子に視線を走らす。 「・・・お兄ちゃん、帰ってくる間に怪我とかしなかった?・・・・遅いから、 本当に・・・本当に、・・・・兄さんの身に、何かあったかと思ったんだよ・・・。」 「本当にごめん。気をつけるから、な?」 「・・・ううん。ごめんなさい。お兄ちゃんは悪くないよ。 お兄ちゃんには、お兄ちゃんの都合があるのに、それを責めて私こそごめんなさい・・・。」 「でもね、遅くなるなら、ちゃんと事前に私に知らせてね・・・。 じゃないと・・・・私・・・、ううん、なんでもない。」 正直に謝ると、わりとあっさりと許してくれた。 最後の良く聞き取れなかった部分がやや気になったが、それは深く考えない方がよさそうだ。 理沙が僕のことを心から良かれと思って心配してくれているのは、 僕だって木石じゃないから、痛いくらい分かる。 でも、それは度が過ぎているきらいがある。彼女が世話焼きが過ぎ、 粘着質すぎるこの家にいるのは、極端に言ってしまうと、針の筵にいるようなものだ。 どうにかならないものだろうか? 26 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 50 24 ID FAD2zTGd そんな事を考えていると、いつもどおりの優しい声で食事の準備ができている、と言ってきた。 それから僕の手を強く握り、引っ張ってリビングのテーブルにつかせた。 病弱な理沙の身体のどこに軟弱とはいえ、男一人を引っ張るだけの力があるのやら。 おとなしくテーブルに座らされると、すぐに、お茶を淹れに行ってしまった。 テーブルの上には二人分の食事。 どうやら、理沙は僕が来るまで食事に手をつけていなかったようだ。 湯のみを二つもってきたときの彼女の顔はすでに、ニコニコとした 明るいものになっていて、さっきの取り乱した姿が嘘のようであった。 その様子を見て、やっと僕は安堵することができた。 食事も、料理の得意な理沙が作っただけあって非常においしく、 話題も、学校のこと、最近のアニメのこと、この前読んだ本のこと、 などと尽きることなく、楽しいひと時を過ごした。 27 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 51 47 ID FAD2zTGd 僕の家は最近ではよくあることだが、 親が共働きで共に家に帰ってくるのはどんなに早くても、 午後十時以降なので、早い話、今現在、僕の視界内に親はいない。 我々学生の本分は勉強だとは分かっているが、 そんなことを計画的に行えるほど僕は理性的じゃないし、この時間はアニメを見たり、 漫画を読んだり、ネットゲームをしたり、と命の洗濯をさせてもらっている。 なぁに、親がいなければ大概の学生の生活とはそんなものだ。 そういえば、仲間は連日午前三時まで、画像を集めてたっけ。 というわけで、今日もアニメ三昧といこうと思ったが・・・。 神速で午後の過密なるスケジュールが脳内スクリーンに投影される。 まずいなぁ、録画し忘れていたようだ。 「お兄ちゃん、夕方のアニメ録画しておいたから見る?」 デザートのプリンアラモードを上品に食べながら、そう言った。 何だかんだ言って、実にこの子は気が利くなぁ。 いやぁ、実にありがたい。生命線確保ですよ、ええ。 ・・・・・。 ・・・・・・・・・・。 三十分もののアニメと言うのはどうしてこんなに早く終わるのか未だに理解できない。 やはり、アニメもいいがマンガでも読むことにしますか。 何時間マンガを読んだり、さっきのラノベを読んでいたかよく覚えていない。 ふと、時計を見ると午後十時はゆうに過ぎているようだ。 こんな時刻になっても電話一本、連絡が家に来ないと言うのはおかしい。 「理沙、今日、父さんと母さん何時位に帰るって言ってた?」 「え、お父さんは出張で、お母さんは一泊二日の旅行で今日は帰ってこないはずだけど。」 何故かごくさりげなくではあったが、うれしげにそう答えたように感じられた。 28 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 52 38 ID FAD2zTGd しかし、今日はラノベを読んでいるときもそうだったが、疲労感と眠気が強く感じられる。 どうも疲れているようだから、親が帰ってこないなら、 特別起きていなくてもいいわけだし、さっさと寝ようか。 「あー、そうなんだ。じゃ、僕は疲れたし、そろそろ風呂に入ってさっさと寝るよ。」 「えー、お兄ちゃん、まだまだ時間はあるんだし、折角だから羽をのばそうよぉ~。」 明らかに不満そうな顔をして、ワイシャツの袖を引っ張って、甘えてきている。 「ね~、どうしても駄目?」 なかなか、粘っている様子で、いや、困った。 この子はこうなると、あんまりどころか非常に聞き訳がよくないからなぁ。 時々、理沙は精神年齢が実年齢よりも幼く感じられることがある。 現に今、こういうことを考えている間でも、腕にしがみついて、『いやいや』を繰り返している。 度を超えさえしなければ、こうやって甘えられることにさして悪い気はしないのだが。 「だめ、疲れたからもう寝るよ。はい、聞き分けて早く袖を離して。」 そう、幼子を諭すように優しく言う。 すると、あっさりと腕を解放したのだが、次の瞬間、 「じゃ、今日はお兄ちゃんと一緒にお風呂に入って、背中を私が流してあげるね~。」 などととんでもないことをのたまった。 いや、その手の人にはたまらないシチュエーションですな。 ご都合主義万歳!なんて言っていると、手際よく僕のパジャマと自分のパジャマを用意して、 またしてもずるずると、腕を引っ張って風呂場に連れて行かれる。 そろそろ、兄と風呂に入ることに恥じらいを感じてもおかしくはない年齢のはずだが・・・ 実際に、こうして一緒に風呂に入るのも数年ぶりなのだが、急にどうしたと言うのだろう。 そんな事を考えていると、それを見透かしたように、 「えへへ、お兄ちゃんと一緒のお風呂、何年ぶりかなぁ・・・。」 と満面の笑みを浮かべてから、感慨深そうに言った。 そうこうしている内に、彼女は一糸纏わぬ姿になり、透き通るような白い肌があらわになる。 無意識のうちに彼女の発展途上の双曲線に目が行きかけたが、 自分への恥ずかしさからか、視線をすぐに反らした。 理沙はと言うと、そんな挙動不審な僕をいぶかしげな目で私を見ているようだった。 29 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 53 29 ID FAD2zTGd さすがに理沙も僕が服を脱ぐのを見ることには恥じらいを感じたらしく、 先に浴室に入り、シャワーを浴びている。 はぁ、この歳になって、まだ妹と一緒に風呂に入らなきゃいけないんですかね? ちょっと、どころかとても、彼女の気まぐれには困ったものです。 「お兄ちゃん、どうしたの?早く入ってこないと、風邪引いちゃうよ?」 ええい、ままよ。こうなれば、特攻!そんでもって、一撃離脱のヒット・アンド・アウェイ! 「開けるよ?」 恐る恐る、そう尋ねる。 「どうぞ、どうぞ。」 がらり、と扉を開けると、ガス中毒で誰かが倒れている、などということも無く、 さも当たり前のように、理沙は既に湯船に浸かっているようだ。 おお、いかん、いかん。眼鏡をかけたままだと、レンズが曇ってしまう。 いや、第一に理沙を意識してしまうじゃないか! そんなあわてている僕の姿を見た理沙はあははっ、と声をあげて笑っている。 いやはや、ダメ兄貴ぶりを示す格好の機会になってしまったようだ。 眼鏡をはずし、シャワーをざっと軽く浴びる。 そのタイミングで、理沙が後ろから石鹸をタオルにこすり付けているようだ。 割と大雑把な僕は、タオルではなくボディブラシでガリガリ、というほうなので、 彼女のそれとは実に好対照だ。 それを自分の身体を洗うために使うと思いきや、次の瞬間僕の背中に優しい感触がした。 ・・・・。 ・・・・・・・・。 ごしごしと背中をいそいそとこすっていくと、小柄な僕の背中などすぐにこすり終わってしまう。 「お兄ちゃん、次は前だよ。」 「いやいやいや、ちょっと待ちなさいって、前は、僕が洗いますから!」 「えー、残念。」 いや、残念って、何が残念なんですか!いや、寧ろ僕は何も聞いていないし、聞く気もない、 断じてそうですから、ましてや、ロリコンなどではないですよ、ええ。 そんなこんなで、さっき僕が言っていた、ヒット・アンド・アウェイなど問題にならないくらいに 身体を洗う程度で、時間がかかってしまう。 それから、髪の毛を理沙が洗ってくれた記憶があったような、なかったような。 そして、理沙の体を洗った、もとい、洗わされたような記憶があったような、なかったような。 30 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 54 29 ID FAD2zTGd 風呂を出てから、時計を見るとお風呂で一時間近く過ごしていたようだ。 異常に長い入浴で、顔は海老のように真っ赤になっていて、のぼせている 訳ですが、その理由はおそらく、単に長風呂だった訳ではないだろう。 ボーっとしたまま、椅子に腰掛けていると、 目の前にトン、とオレンジジュースの入ったコップが置かれた。 「お兄ちゃん、のぼせちゃったみたいだから、オレンジジュースだよ。」 のぼせていて、反応がやや遅れたが、感謝の言葉を述べてから、 一息にそれを胃に流し込む。 調子も良くなったところで、歯を磨き、口をすっきりさせると寝床に着くことにしましょうか。 いやはや、歯磨き粉というやつは眠気を取るには十分すぎる効果を持っていて、 歯がすっきりした途端、頭まで冴え渡ってきた。 いまなら、確実にフェルマーの最終定理ですら解くことができるだろう、それ位だ。 そんな感じで、ベットの中にもぐりこむ。 が、布団の入ったばかりに感じるほのかな涼しさとは違い、なにやら暖かなものを感じる。 そう、暖かいといっても、人のぬくもりのような、人の・・・・ということは。 「お兄ちゃん、今日は一緒に寝てくれるよね?」 やはり、そうですか。想定内ということにしておきましょう。 目が覚めていて、すぐに寝れるわけでもないので、少し相手したら部屋に帰らせることにしよう。 イエスともノーとも言わずに黙っていると、理沙が話し始めた。 いくつか四方山話をしているうちに、再び睡魔がちょうどよい感じに襲ってきた。 どうやら、理沙に部屋に帰るように言うよりも先に自分が寝てしまいそうだ。 ディスクをフォーマットされるが如く、真っ白な世界へと誘われる。 それに、さっきからなんだか暖かく、柔らかい感じで、穏やかでゆったりとした時間が流れている。 例えるならば、記憶の片隅にあったゆりかごの心地よさの中にいるよう。 ・・・・・・・・。 ・・・・。 31 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 55 31 ID FAD2zTGd 松本理沙は自宅の兄の部屋で満ち足りた、穏やかな笑みを実の兄である弘行に向けていた。 お兄ちゃんは今、私の胸の中で静かに、すやすやと眠りについています。 本当は一緒にお風呂に入って、もう少しの間起きていてもらって、それからは言えませんが、 そうするはずだったのです。 でも、疲れているお兄ちゃんに無理をさせるのはあまりにかわいそう。 疲れているにもかかわらず、自分の思うままに強要したら、強姦と何一つ変わらない。 そんな獣がするような真似をあの常識人のお兄ちゃんが喜んでくれるわけがない。 だから、よく眠れるようにさっきお兄ちゃんに飲ませてあげたオレンジジュースに、 私特製の睡眠薬を混ぜて、静かに眠らせてあげることに急遽シナリオを書き換えた。 ちらり、と理沙はカプセルの残骸に目を向ける。 胸に顔をうずめて、平和そうに眠っているお兄ちゃんを見ているのもなかなか乙なものです。 お兄ちゃんのために、私、嫌いな牛乳を飲む努力したんだからね。 まだまだ大きいとはお世辞にもいえない胸だけど、満足してくれてうれしいなあ。 薬なんかに頼らなくとも、眠らせてあげることはできたけれども、 そうでなければ私、お兄ちゃんの部屋から追い出されちゃうから、それじゃ本末転倒だもの。 本当に今、幸せ。それはいわゆる、独占欲といわれるもののようなものなのかもしれないけど、 そんなことは私には関係ないと思う。 32 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 56 25 ID FAD2zTGd 思えば、昔から私はお兄ちゃんに迷惑ばかりかけてきたものでした。 元来虚弱体質で、重度の喘息という持病を持っていた私は、 お兄ちゃんにとってはお荷物以外の何物ではなかったでしょう。 ましてや、うちの両親は共働きでそれほど私の面倒など見てくれる余裕はなかった。 だから、年子で一つしか年の離れていない私をお兄ちゃんは、広い包容力で包んでくれましたね。 発作ばかり起こしていた私に薬を飲ませ、静かに見守ってくれたり、 私の体調の良いときは、散歩に連れ出してくれたり、 私をひざの上に乗せて、本を読んでくれたり・・・思い起こせばきりがない。 だから、私はお兄ちゃんのためなら、なんでもしてあげたいし、この命をささげたい。 お兄ちゃんのためなら、何をされたって我慢できるし、そうするのは私にとっても義務であると思う。 私が願うことは唯一つ。お兄ちゃんとずっとずっと、これから両親が死んでも、 どんな困難が立ちふさがっても、そう私たちの邪魔をするような輩があらわれても、 ずっとずっと一緒に生きること。 だから、その邪魔をするような人、ううん、言葉は正確に使わなくちゃ。人じゃなくて悪い悪い雌猫さん。 その雌猫さんの欲望の赴くままにお兄ちゃんを蹂躙させたりなんかは人間である私がしないのだから。 体が弱くたって、お兄ちゃんは私に教えてくれましたよね。 お兄ちゃんの大好きな化学の楽しさを。 薬を作って困っている人を助けたい、そう言ったらお兄ちゃんは喜んでくれましたよね。 私はね、お兄ちゃんのために薬を作るの。 雌猫さんとは一合いも刃を交える必要なんてないと常々思う。 人間が猫なんかと戦うことの身の穢れを感じてならない。 だから、安心してね、雌猫さん。すぐに楽になれるようにとびっきり強力なのクスリを今作っているの。 いずれはお兄ちゃんと愛し合うための薬なんかも作ってみたい、かなぁ? なんとなく恥ずかしいことをいった気がするけれども、恥ずかしくなんかないよね、お兄ちゃん? 33 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 00 58 05 ID FAD2zTGd とりあえず、第二話こんな感じです。 続きいつかけるかわかりませんが、読んでくれる、という方がいれば 書いていくつもりです。 34 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 01 36 34 ID 9e8kdSYE GJです! 妹の方が一歩リードなのかな? ゆっくりでもいいんで続きよろしく! 35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 01 46 08 ID W3PJS4CO うん、キモウトだね、いいね。 ヤンデレキモウトってなんで萌えるんだろ… 36 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 18 44 20 ID OP5C7pxP 35 単純明快! ヤンデレキモウトだからさ!! 37 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/04/19(木) 20 24 53 ID iavPXILR 24-32 GJ。 お兄ちゃん・・・気づいてよ!あんた、命の危険すら迫ってんだよ!! 久しぶりに投下します。予定とは違いますが。 38 名前:おにいたん3(仮称) ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/04/19(木) 20 29 53 ID iavPXILR その街は温泉が湧いていた。 近くに大都会が存在したため、その街は都会の奥座敷として栄えた。 ---それも過去の話。モータリゼーションは日本全国と都会の距離を縮めてしまった。 都会の人々は増えた選択肢を有効に活用しだした。 距離以外のアドバンテージがなかったその街は寂れるしかなかった。 この街で旅館を経営していたある人物は、旅館に見切りをつけて故郷を出て行った。 それから十数年。飲食店業に手を出した人物は数店舗を持つにいたり、故郷に凱旋した。 彼は故郷にも店舗を構えた。自分の成功の証として。赤字でもかまわないつもりだった。 ---その店は、『テュルパン』といった。『おにいたん、だいすき!3』開幕。 ************ 「おにいさん!相席、よろしいですか?」 「へ、俺?」 夏、麻枝耕治は新たに受けた辞令を持ってテュルパン4号店へと向かっていた。 『麻枝耕治は2号店店長代理兼マネージャーの任を解き、4号店店長代理兼マネージャーを命ずる』 横滑り人事であったが、勤務先が「あの」4号店と聞きかなり鬱になった。 万年赤字。店員は曲者ぞろい。客も曲者ぞろい。そして・・・。 テュルパンは現在5店舗存在するが、1~3は街中にあり、5号店は郊外の海水浴場近くにある。 4号店だけは、本部から車で高速道路を3時間ほど走ったところに存在していた。 幹線道路沿いではあるが温泉街の中にあり、都会型店舗であるテュルパンとしてはかなり異質な店舗である。 何でも創業者がこの温泉街の出身らしく、近くにはテュルパンの保養所も存在する。 さて、耕治は4号店に向かう途中、他社のファミレスに食事に立ち寄った。 他社店舗での食事も重要な仕事である・・・ そう自分に言い聞かせて入ったのはテュルパンと客層がかぶるであろう洋食中心メニューの店。 女性アテンダント(=ウエイトレス)に案内されて席に着き、メニューを眺めていたときである。 「おにいさん!相席、よろしいですか?」 「へ、俺?」 メニューから声の主を上目遣いに見てみると、小柄な女の子が立っている。 年齢は美衣菜ちゃんと同じぐらいか、もっと幼い感じがする。 髪型はショートボブを無理に上でお下げをつくり、リボンでくくったような感じ。 ・・・というか、ツーテール(ツインテール)のお下げを短く切ってしまったような? 顔は小さく目は大きく、きれいというより可愛らしいという表現がぴったり。 耕治は声をかけてきた女の子を数秒観察した後、店の中を見回した。 店の中は込んではいたが決して空席がないわけではない。 「だって・・・一人でさびしく食べるより、お兄さんみたいな人と一緒に食べたほうがおいしいから・・・」 伏目がちにぼそぼそとそんなことを言われたら転ばないほうがどうかしている。 「いいよ。前に座って」 「いいですか?!おにいさん、ありがとうございます!」 女の子はぴょこんとお辞儀をすると耕治の前のソファーに腰を落とした。 39 名前:おにいたん3(仮称) ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/04/19(木) 20 32 55 ID iavPXILR 「では・・・はじめまして!あたし、まなみっていいます! 好きな食べ物は太っちゃうのであんまり食べたれないけどショートケーキで・・・」 「ちょ、ちょっと!」 まなみと名乗った女の子は座るや否やいきなり自己紹介を始めた。 早口で自分のことばかりしゃべりだす彼女にドン引きする耕治。 「スリーサイズはぁ・・・恥ずかしいけどお兄さんにだけ教えちゃいますね。 77-57-79のBカップで・・・」 「あ、あの・・・」 「お客様、ご注文はなんにいたしましょうか?」 先ほど席を案内してくれたアテンダントがやってきて注文を聞いてきた。ナイスタイミングである。 「ビッグサイズハンバーグランチ、洋食ライスセットで。食後はアイスレモンティーシロップ抜き。 それと食後にジャンボストロベリーパフェを」 まなみという女の子はメニューもアテンダントも見ずにすらすらと注文を言ってのけた。 「かしこまりました。お連れ様は?」 「同じものを。ドリンクはホットコーヒー、ブラックで。パフェはあたしだけね」 「あ、あの・・・まなみちゃん?」 「い・い・で・す・ね?」 「は、はいぃぃぃ!!」 睨み付けるがごとき視線付のまなみの異常な気迫に押され、 耕治は勝手に決められたオーダーを思わず承諾する。 「御注文を繰り返します。ビッグハンバーグランチ洋食ライスセットをお二つ、食後にホットコーヒーと アイスレモンティーシロップ抜き。あと食後にジャンボストロベリーパフェ。以上でよろしかったでしょうか?」 「はい」 彼女はやはりアテンダントに一瞥すらくれようとしない。彼女の視線は常に耕治のほうを向いていた。 アテンダントは席を去り、まなみは再び話し始める。 「しっかしあのウェイトレスさん失礼だと思いませんか?まなみはずっとお兄さんと 話をしている真っ最中だって言うのに、まるで話の腰を折るために現れたみたいに!」 間違いなく話の腰を折るために現れたから。 多分俺が困ったような顔をしたので気を利かせて来てくれたんだろうと耕治は思ったが、 なんとなくそのことを話すと命の危険が訪れるような気がしたので黙っておくことにした。 もちろん耕治ではなくそのアテンダントさんに。 耕治はとりあえずまなみの意見に頷くと彼女の話を聞き流そうと努力した。 「まなみがウェイトレスの立場なら、絶対話しかけたりしません!・・・」 自己紹介の続き。最近見たテレビ。読んだ小説、雑誌。好きなタレント。 最近あった犬の話。ぬいぐるみの話。etc、etc。 以後料理が届き食べ終わるまで、えんえん彼女は話し続けていた・・・。 40 名前:おにいたん3(仮称) ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/04/19(木) 20 36 28 ID iavPXILR 「おにいさんすいません!ご飯代出してもらって・・・」 「仕方ないよ・・・無銭飲食させるわけに行かなかったし」 食事後、店の駐車場。耕治とまなみは連れ立って店を出た。 まなみはなんと財布を忘れたとの事で、彼女の分まで耕治が支払っていた。 「で、まなみちゃん?ここまでどうやってきたの?」 「実はタクシーで、下りるとき財布を車の中に忘れてきたみたいなんです」 「たくしー?どこからきたの?」 彼女が告げた地名を聞いて耕治は驚愕した。 なんと、耕治が出発した街=テュルパン2号店付近だったからだ。 「そんな遠いところから来たの?相当お金かかっただろうに・・・」 「こ、このお店にどうしても来たかったから・・・ここのストロベリーパフェ、同じチェーン店でもここしかないから・・・」 耕治の質問に節目がちに答える彼女。 自己紹介してたときは耕治のほうばかり見てしゃべっていたというのに、今は耕治の目を見ようとしない。 耕治はその理由に思い当たるところがあったがレが事実であるという確証が持てなかったし、 たとえ正しくても今後が困るので突っ込むのをやめて彼女を救う方向で会話を進める。 「そうなんだ・・・。で、どうするの?俺はこれからある街まで行くんだけど、そこから帰る?」 「え、その街に行くんですか?!うれしい!実はぁ・・・まなみもぉ、そこに行く途中だったんですぅ・・・ だけど、おにいさんはかまわないんですか?」 「かまわないよ。一人で行くよりも、女の子が横に乗ってたほうが楽しいし。さ、乗って」 「はい!おにいさん、大好きです!」 「ちょちょちょちょっ!」 ばふっ。まなみは両手を挙げて喜びを表すと、耕治に抱きついてきた。 ちょうど首の辺りにまなみの頭が来る。シャンプーのコロンの臭いが心地よい。 耕治はとりあえずまなみを引き剥がすとここを出ることを告げる。 「んじゃまなみちゃん、扉開けるから助手席に乗ってくれる?」 「はーい!」 「お兄さん、ありがとうございました」 本人の希望があり、温泉街の駅前で耕治はまなみをおろした。 ぺこりとお辞儀するまなみに耕治は苦笑しながら会釈する。車に乗ってから到着するまで、 彼女は耕治に対しひたすら話し続けていた。 そのテンションの高さに辟易しつつも、耕治は彼女の話に相槌を打ったりして聞いてやった。 「いやいや。こっちも楽しかったよ。運転してる感覚がなくなるぐらいよくしゃべったし」 片眉を引きつらせながら作り笑いをする耕治。 「おにいさん・・・あのう・・・」 得意技なのだろうか。伏目がちにまなみは耕治の瞳を見る。 「ずっと・・・まなみ、自分のことばかり話してましたよね・・・つまらなかったですか?」 瞳に涙をためて話すまなみ。その瞳にくらっときかけたが、耕治は正気をどうにか保ちつつ、 それでもくらっときたフリをすることにする。 耕治は少し腰を落とし、まなみと同じ目線の高さへ自分の目線を持ってくる。 「そんなことないよ。まなみちゃんが、すごく一途な女の子だって事は分かったから」 「はい!」 にっこりと笑うまなみ。これは年下属性の人間にはかなりクるものがあるな・・・そんなことを耕治は考えていた。 「ではおにいさん、しばしのお別れです!」 彼女は一歩下がると耕治に別れを告げた。 「・・・しばし?」 「また会おうねー!耕治お兄さん!」 「お、おう!」 駆け去ってく彼女を見送ると、耕治は再び車上の人に戻った。 目的地のテュルパン4号店はここから車で5分ほどのはずだ。 「しかし、すごい女の子だったな」 車の中、耕治は独り言をつぶやいた。そして耕治は用心のため、次の言葉は心の中だけでつむぐ。 (対象M、ねぇ・・・) 41 名前:おにいたん3(仮称) ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/04/19(木) 20 37 19 ID iavPXILR とりあえず今回ここまで。次回、もう一人のヒロインと選択肢。 42 名前: ◆dkVeUrgrhA [sage] 投稿日:2007/04/19(木) 20 41 35 ID iavPXILR 追記。今回エロ無きに等しいです。真面目に病ませます。 43 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 22 00 23 ID iCBaAwMl 33主人公の能天気さにワロタw ヤンデレヒロイン二人相手にしてこのマイペースはある意味オソロシスw 42 >真面目に病ませます。 病んでればエロなんかいらんのですよ! てか、まなみが既にかなり病んでるように見えるのは俺だけでしょうかw 44 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/20(金) 01 36 50 ID X7tZcT+A 33 まさか、塩酸や硫酸で一方に・・・なんてことはないよな・・・ 45 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 01 12 36 ID gXdY0xhS 何気に過疎ですか? 46 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 01 54 58 ID DO/N88ao どこも過疎だよ・・荒らしのおかげでな 47 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 11 25 27 ID 7EgbDAAY 荒らされてるの? 48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 14 05 56 ID l9Kjchlk 規制関連とか? 荒らされると、お兄ちゃんにまとわりつく魔女を殺せないから困る。 49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 14 49 53 ID pYnnfBkw 保管庫更新されてるぞ!! 今度は誤爆じゃないぞ!! 50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 15 34 42 ID IxgvNTX3 前スレで俺が告知してるがな(´・ω・`) 51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 15 37 05 ID IxgvNTX3 ちょwww 今見たら俺の前にもう一人いたorz スマソ 52 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/21(土) 18 31 56 ID lVSkVbv0 なんか自分の書いた文章が保管庫に載るとこっ恥ずかしいな 53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 18 35 24 ID lVSkVbv0 スマン下げ忘れた、、、 54 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/21(土) 18 58 36 ID pYnnfBkw よし、お詫びにもう一作品か続きを・・・ 気が向いたらでいいから 55 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01 50 22 ID jt1jcRSu 第9話、投下します。 第九話~姫~ ・ ・ ・ 俺の足元には、なにやら高そうな絨毯が敷かれている。 かなりの人数が同じ空間に集中しているというのに、コツコツ、カツカツといった靴の音さえしない。 部屋の壁には、ところどころに絵画や美術品のようなものがあった。 どれもこれも美術のセンスも感性も持ち合わせていない俺には理解できないものばかり。 ど派手に飾られた花の群れを収めるのは、これまた高そうな花瓶だった。 そして俺の周囲に居る人間達は、いずれもタキシードやら着物やらドレスやらを着込んでいる。 仕事着にも使えそうなスーツを着ている人間など俺しかいないのではなかろうか。 そう思うと、周囲の視線が自分に集まったような気がした。 もちろんそれが錯覚だということは分かっている。 だが、俺がこう思ってしまうのも無理ない話なのだ。 どれほど有名なのか想像できないような家の当主のパーティなど、初体験だ。 ついでに言うならば、こんな映画に出てきそうなパーティなど参加するのも初めてだ。 俺の家は誰がどう見ても平凡な日本の家庭だから、俺にそんな経験があろうはずがない。 だというのに、なぜ24歳になった今さらこんな場所にいるのだろうか。 原因は二つある。 まず。 「雄志君はまともな礼服というものを持ち合わせていないのかい? どう見てもそのスーツはオフィスでぐちぐち愚痴をこぼしながら仕事をして、 帰ったら妻と娘にないがしろにされることを分かっているがそれでも働くしかない、 と絶望しているサラリーマンにしか見えないよ。 さらに悪いことに今の雄志君は名刺も持ち合わせていない。 それではサラリーマンとは言えないね。サラリーマンへの冒涜だよ。 今すぐ君のお父さんに謝った方がいい」 一方的にまくし立ててくる十本松が一つ目の原因。 この宝塚女がかなこさんから招待状なんぞを受け取って持ってきたのが悪い。 次に二つ目。 「おにいさんの格好については、私も同感です。 どうしてそんなしわの入ったのスーツしか持っていないんですか。 さては収納するときにクリーニングに出さずに畳んでからしまいましたね。 これだから一人暮らしの男性は……」 場違いだと思い、参加する気を無くして部屋でくつろいでいるところに華が飛び込んで来たのが悪かった。 目ざとく招待状を見つけた華は、一緒に参加しようと言い出した。 そのせいで俺は今夜7時に行われるパーティに参加することに相成った。 十本松はタキシードをばっちりと着こなしている。もちろん男物。 華は薄いブルーの、胸元がフリルで飾られた落ち着いた印象のロングドレスを着ている。 なぜお前らはそこまでパーティへの備えが万端なのかと問いたい。 もしや、近頃の日本ではパーティというものが密かなブームだったりするのだろうか。 最近は新聞もテレビも読まないから世間のことに疎いのだ。 そんな世間に疎い俺が、いかにも社交的な人間達に混じってこの場にいるのは明らかにおかしい。 なんだってかなこさんは俺をこの場に呼んだのだろうか? 56 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01 52 03 ID jt1jcRSu 十本松いわく。 今菊川家で行われているパーティは、菊川家当主である菊川桂造の誕生日が主旨である。 菊川桂造という男は、傾きかけていた菊川家の事業を立て直した功績を持っているという。 同時に、代々続く菊川家の歴史の中でも前例の無いほどの繁栄をもたらしたそうだ。 その後もその手腕を発揮していくかと思われたが、7年前に手を引いて、 現在は悠々自適な生活を送っているという、うらやましい人間でもある。 7年前に桂造氏が引退する時点で菊川家の携わる事業は放っておいても大丈夫、 というほどに潤っていたらしいから今でも彼の名前は一人歩きしているらしい。 そのためこの場には直接的に彼と関係の無い、今日が初対面の人間――俺とか――も このパーティに参加している。 どう考えても俺はこの場にふさわしい人間ではない。 さっきから聞こえてくる会話には、「株主」「先生」「総理」という単語が頻繁に飛び交っている。 そんな単語にふさわしい返事のボキャブラリーと発想は俺の頭の中には入っていない。 今俺の頭を占める思いは、「帰りたい」。それだけだ。 十本松の昨晩の話では上等な料理や酒が振舞われるということだったが、 とてもじゃないが自分のペースで食べられるような雰囲気ではない。 俺が自分のペースで食べるときは一言も話さず、ひたすら料理を口に運び、 その味に感動するという庶民的な行動をとることになる。 周囲で行われているような片手にグラスを持ち片手でジェスチャーをするようなことはしない。 この場では食べることが優先されるのではなく、社交的な会話が優先されるのだ。 「だから来たくなかったんだよ、俺は」 誰に言うでもなくぼやく。 すると、それに華が反応した。 「いい機会じゃないですか。 せっかくですからこの場で社会人の社交術を思い出してください。 いずれはおにいさんだってフリーターを脱却するつもりでしょう?」 「もちろんそのつもりではいるけどな。この場で行われている会話が役に立つとは思えないぞ。 それに何を話せって言うんだ。俺に話せるのはコンビニ弁当を美味しく食べられる期間についてしかないぞ」 この場にいる人間達がコンビニ弁当について熱く語ってくれるはずがない。 某コンビニエンスストアの代表取締役でも来ていれば話は別だが。 「固くなる必要は無いよ。ただ愛想笑いを浮かべてへこへこしながら話しかければいいんだ。 話なんて適当に相槌を打っていればいい。 ここに居る人間たちは皆寛容だから雄志君が粗相をしても気にしたりしない。 それにヘマをしたところで私の記憶中枢にその光景が刻まれるだけだ。 堂々と偶然を装って淑女のバストに飛び込むがいいさ」 「……そんなことしたら社会的に抹殺されそうだからパスだ」 なぜ十本松はここまで落ち着いているのだろうか。 もしや、こいつもお嬢様なのか? かなこさんとも昔から知り合っていたみたいだし。 57 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01 53 01 ID jt1jcRSu 「とりあえず、誰かに話しかけてきたらどうだい? ほら、そこにいる黒いドレスを着て、これまた黒いその髪をアップにした女性などはどうだい?」 「ん……」 十本松が差した方向を見る。 肩の開いた黒いドレスを着て、艶やかな髪をアップにまとめた女性がいた。 彼女は初老らしき男性の数人と会話をしている。 それだけならこの場でよくある光景に過ぎないが、やけに男の腰が低いように思える。 物理的な意味でなく、彼自身の、彼女に対する立ち居振る舞いが。 「……無理言うな。あんなえらそうなおっさんがかしこまる相手だぞ。 もし話しかけてとんでもないところのお嬢様だったりしたらどうする」 その光景から目を反らし、十本松の顔を見る。 奴は、なぜか口を固く閉ざしたまま、目をぱちくりとさせていた。 俺の顔を珍奇な動物を見る目で見つめてくる。 「どうした? 俺の顔に何かついてるか?」 「……今の君に私が問いたいことは一つだけだ。君の目は、節穴なのかい?」 いきなり何を言う。 これでも人を見る目はそれなりにあるつもりだぞ。 どう見ても俺が話しかけていい相手じゃないだろう。 「華。この男気取りの無礼な女に何か言ってやってくれ」 「あの……今の、冗談じゃなくて本気で言ったんですか? あの人を見ても誰だかわからないんですか?」 華までが十本松と同じ種類の顔をしていた。 ただし、こちらの顔には多少非難する色が滲んでいる。 「おにいさんは服と髪型が変わっただけで誰だかわからなくなるんですね。 ああ、そういえばこの間久しぶりに会ったときからそうでしたね。 私の顔を見てもすぐに気づかなかったですし」 そう言うと、呆れた様子で嘆息した。 なんだっていうんだ二人とも。「あの人が誰だか分からないのか」? そんなことを言われてもな。 昔お嬢様だったらしい親友はいるが、現役のお嬢様なんて、俺の知り合いには居ない……? 待てよ。そういえば一人居たな。 とんでもない有名どころのお嬢様で、この場にいてもおかしくない人間で、 さらに黒い髪を伸ばしている、場の空気を変えてしまいそうなほどの美人が。 再度、先ほどの女性を見る。すると、いきなり目があってしまった。 反射的に目を反らそうとしたが――できなかった。 ただその女性から視線を向けられているだけだというのに、射竦められたような感覚を覚える。 つまり、俺はその女性から目が離せなくなったのだ。 女性がこちらにやってくる。 そして、俺の一歩手前の距離で立ち止まった。 「こんばんは、雄志さま。パーティに来てくださって、とても嬉しいですわ」 その人は、パーティの主役の娘であり、とんでもないところのお嬢様であるところの、菊川かなこさんだった。 58 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 01 56 08 ID jt1jcRSu 華と十本松が呆れたのも頷ける。 事実、今の俺は二分ほど前の俺に対して呆れかえっている。 ただ髪型を変えてドレスを着ているだけなのに、かなこさんのことがとっさに思い浮かばなかったのだから。 頭の中でさらに自分にダメ出しをしようとしていたら、、かなこさんから話を切り出された。 「今日はスーツをお召しになっておられるのですね。お似合いでございますよ」 褒められてしまった。 さっきから俺の両脇を固めていた女二人は俺をけなしていたというのに、 かなこさんはなんて気配りのできる人なんだろうか。 ……いや、同じ台詞を十本松に言われたところで嫌味にしか聞こえないということを 考えると、あそこでけなされていて正解だったか。 「かなこさんこそ、よく似合ってますよ。そのドレス」 「ありがとうございます」 俺の言葉を聞いて、微笑を浮かべるかなこさん。 思わず俺の口の端が上がる。 この、明らかに俺の立場と嗜好とはかけ離れた場所でこんな落ち着くやりとりができるとは。 「あら? そちらにいらっしゃるのは……」 かなこさんが俺から目を反らした。 彼女の視線の先には、どこか固い表情をした華がいた。 「こんばんは、かなこさん」 不機嫌であることを物語るかのようなぶしつけな口調だった。 「こんばんは。華さんのドレスも素敵でございますよ」 「……ありがとうございます」 明らかにそうは思っていない、棒読みの台詞だった。 かなこさんは、俺との少ない顔合わせの機会のいずれとも変わりない表情だったが、 華は長い付き合いをしている俺以外の人間が見てもわかるほど、機嫌が悪かった。 どうしたことだろう。 昨日の大学の中庭で起こった一件が尾を引いているのだろうか。 華はつい、と顔を背けると無言でその場から立ち去ろうとする。 「おい、どこ行くんだ」 「少し外の空気を吸ってきます」 と言い残すと、振り返らずにすたすたと歩き出し、重そうなドアをこじ開けて外に出て行った。 俺が華を追いかけようと一歩踏み出したら、十本松が手を突き出して俺を制止した。 「私が行こう。君が行っても華君の機嫌をさらに損ねるだけだよ。 そんなことより、かなこと話をしてやってくれ。 かなこが君と話をしたい、というから雄志君をここに呼んだんだから、 恋人に自分以外の男を近づけるという寝取られを覚悟しなければならない状況に あえて自分の身をおく私の厚意をありがたく受け取りたまえ」 ……お前の厚意など受け取りたくもないが、かなこさんが俺と話をしたいと言うならば、 あえて受け取ることにする。 俺の無言の意思を受け取ったのか、十本松は華の後を追いかけてその場から立ち去った。 ------ 連投規制を避けるため、前編のみ。一時間以内に続きを投下します。 59 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 02 42 20 ID jt1jcRSu かなこさんは、ドアへ向かっていく十本松の背中を見送っていたが、 その背中が見えなくなってから俺に顔を向けた。 そして、そのままじ……っと俺を見つめてくる。 「……」 この沈黙は俺だ。 かなこさんも沈黙しているが、彼女の視線が何か言っているような気がしたため、 沈黙だけが俺の聴覚を占めている。 彼女の端正な顔に張り付いている瞳が何を言っているのか、これが華や香織であれば 的中率が低くともなんとか当たりそうな気がするが、かなこさんにそれは通用しそうにない。 彼女が何を俺に伝えたいのか、全くわからない。 俺が立ち尽くしていると、突然右手を掴まれた。 白い手の持ち主である、かなこさんはさらに左手を添えると、俺に向かってこう言った。 「雄志さま。少々ご一緒していただいてよろしいですか?」 断る理由などあろうはずもない。 首肯する。と、かなこさんに手を引かれた。 「あの、どこに行くんです?」 手を引かれて歩かされながら、問いかける。 「わたくしの部屋ですわ。 ここではゆっくりお話ができませんので」 ここで話してもいいのではないかと思ったが、ちらりと右を向いただけで考え直すことになった。 やけに会場の視線が向けられている。 主に、俺に向けて。 左を向くと、俺の顔を指差しながら何かをささやいている人までいた。 文句を言ってやりたい気分になったが、この状況を分析してみれば なぜ後ろ指を差されているのかが理解できた。 このパーティに来ている人間達はいずれも菊川家当主の誕生日を祝うことを目的にしている。 俺の手を引いているかなこさんはその当主の娘である。 彼女の恋人がいるとしたら、少なからず興味を抱くはずだ。 もし彼女と親しくしている男がいたら、そいつを恋人と邪推してもおかしくない。 そこまで考えると、周囲の人に文句を言う気もなくなってしまった。 もちろん、俺がかなこさんの恋人であることなどありえないし、 三度しか会っていないのだからただの顔見知りに過ぎないわけだが――悪い気はしない。 60 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 02 44 21 ID jt1jcRSu ・ ・ ・ とはいえ、部屋に連れ込まれても甘い空気にならない事実は変わりない。 この屋敷に集まっている人間達の反応から鑑みるに、かなこさんの恋人になるであろう男は 余程人間ができていなければ、彼らに向けられる嫉妬と羨望の視線に堪えられなさそうではある。 もし俺がそんな状況に置かれたら耐えられないかもしれない。 が―― 「お茶をお持ちしました。……どうぞ」 カップに透き通った紅茶を注ぎ、嬉しそうに俺の前にカップを置くかなこさんを見ていると 他人の視線などものともしない自信が湧いてくるから不思議なものだ。 まったく、彼女の好意を独占できる男が羨ましくてたまらない。 鼻腔を柔らかく刺激する匂いを堪能しながら、紅茶の味を味わうスキルを持ち合わせていない 俺はちびちびと唇をカップにつけていた。 かなこさんの背中を見やる。 彼女はペン立て以外何も乗っていない机の前に立っている。 俺の座っている場所からは何をやっているのかは分からない。 だが、ドレスを身に纏い髪をアップにしているその後ろ姿はよく見えた。 髪を下ろした普段の髪型とは違い、うなじが丸見えになっていて、 さらに肩を丸見えにしているドレスと相まって、目に毒にしかならない。 毒は毒でも、たちまちのうちに中毒にしてしまいそうな類のものであるが。 俺がその背中をじっと見つめていると、かなこさんがゆっくりと振り返った。 胸の前で大事そうに本を抱いている。 テーブルの向かい側にやってきて椅子に腰を下ろすと、本をテーブルの上に置いた。 既視感を覚えた。 彼女と初めて遭遇したあの日、料亭になかば無理矢理連れ込まれて 食事をしたあとにもこんな光景を目にした気がする。 「話したいことというのは、この本のことですわ。 この本の内容を、まだ覚えてらっしゃいますか?」 かなこさんはそう切り出した。 忘れるはずがない。以前何度も読み返したからな。 「もちろん覚えていますよ」 「……では、何か思い出されましたか?」 …………。 え? 質問の意味が掴めない。 目の前にある本の内容は覚えている。 だが、何か思い出したか、と言われてもわからない。 「ぁ……申し訳ありません。言葉が足りませんでしたわ。 言い直します。その本に記されていた出来事が起こったとき。……そのときのことを思い出されましたか?」 61 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 02 46 32 ID jt1jcRSu さらに質問の意味が不明になった。 からっぽの頭のなかにピンポン玉を放り込まれたように、思考が落ち着かない。 「記されていた出来事」。これはわかる。 姫さまが刺客に狙われて、最後は殺されてしまう。 簡単に言えばそれがこの本の内容だ。 「そのときのことを思い出したか」。 そのときというのは、この本を読んだときのこと……では無いように思える。 かなこさんの口調は、その場に居合わせたときのことを問うようだった。 そんなこと、わかるはずがない。 俺は生まれてきてからまだ20数年しか経過していないわけで、 その頃に武士や姫と呼ばれる人間が存在するわけはないし、 それ以前に俺の記憶に欠陥が無い限り人が死ぬ現場を目にして忘れたりはしない。 「……あの、もしかして俺のことをからかってますか?」 「? なぜそう思われるのですか。わたくしは真剣に言っておりますが」 かなこさんの声には怒りが少し混ざっただけで、冗談を言っているようではなかった。 とりあえず、質問に答えることにする。 「……覚えていませんよ。俺は人が死ぬ現場に居合わせたことは一度も無いし、 それ以前に武士や姫らしき人間と会ったことも無いです」 「え……」 俺の言葉を聞くと、かなこさんは目を見開いた。 「そんな……なぜ、なぜ忘れておられるのですか!」 次の瞬間、かなこさんはテーブルに両手を叩きつけて身を乗り出してきていた。 すぐに下を向いたので、彼女の表情は見えない。 「わたくしが…どれほどの間、このときのことを待っていたか……。 貴方さまに会う日を、焦れながら……心を締め付ける切なさに耐えながら、 待ち続けていたというのに……何故…雄志さまは……」 呟きが止まり、かなこさんの顔がゆっくりと上がる。 「ぅっ……」 思わず息を呑んだ。 後頭部から背中にかけて一気に冷たいものが駆け抜ける。 ナイフを眉間に突き立てられて、そのままえぐられているような気分さえする。 この感覚を与えているのは、目の前にいる女性である。 「……忘れた振りをなさっているならば……許しませぬ………」 白い顔に張り付いている恨めしげな眼差しと、彼女の放つ威圧感が俺に向けられていた。 62 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 02 48 49 ID jt1jcRSu 何と言って切り出せばいい? 言葉の選択を間違うだけで飛び掛られてくびり殺されそうな雰囲気だ。 かなこさんの瞳から放たれる眼光はまったく緩みそうにない。 だが、何も言わないわけにもいくまい。 彼女は俺が何かを忘れているから怒っているらしい。 一体、俺に何を期待している? 「あの、かなこさん」 「なんでございましょう……」 かなこさんの目がさらに吊り上る。 まばたきの一つもしないその瞳は充血して紅くなっていた。 声を絞り出そうとしてもなかなか出てくれない。 喉に空気の塊が溜まっているようだ。もどかしい。 「俺が、何を忘れているって言うんですか」 慎重に選んだ結果、出てきたのはそんな言葉だった。 次の瞬間、かなこさんがテーブルを飛び越えた。 肩を掴まれ、勢いそのままに椅子ごと押し倒される。椅子の背もたれが背中を強く打つ。 衝撃を受けて喉からうめき声が吐き出された。 「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 かなこさんが叫び声を上げながら俺の首に手を伸ばしてきた。 このとき、咄嗟に腕を動かして白い手を掴まなければ、首を絞められていたに違いない。 「ぐっ……」 全力で押し返そうとするが、びくともしない。 親指と人差し指がしっかりつくほど掴んでいる手首は細いというのに、 信じらないほどに彼女の力は強かった。 「わたくしのことを忘れるなど……許しては置けませぬ!」 「だからっ……なんのことだって言ってるだろ!」 かなこさんの腹に膝を滑り込ませて、巴投げのように放り投げる。 即座に前転して、その場から離れる。 振り向くと、かなこさんはまったく変わりない様子で立ち上がっていた。 そして、ゆっくりと歩み寄ってくる。 それを見て危険を感じ、立ち上がろうとするが――力が入らなかった。 63 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/23(月) 02 54 30 ID jt1jcRSu (なんだ、これ) 体のどこを怪我をしているわけでもないのに、どんどん力が抜けていく。 力が絞り出せない。――いや違う。眠い。 何故だ。 こんな状況で眠れるほど俺はアホじゃない。 ふと頭に閃くものがあった。 もしや、さっきかなこさんが淹れた紅茶に睡眠薬でも入れられたのではないか? 「うふ、ふふふふふ」 睡魔におかされたまぶたは上手く開いてくれない。 歯を食いしばって耐えようとしても、そもそも力をいれることすらかなわない。 (くっそ……) 耐え切れずに目をつぶると、いままで手加減をしていたのか睡魔が一斉に侵攻を開始した。 自分が倒れていると分かったのは、顔の皮膚に絨毯の感覚があらわれたときだった。 心地よさに触覚まで手放したとき、暗い世界の中で透き通る声を聞いた。 「雄志さまが何を忘れているのか、教えてさしあげます。 わたくしの護衛として尽くしていたときのこと。 わたくしを守ることができず、涙を流したときのこと。 そして、わたくしと過ごしたときの思い出。 ですがご安心を。すぐに思い出させて差し上げます――」 ――もう少しわかりやすく言ってください、かなこさん。 脳内でぼやいた後、抵抗することを諦めて頭のスイッチをOFFに切り替えた。 ----- 第9話はこれで終わりです。 64 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 09 26 26 ID 4iSbWHjX まさか輪廻転生? GJ! 65 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 10 44 42 ID aHEdQbQo 睡眠薬キタコレ!さらに監禁キタカモ! かなこさんの怒涛の追い上げにワクテカ!(*゚∀゚*) 66 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 12 11 11 ID bCr9w1uO これはかなこさんいい病みっぷり(*´д`*)ハァハァ 監禁→調教コースクルー!? しかし本当に前世が会ったのかかなこさんが病んじゃってるのかどちらなのだろうか? 先の展開が待ち遠しいぜ 67 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 20 36 28 ID rLuIv2fz かなこさんの執着心が素晴らしいですね(*´Д`)ハァハァ しかし主人公の鈍さにワロタw こういうタイプだから修羅場を呼ぶのか…… 保管庫の管理人さんもすばやい更新乙です 68 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/23(月) 21 48 19 ID FN49ce+b 輪廻転生っていうシチュは大好きだぜ! GJ!! 69 名前: ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/04/24(火) 00 59 31 ID rBKOmnMd 投下 70 名前: ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01 00 07 ID rBKOmnMd 第9章 『誠一さんはなぜか逃げてしまった。』 『何故帰ってきてくれないの?なぜ私を抱きしめてくれないの? なぜ「ただいま」といってくれないの?・・・』 真奈美は考えても考えても解けない疑問に苛まれていた。 もうあの再会からかなりの時間が経っている、 太陽はもう沈みきり外は暗くなっている。 今、真奈美が居るリビングも電灯を灯さなければ真っ暗闇だ。 だが真奈美は電灯をつけることもなく一人暗い部屋でひざを抱えていた。 そんな時、ふと聞きなれた夫の声が聞こえた。 いつも自分と睦みあっていたときの声だ。 初めは幻聴かとも思ったが何故か妙にはっきりと聞こえる。 しかもその音源は何故か隣家から発せられたいた。 ・・・ 何がおこっているのか、真奈美は頭で理解していた。 だがその壊れた心は何が起きているのか理解することが出来なかった。 『夫が自分以外の人間と情事をしている。』 たったこれだけのこと。 だが真奈美にとっては明日世界が滅びることに等しい現実がそこにあった。 71 名前: ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01 01 35 ID rBKOmnMd 終了 酔っているのでもう㍉ アヒャ 72 名前:夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/04/24(火) 01 03 42 ID rBKOmnMd 題名忘れてたorz 73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 04 28 50 ID 1ATfAhUY 71 ちょwww しかし1レスだけなのにいい病みっぷり この思い込んじゃった状況からどんな反撃がくるのかwktk 74 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 16 11 05 ID qGV5j/89 言い訳の通用しそうにない、修羅場フラグが…! 75 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19 16 48 ID JeOX++KE 展開的にはwktkdkdk ↓以下愚痴なのでスルー推奨 ただ、代用として愛するっていうのはややマイナスかなぁ。 代用ってことは、仮に本物がいたのならばその代用には見向きもしないって事だからなぁ。 その人自身を見ていないのにその人を見てる人から奪うっていうのはねぇ。 まあ、代用からその人自身を見るようになればいいけれど。 76 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 21 07 02 ID NbDIVBxn wktkdkdk ってどんな意味? 77 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 21 19 20 ID 3xpt8S7/ 75 つーか自分でそう思うなら書くなよ、誘い受けしてんのか? 78 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 21 21 48 ID xFpqeBcR ワクテカドキドキ 真奈美さんが主人公を完全に亡夫色に染め上げる(洗脳?)のか、 二人の違いに気付いたとしてそれでも……になるのか どっちの展開でも面白そうw 79 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 00 07 58 ID DAq3gZAL 72ちょww酔っててこのクオリティてすげぇなGJGJ! 80 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 00 35 08 ID x6cMIs0H 77 とりあえず意見として。過剰反応する人がいるとまずいので念のため。 81 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 00 45 17 ID uk9yIfMC スルー推奨とか書くと、余計に荒れる。 前から言われてなかったっけ? 82 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 04 15 57 ID x6cMIs0H 81 いや、悪い。知らんかった。 83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 04 40 23 ID d4ZaRz57 79 実を言うと書いた時の記憶がおぼろげなんだ 84 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 17 05 56 ID GOZgQ1xe じゃあ真奈美さんには神が酔った隙をついて ドンドン暴走してもらおうw 85 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/25(水) 19 25 35 ID fnedj0Gb ストーカー小説を書こう♪ http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1177489240/ 86 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 12 19 44 ID XQgeEHxa また細分化か…… 87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 16 06 52 ID JCjhr2jr キモウトスレにもあったからマルチじゃね?と言って見る 88 名前:名無しさん@ピンキー[アゲ] 投稿日:2007/04/27(金) 01 11 02 ID RTKA6El4 誰か投下してくれ 89 名前:緋口宗一[] 投稿日:2007/04/27(金) 20 29 26 ID 74nAWJQm 初めまして。 中村さん 「ごめんねー、またやっちったよ」 「ああ、はいはい。部屋ですか?」 「うん。」 「手ぇ、動かないとかないですか?」 「ちょっとぴりぴりしてる・・・。血は、前みたいな 感じ」 「すぐいきますわ」 「ありがとー。・・・怒ってる?」 「はい」 「ごめん」 「はい。じゃあ、脇の下ちゃんと押さえててください。」 「うん。あ、あとさ、ゴムも持ってきて?」 通話を切って救急箱を持って中村さんの家に 向かった。 カウンセリングもあんまり効果がないみたいで、 相変わらずこんな真似を繰り返している。 90 名前:緋口宗一[] 投稿日:2007/04/27(金) 20 52 18 ID 74nAWJQm すでに中村さんの右手はムカデみたいな 縫いあとだらけで(彼女は左利き)、 だいぶ前から血管に届くぐらい深く切るように なっていた。 救急車を呼ぶといやだいやだと喚いて逃げて、 気絶され、退院したあと 「知らない人に触られたから」 と腕の皮を剥ぎだしたりしたので、 それからは僕が応急処置をするようにしている。 惚れた弱みだよなー、と、少し笑えた。 すごく悲しく笑えた。 自転車を深夜の中でとばして中村さんの 家についた。 相変わらず広い。そして寒い。 「中村さーん」 「はーい。」 二階の、自分の部屋にいるらしい。 と言っても、この家にはずいぶん前から 彼女しかいないのだけど。 両親が鬼籍に入った後も、そのまま自分の 部屋に住み続けている。 91 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 20 58 54 ID pRpasZ1e しかしあれだね、書きながらじゃなくまとめて投下しよう? ね? あと、書き込みするときはメール欄にsageと入れようね、これ基本のルールだよ 92 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/27(金) 21 10 30 ID kxMrQjWP 91 メール欄にsageと入れようね、これ基本のルールだよ そんなルールねーよww 93 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 21 18 11 ID fL7oUDxI しかし、荒らしよ あちこちと荒らして作品を罵倒する割には この程度の作品しか書けないとは 本当につまらないな・・ 145 名前:名無したん(;´Д`)ハァハァ[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 10 41 15 ID z9GXvD8R 例の荒らしは、分が悪くなると「煽り」という単語を好んで使うからな。すぐに分かる。 語彙が少ないからSS書いても褒められなかったんじゃないの? ↑ こいつの言う通りだね 語彙が少ないよ 94 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22 09 07 ID pRpasZ1e 92 3 3 3 95 名前:緋口宗一[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22 18 29 ID 74nAWJQm すいません、完成してからまとめて 投稿します。 ルール読んでませんでした、 以後気を付けます。 96 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/27(金) 22 47 48 ID EHmZSjkz 95 ガンガレ 正座してまってるよ 97 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 01 01 16 ID HKpxrRJf ヤンデレがあれば百合展開でもここに投稿していいのかな? 98 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 01 06 14 ID P8pLkMlw 初期に百合ヤンデレを書いた人はいたよ。 既に保管庫でチェック入ってるが「終わるその時に」がそれ。 投下の前置きに百合であることを明示しておけば、苦手な人も避けられる。 99 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 01 08 04 ID MaUmRn+X 面白そうなので期待 100 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 01 34 31 ID T3frx2Ef 百合ヤンデレなら貧富の百合と希望してみる。 純真無垢な貧乏娘と、汚れを知ってる金持ちお嬢様 逆もいけるな、これ。 101 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 01 58 54 ID HWUaTON8 まあ、百合は百合スレでやれって人もいたし、そこら辺は注意。 102 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 10 51 01 ID d5beOcdA 第十話、投下します ----- 第十話~忘れていたこと~ ・ ・ ・ 頭がくらくらする。 たった今眠りから覚めたけれど目を開ける気にならない。 今の俺にとっては目を開けるだけでもかなりの重労働だ。 頭の中を酸性の液体で溶かされてしまったようにぼろぼろになった気分。 二日酔いと似ているが、吐き気を催さないだけまだマシではある。 ぐるぐると思考がまわっている。落ち着かない。 そもそも、何でこんな状態になっているんだ? 俺はただ華と一緒にパーティへやってきて、十本松となんの得にもなりそうにないやりとりをして、 かなこさんに自室に誘われて、それから―― 『……忘れた振りをなさっているならば……許しませぬ………』 『あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』 『わたくしのことを忘れるなど……許しては置けませぬ!』 ――そうだった。 激怒したかなこさんに襲われて、その後で何故か眠ってしまったんだ。 あの時の彼女の様子は俺を食い殺さんばかりの勢いだった。 無防備に眠ってしまった俺は格好の餌食だったはず。 眠ったまま殺されていてもおかしくない。 それなのに、何故俺は生きているんだ? もしかして既に死んでしまっていて、今いるところが死後の世界だとか? いや、それはないな。死後の世界なんてあるわけがない。 心臓停止、もしくは脳死をおこせば人間はただの肉塊になるだけ。 そうなったら、人生は終わりだ。 コンティニューなんてものはありはしない。 『その後、彼が再び立ち上がることはなかった……』みたいなテロップが表示されて、 エンドロールが流れておしまいだ。 しかし、こうやって自分の意識を保っているということは、まだ死んではいないということだろう。 死んでいないだけで、かろうじて生きているだけの状態かもしれないけど。 ようやく思考も落ち着いてきた。 まぶたを開けるくらいの余力もでてきた。 ゆっくりまぶたを開く。そこには、間近で俺を見つめる女性が居た。 103 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 10 52 46 ID mQwZBQ83 小人度し難し。 「屑な奴ってのは近づければ、つけあがり、遠ざければ、逆恨みする。手に負えねーよ」 と云う意味の孔子の言葉。 ところでヤンデレ娘。 近づければ、「愛してるのね!」 遠ざければ、「お仕置きしなきゃ」 ・・・・・サイコーですね。 投下します。 104 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 10 53 19 ID d5beOcdA かなこさんの顔が、目と鼻の先の位置にある。 ため息を吐けばその微風を感じ取れる距離。そこに思わず目を奪われてしまう美しい顔がある。 その顔はしきりに俺の顔の前で左右に、上下に動いていた。 潤んだ瞳には歓喜が宿っているように見える。 どうしてそんな瞳をしているのか、という俺の疑問は、自分の唇に触れる柔らかな感触と、 口内を這いずり回るやわい感触の何かと、ぴちゃぴちゃという水音を感じるうちに解けた。 「んん……んふ、……ふん…ちゅ……」 かなこさんが俺にキスをしていた。 それも唇に触れるようなものではなく、口内の液体を絡ませ、吸い取るような激しいものだった。 時折かなこさんの髪が俺の顔に垂れてくると、彼女はそれをうっとおしそうにはらう。 彼女は目を瞑ると、唇を強く押し付けて深く舌を挿入してきた。 蜂蜜が垂れていくようなゆったりとした動きで、かなこさんの舌が動き回る。 衝撃的な光景にとらわれていた俺は、その舌に応えることなどできなかった。 自分の目の前で起こっていることが、とても信じられるものではなかったからだ。 俺が呆然としている間にも口内は蹂躙され続け、かなこさんは俺の首を強く抱きしめた。 抱きしめる力が強くなる。肢体を激しく動かしだした。 その動きが激しさを増し、より強く唇を押し付けられた瞬間、目を開いた彼女と目が合った。 「んんっ……ん! んんんんんっっ!!!」 繋がった唇から、緩やかな振動が伝わってきた。 舌と唇を使い唇をこじ開けられると、口内に液体が入ってきた。 仰向けに寝そべっていた俺は、喉にまで達したその液体を空気と一緒に飲み込んだ。 荒い呼吸をつきながらかなこさんは上体を起こした。 そのとき、俺は今度こそ自分の目を疑った。 彼女のほっそりとした首から肩を通り腕へ伸びるラインを遮るものは一切なく、 さらけ出された肩の白さを邪魔する衣服さえ、目の前の女性は身に着けていなかった。 そして、生まれたままの姿をしているのはかなこさんだけではなかった。 腹筋の辺りに感じるぬめった感触と少しの重量感が肌を直接的に刺激している。 さらに俺の四肢は縄で縛られていて、自由が利かないようにされている。 俺はスーツを脱がされた状態でベッドに固定されていた。 105 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 10 57 19 ID d5beOcdA 無形さん、先に投下してもいいですか? 106 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 00 13 ID mQwZBQ83 すみません、かぶっちゃいましたね。 おさきにどうぞ 107 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 01 25 ID d5beOcdA 「ようやく目が覚めたのですね。 何度くちづけても反応がなかったものですから、不安になってしまいましたが、 雄志さまと目が合った瞬間にはわたくし、いってしまいましたわ。 キスでこれだけ刺激的ならば……雄志さまと繋がった瞬間にはわたくし、死んでしまうかもしれません」 そう言うと、かなこさんは唇の周囲についた唾液を舐め取った。 「雄志さまの唾液を、たっぷりいただきました。 これだけなめらかなものを口に含んだことなど初めてです。 ほんとうに、どんなものにも勝る甘露ですわ。おいしゅう、ございました」 かなこさんの小さな舌と唇がぴちゃり、という音を立てた。 また顔が近づいてくる。頬に柔らかいものが触れた。 頬にまで垂れ下がった唾液を舐め取ると、舌が首へ向かって移動する。 喉仏を唇で包み込まれ、強く吸われる。たちまちぞくり、としたものが駆け抜ける。 「んちゅ…ああ、首の脈がびくびく、動いて……かわいい……」 舌が首筋を舐め始めた。 顎の舌から、鎖骨へ向かい、また折り返してくる。 「ああ、もう……こんなことって……んん、ふ……」 かなこさんが口付けてきた。 両手で俺の頭を掴み、髪を撫で回しながら舌で攻められる。 息苦しさに首を軽く反らす。 「っ! 雄志さま!」 大声をあげられて、首を正面に固定された。 「もはや、逃げることなどできませぬぞ……。 このまま、わたくしと愛し合い続けるのです。明日になっても、日付が変わっても、ずっと、ずっとずっと。 引き裂かれてから今までの分の肉欲を、わたくしにぶつけたいのでしょう? 欲望を子種に宿して、わたくしの中にそそぎたいのでしょう? 言われなくとも、わかります。先ほどから、雄志さまの肉体が疼いているのがつたわってくるのです」 言われたとおり、俺の体は止めようもないほどに熱くなっていた。 これほどの興奮を味わったことは一度もない。 女性の方から犯されているという異常な状況だというのに。 頭を冷やす材料が、ひとつもなくなっていた。 108 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 02 52 ID d5beOcdA 「さあ、存分に……」 小さな手が、肉棒を掴んだ。 ひやりとした感触が熱におかされたものを包み込む。 目を合わせながら手淫をされる。 絶妙な愛撫だった。射精欲が高まっている状態で施されるそれはたやすく俺の理性を揺さぶる。 数本の指の動きだけで、まるで俺の体を知り尽くしているかのように弱点ばかりをついてくる。 「うふふ。……やはり、ここを触られるのがお好きなのですね。 もちろん、覚えておりますよ。雄志さまのお体のことは。 そして、こうされるよりも――」 かなこさんは手淫をやめると腰の上に座った。 秘裂をぴたりと陰茎に合わせて体を揺する。 「わたくしの膣の中で果てることが一番お好きだということも」 その言葉の後でかなこさんの腰が離れて、陰茎が開放された。 真上を向いたペニスの先端に肉が触れた。 「あ、ああ、あ……ひろがって、る……」 かなこさんの体が俺の肉棒を飲み込み始めた。 まだ半ばまでしか達していないというのに、膣壁が強く張り付いているように感じる。 そのときになって、本当の意味で自分が犯されている、ということがわかった。 俺の感覚が全て肉棒に集中して、そこから全て吸い取られている。 「もう、すぐ…雄志さまがわたくしのものに、ぃ……あ、ぁはああああ…… あ、あああ! イ……って、しまっ、……ふっ……ぁぁあああああああ!!!」 彼女の膣が俺自身を全て飲み込んだ瞬間に締め付けられ、より強く絞り取られる。 激しく痙攣する彼女の体は、耐えようとする力さえも奪い取ろうとする。 理性を飲み込む快楽が俺の脳を支配したとき、肉棒から精液が飛び出した。 腰がびくびくと動き欲望が吐き出される。 脳から電流を断続的に流される。腰の動きが止まらない。 快楽で呼吸するのを忘れ、息苦しさを感じるほどになってから、ようやく腰の痙攣が止まった。 「すご……、もぅ………どこにいる、か……。 ……あ、あ、ぁぁ。 ゆ、しさまぁ……わたくしを、こわして………」 彼女の言葉が耳に届くだけで下半身が力を取り戻した。 それを待っていたかのように、かなこさんは腰を上下に動かしだした。 109 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 03 46 ID d5beOcdA ・ ・ ・ 心臓が全力で血液を送り出している。 腰の上にまたがり、剛直を飲み込んだまま離さず、締め付けてくる女性に応えるように。 何度果てたか覚えていない。5回までは数えられたがそこから先は思考までも侵されてしまった。 「あああ! あ、はぁ、あ! はぁぁぁぁああああっ!」 かなこさんが俺と体を重ねている、という信じられない光景は何度目をこらしても目の前にある。 「雄志さま。そろそろ思い出されましたか……? わたくしのことと、あの頃のことを……」 情事の間を縫う問いかけは空虚なものしか俺にもたらさない。 かなこさんの体以外のものが歪んで見えるのと同様、快感以外に閃くものが頭に無い。 俺が忘れているらしい『なにか』を思い出す兆しなど、まったく見えてこない。 俺が頭をベッドにつけたままにしていると、かなこさんはまたしても体を使い出す。 唇を、胸を、へそを、ペニスを、肛門を、指の間を弄り、無理矢理に俺を勃たせる。 そうして、再度を俺を飲み込み絞り取ろうとする。 俺の体は動かなかった。 筋肉が衰えて、機能が死んでしまったのではないかとさえ思える。 情事の激しさが原因になったのではなく、気がついたときには既に体の自由がきかなかった。 「そうしてなすがままになっている姿は、本当にかわいいですわ。 あれだけ凛々しい方が、こんなにあられもない姿になっているなんて」 頬と頬を合わせて、胸と胸を合わせて体を摺り寄せる。 隅々まで触り尽くされた体はその行動に対して拒否を示そうとはしない。 むしろそうされることを待ち望んでいたかのように、下半身に血液を集めだす。 「まだ、わたくしが欲しいのですね。もちろん、そのようにいたします。 わたくしの心と体は全て、あなたさまのもの。その代わり、あなたさまの全てもわたくしのものです。 もっと、もっと雄志さまの子種を注いでくださいまし。 そうすれば、必ず雄志さまとわたくしの二人の御子を授かりますわ。 覚えておられますか? 子供は2人欲しいとおっしゃったことを。 わたくしは、2人と言わず5人でも、10人でもよろしいのですよ。遠慮など、なさらなくともよいのです」 肉棒を包み込まれて、締め付けられる。 腰を打ち付けられる感触を肌に感じる。卑猥な水音が耳に届く。 それが幾度も繰り返されるうちに、俺の意識は暗く沈んでいった。 110 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 05 18 ID d5beOcdA : : : 意識がつながったとき、俺は教室の中に居た。 そこが教室だとわかったのは、中学時代に飽きるほど目にした光景そのままだったからだ。 窓の外に見える茶色のグラウンドと、色とりどりの花が植えられた花壇。 教室の壁の一部を成す濃い緑色をした黒板。 習字の授業で書かされた、個性的な『努力』の文字たち。 全てが俺の知る中学時代の教室だった。 ただひとつ違うところは、目の前で床にうずくまる少女がいるところだった。 『ひっ……く、ひっく』 その少女のセミロングの髪は微かな茶色に染まっている。 中学時代に茶色の髪をしていた少女は思いつくかぎり一人しかいない。 『香織ちゃん、大丈夫?!』 別の女の子がやってきて嗚咽を繰り返す少女の肩に手を置いた。 泣いている女の子は、中学で初めてできた友人の天野香織だった。 俺――夢の中の――は立ち尽くしたまま動こうとはしなかった。 こうやって傍観者の立場になると自己分析ができる。 自分が泣かせてしまった少女に対してかけるべき言葉を、当時の俺の頭ではひねりだすことができなかった。 なぜ泣かせてしまったのか、今の俺には咄嗟に思い出せなかった。 だが、香織の足元に転がる銀色の硬貨を見ているうちに、自責の念と共にその理由を深いところから掘り出せた。 それと同時にこれだけ重要なことを忘れていた自分を殴りたい衝動に駆られた。 俺が投げた硬貨が香織の顔に当たってしまった。それが香織が泣いている理由だ。 なぜそんなことをしたのかはわからない。多分、何かのゲームをしていたのではないだろうか。 熱中しているうちに周りが見えなくなり、俺が投げた硬貨が香織の顔に当たってしまった、 というのが事態のあらすじだろう。 女の子の顔に怪我を負わせてしまったということ。 中学時代の無知な俺では深く理解できなかったが、今ならわかる。 俺は、香織の人生にヒビを入れてしまったのだ。 111 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 07 31 ID d5beOcdA 事件の翌日、香織は額にガーゼをつけて登校した。 普段は笑顔を張り付かせている顔は、そのガーゼのせいで酷く痛々しく見えた。 休み時間、俺は香織と二人きりになって土下座して謝った。 香織は「そこまでしなくていいよ」と言ってくれたが、俺は顔を上げなかった。 そうしているうちに香織が泣き出した。 「やめてよ……そんなことしないで。 雄志くんは悪くないって、運が悪かったんだってボクは思っているから……だから、頭を上げて」 それでも俺は顔を上げなかった。いや、上げられなかった。 取り返しのつかないことをしてしまった恐怖にかられ、情けなくも泣いていたからだ。 そんなことをしているうちに、泣き止んだ香織が俺に向かってこう言った。 「わかった。じゃあ、こうしよう。 本当に悪いと思っているんだったら、責任をとって。 もしかしたらお嫁さんにいけないかもしれないからさ、だから…その、えっと……。 そ、その先は言わなくてもわかるよね。じゃあ、そういうことで!」 と言い残すと、香織はきびすを返してその場から立ち去った。 取り残された俺――中学時代の――は香織の言葉を変な方向に解釈していた。 『責任』の部分に強く反応し、香織に対してより申し訳ない気分になっていた。 そのせいで、教室に戻ってから香織と距離をとるという行動をし始めた。 今だから言えるが、中学時代の俺は馬鹿だ。それもどうしようもないほどの。 さっきの言葉はいわゆるプロポーズだろう。 それを変な方向に解釈して、距離をとろうとするとは。今すぐ修正を施してやりたい。 まあ、数時間前の俺も馬鹿だけどな。こんな重大な出来事を忘れていたんだから。 今度香織に会ったらあの時の話をさりげなく振ってみよう。 いや、結婚の申し込みをするわけじゃないぞ。香織の方も忘れているかもしれないしな。 もし覚えているんだとしたらどうしようかとも思うが……それはそのときに考えよう。 しかしこの夢は長いな。一体いつまで続くんだ――? : : : 112 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 10 08 ID d5beOcdA 突然に、唇の感覚が復活した。口の中に舌が入れられる。 もしかして夢の続きか?事件のことを忘れていた罰として俺をどうにかしようというのだろうか。 そうだとしたら、今まで事件のことを忘れていた謝罪を兼ねて、夢の中の香織に応えてやらねばなるまい。 夢の中だけだぞ。現実で香織がキスを迫ってきたらやらないはずだ。多分。 突き出された舌裏を舐める。すると、合わされている唇が強く押し付けられた。 夢の中だというのにこの感触。いつもどおり不気味にリアルだ。 口の中に唾液が入ってきていることまで感じられる。 続けて頬の裏側、唇の裏、歯茎の裏へと舌を這わせる。 俺の舌が舐める場所を変えるたびに唇だけでなく、体の上にある香織の体も動く。 視界が闇に包まれていて相手が香織だとは断言できないが、多分そうなんだろう。 「あふっ……はっ、うぅぅん………ゆうしさま、だめぇ……」 おい。こんなことしてるからって雄志様はないだろう。 だいたい雄志様って呼ぶ人の枠は既にかなこさんで――――え? 「ああ……ああぁあ…んんんんんっ! ぷぁ………もう、こわれてしまいます……雄志、さ、ま……」 目を開けたとき、そこにはかなこさんがいた。 彼女は目を閉じ体を横に傾けると、体をベッドに投げ出して寝息を立て始めた。 なんだ、香織じゃなかったのか。ちょっと残念――って、そうじゃない! かなこさんの体を確認する。 彼女は生まれたままの姿で全身に汗を掻いていて、ところどころに白い液体を付着させている。 それらから導き出される答えは、ひとつしかない。 (俺がかなこさんとセックスしていたのは、夢じゃなかったのか) セックスというよりは逆レイプだったが、体を重ねたことに違いは無い。 そして俺が両手足の首を縛られて固定されているのも変わりない。 かなこさんがこんなことをした理由など、倦怠感に包まれている今の脳みそでも思いつく。 かなこさんは俺のことを好きだからこんなことをしたのだ。 考えてみれば、出会った日に料亭に連れ込んだり、自室に呼んだりという行動は 好きでもない男に対してするものではない。逆レイプは恋人に対してすらやるようなものではないが。 自分の馬鹿さ加減にあきれ果てて、壁に頭を打ち付けたくなってきた。 気づいていれば何らかの対処ができたのに。 もう一つ、疑問があった。なぜかなこさんは俺に惚れたのだ? 俺は名のある家の生まれではないし、親戚に大富豪がいたりもしない。 容姿の良し悪しを自分では判断できないが、少なくとも一目ぼれされるほどいいようには思わない。 考えられそうな要素と言えば、かなこさんが探していた本の場所を俺が教えた、ということだけだ。 俺の疑問に答えてくれそうな人は左で寝息を立てていた。 陽だまりの中で昼寝をする猫のような安らかな表情を浮かべるかなこさんを見ていると、 彼女を起こすという行動をとることができなかった。 体を包み込む倦怠感から眠気を覚えた覚えた俺は、見慣れた顔を思い浮かべた後で目を閉じた。 その時に思い浮かべた香織の顔は、何故か不機嫌真っ盛りだった。 この現状を打破するための方法を考えながら、再び俺の意識は闇の中へと沈んでいった。 ------ 今回は終わりです。では無形さん、どうぞ。 113 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 16 33 ID mQwZBQ83 ◆Z.OmhTbrSo さん、おつかれさまでした。 では、被って申し訳ありませんが、投下させて頂きます。 114 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 18 52 ID mQwZBQ83 鳴かぬなら 殺してしまおう ホトトギス 鳴かぬなら 鳴かせて見せよう ホトトギス 鳴かぬなら 鳴くまでまとう ホトトギス 有名な詩(うた)みたいです。 ちょっとした事件がありました。 学園生活にありがちな、恋愛感情のもつれと綻び。 あるいは歪な感情の発露による暴発と必滅。 外罰的な三角形が形成され、雲散霧消するまでの過程。 そして、終わりと始まり。 なんのことはない、少し異形だっただけの、日常。 その登場人物達――真面目に過ぎて滑稽な、道化達の物語。 三傑の評のうちの二つ。 即ち、第六天魔王と豊国大明神の寸評が、二人の女性に当てはまるのではないかと思いました。 尤も私の中では、 鳴かぬなら 死んでしまおう ホトトギス 鳴かぬなら 哭(な)かせてしまおう ホトトギス こう評するほうが正しいのではないかとも考えましたが。 ともあれ、そんな話を聞いて貰おうと思います。 最後に自己紹介を。 私の名前は一ツ橋朝歌(ひとつばし ともか)。 茶番の傍にいた――唯の傍観者です。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「イトコ?」 先輩は可愛い瞳をパチクリさせた。 昼休みの茶道部部室でのことである。 いつも通り先輩の作った美味しい弁当をご馳走になっていると、 「日ノ本(ひのもと)くん、晩御飯食べに来ない?」 親切な部長さんは、そう云ってくれたのだ。 僕の両親は家を不在にすることが多かった。そうなると自然、自炊をしなければいけない訳で。 ところが僕には家事の才能が微塵も無く、掃除をすればゴミをつくり、料理をすればゴミをつくる、 という有様でそれを見かねた先輩が昔から僕を助けてくれていたのだ。 織倉由良(おりくら ゆら)。 中学からの知り合いで、この茶道部の部長である。 僕も所属している茶道部は、厳しいことで有名だ。厳しい、と云っても、それは活動内容が、 ではない。 部長を務める織倉由良が、入部者のある一部の行動に対して、である。 銀河の暗黒を溶かしたような、幽邃な瞳。流動する黒水晶のような長髪。雪の肌。桜の唇。 清楚で、でも肉感的な肢体。育ちのよさを感じさせる立ち居振る舞い。朗らかな人柄。 教員からの信頼も厚く、文武の人でもある先輩は完璧な女性だ。 それ故、言い寄る男も多い。 先輩が厳しい、と云うのは、つまり自分目当てで入部するひとに対してだ。 元々茶道部は「まったり仲良く」を伝統としていた。 だから作法やら礼法やらは必要なく、部員はのんびりと雑談しているだけで良い。 それ故に場の空気を乱す人を、先輩は嫌った。 115 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 20 20 ID mQwZBQ83 だから、男の部員は僕だけだったりする。ほかは皆追い出された。 黒一点。 それが今の茶道部であるが、もとより先輩以外とはあまり喋ることが無いから気にならない。 唯一の例外は、小学校からの知り合いであり、後輩でもある一ツ橋朝歌だが、彼女はほぼ誰とも 喋らず、部室の隅で黙々と読書に励んでいる。 昼休みも。放課後も。勿論今も。 「図書館よりも、環境が良いですから」 それだけの理由で冬は暖かく夏は涼しい部室にいついている。 まあナンパ目的でなければ、本をよんでいようがプラモを組み立てていようが先輩は怒らないが。 先輩は優しい。 「来たい時だけ、来ればいいよ」 入学当時、そう云って僕をここに誘ってくれた。 中学のときから、先輩は僕に気を使ってくれる。入部のお誘いも、入学したてで知り合いの 少ない僕を気遣ってのことだろう。先輩は本当に面倒見が良いのだ。 だから、と云う訳でもないが、以来一年間。昼休みや放課後は部室で先輩と話し込む事が多かった。 先輩は僕と違って家事が得意だ。それで僕の両親が家を空けると、生活無能力者の後輩のために ご飯を作ってくれる。 お昼の弁当も、時には晩御飯も。 流石に甘えすぎだ。 そう思いつつも、あまりに上手なご馳走の山に屈服してしまっている。 そして先日、またもや両親が家を空けたので、わざわざ先輩は気を使って僕を夕食の席に招待 してくれたのだった。 けれど。 「すいません、折角のお誘いなのに」 僕は頭を下げた。 今日はイトコが家に来る。だから先輩のお誘いを受けるわけにはいかなかった。 「あ、ううん、気にしないで。急に誘った私が悪いんだから。・・・でも、イトコかぁ・・・・・」 考え込むように天井を見上げる。寛容な先輩はとくに気分を害した様子は無い。 「ねえ、日ノ本くん」 先輩がこちらに瞳を向ける。 「もしかして今までも今日のようにブッキングしたことある?」 「ブッキング・・・・ですか?云われてみれば過去に何度か被ったことがありますかね」 「六回」 「はい?」 「日ノ本くんが、今までに私のお誘いを断った回数」 「・・・・よく・・・・憶えてますね」 「日付も云えるわよ?」 ニッコリと笑う。 流石に才女。記憶力が生半ではない。 「話を戻すけど、それって、やっぱり今回みたいな理由だった?」 「えーと・・・」 僕は手を拱く。 「云われてみれば、あいつが来る時だったような・・・・」 というよりも、他に先輩のお誘いを断るようなイベントは無い。 「ふぅん」 先輩は眼を細めた。 「そのイトコって、どんな人?」 「どんな?・・・・そうだなぁ・・“和風”・・・・・ですかねえ」 「わふー?」 「大和撫子の見本みたいな奴です。外国人が持ってる変な日本のイメージみたいな」 「そう。女の子、なんだ」 ぽつりと。 呟くように先輩はそう云った。 「どうかしました?」 質すると、先輩は何でもない、と笑顔をつくる。 「大和撫子って事は、その子ってお嬢様然としているの?」 「と、云うか、まんまお嬢様です。あいつん家、金持ちですから。母方交叉従妹なんで、 うちは中産階級ですけど」 まあ話し相手のこの人も十分セレブだけどね。 116 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 21 49 ID mQwZBQ83 「年齢は?」 「いっこした。今高1です。先輩、光陰館(こういんかん)って知ってます?」 「知ってるも何も、超名門私立校じゃない。ううん、本物かあ・・・」 唸っから、僕を見る。 「その娘、よく遊びにくるの?」 「月1~2回ですからね、そこそことも少ないとも云えますが」 「・・・多すぎる」 「え?」 「ううん・・・。何でもない」 先輩は再び首を振った。 「それで、一番大事なことなんだけど」 大きな瞳が鋭く縮む。 「その娘、可愛い?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「にいさま、おかえりなさいませ」 家に着くなり、着物姿の美少女が三つ指ついて深々とお辞儀した。 「ああ、綾緒(あやお)。来てたんだ」 「はい。一時間ほど前に。失礼とは思いましたが、勝手に上がらせて戴きました」 「構わないよー。入っちゃ駄目ならそもそも鍵なんて渡してないし」 玄関から廊下にあがる。 綾緒は僕の靴を揃えると、「お持ち致します」と鞄を取り、しずしずと半歩後を後をついて来る。 この生ける市松人形が、従妹の楢柴(ならしば)綾緒である。 血の繋がりを感じさせないくらいパーツパーツの高級感が違う。 白子と間違うくらいに肌が真っ白で、唇は血のように赤い。 そのためかスッピンでも化粧をしている様に見えるのだ。 すこぶるつきの美少女で、これだけの造形美は、織倉先輩くらいしかお目にかかったことがない。 「御召替えなさいますよね?お手伝いしてもよろしいですか?」 綾緒はこうして僕の世話を焼きたがる。 「いや・・・それはちょっと」 「そう・・・・ですか・・・・残念です」 従妹は本当にひどく残念そうな――泣きそうな顔をする。 叶えてやりたくもあるが、着替えまでは躊躇われる。 「ここでいいよ」 部屋の前で綾緒に云う。 「あのぅ・・・本当にお手伝いは要りませんか?」 「うん」 「あう・・・」 しょんぼりとする綾緒から鞄を受け取り、部屋へ入る。 ―――と。 「おい、綾緒」 「お手伝いですか?にいさま」 扉越しにウキウキとした声がかえってくる。 「そうじゃなくて、お前、僕の部屋に入ったな」 「あ、はい。失礼とは思いましたが、簡単にお掃除させて戴きました」 無頓着な僕でも気づくほどに室内はサッパリしていた。家具の配置も微妙に変わっており、 壁には不気味な能面が備え付けられていた。かわりに投げっぱなしだった雑誌の山がなくなっている。 ん?雑誌? 「まさか!?」 僕は慌ててベッドの下を見る。 「あー!無いっ!!」 「にいさま?どうかなさいましたか?」 扉越しの従妹の声。 「あ、綾緒!」 扉を開ける。 「お前、アレはどうした!?ベッドの下にあった、僕の宝物は!?」 「―――ああ、あの不埒な雑誌ですか」 ゾクッと。 背筋が震えた。 117 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 23 23 ID mQwZBQ83 目の前には笑顔の綾緒。けれど何か違和感。 この従妹はときどきこうして、纏う空気を変質させることがある。 「にいさま」 「な、なんだ?」 変貌した綾緒に、僕は気圧される。 「綾緒のにいさまは、あのような不浄のものに拘ってはいけません。そうですよね?」 「いや・・・でも」 「でも?」 たおやかな笑顔。 そして表情と相反する気配。 僕は「なんでもない」と答えるので精一杯だった。 「いいですか、にいさま。にいさまはあのような下賎者に発情してはいけません。 綾緒も殿方の『仕組み』が分からないではないですから、劣情そのものを否定はしません。 ですが、にいさまは綾緒と血の繋がった方です。情を向けるにしても、相手を選んで 戴きたいのです。下種下劣な下々の者に心動かされてはいけません。にいさまにはにいさまに 相応しい者がいるのですから」 わかりますね?と念を押される。意味が分からないが頷くしか出来ない。 「よくできました。それでこそ“綾緒の”にいさまです」 踵を上げて従兄の頭を撫でる。 「では、綾緒は夕餉の準備を致します。御召替えが終わりましたら、来てくださいな」 深々と頭を垂れ、しずしずと去って行く。 「・・・・・あいつ・・・年々強くなってくなぁ・・・・」 ため息を一つ。 昔はもっと儚い感じだった。否、今もそれは変わらない。 控えめで、大人しく、穏やかだ。 ただし、根の部分は誇り高く、他人を立てても下風に立つことも無い。 僕には特に丁寧に対応してくれるが、それでも時折、ああして主導権を握られる。 綾緒はどうも男女の『そういうの』に潔癖な部分があって、親戚の集まりでも僕が他の女の子と 話すことを許さなかった。 「毎日先輩に昼ご飯食わせてもらってて、たまには夜もご馳走になる、とかは云えんわなぁ」 云う度胸もないし、メリットもない。 どうせ僕は腰抜けだ。 キッチンでは綾緒が夜支度をはじめていた。 和装の上に白い前掛けをつけた姿は、和風のメイドさんのようだ。 元々尽くすことが好きな綾緒には、違和感は無いのだろう。 加えて、女の嗜みとして家事全般を習得しているのだから、能力的にも申し分ない。 ちなみに彼女は武芸百般、外崎(とのさき)流居合いと新衛(しんえい)流柔術の印可持ちである。 だから、男の僕が腕っ節でも手も足も出ない。 趣味は“面”を集めることで、彼女の家はもちろん、この家の至る所にも喜怒哀楽あるいは化生・畜生 を模った(不気味な)面が飾られている。今日僕の部屋に備え付けられたものもそのひとつである。 本人が気に入っているようなので、外す事は無い。触る気にもならないので、掃除は時たま やってくる綾緒本人がやっている。 彼女はこうして月1・2回僕の世話を焼きに来る。 形の上では「遊びに来ている」はずなのだが、実際は僕が凭れ掛かっているだけだ。 「本当は毎日にいさまのお世話をしたいのですけれど・・・・」 それが綾緒の口癖だった。 椅子に座り、従妹の少女に目を転じる。てきぱきと手際良く晩飯を作り上げていく。 「もう暫くで出来ますから、にいさまは寛いでいて下さいな」 従妹の機嫌は良さそうだ。 「綾緒はさぁ」 「はい。なんでございましょう」 とんとんとん。テンポ良く刻む。 その姿は堂に入っており、良妻賢母の感がある。 「良いお嫁さんになると思うんだよな」 思ったことを口にする。 カシャン。 あ、包丁落ちた。 「に、にいさま・・・それは、綾緒を・・・」 118 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 24 28 ID mQwZBQ83 RURURURURU・・・・・・。 遮るように、ベルが鳴く。 「電話だ。出てくる」 「それでしたら、綾緒が・・・」 「いいからいいから。綾緒は飯つくってて」 片手をひらひらと振って、廊下に出る。子機は居間にもあるが、キッチンが隣だ。綾緒の調理の 邪魔はしたくない。それで電話機本体のある廊下へ移動した。 「はい、日ノ本ですけど」 余所行きの声で受話器に語る。 「あ、日ノ本くん?」 そこからは聞き覚えのある澄んだ声が聞こえてきた。 「あれ?先輩」 「あ、私の声、わかるんだ。嬉しいな」 やはり声の主は織倉由良先輩だった。 「どうしたんですか、家の電話にかけてくるなんて」 「ケータイにかけたら出なかったのはだれかな?」 「あ~、すいません。部屋に置きっぱなしでした」 見えない相手に頭をさげる。 「で、どうかしましたか?」 「あ・・・うん。もうご飯は食べたのかなって」 「まだ夕方ですしね。鋭意製作中」 「昼間話してた従妹の娘?」 「です」 耳を澄ます。 ここまで届くはずの調理の音は、何故か聞こえない。 「う~ん。そっかぁ。もしつくってなかったら、御馳走しようかなって思ったんだけど・・・」 「いやいや、そこまで気を使ってもらうわけにはいかないですよ」 「そう?別に気にしなくていいのに。いつも食べてるんだから。――そうだ、じゃあ日ノ本くん」 「はい」 「明日のお弁当は何が食べたい?」 「昼飯・・・ですか?」 「うん。今スーパーにいるんだ。だからリクエストがあれば、お姉さんに云って欲しいな」 「いや、先輩のご飯美味しいですから、何でも有難く戴きますよ」 「も~。何でも良いが一番困るのに」 そう云いつつも、どこか声が弾んでいる。 そういや綾緒はもう作り終わったんだろうか。 キッチンから音がしないので、なんとなく振り返る。 ――と。 「うわっ!!!!」 「ど、どうしたの、日ノ本くん!?」 「あ、な、何でも、ないです。ちょっと驚いただけですから」 目の前には綾緒。 いつの間に背後に立っていたのか。 口元だけ薄く笑って、僕を凝視している。 に、い、さ、ま 綾緒の赤い紅い唇が、音もなく動く。 『お断りして下さい』 従妹の可憐な唇がそう模った。 (いや、でも折角の厚意だし) 受話器を押さえ、小声で云う。 綾緒は表情を崩さない。 微笑したままゆっくりと首を振る。 (いや、でも・・・) 「・・・・・」 119 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 26 17 ID mQwZBQ83 笑みが、消えた。 表情(かお)のない従妹。 それだけなのに。 否。『そうなった』からこそ――僕の背筋は凍りついた。 僕は慌てて受話器をあてる。 「日ノ本くん?大丈夫?何があったの?」 「い、いえ、ちょっとコケただけです。それより先輩」 「ん?なぁに?リクエストはきまった?」 「あ、明日の弁当は、遠慮しときます・・・!」 「――え?」 信じられない、といった感じの先輩の声。 それはそうだろう、急に掌を返されたようなものだから。 「ど、どうしたの、突然」 「そんな世話になっちゃ悪いです・・・から・・・」 意識の大半は無表情な従妹にある。声が震えただろうか。 「そんな事今更気にしなくてもいいのよ?私が作るついでなんだから、一人分も二人、」 「とにかく、すいません」 遮って受話器を置いた。 「あ、綾緒・・・・?」 様子を伺う。 「お断りしたのですね?」 「あ、ああ・・・・」 「そうですか。それはようございました」 そう云って微笑。目元は凍てついたままに。 「ではにいさま、今の女性(にょしょう)について、綾緒に説明して下さいな」 従妹は穏やかな声でそう云った。 居間。 椅子に座らず、正座したまま、僕と綾緒は向かい合っていた。 先ほどの電話の内容は背後にいたためある程度聞こえていたようで、声の主――織倉由良 と僕の関係について説明させられた。 「なるほど。部活動の先輩ですか」 「あ、ああ、そうなんだよ。僕が家事無能力者なのはお前も知っているだろう? それで先輩は気を使ってくれてるんだよ」 前に一週間で二キロも痩せたことがあってさ、そう説明する。 「にいさま」 じぃっと、僕を見つめる。 「楢柴の血縁ともあろうお方が他所様の御厚意に縋り付くようなことはしないで下さい。 ひとつにはにいさま自体の品格を損ない、二つには相手方に迷惑となります。 今後一切、その『織倉様』には甘えぬようにしてくださいませ」 「ま、待ってくれ」 「なにか?」 「その、確かに先輩に負担させちゃってるのは申し訳ないと思うけど、 こういうのもコミュニケーションのひとつだと思うんだ。だから・・・」 ――あ。 僕は言葉を止める。 綾緒から再び表情が消えていたのだ。 「にいさま」 冷水のような声が響く。 「にいさまは綾緒の云うことが聞けませんか」 「あ、いや・・・」 「にいさまは、綾緒の云うことに逆らうのですね?」 綾緒の纏う気配が変わる。 この時の―― この時の綾緒に手向かってはいけない。 僕はそれを知っている。 だから慌てて首を振った 「そんなことない、そんなことないさ。ちゃんと、綾緒の云う通りにする、よ」 120 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 28 47 ID mQwZBQ83 「ほんとう、ですか?」 「ああ、もちろんだ。やっぱり迷惑かけちゃいけないよ、な・・・」 「そう・・・・。わかって頂けましたか」 先ほどの気配が消えて、従妹はにっこりと微笑む。 「それで良いのです。それでこそ“綾緒の”にいさまです」 立ち上がり、僕の頭を撫でる。 「良いですか、にいさま。親交を持つ事自体は構いません。ですが親しき仲にも礼儀ありです。 他者様に凭れてはいけません。それが特に女性と云うならばなおさらです。 今後は一線引いてその織倉様とお付き合いして下さいませ。宜しいですね?」 「あ、ああ。わかったよ」 「では、綾緒との約束ですよ。その方に甘えず、誤解させてはいけませんので二人きりで あうことも禁じます」 「誤解?誤解ってなんだ?」 質すると、僕を撫でる手が止まる。 「あや、お?」 「わかりませんか?ならばそれでも宜しゅうございます。 にいさまはただ――綾緒の云う通りにしていれば良いのです」 従妹は小指をだした。 僕は逆らえず、自分の指を絡める。 ゆびきりげんまん うそついたらはりせんぼん のます 綺麗な歌声が居間に響く。 げんまんとは拳骨を万回浴びせると云うこと。 違反者はとことんまで殴りつけられ、針を呑まされる。 つまり指きりとは、破ったら“殺す”と云う宣言なのだと、昔綾緒に聞かされたことがある。 僕の背筋がぶるりと震えた。 「明日先輩になんて云おう・・・・・」 微笑む少女を見ながら、心でそう呟いた。 投下ここまでです。 ◆Z.OmhTbrSo さん、かぶちゃって、ほんとすみませんでした 121 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 11 31 53 ID Kyvl3Yyc 113 こ れ は い い 従 姉 妹 で す ね 122 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 12 01 59 ID RizCuBjP なんという投下ラッシュ… 伸びてるレス数を見てわかってしまった 次回も間違いなくwktk / ̄\ | ^o^ | \_/ 123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 13 27 31 ID MQGtUOos 久々の投下ラッシュキタ━━(゚∀゚)━━ヨ!! wktkが止まらない!続き待ってる! 124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 13 54 26 ID TZYHGcjC 連続投下キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!! 112これはいい逆レイプ かなこさんエロいよかなこさん(*´Д`)ハァハァ しかし雄志はとことん鈍いんだなあw 120期待の新作ktkr! 主人公に付き従っているようで 精神的には逆に支配している綾緒が怖可愛いすぎます((((;゚∀゚))))ガクブルハァハァ 125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 14 08 36 ID 8ktmJXc0 ラッシュktkr 112 かなこ派の俺にはGJすぐるwwwwwww 126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 16 56 39 ID 9l2rn1S0 従姉妹が怖くて大人しく従う主人公がヘタレすぎて最高w 127 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 19 19 39 ID VgvFSGjL 私の名前は一ツ橋朝歌(ひとつばし ともか)。 茶番の傍にいた――唯の傍観者です。 とてつもなく泥棒猫の匂いがするんだが・・・(もちろん良い意味で) 128 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/28(土) 21 20 45 ID w02QeYYF 投下ラッシュキタワァ.*・゜゚・* .。..。. *・゜(n‘∀‘)η゚・* .。. .。. *・゜゚・*!!!!!☆ かなこエロすぎそして従妹かわいすぎどちらもGJ! でも言葉の端々で独占欲剥き出しの先輩の逆襲に期待wktk! 129 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/28(土) 22 43 25 ID neOGUZgY ヌォォォォォことのはもほトトギすもGJ!wktkが止まらないぜ! 130 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 00 58 27 ID Q+fm/rJ9 GJ!実は籠の中も楽しみにしてる… 131 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 03 21 34 ID Wg/OSgBR 二人とも神GJェ! ついにかなことやっちゃったぁ。この後の展開が死ぬほど気になる。 キモ従姉妹かぁ・・・・。ツボついてくるなぁ。かなりの期待作 132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 07 30 52 ID 7S6YU+Zf キモ従姉妹は人類の英知の結晶です 133 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 14 47 38 ID MWj5uOeg どまー 134 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22 13 43 ID 7S6YU+Zf 能力者かなんかの家系で血を濃くするために近親婚を繰り返す一族。 主人公の(内縁の)妻の座を狙って、キモ姉が、キモ従姉妹が、キモ母が織り成す ハートフル・ラブ・ヤンデレコメディ。 そして迫り来るは主人公との血縁は他の女よりは薄いもの、能力が高いために 争奪戦に参加が許可されたキモ馴染み(キモはとこ)の彼女。 今、彼女たちの戦いのゴングが鳴り響く! まで考えて力尽きた。あとは誰か頼みます。 キモ姉は人類の至宝です。キモ従姉妹は人類の英知の結晶です。 キモ母は人類の至高の愛です。キモ馴染みは人類の最終兵器です。 キモはとこは人類の飽くなき探究心です。 なお、キモ妹は不可。 135 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22 24 06 ID Vqjtm+cA 丸投げの癖してキモウト禁止はやだーとか何様ですかダボが あんまりムカつくんであえてキモウトをメインにそれを書いてみたくなりました 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22 25 29 ID Vqjtm+cA 135 「キモウト禁止はやだー」 ↓ 「キモウトは禁止、やだー」 ><;;; 137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22 26 55 ID 7S6YU+Zf 135 是非お願いします。 キモ妹?好きですがなにか? キモ妹は人類の…しまった考えてなかったw 138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 22 46 40 ID UzZcM/hh キモ妹は人類の大いなる慈悲です 139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 23 00 02 ID C8Zwyxk/ 「キモ妹とな?」 「スレを隔てたキモ姉&キモウト小説を書こうスレッドの……」 140 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 23 00 49 ID cTpZLRRE 134 漏れには書けないが、 日日日(ラノベ作家)とかっぽい、 辞書引いても絶対載ってない名前とか能力名(効果?)だけなら出せる。 それだけの愛があるなら書かないか? あと、 キモウトはオレたちの原点(子宮) 141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 23 08 17 ID fegsHe/M キモ伯母(叔母)は我等の太陽 叔母といえばラブ○なのはるかさんを脳内でヤンデレ化させたことがある あれは・・・いいものだ 142 名前: ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/04/29(日) 23 12 56 ID TJc4mKAj ひゃっほー 今日も酔ってる しかも現在仕事中 だが前回尻切れトンボだったから9章仕上げた。 投下 143 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 23 13 33 ID TJc4mKAj いくら耳をふさいでも嬌声は止まなかった。 『ヤメテ!!!!』 と何度願ってもオゾマシイその音は止まなかった。 徐々にその音が真奈美の四肢の感覚を奪っていく。 そのことに気がついたとき真奈美の意識は途切れた。 _____________________________ 掛け時計からオルゴールの音が聞こえる。 その音を聞いているうちに真奈美は自分がリビングにいることに気づいた。 おかしい。自分は夕食の準備のためにキッチンにいたはずなのに。 しかもあれから2時間も経っている。 未だぼんやりとした脳でそんなことを考えていると 隣家から女のコエが聞こえてきた。 そのコエで何が起こったのかすべてを思い出す。 だがその口からは先ほどまでの慟哭と違い静かな笑声と呟きが紡ぎだされる。 「ハハハ・・・そっか・・・2年も離れてたからいろいろ溜まってたんだ。そうだよね。男の人だもんしょうが無いよね。」 まるで、そこに夫がいるような口調で真奈美の独白は続いた。 「それに2年ぶりだからさっき会ったときも照れちゃってたんだ。うん、大丈夫。ちゃんとわかってるよ。 でも、いくら会えなくても動物相手に溜まったモノを吐き出すのはちょっと私嫌だな。」 「あ!だけど、それくらいで誠一さんのこと嫌いになったりなんかしないよ。 ううん、帰ってきたときすぐにしてあげられなかった私が悪いんだよネ。」 「安心してすぐに私があなたの溜まった物をだしてあげるネ。もうそんな動物相手にしなくてすむんだよ。」 「ずっと、ずっと繋がっていようね。もう2年も待ったんだよ。これからは朝も夜もずっと繋がっていようね。」 真奈美の目には誠一と自分が睦みあっている姿しか見えていない。 だが、それが自分の妄想だということを真奈美は理解できていなかった。 第9章終 144 名前:夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/04/29(日) 23 15 55 ID TJc4mKAj 我が心のアミーゴ達!また酉と題名付け忘れちまったよ。 orz 145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 23 46 51 ID RskiJp8g 144 つまんない 146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/29(日) 23 54 07 ID NgvmZ4dR 144このうっかり屋さんめ( ´∀`)σ)∀`) 真奈美さんがいい感じに病んできたようでこれは続きがwktk! 147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 01 19 12 ID qbgKt6B3 短すぎ。本当に酔った勢いだな。 投下しようという心意気はスゲーありがたいが、中途半端にされるよりは遅くなってもある程度体裁とかまとまってる方がいい。 148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 01 40 00 ID JbQtwbLU 144超GJ!・・・なんだけどさぁ、いかんせん量がねぇ・・・もう少しまとめて投下してくれるとネ申なんだけど 149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 04 05 54 ID YJRATSRv 144 GJ! 最後のあれは襲おうと計画を立ててるんじゃなくて妄想に浸ってるでFA? しかしこのまま勘違いが続くと、真紀が真奈美さんの勘違いを防ぐため、 健一の顔を焼いて喉を潰す展開もありそうだ。 150 名前: ◆8qoZSp/Vok [sage] 投稿日:2007/04/30(月) 07 17 03 ID ryOK51sf もう荒らしがウザイので投下しないわ また気が向いたら再開する 151 名前: ◆8qoZSp/Vok [sage] 投稿日:2007/04/30(月) 07 18 25 ID ryOK51sf 誤爆orz スル(ry 152 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/30(月) 08 53 03 ID mlKqdfsj ちょwww酔いすぎwww まぁそういわずに投下して下さいよ。いつでも待ってますよ。 153 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/30(月) 11 52 21 ID pDbxSYOG agwwwww 154 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 12 07 31 ID wSQe6mkD お茶会 ヤンデレ喫茶 上書き 言葉狂魔(ことのはぐるま) の続きに期待 155 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 12 08 07 ID qbgKt6B3 うわあ……( A`) 156 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 12 12 49 ID uKpykXzw 酔っ払いってある意味ヤンデレだなあ 157 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/30(月) 12 22 41 ID nfuYLXxm つまらないSSだな。 158 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 12 46 50 ID K+ojM0gH 今度はこっち来たのかよwww とりあえず、ヤンデレ喫茶の続編が読みたいw 159 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 14 07 06 ID XyPGalgv 120 お面の裏にはもちろん盗聴器が仕掛けてあるんだよね 160 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 14 15 03 ID uKpykXzw 159孔明あらわる 161 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 17 39 05 ID t3TbvX/p ヤンデレの病みを上手いこと利用して邪魔な奴とか敵対してる奴を消して来た男 次第にヤンデレをコントロールすることが困難になりいつの間にかヤンデレに操られ始める みたいな 162 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 17 49 22 ID qp9l6REf 161 似たような(?)パターンで 地味に寡黙に主人に仕えて来た女性秘書が ある日主人の秘密を知り、それを盾に結婚をせまる…… というのを昔刑事コロンボで見て萌えた 163 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 18 10 23 ID 5tWw4ib2 別れのワインか。 あれはよいものだ。 164 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/30(月) 18 13 40 ID qp9l6REf 163 (・∀・)人(・∀・)ナカーマ こんなに早く知ってる人が出てくるとは思わなかったw 165 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/01(火) 00 10 58 ID mO+hg7Eq 4スレが今も残っている件について 166 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/01(火) 00 15 56 ID RoBX6GTC part4は2月25日に往生なされましたよ。 最期まで名無しくんを話さなかったと聞いています。バレンタインを迎えられて、幸せだったでしょう。 167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/01(火) 01 57 24 ID j0Xwt7sQ その後 166の姿を見たものはいない 168 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/01(火) 21 34 52 ID TbkOLqhD おにゃのこがラフファイトしてるのとか。 「ま、参りましたから、謝りますから、 ゆ、許し・・・」 べきいっ、と、かかとで手のひらを踏みつけて 骨とか腱を壊した。 「聞こえなーい聞こえなーいモノゆうときわ 相手の目ぇ見てはきはきはっきり言おうねえ なんて言ったんいま?」 はひゅ、はひゅと激痛と絶望に満たされながら トキコ(手ふんづけてるひと)にすがるような目を 向けた。 「---もうっ、逆らいませんッ、なんでも、しますから 許っ」 がぼん、とトキコの靴が沙桐(ふんづけられてるひと)の 口に叩き込まれた。 「うるさいよー大声ださんでも聞こえるよーあたし若いしー」 みたいなん。 あと錠剤ぼりぼり食べるシーンとかが好き。 169 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/01(火) 21 42 07 ID TbkOLqhD ミザリーって既出かしらん。キングの。 ファンに監禁されるてしちゅはなかなかのアイデアと思いますが。 戯言シリーズもヤンデレ率高いなあ。 絵本さんとか絵本さんとか絵本さんとか。青いのとか。 170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/01(火) 21 48 32 ID ckdthnns 169 戯言ヒロインは大部分が病んでるような… 171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/01(火) 22 32 03 ID mbseWvph 病んでてもデレてないのが大部分。 172 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 00 35 29 ID diV3gruv 病院坂は俺のもの 173 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 01 51 10 ID mlYGw0wA 夜月はすごくいいキモウトだと思う 174 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 01 54 57 ID D2eZKZC0 172 あんな誰とでも寝るビッチより夜月だろ、常識的に考えて・・・ 175 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 04 54 22 ID XdSsBxnl いない君といる誰かは続きないのかな 176 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 18 05 40 ID z2WhYwwJ まだ続きはあるだろう。いつ再開されるかわからんが。 書き手の人たちはリアルで忙しかったりするんだろうな。 177 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 22 04 26 ID AIfJWyGa 168 サンデーGXでそういった感じの格闘少女漫画があったような気がする 178 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 00 18 04 ID shH6gAhL いない君~は自分も待ってる。 つうわけでヤマネ http //p.pita.st/?wcvso3em 179 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 02 20 05 ID iMDTrJQs 178 伊南屋さん、何か獣の匂いがするんだけど・・・気のせいだよね?アハ 180 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 05 15 37 ID A13rkAyY 伊南屋さんGJ。 久しぶりにいない君~分が補給出来たwww 181 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 12 32 18 ID 2qB57uPa 伊南屋氏お久&GJ いない君~もそうだけどいいところで中断している作品が多い どれも再開をいつまでも待ってるぜ 182 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 21 54 38 ID IWzlZQOz 「お姉ちゃん♪一緒に学校行こう」 朝の通学路。 私はいつもの可愛らしい命の声に笑顔を返した。幼なじみの命が私の腕に抱きついてくる。高校生にしては小さい背とアンバランスに発育した胸…私よりでかいな… 命の胸は私の腕を挟み柔らかな感触を与えてくる 「命~。恥ずかしいんだけど…」 「なんで~?変なゆかりお姉ちゃん♪」 私達は寮から女子校に通っている。一年前、命が入学して来た時は嬉しかったな。けど… 「それともお姉ちゃん…命がうっとおしくなった?」 私が軽い追憶に浸っていたら、気付かない内に命のテンションが『ヤバイ』方向に… 「命ってウザイ?命の事嫌い?」 「な、何言ってるのよ!私は命が一番好きだよ」 私の言葉を聴くと顔を輝かせ命が喜ぶ 「エヘッ、私も世界で一番お姉ちゃんが好き!」 私は気付かれない様に溜め息をつく… いつから命は『悪魔』に変わってしまったのか… 私の陰鬱な学園生活が今日も始まった… 「おはよう~。ゆい」 「おはようございます。ゆかり王子様♪」 私は教室に着くと親友のゆいに挨拶をした。ゆいは冗談で返しながら私に笑いかける。 183 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 22 41 05 ID eSH92a+y レズなら注意表記しとけよな。 184 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 23 13 02 ID oPfrUpr5 182 「命」って何て読むのかな……? 何にせよGJ! >「命ってウザイ?命の事嫌い?」 こういう台詞見てると心から癒される。 後、 183も言ってるが一応百合ものなら次回からは注意表記書いとくべきかと。 ところで百合ものといえば、「しまっちゃうメイドさん」が楽しみで仕方がない。 とりあえず否命は俺の嫁ってことでいいな? 185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/03(木) 23 24 46 ID 31wySTw0 184 「みこと」とか「めい」じゃないか? 個人的には「いのち」でも面白いと思うけど。あとは野郎みたいな読みしかないし。 186 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 00 01 22 ID IWzlZQOz 「我が学園のプリンス…ゆかり王子様…あぁ…いつもながらカッコイイ」 芝居掛った声色でゆいが私をからかう 私の容姿は女の子にしては背の高く、髪も短い、祖父がイギリス人なので私の顔も何処となく北欧の雰囲気を醸しだしている。ついでに胸が全くない… 「別に…私はゆいみたいに可愛い女の子になりたいけど」 「ご冗談を♪学園の女の子を食いたい放題じゃないですか!」 ゆいはオヤジくさい…まぁ数少ない私の理解者だ。 「私はそういう趣味はない!普通に男の人が好きなの」 「昨日も三年に告白されたんだって?相手は誰よ!」 「可憐先輩…」 「うおっ!学園三大美女の一人じゃん!で?」 「断ったよ。当たり前でしょ」 チャイムが鳴ると私達はたわいのない会話を切り上げ勉強の用意をする。 あぁ…神様今日も無事に一日過ごせます様に… その日の放課後、私のささやかな願いはあっさりと破られた… 「こちらにゆかりさんはいて?」 教室に凛とした声が響く。名前を呼ばれた私は先輩の元へ歩いていく 「あの…ご用は…」 「可憐を振ったそうね。二年の癖に」 187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 00 13 33 ID JrL6+j8K すいません… いちよう病んだ娘ハーレム物です レズ要素あり 注意遅れました申し訳ない 「みこと」でお願いします 188 名前:ゆかりの憂鬱な日々[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 01 14 15 ID JrL6+j8K 「あの…可憐先輩が怒って来るならまだ、わかるんですけど…」 「なんで関係無い明日香先輩が来るんですか?」 明日香先輩は眉間に皺を寄せ更に激昂する 「わたくしの『可愛い』可憐が恥をかかされたのよ!」 「可哀想な可憐…あんなに泣いて」 …あれ。初めて明日香先輩と話したけど。 この人変だ… 「わたくしは可憐に頼まれて貴方に文句を言いに来たのよ!」 …あれあれ。可憐先輩も考え方変だぞ…何か頭痛くなってきた。 「取りあえず今からわたくしの屋敷に来なさい!わたくしの前で可憐ともう一度話し合うのよ」 「…わかりました。友達に伝えてくるんで少し待って貰えますか?」 「えぇ、よろしくてよ。校門に車が停めてあるから早めに来なさい!」 肩を怒らせながら廊下に戻る先輩。最後に 「逃げたら承知しなくてよ」 教室には、私とゆいだけが残っていた。 「おめでとうゆかり!遂に学園三大美女全員にフラグがたったわね♪」 「めでたくない!はぁ…、なんなのよ…まったく」 「真面目な話、明日香先輩には逆らわない方が良いわよ」 「なにせ、学園長の孫だし『退学だ!』なんてね♪」 189 名前:ゆかりの憂鬱な日々[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 01 16 08 ID JrL6+j8K ゆいは私に冗談ぽく注意をしてくれた。まぁ、退学はあり得ないが学校生活に支障がでる可能性はある… 「取りあえず行くわ。ゆいまた明日ね…」 「頑張って王子様♪」 私に訪れた不幸… 一年生の命 三年生の可憐と明日香 学園三大『病女』との闘いが始まった… 190 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 01 23 54 ID QAzIONX7 国 語 力 191 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 01 29 55 ID agKcqBaj 189は 3を読むこと 192 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 01 37 00 ID 1mE81rLC 190 お 前 は 何 が 言 い た い ん だ ? 191 187でしっかり注意書きはしてるだろう、お前こそちゃんと読め 189 何はともあれ投稿乙、俺は嫌いじゃないぜ? 193 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 02 16 52 ID agKcqBaj 192 3読んだのか? ■投稿のお約束の項目を声に出して10回くらい読んでみ? 194 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 02 33 02 ID xYJ3JdGD 189 美女×3。俺好みのラブコメのにおいがする。主人公がレズ気をもっていないのが面白い要因になりそう。 亀レスだが、 184。 否命は沙紀の嫁だ(たぶん)。沙紀が拒否した場合は俺の嫁だ。 195 名前:「生き地獄じゃどいつもイカレてやがる」 ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/05/04(金) 03 09 54 ID OHkXmc5V 久しぶりです。投稿します。 196 名前:「生き地獄じゃどいつもイカレてやがる」 ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/05/04(金) 03 11 42 ID OHkXmc5V 『おれはあいつが好きなのに、あいつのふるまいなおらない すごいピストル買ってきて、あいつを墓に埋めてやる』 ──リロイ・カー「日の出のブルース」 彫菊自身も女だてらに我慢(刺青)を背に入れている。弁財天女の刺青だ。彫師だからこそ、背負える代物だった。 極道社会において、天女の刺青は不吉なものとされている。 かの『ベラミ事件』において、当時の三代目山口組々長田岡一雄を襲撃した鳴海清もまた、その背に天女の刺青を彫っていた。 鳴海の放った凶弾が首に命中し、致命傷を負ったものの田岡組長は奇跡的に一命を取り留めた。 その後の山口組の報復により、六甲山の山中で鳴海清は惨殺体として発見された。犯人は不明、現在では時効が成立している。 天女の刺青は死の刺青なのだ。それゆえにヤクザの中には天女の刺青を忌避する者も存在する。 頭の芯に疲れが染み込んだ。ウイスキーグラスの氷をカラカラと鳴らし、彫菊が喉に水割りをゆっくりと流し込む。 彫菊はため息をついた。天井に吊るされたシャンデリアが淡いブルーの光りをグラスに注いだ。 アイスピックで氷を砕きながら、マスターが彫菊に尋ねた。しわがれているが温かく深みのある声だ。 「──彫菊さん、なんだか今日はお顔の色が悪いようですね。何かありましたか」 「ちょっと疲れが出てきてしまって。いや、心配をおかけして申し訳ありません」 「疲れが溜まっているんですね。それならもうこのまま家に帰ってお休みになったほうがいい。今日のお代は私のオゴリです」 「いえ、そういうわけには」 彫菊がハンドバックから財布を取り出すのを制して、マスターがにっこりと愛嬌のある笑みを浮かべた。 普段は無愛想だが、こういう時の微笑み方を心得ている。長年、客商売をやって身につけた微笑だ。 微笑むときの間の取り方が実に良いのだ。プロの笑みだった。 「今日は私におごらせてください」 「そうですか。じゃあお言葉に甘えて」 マスターに嫣然と微笑みかけ、軽く頭を下げると彫菊は店を出た。春も終わりだと言うのに風が冷たい。 酔った肌にはその冷たさが心地よかった。 (今頃どうしているのかしら……) * * * * * * 爪を噛んだ。肉ごと爪が千切れた。心臓が破裂せんばかりに激しく暴れまわり、胸壁をめちゃくちゃにぶっ叩く。 脳髄が憤怒に灼熱した。眼球が沸騰した。頭蓋骨をアイスピックで突き刺されたような凄まじい衝撃。 197 名前:「生き地獄じゃどいつもイカレてやがる」 ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/05/04(金) 03 13 26 ID OHkXmc5V 脳みそがショックに激しい勢いでシャッフルする。雪香はどうにかなってしまいそうな頭を両手で押さえた。 青い血管の浮き上がったこめかみが疼き、食道から熱い胃液がこみ上げた。 朧の姿──家中を探した。叫んだ──返事は返ってこなかった。 脈拍が飛び跳ねるように上昇した。寂寥感が頭を打った。濁音混じりに雪香は朧の名前を繰り返し叫んだ。 逆流する胃液が食道を灼いた。黄色みがかった粘つく胃液──口腔内から吐き出した。それでも雪香は叫び続けた。 生酸っぱい異臭が室内に充満し、鼻腔を突き刺す。己の叫び声が脳内で反響した。 瞼の裏に浮かんだ螺旋状の渦が激しい唸りを上げて理性を呑みこんでいった。 「あああああぁぁぁぁッ、どこにいるのォォォ!朧ッッ、朧ッッ!」 叫ばなければ頭がどうにかなってしまいそうだった。拳を握り締めた──指関節がギリギリと軋む。 半狂乱になりながら雪香は壁に頭を叩き付けた。額が裂けた。傷口からこぼれる真っ赤な鮮血が雪香の顔を濡らした。 (なんで……なんで……雪香の前からいなくなっちゃったの……ひどいよ……ひどいよ……) 雪香の双眸が煌々とした光りを放ち始めた。ベッドのシーツをたぐり寄せ、雪香がシーツに染み付いた朧の残り香を嗅ぐ。 (ああ……朧……) 青臭いザーメンの匂いが鼻腔をくすぐった。情事の後には必ず漂う匂いだ。シーツを舐めた。しょっぱい汗の味が舌腹に触れた。 幾分落ち着きを取り戻した雪香は身支度を整えた。朧を探しにいくためだ。台所に飛び込むと鈍色に輝く刺身包丁を引っ掴む。 雪香は眼を細めながら包丁をタオルで包んだ。もし朧に悪い虫がついていたらキチンと駆除をしなければならない。 そして朧が家に戻るのを拒んだらやはり殺してしまい、その場で自分も腹を裂いて死んでしまえば良い。 地面に流れる互いの血が混ざり合い、切り裂かれたふたりの腹腔からこぼれる桜色のハラワタがきつく絡みつくのだ。 永久の愛を誓うかのように。扇状に広がっていく幾条もの血液、鮮やかな臓物の色彩、雪香はビジョンを垣間見た。 鮮血と生暖かい臓腑によって彩られた愛執と死のビジョンを。 嘔吐を催すが如き異様な妄執に憑りつかれ、雪香は全身をブルブルと打ち震わせた。顔全体に恍惚の表情が浮かぶ。 神にかしづき、祈りを捧げる殉教者のように雪香は包丁を胸元に抱いて眼を閉じた。雪香の眦から一筋の涙が頬を伝った。 (死んじゃったら……小さな骨壷に朧と一緒にはいりたいなぁ……) * * * * * * ひやりとした夜風が頬を横切った。運命的な再会──やっと捜し求めていた少年に出会ったのだ。巴の心が揺れた。 198 名前:「生き地獄じゃどいつもイカレてやがる」 ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/05/04(金) 03 15 30 ID OHkXmc5V 時刻は午前二時三十六分、ここは深夜の新宿中央公園だ。朧の羽織ったトレンチコートが風ではためいた。 声をかけようとした巴の眼に朧の露出した純白の素肌が、突然飛び込んできた。少年はどうやらコート一枚だけのようだ。 この少年は露出狂なのだろうか──巴はいぶかしんだ。 (そういう趣味の持ち主さんなのかな……だけどすごく綺麗な肌をしてるのね) 身頃を過ぎた桜の花びらが地面にぱらりと舞い落ちる。ハッと我を取り戻した巴は雑念を追い払うと朧に駆け寄った。 不思議そうに朧が巴を見やる。あたしの事、忘れちゃったのかな……巴が胸の内で呟いた。 少しだけ悲しかった。気を取り直した巴は朧に笑みを投げかけながら「こんばんわ」と小さな声で挨拶をした。 朧は無言だった。不思議に思いながら巴は朧の視線を追った。警戒するかのようにゆっくりと朧が一歩下がる。 「お前の右手から微かにだが血の匂いがする」 鼻をヒクヒクさせながら朧は巴の右腕を凝視していた。動物並の鋭い嗅覚だ。巴の皮膚が粟立った。 やはりこの少年こそ私の運命の人──常人なら決して嗅げ分けられないはずの血の匂いに反応を見せた朧に 巴は胸中からこみ上げる熱い思いの丈を声を張り上げて打ち明けたくなった。 (駄目よ……そんなはしたない事なんてできない……) 自分の世界にひたり切っている巴を朧はつまらなそうに眺めていた。少なくても相手に敵意が無さそうだ。 朧は空腹だった。何か食べ物が欲しかった。 巴に背を向けて朧が歩き始めようとした瞬間、巴は朧に慌てて声をかけた。朧が振り返る。 「あのッ……三ヶ月前の事を覚えてませんか?あたし、東郷神社であなたに助けてもらったんです」 朧は自分の記憶を手繰り寄せた──記憶の中にあったのは睡眠を妨げた六人の男達に襲い掛かったことくらいだ。 二日ばかりロクなものを口に入れずに過ごしていたので気が立っていた。 空腹を紛らわせる為に寝ていたのだが邪魔された。 頭にきたので男達を血祭りにしてやった。不意に怯える女の姿が脳裏をよぎった。 ああ、そうだ。確かに自分の目の前にいるこの女だ。 199 名前:「生き地獄じゃどいつもイカレてやがる」 ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/05/04(金) 03 17 58 ID OHkXmc5V 「そうだ。いま思い出した。確かお前は男たちに追い掛け回されてた女だ」 「思い出してくれたんですね。そうです。あの時は本当にありがとうございました」 ドギマギしながら礼を述べる少女──白百合のように楚々とした美しい顔立ちの女だが、どことなく気弱そうな印象を受けた。 雰囲気が昔の雪香に似てるなと朧は思った。朧は少女の顔をじっと見つめた。途端に巴が赤面する。巴は奥手だ。 十八歳を過ぎているのに未だにキスすらしたことがなかった。 それは彼女が持つ忌まわしい性癖も理由のひとつであったが、 もうひとつは自意識が邪魔をして好きな異性を意識すると引っ込み思案になってしまうのだ。 それでも今はそんな事を言っている時ではない。 そんな邪魔なものは捨てなければならない。呼吸を落ち着かせようと大きく息を吐いた。 「その……お礼をさせて貰えませんか」 「いらない」 巴の申し出を朧はこともなげに断った。面食らう巴に対して眠たそうに欠伸をしてみせる。 朧は瞼をこすりながら別の場所へと移動しようとした。 「ま、待ってくださいッ」 不意に巴の右手が伸びて朧の左手首を掴んだ。無意識にとった行動だ。掴んでから巴自身も驚いていた。 「離せ」 「いやですッ」 朧が邪慳そうに手を振り払いながら怒鳴った。眉間に皺を寄せて巴を睨む。 「離せッ」 怯むことなく、朧の鋭い眼差しを巴は確然と受け止めた。自分でも信じられなかった。 普段なら小学生にも睨まれれば竦んでしまう自分がこうして平然としていられる事に。 まして相手は複数の暴漢を血反吐を撒き散らすまで徹底的に痛めつけるような獰猛な男だ。 「礼はいらないって言ってるだろうッ、離してくれッ」 間が悪かった。朧は空腹のせいで苛立っていたのだ。腹部が空腹のあまりグウゥッと唸った。巴がキョトンとした顔になる。 「お腹……すいてるんですか?」 朧は頷いた。その仕草があまりにも子供じみていて可笑しい。巴は思わず吹き出してしまった。 「じゃあ、一緒にお食事しませんか。勿論あたしがおごりますから」 この機会を逃してしまえばいままの苦労が水の泡と化してしまう。巴は腹部を引き締めた。 (このチャンス、絶対に逃さないんだから……) 6 新宿御苑前にある深夜営業のレストラン──当たり前だが客はほとんどいなかった。 水商売風の格好をした女が三人ばかりグループになって雑談をしているだけだ。 日頃の鬱憤を晴らすかのように愚痴を言い合っているのが耳に届いた。ふたりは互いの名前を名乗ると窓際の席に座った。 200 名前:「生き地獄じゃどいつもイカレてやがる」 ◆duFEwmuQ16 [sage] 投稿日:2007/05/04(金) 03 21 26 ID OHkXmc5V 朧は爪楊枝の先端を前歯で齧りながら食事が運ばれてくるのも待った。腹の虫が騒がしい。 最初は迷ったが飢えには勝てず、また一度は断ったものの巴の懇願に根負けして朧は食事を奢られることにした。 二人用のテーブルの向かいの席に座っている巴が紅茶をすすりながら朧にたずねる。 「朧さんは普段は何をなさってるんですか?」 「フーテン」 「フーテン……ですか?」 「そう。自由人さ。風の吹くまま気の向くままに生きてる」 爪楊枝をへし折ると灰皿に捨てた。笑顔を浮かべたままの巴を見て何がそんなに面白いのかと朧は不思議に思った。 愛想の良さそうなウエイトレスが注文のマルゲリータピザを持ってきてテーブルの上に乗せた。 朧はピザを鷲づかみにすると二つに折って口腔内に突っ込んだ。 口をモゴモゴさせながら必死になってピザを平らげようとする。 力任せにピザを口の中に押し込む朧を一瞥しながら巴は紅茶のおかわりを頼んだ。 「そんなに急いで食べると喉につまっちゃいますよ」 食べる事に集中している朧に巴の言葉は全く届いていなかった。端の部分まで食べ終わると朧は満足そうにゲップを漏らした。 「ごちそうさま」 イスにもたれかかり、朧はグラスの水を飲み干ほした。空になったグラスの中の氷をガリガリと噛み砕く。 「そういえば、その……服を着てないんですか?公園でコートがめくれた時に見えちゃったんですけど」 「コートしか持ってないんだ」 「よろしかったら、着る物を一緒に買いにいきませんか?」 「いらない。それにこの時間に洋服屋が開いてるとは思えない」 先ほどと同様に朧はにべもなく言う。着る物も今のところはコート一枚で充分だった。欠伸をしながら朧は窓際に視線を向けた。 とりつくしまもない朧に巴はどうすればいいのか思案した。思案しても頭には何も浮かばなかった。巴が何気なく朧に訊ねる。 「その……恋人はいらっしゃるんですか?」 「いない」 巴の瞳が輝いた。脈ありと睨んだのだ。恋人がいるかどうかはこの際関係ない。 重要なのはいないと答えた点にある。自然と顔の筋肉がほころんだ。巴は知らなかった。 雪香という朧を心から深く愛する狂人の存在を。 * * * * * * 赤、青、緑のまばゆいディスプレイの光が雪香の瞳の奥で反射した。雪香は唇の端を歪めた。凄艶だった。凄艶であり悲愴な顔貌だった。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1048.html
301 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 17 06 58 ID Qogub4tq mixiのヤンデレコミュで『ヤンデレ喫茶の同人誌作ろうぜ!!』って企画があった……はず。 302 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/03(火) 20 56 37 ID bhK99rbs 297 こんな感じ? ↓ とある掲示板で、面白い書き込みを見つけた。 『 なぁ、みんな! ツンデレ喫茶があるんだからきっとこれからはヤンデレ喫茶もメジャーになり、テレビに進出………………………………無理か。 きっと警察沙汰になるもんな 』 僕がよく覗きにいくスレッドの名前は『ヤンデレスレ』。 ヤンデレとは、『男性を愛するあまり心を病んでしまった女性』のことを差して使う言葉だ。 そのスレッドはなかなかの盛況ぶりである。 帰ってきてからこのスレッドでSSを読んだり、雑談するのが僕の毎日の楽しみだ。 それはともかく。 さっきの書き込みにあるように、ヤンデレ喫茶というものが存在していたら面白い、と僕は思った。 そこで、早速僕は行動を開始した。 比較的仲のいい友人二人に連絡を取る。 彼らは、都内某所のメイド喫茶に頻繁に通っている。 詳しく聞いてみたところ、友人Aは8回、友人Bは6回同じところに通っているという。 ちなみに僕も彼らに連れられて、先日までで4回ほど通っている。 ヤンデレスレに投下されたネタによると、10回通うと特別サービスということで 特別ケーキをごちそうされて、その後で監禁されてしまうらしい。 僕が『メイド喫茶に10回通って、監禁されるか試そう』とメールすると、 友人Aは『参加希望 ノ』と返信し、 友人Bは『ヤンデレにレイプされたいので参加キボンヌ』と返してきた。 そういうわけで、僕と友人二人でヤンデレ喫茶が存在するのかを検証してみようと思う。 303 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/03(火) 20 57 42 ID bhK99rbs 都内の大通りから少し離れた場所にある、メイド喫茶が検証の場所だ。 初めてメイド喫茶に足を踏み入れたときは「父さん母さん生まれてきてごめんなさい」と思ったが、 実際にはただウェイトレスさんがメイド服を着ているだけのお店だった。 意外と普通のお店だな、というのがメイド喫茶に対する印象だった。 ―とはいえ、気が引けるのは相変わらずではあるが。 それはともかく、さっそくメイド喫茶の扉を開けるとしよう。 からんからん、という軽いベルの音が扉の上から聞こえた。 そして、入り口の近くには白と黒の組み合わせが男の妄想を掻き立てる、 メイド服を着た女の子が立って、僕たちに向けて挨拶をした。 「お帰りなさいませ。ご主人様」 うやうやしく頭を下げた女の子の髪には、フリルのついたカチューシャが飾られている。 僕としては、このカチューシャがメイド服の一番素晴らしいところだと思う。 ちなみに、友人Aにそう言ったら、「メイド服といったらエプロンだろう!」と声を荒らげ、 友人Bは「はん! メイド服はロングスカートが最高なんだよ!」と吐き捨てた。 だが、なんと言われようと僕はカチューシャが好きなのだ。ここはゆずれない。 特に理由は無いけれど。 メイドさん(ここでは便宜的にそう呼ぶことにする)に案内されて、三人で同じテーブルにつく。 「何にいたしましょうか。ご主人様」 と、漆黒の長い髪を伸ばしたクールな印象のメイドさんが聞いてきた。 僕はアイスカフェオレを注文した。友人二人とも同じものを、と言った。 「お待たせいたしました」 しばらく待っていると、さっきのメイドさんがアイスカフェオレの入ったカップをトレイの上から一つずつ、 僕たちのいるテーブルの上にゆっくりと置いた。 「それでは、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」 と言いながら頭を下げると、メイドさんは他のお客さんの接客へと移っていった。 アイスカフェオレに口をつける。 舌で味わって見る。が、特に変わった味もしなかった。 「まだ10回通っていないからだろう」と僕は思ったが、友人二人はどこかつまらなさそうな顔をしていた。 アイスカフェオレを飲んだ後、僕たち三人はお店をでることにした。 「いってらっしゃいませ。ご主人様」 髪の長いメイドさんが頭を下げながら、僕たちを見送った。 この日で、メイド喫茶へ通った累計回数は僕が5回、友人Aが9回、友人Bが7回になった 304 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/03(火) 20 59 37 ID bhK99rbs 検証二日目。 もしヤンデレスレのネタが実現するとしたら、友人Aは今日監禁されてしまう。 それを理解しているからだろう。 友人Aはスーツを着てメイド喫茶へやってきた。 しかし、スラックスはしわだらけだし、ジャケットのボタンはほつれている。 はっきり言って、カッコ悪い。 友人Aにさりげなく注意してみたら、「あえて着崩すのがいいんだよ」と、薄く笑いながら言った。 僕は「それを言っていいのは着こなしを知っている人だけだ」と思ったが、あえて言わないでおいた。 大通りからわき道に入り、メイド喫茶の前にやってきた。 もちろん、今日の検証場所も同じ場所だ。 「おかえりなさいませ。ご主人様」 と、お決まりになった出迎えの台詞でメイドさんに挨拶をされた。 そのメイドさんは、一日目と同じ、黒い髪に真っ白なカチューシャが映える人だった。 カウンターのテーブルに三人並んで座り、先日と同じくアイスカフェオレを三人分注文した。 ネタが実現するならば、この後で友人Aの前には薬の入ったケーキが置かれるはずだ。 「お待たせいたしました」 髪の長いメイドさんがトレイを持って僕たちの前にやってきた。 そのトレイの上にはカップが三つあるが――ケーキが置かれていなかった。 それを見て、僕は「ああ、やっぱりか」と思った。 しかし、友人Aは首が折れたのではないか、というほどにうなだれた。 友人Bはいったいどれだけの肺活量があるんだ、と言いたくなるほどの長さでため息をついた。 しかし。 「ご主人様! お着物のボタンがほつれております!」 メイドさんが突然に慌てた声をだした。 「え、あ、その」と友人Aがしどろもどろになっていると、 「私が、すぐに手直しいたします!」 と言ってから、メイドさんが友人Aを店の奥へと引っ張っていった。 「もしかして、実験成功か?」と僕たちは顔を見合わせた。 そして、友人Aが店の奥へと引っ張られていってから一時間が経過した。 「このまま戻って来るな!」と僕は祈った。友人Bもそう思っていたはずだ。 いや、友人Aを嫌っているからではない。 もしこのまま戻ってこなかったら、ヤンデレスレのネタが実現するからだ。 数分待っていると、『チャーンチャチャンチャン チャーンチャチャンチャンチャーン』というメロディーが聞こえた。 『TAXI』のテーマソングは僕のメール着信音ではない。友人Bのものだ。 友人Bが届いたメールを確認する。――それを見た彼は、顔に深いエクボを浮かべた。 彼が僕に向けて、携帯電話の画面を見せる。 『おまいらさきにかえてろ』 ……おそらくは、『お前ら、先に帰ってろ』と送るつもりだったのだろう。 つまり、一緒に帰れない、ということだ。そして、友人Aは店の奥に連れて行かれてこんなことになった。 これが意味することは――ひとつしかない。 都市伝説的なヤンデレ喫茶は、ここに――大通りから外れた場所にこそ、在ったのだ。 そのあと、会計を済ませた僕らは興奮をなんとか押さえ込み、 見送るメイドさんに見向きもせずに、店をあとにした。 この日で、メイド喫茶へ通った累計回数は僕が6回、友人Bが8回になった 友人Aは、監禁(?)されてしまったので、カウントしない。さらば――エプロン萌えの勇者よ。 305 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/03(火) 21 01 53 ID bhK99rbs とりあえず出来上がっている分を投下しました。 今日~明日で全て投下し終わります。 306 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 21 05 44 ID w5w+UrXk 友人Aどうした?! 面白いな、これ 待ってるよ! 307 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 22 18 16 ID lQdAvuTW ていうか三次は基本的にだめだろ常識的に考えて・・・ ヤンデレが広まるとツンデレと同じ末路をたどるような気がする 308 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 22 45 12 ID q4P0y3Do どれが三次だって? 309 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 22 49 34 ID PHaNfVPg ヤンデレ喫茶だろ 310 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 01 39 48 ID 04qMFGEC さがってるage 311 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 07 38 ID 7cbl3E8J 投下する。エロ注意。 312 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 08 30 ID 7cbl3E8J 検証三日目。 僕と友人Bは昨日に引き続き、またしてもメイド喫茶へとやってきた。 ちなみに友人Aとは連絡がとれなかった。そのため、今日は同行していない。 しかし、僕には――いや、僕と友人Bには確信があった。 「友人Aは、ロングヘアーのメイドさんに監禁されてしまったのだ」という、確信が。 そのため、僕と友人Bははやる気持ちを抑えつけるのにかなりの労を要した。 僕はアルバイト中、ずっとうわの空で過ごしていた気がするし、 友人Bは朝の5時に起きて、僕にメールを送ってきた。 『早く行こうぜメイド喫茶!』というのが本文だったが、午前1時に眠りについた僕としては実に不愉快だった。 ともあれ、今日も憧れの監禁に向かう一歩を踏み出すことにした。 具体的には、メイド喫茶の入り口のドアを開けた。 「……いらっしゃいませ。…ご主人様」 挨拶してきたのは、昨日入り口近くに立っていたメイドさんではなかった。 昨日のつややかな髪をした女性ではなく、どこかくすんだ印象のある黒髪だった。 髪型はボブカット。そして、縁無しの丸い眼鏡をかけている。 だが、もっとも印象的なのは、エプロンの胸元を押し上げている巨乳であった。 見るつもりはなくても、つい凝視してしまいそうになる。 友人Bにいたっては、誰が見てもセクハラにしか思えないような目でメイドさんを見つめていた。 主に胸を。彼の萌えポイントであるロングスカートには目もくれない。 所詮、彼にとってはその程度のものだった、ということだろう。 僕は彼女の髪に飾り付けられているカチューシャを見た。 ――至福。メイドにはカチューシャがあればいいのだ。胸など、おまけの要素でしかない。 メイドさんの小さな声に導かれるようにして、テーブルにつく。 僕は、「昨日の髪の長い女性は?」とメイドさんに問いかけた。 「あ……実は、昨日付けで……、やめ、てしまったんです」 僕の問いに対して、彼女は僕の視線におびえるような震えた声でそう言った。 そのまま下を向きながら、 「ご注文は、その……何に、いた、いたしま、しょう……?」 と言った。 僕はアイスカフェオレを注文した。友人Bは、カプチーノを注文した。 メイドさんがおどおどとした様子で僕たちの前から去って言った後、 僕は友人Bに「なんで今日はカプチーノなんだ」と聞いた。 彼は、「彼女の顔を見ていたら、カプチーノを注文してしまったんだよ」と言った。 その後に、「あの眼鏡、そしてあの豊満なバスト……まるでカプチーノの泡のようじゃないか」と続けた。 どうやら、友人Bは眼鏡をかけた巨乳のメイドさんに惚れてしまったらしい。 そうでなければ、そんな意味不明な言葉を発するはずがないからだ。 その後、アイスカフェオレとカプチーノをそれぞれ飲み干し、店を後にする。 巨乳のメイドさんが見送ってくれたが、彼女の声は小さくて聞こえなかった。 三日目にして、メイド喫茶へ通った累計回数は僕が7回、友人Bが9回になった。 ――明日、友人Bは10回目のメイド喫茶通いを達成する。 313 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 09 34 ID 7cbl3E8J 検証四日目。 僕と友人Bは大通りから横道に入り、ひとけの少ない路地を肩を並べて歩いている。 僕の右を歩いている友人Bは、タキシードを着ていた。 「なぜタキシードを着ているのか」と問いかけると、友人Bは首もとの蝶ネクタイをつまんだ。 「今日は俺の一世一代の晴れ舞台なんだ。そして……最後のな」と彼は言った。 僕は何も言わなかった。ただ、心の中で彼の言葉に同意だけすることにした。 メイド喫茶のドアを開けると、メイドさんが二人、向かい合って立っているのが見えた。 昨日の巨乳のメイドさんと、金髪ツインテールのメイドさんだった。 二人は実に対照的だった。 とても暗く、輝きの無い黒髪と、蛍光灯の光を反射するように輝く金色の髪。 エプロンの胸元を激しく隆起させている巨乳と、エプロンの形を崩さない貧乳。 その対照的な二人が、向かい合って口論をしていた。 「あんた! もっとはっきり喋りなさいよ!」 「ひぃっ……ごめ、ごめんなさい……き、気をつけます、から……」 どうやら、金髪のメイドさんが巨乳のメイドさんを叱っているようだ。 これはどうしたものか、と思っていると、突然後ろから大声が飛んできた。 「やめたまえ! そこのツインテールの貧乳メイド!」ということを言っていた。友人Bであった。 貧乳と言われたことに腹を立てたのか、金髪のメイドさんが友人Bを睨みつけた。 「何よ、このメイド萌えのオタク! 邪魔しないでよ!」 とてもメイドが言うような言葉ではなかった。――が、僕はあることに気がついた。 彼女は「ツンデレメイド」という存在である。 ツンデレ、プラス、メイド。萌え要素を無理矢理合わせたとしか思えない存在である。 事実、こうやって目にするとちっとも萌えない。 それはともかく。 友人Bは金髪のメイドさんの声に痛いところを突かれたのか、押し黙ったままだった。 そのまま居心地の悪い空気が続くかと思ったが、意外な人によってその空気は破られた。 「ごめ、ご、ごめんなさ、……ごめんなさい……ごめんなさい……!」 謝罪の言葉を述べながら、巨乳のメイドさんが立ち上がった。 くしゃくしゃの泣き顔をした彼女は友人Bの側を通り抜けて、店内から出て行った。 友人Bはしばらく呆けていたが、すぐにきびすを返してメイドさんのあとを追った。 僕も、とりあえずその後を追うことにした。 後ろで誰かに声をかけられた気がするが、この場では優先すべきことではないと思ったので、 彼らの後をそのまま追うことにした。 店内を出て、路地を見回しながら、友人Bと巨乳のメイドさんを探す。 ―――いた。メイド喫茶の向かい側の店の、裏手で向かい合っている。 僕は彼らのもとに近づこうとした。が、すぐにためらった。 友人Bが、メイドさんの眼鏡を外して、ポケットから取り出したハンカチーフで彼女の涙を拭っていたからだ。 友人Bの唇が小さく動いた。彼女に向かって、何かを言ったようだった。 すると、メイドさんがまた涙を流して、友人Bの背中に手を回して、抱きついた。 友人Bはメイドさんの黒髪をいとおしげに撫でている。 ――それは、父が我が子を泣き止ます仕草にも見えた。 邪魔をするのも野暮に思えたので、僕はその場を後にして、家路につくことにした。 もし、今日のことをカウントするならば、メイド喫茶へ通った累計回数は僕が8回で、友人Bが10回ということになる。 314 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 10 56 ID 7cbl3E8J 検証五日目。 僕は今日もメイド喫茶にやってきて、アイスカフェオレを注文した。まだ届いてはいない。 携帯電話を見る。メールの着信も、電話の着信もなかった。携帯電話をポケットにしまう。 僕が誰からの連絡を待っているのかというと――友人Bからのものだ。 昨日、帰ってからも連絡をしたのだが、なしのつぶてだったのだ。 その原因がなんであるか。それはわかっている。 ――自分達が原因である。 『メイド喫茶に10回通うと監禁される』。 ヤンデレスレで語られたネタを真に受けて実行してみれば、この通り。 友人Aは黒髪のメイドさんと、友人Bは巨乳のメイドさんと一緒に消えた。店内に彼女の姿が無いからだ。 消えた、という表現は正確ではない気もする。 僕の見える場所から居なくなっただけで、彼らは――おそらく――この世界に居る。 ただ、見えないだけなのだ。つまり、それが『監禁』というものの実態である。 しかし――考えてみればなんでもないことにも思える。 世界が狭くなっただけなのだ。そう。ただ、男と女の二人だけしかいない世界に変わっただけ。 とはいえ、僕としてはそれは好ましくない。 僕はただ、ヤンデレ喫茶が存在するのかを検証したかっただけだ。 友人Aや友人Bのように、監禁されたかったわけではない。 僕は家族や友人、そして、社会に住む人々との世界を望む。 だが――今僕は監禁されるかもしれない、という状態に置かれている。 今日この店を出てから、明日ここに来れば、僕はきっと監禁される。 そう考えると、店内を優雅な足取りで歩くメイドさんたちが恐ろしく見えてきた。 彼女達は、僕を監禁しようとしているのではないか。という疑心暗鬼にとらわれる。 ――もう、やめよう。 ここまでやったらもう、疑う余地はない。『ヤンデレ喫茶は実在する』のだ。 あとは、それをヤンデレスレに書き込めばいい。 『俺の友達が10回メイド喫茶に行ったらいなくなっちゃったよ』と書き込めば、全ては幕を下ろす。 そのあとで適当にスルーされてしまえば、心のもやもやもなくなるはずだ。 ――さらば。友人Aと友人B。 椅子から立ち上がると、金髪のメイドさんが僕の前にアイスカフェオレを持ってきた。 「あ……これ、いらないの…?」 トレイにはアイスカフェオレが注がれたカップが乗っている。 先日までは味わって飲んでいたそれも、いまとなっては恐ろしい毒物に見えてくる。 僕は「いらない」とだけ告げて、レジに立っているただ一人の男性ウェイターにお金を払う。 そして、店をでるためにドアを開ける。 と。 「待って! ……行かないで、お願い……また、ここに来て――来て、下さい……」 金髪のツンデレメイドが僕のシャツの裾をつまんでいた。 その姿を見ていると、そのままお持ち帰りしたくなる。 だが、それをしてはいけないのだ。監禁されるなんて、僕は御免だ。 全力で走って店を出て、路地を駆け抜け、大通りに出る。 これで、メイド喫茶に行ってから通算9回目。しかし、もうあの店にいくことはない。あっては、ならない。 315 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 12 11 ID 7cbl3E8J 自宅の前までようやく辿り着いた。 メイド喫茶から立ち去ったものの、さっきの金髪メイドが追ってきているかもしれない、 と思うとゆっくり歩いて帰ることができず、自宅前まで走ってきたのだ。 これなら、後をつけられたとしても、さすがにわかるまい。 僕はこれでも逃げ足だけは速いのだ。 高校では陸上部のエースとして慣らした足だ。そうそうなまるものではない。 ふと、時刻が気になった。 ジーンズの後ろポケットに入れた携帯電話を取り出そうと、手を入れる。 しかし――そこには何も入っていなかった。 走ったばかりで温まっていたはずの体に、冷たいものが走る。 どこで落とした?走っているときか?――もしそうだったら、僕でもさすがに気づくはずだ。 次に考えられるのは、どこかに忘れてきた、ということだ。 たしか最後に携帯電話を見たのは、メイド喫茶だった。 そうだ。そして、後ろのポケットに入れた。それは覚えている。 その後、勘定を済ませて、それから――――あの、メイドさんにくっつかれた。 ということは、彼女が僕に近づいたときに掠め取ったのか? もし、そうであればまたメイド喫茶に行かなければならない。 そして――――そのとき僕は、あの店に10回目の靴の跡を残すことになる。 結果、僕は監禁される。 相手は、おそらくあの金髪のツンデレメイドだろう。 彼女以外に話をしたメイドさんはあの店にはいない。 携帯電話を放置しておいたら、他人に悪用される可能性もある。 それは良くない。 この情報化社会で情報を漏らすことは、人間関係にも悪影響を及ぼす。 そこまで考えて、僕は決断した。 ――もう一度だけ、あのメイド喫茶へ行こう。 もちろん行くだけだ。 男性のウェイターさんに声をかけ、ツンデレメイドから携帯電話を返してもらう。 拒否されたら、その場合は警察に連絡をすればいいのだ。 あのツンデレメイドには近づかない。 それさえ守れば、僕が監禁されることはない。 僕は、もう一度メイド喫茶へ向かうために、さっき走ってきた道を引き返すことにした。 316 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 14 00 ID 7cbl3E8J メイド喫茶についたとき、玄関には『CLOSED』の札が張り付いていた。 おかしい。まだ太陽は沈んではいない。 どう考えても、普通の喫茶店が閉店するような時間ではない。(メイド喫茶が普通かどうかは置いておくとして) ――店が閉店していては、どうしようもないな。 そう思い、立ち去ろうとしたら。 『キィィーーー』 という音を立てて、ドアがゆっくりと開いた。 そして、ドアが開ききったとき、僕はおかしなものを見た。 「う、うっうっうぅぅ……」 金髪のツインテールをしたメイドさんが、立ったまま、顔に手を当てて泣いていたのだ。 彼女の足元には、トレイと、それの上に乗せられたコーヒーカップがあった。 カップにはキャラメルのような色をした液体――カフェオレが注がれていた。 おそらくは、僕が注文したカフェオレだろう。 だが、何故それを今までカップに入れたままにしているんだ――? 「私のいれたカフェオレ……どうして、飲んでくれないの…? なんで? 私………が、私が悪いの? ……あなたに、なにかしちゃった? いつも、来た時には飲んでくれたの、にぃ……どし、て……? 私が、いれた、い、れ…ぁ…う、ふぅぅぅ、うう、う、う………」 彼女は、両手を顔から離して、僕に向かって消え入りそうな声で語りかけてきた。 僕はその姿に――ヤンデレヒロインの影を見た。 健気で、惚れた男のために懸命に尽くす、心を病んだ女性たち。 そして、主人に奉仕するメイドという職業。 僕には、その二つがどこか似通った部分があるように思えてきた。 気づいたら、僕は歩き出していた。 大きな目から涙を流す金髪のメイドさんの元へ向けて。 何も考えられなかった。 ――彼女のその涙を拭いたい。 それだけしか、考えられなかった。 そして、僕が店内の床に右足をつき、次に左足をついたとき。 ばぁん! と真後ろから大きな音が聞こえてきた。 振り返ると、ドアが閉まっていた。 ノブをひねる。押しても、引いても、開かない。 鍵がかかっていた。 317 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 15 09 ID 7cbl3E8J 「あぁははは……あぁはははははは……やったぁ……ヤァッタァァァァ! これで、これでこれでこれで! あなたはわたしの、わたしはあなたのものよ!」 笑い声に振り向くと、金髪メイドが大きい目をさらに大きく、目玉が飛び出すのではないか、 と思うほどの大きさにして、僕を見つめていた。 僕は、呼吸が重くなるのを感じた。 「うれしい。とぉっても、すっごく……うれしい。 ううん。言葉になんてできないし……、言葉にするなんてもったいない。 この想いは、私の! 私の! 私だけのものよぉ! そして! あなたもぉ! ねえ、うれしいでしょ? ねえ。ねえねぇねえねぇねぇーーーーーーーー!」 金髪メイドが僕の肩を掴んだ。 そのまま、前後に揺らす。 だんだんと、その動きが早くなっていくのがわかる。 そして、僕が気持ち悪くなり、酔いそうになったとき――足払いをかけられ、仰向けに倒された。 金髪メイドは倒れている僕の胸の上に腰を下ろし、馬乗りになった。 彼女の右手にはコーヒーカップが握られている。 「さあ……召し上がれ」 そう言うと、彼女はとても美しい金髪の上から、カフェオレをかぶった。 ばしゃり、と。 勢い良く。ためらいなく。 それは彼女の金髪を伝い、幼さの残る顔の額、こめかみ、鼻の横を通り、彼女のメイド服を濡らしていく。 その顔を拭いもせず、彼女は僕の唇に、自分の唇で――くちづけた。 唾が、まず入った。 はじめのうちだけカフェオレの味がして、その後は甘くも苦くも辛くもなく、舌に泡の感触だけを与えてきた。 僕がそれを飲み込まないように必死に喉を引き絞ると、彼女は両手で僕の脇に指を当てて、くすぐった。 すると、引き絞っていた喉の力がほんの少しだけ緩められて、彼女の口液が喉の繊細な部分にかかった。 たまらず、僕はむせた。 一回、二回と咳き込む。僕と彼女の唇の結び目から唾液があふれ出した。 それでも、金髪のメイドは唇を離さない。 今度は、舌を入れられた。 小さい舌だった。僕がいつも口内に擦り付けている、自分の舌ではなくて、もっと細くて、 もっと薄い、それでも温かい熱を持った舌だった。 口内で蠢くそれは、上顎、下顎の順に歯茎をゆっくりと這いずり回る。 舌の裏に、ざらざらとした感触が生まれた。 時に細かく、時に素早く動く彼女の舌が僕の顎の筋肉を弱らせていく。 「ん……ふふふぅん♪」 金髪メイドは僕から顔を離すと、唇を結んだまま、鼻でわらった。 318 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 16 30 ID 7cbl3E8J 右手をつかまれた。 そして、馬乗りになっている彼女の左足の下を通り過ぎると、彼女のスカートの中に持っていかれた。 僕の手の甲と、彼女の掌が重なる。 そして指の一本ずつに、それぞれの指を添えられた。 人差し指と、中指が動いて、彼女が身に着けているパンツの上から、秘所を弄らされる。 僕の指が曲がると、彼女が両足で僕の両脇を締め付け、指が秘所から離れると軽く腰が浮く。 まるで、僕の指と性行為をしているかのようだった。 金髪のメイドは腰を動かしながら、空いている右手でブラウスのボタンを外そうとし始めた。 しかし、腰を動かしていて、さらに焦点の合っていない目では上手く外せないのか、もたついていた。 「……こうしちゃお♪」 僕の左手を掴むと、またしても指を添えて、ブラウスのボタンとボタンの間に、僕の指を差し込んだ。 そして、彼女は一気に腕を下ろした。 ぶちぶち、という音がして、ボタンがちぎれてブラウスとエプロンがはだけ、 勢いよくおろした指の勢いに負けて、ブラジャーまでがずれた。 彼女の決しておおきくない乳房には、ピンク色の乳首があった。 白い肌の上にあるそれは、雪の上に落ちた桜の花びらのようだった。 金髪の雌は僕の指を操作し、右の乳首をつまませた。 その途端、彼女の口から小さな声が漏れて、僕の指にはぷにぷにとした肉の感触があらわれた。 僕の指を使って乳首を押し込み、つまみ、そのまま上に下に、左右に弄る。 物足りなくなると、今度は左の乳首をつかって同じことを繰り返す。 僕の胸の上で暴れる腰はでたらめな動きになっていった。 前に動くと思ったら、腰で円を描き、左にいくかと思ったら上へと動く。 「あっん! も……ふぅ、あっ! …………あはっ♪」 金髪のメイドは胸の上から腰を浮かせて、後ろに下がっていく。 そして、すっかり硬くなっている僕の股間を軽く撫でた。 「…・・・これ、いただくわ……」 そう言うと、彼女は僕の身に着けているベルトを外し、ジーンズを膝まで下ろした。 その次は、僕の下着までも、ずらした。 それまで衣服の上に圧迫されていた陰茎が開放される。 すぐに金髪メイドの小さな手がそれを覆い隠す。そして上下に動かしだした。 すかさず、自分の口からうめき声が漏れた。 冷たい手の感触と、乱暴に動き出していく、速度さえもいびつな上下運動。 陰茎が、どんどん伸びていくような気がした。 腰の奥に溜まっていたものが引っ張り出されて、限りなく伸びていく。 319 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 18 56 ID 7cbl3E8J ――が、突然その動きが止まった。 思わず、「なんで」の「な」までを口に出してしまった。突然、竜巻のような快楽から開放されたからだ。 「だ、め、よ。……全部、なかにいれてぇ。中にぜぇんぶ……、だしてもらうから」 そう言いながら、彼女は右足だけを上げて、ショーツを脱いだ。 笑いながら腰を動かし、淫裂を陰茎にそって這わせる。 それを幾度か繰り返すと、垂直に立つペニスを秘所で後ろに押し倒しながら、 亀頭を彼女の入り口にぴたりと当てる。 腰をゆっくりと回しながら、彼女の下の口が陰茎を少しずつ咥えていくのが感じられた。 途中で、軽く引っかかりを感じたが、金髪のメイドはさらに笑顔を愉悦に歪め、そして――腰を落とした。 うめき声や、叫び声は出さなかった。 むしろ、笑い声の大きさがさらに増えた。 僕と彼女は、そのとき完全に繋がっていた。 僕にも彼女にも、その場所自体がスカートに隠されていて見えてはいなかったが。 金髪のメイドは髪を振り乱し、肩を上下させ、腰を乱暴に振りはじめた。 乱れていく。僕の意識が。 乱れている。メイドの体も、呼吸も、笑い声も。 締め付けられると陰茎が爆発しそうに思えるほど膨らむのに、 今度は緩められて快楽を遠くへと追いやっていく。 「あっは、は、はあぁ、あっすき、すきぃ…好きよぉ……おっ!」 彼女の動きは、止まらない。 がくがくと顎が上下に揺れて、頭も前後に振られている。 背中と、肩は入れ代わるように前へ行ったり、後ろへ行ったりあわただしく動く。 腰はどんな方向にでも動いた。 上と下、前、後ろ、斜め、横。 ときには、腰を回す動きをする。そのとき、彼女の上体は腰を中心にして円を描く。 首をがっくんがっくんと動かしながら、哄笑をあげながら。 そして、とうとう――僕に限界が訪れた。 僕は、全力で喉から声を絞り出した。 足、背中、腹、腰。全てに溜まっているものが陰茎の出口から精液とともに吐き出される。 その全ては、金髪のメイドの膣内に注がれた。 「あたしぃ、あなたの……くひ、ひく、くひひ……こども、うむ……からね……」 その言葉を聞いて、僕は完全に、自分の立場を理解した。 僕は――ヤンデレメイドに縛り付けられた。 別の言い方をすれば、金髪メイドに監禁されたのだ。――――完膚なきまでに。 終 320 名前:ヤンデレ喫茶は実在するのか? ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 02 21 32 ID 7cbl3E8J 終わりです。 297さん、三スレの小ネタを書いてくれた方。 勝手に使用してすみませんでした。 321 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 03 43 57 ID lYE8XNXW イヤッホオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ! GJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ! 322 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 06 16 07 ID aCH5DjRu ツンデレ喫茶:営業。ツンデレはポーズ ヤンデレ喫茶:マジ。ヤンデレの素質がある子を雇う。 むしろ店員が気に入った子を拉致るタメの店、か。 323 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 11 55 26 ID oZdnnlcH ヤンデレ喫茶KOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE 324 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 12 23 12 ID UroiYnml これはシリーズ化希望ですねww 主人公とヒロインを変更して常に違うお話を作ることも可能だw 巨乳メイドと友人Bが気になるのは俺だけかww 325 名前:297[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 13 02 17 ID m1shhhk+ 320 いやこちらとしても本望だ。ありがとう! にしても……俺もう軽い気持ちで喫茶店入れねぇ 326 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 13 14 33 ID 5R7paCl3 324 やべぇ、俺今9回目なんだが 今週行くべきか行かざるべきか… 327 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 13 36 08 ID c1Gv0uWs 大丈夫大丈夫。女友達とか女兄弟連れてって牽制させれば大丈夫 328 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 13 38 06 ID rILAVw8l 326 お前に「行かない」という選択肢は無い 329 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 13 48 00 ID m1shhhk+ 327 バカ!お前、女友達も女兄弟も解体されてハンバーグの材料になっちゃうだろ!! 330 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 14 54 27 ID Q5/0i2ba それ以前に、嫉妬深いキモ姉やキモウト、キモ馴染みだったらそんなところ行かせてもらえないんじゃね? 331 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/04(水) 15 46 31 ID DbqBhUSj 330 つか、そんなのが居るなら行く必要なくね? 332 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 15 49 23 ID tFwEAo8O 331 頭良いな。おまえ 333 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 16 00 32 ID oZdnnlcH 嫉妬深いキモ姉やキモウト、キモ馴染み自体この世に存在しなくね? 334 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 16 02 55 ID n5PIcIn1 その通りだ 335 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 16 11 09 ID FVMIoh8U 333 ブラコンな姉なら存在しているが・・ 336 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 16 27 26 ID aCH5DjRu しかし、だ。こんな風に都合よくヤンデレ少女をどうやって雇ってるんだ。 条件としては、 ・客に惚れるんだから現在彼氏なし。つまり、雇う時点でヤンデレではダメ。 ・惚れっぽいが一度惚れたら絶対にその人に一途。 ・惚れたら手段を選ばない。 こんな人を雇うべきだ。 そして、好きな人が10回来たら持ち帰っていいと教え込む。 あれ?もしかすると、あえて罠をしかけて10回通うようにしてるんじゃね? 逆に気に食わない男は中々店に来れないようにしてなwww 337 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 16 29 40 ID 4FnIxPkB あんま深く考えないほうが吉ってばっちゃがいってた 338 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 16 34 46 ID lYE8XNXW ヤンデレはヤンデレに引き寄せられるってばっちゃがいってた! 339 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 16 45 46 ID m1shhhk+ おばあちゃんが言っていた。 世界は自分を中心に回っている、と 340 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 16 46 48 ID m1shhhk+ さらにこうも言っていた。 その方が楽しい、とな 341 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 17 15 55 ID m1shhhk+ 書き込みミスしたー ちょっとヤンデレ喫茶行ってミンチにされてくる。 みんな、ごめん 342 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 18 47 09 ID wlxoz18X その喫茶店は実は時空の狭間にある「ヤンデレ界」に属しているんだよ いまだ最愛の人を見つけられずに居る潜在的ヤンデレは自然と引き寄せられるのさ 343 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 19 58 10 ID PNxzaUaF ヤンデレ喫茶って10回も通えば・・監禁してくれるのか・・ 自分のためにヤンデレ化してくれる女の子は責任とって付き合うぜ!! というわけでその場所を教えてくれないか? 344 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 20 08 23 ID aCH5DjRu 343 店員に気に入られなきゃ10回目行けずに終わりだからな。 俺なんか10回目行こうとしたら何かしら災害や妨害に見舞われる。 336の最後の1行はマジだった。 345 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 20 20 42 ID UhnyUmAu ええい、まだるっこしい! そのヤンデレ界とやらに行ける、銀河鉄道の切符を俺にくれ! もちろん片道でいいから 346 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 22 34 39 ID 5R7paCl3 ふと思ったんだが、 女、男がメイド喫茶に行っている事を知る ↓ 自分以外の女が男にベタベタするのが許せないので、そこでバイトする ↓ 店、女の熱意に打たれ男が10回来客したら「お持ち帰り」して良いと言う ↓ 女、約束通り男を「お持ち帰り」 想い人のいる友達にこの事を話す ↓ 以下、無限ループ 347 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 23 15 41 ID ORukf7MX 実の黒幕は店長だな……。 おそらく店長はヤンデレの素質を見切る慧眼を持っている。 そして、スマートに明るい未来へと誘導するための、 さりげない言葉の投げ掛け方もマスターしていると見た。 348 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 23 44 48 ID aCH5DjRu 346 そこいらの話も読みたいなぁ。 表向きは普通のメイド喫茶を装い、ヤンデレ少女の恋の手助けをする。 ただ、何度も通う人に都合よく恋する人がいるのか、 逆にヤンデレの恋する相手を都合よく喫茶店の常連にできるのかが難しい。 まあ、最初はダミー用の予め用意された普通のメイドがいるよな。 だが、店長が男だとダミーメイドに計画が知られた途端、逆に自分が狙われて持ち帰られたりしてな。 349 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/04(水) 23 49 32 ID 5kyVKZ2P いや、俺ならば仮令女店長でもその可能性は否定しない。 350 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 00 24 28 ID 5lRL2Fmz 349 なんのこっちゃ 351 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 00 28 05 ID 5lRL2Fmz とりあえず、ヤンデレスレにヤンデレ喫茶の情報を書き込み、 【俺】、友人A、友人Bを喫茶店に通わせるようにしかけたのは、 彼らを狙ってた長髪、巨乳、ツインテールのメイドって事でFA? 352 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/05(木) 01 09 56 ID NS2FAo27 324 それじゃ、おまいらの妄想と俺の妄想を混ぜてまたお話を書くことにするよ。 353 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 01 16 47 ID jp+SlvaG 352 ∧_∧ ( ・∀・)ワクワク oノ∧つ⊂) ( ( ・∀・)ドキドキ ∪( ∪ ∪ と__)__) 354 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 01 18 54 ID Tfj6q6qw 神降ろしじゃああ 355 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 03 14 08 ID dhFU8Zum 誰か俺の気持ちに答えてくれーっ!!!! ヤンデレ喫茶はーっ 356 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 03 27 42 ID ZSflysQN なんかアウターゾーンのミザリーみたいな店長を想像したんだが ヤンデレの素質がある女の子の前にふらりと現れてヤンデレ喫茶に 勧誘するんだ。その一方で男のほうもヤンデレ喫茶に誘導 357 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 09 27 52 ID YVIfEc41 355 王者のエロよっ! 358 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 10 09 36 ID 4xBz1KzQ 勧誘の場合こんな感じか? 「ねぇ、君! 今好きな人いるでしょ!おじさんにはわかる!!伊達に生きてきたわけじゃない。おじさんの目は確かだよ。 あっ!君の恋路の邪魔をする泥棒猫や女狐が彼の近くにいるでしょ? ほら、おじさんの目に狂いはない。 彼との2人だけの世界が欲しいんでしょ?でしょ?でしょ? やっぱり!! おじさんが協力してあげる。 えっ?どうするかって? 簡単、簡単。おじさんの店で働けばいいんだよ。 おじさんが、君の意中の彼が店にくるように仕向けるよ。彼が10回店に来たら、君は解雇だ。そして退職金のかわりとして、彼をお持ち帰り。好きなようにしていいよ。 ん?そんなことが許されるのかって? ほっといたら、彼は醜い泥棒猫どもに汚されちゃうよ? 君のもののはずなのに、どんどん遠くに行っちゃうよ。 ね、いやでしょ? そうそう、もちろん給料も出るよ。 働く気になったって?もちろん大歓迎さ!! これからよろしくね!! どうしてそこまでしてくれるのか? おじさんはこんななりだけど恋のキューピッドだからさ!!」 店長が病んでるように思えてきたぜ。 359 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 10 17 41 ID Qm98JzkY 358 ,,,,,,,,,,,,,,, ノ。; ,, ;,. 。;ヽ /;,. ; . /, ’ .,;,;ヽ ( ;,.( .;_.,; _,; );,..,/ ヾ,.;, .;` , ..,; ,,/ 店長予想図 360 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 10 19 18 ID Lq4YSlFq 358 それなら店長を女性にするとか(もちヤンデレ) 361 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 10 49 47 ID 5lRL2Fmz 360 いや、 348のような展開なら男性でもあり。 362 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 10 52 57 ID HsryTF/w 466 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 01 24 50 ID 7pxgBqcn 「お姉ちゃん・・巴君に言っておきたいことがあるんです」 「何だよ」 「どうして、巴君はお姉ちゃんの部屋に夜這いを仕掛けて来ないの? 全国の弟の皆様は問答無用にお姉ちゃんを襲うために布団に入り込むのに」 「いい歳して姉の寝床に入り込む人間はいないだろうが」 「そんなのダメですぅ!! 巴君は若い性欲を受け止めるのは世界でただ一人だけなのよ 他の女の子に痴漢やレイプすれば、亡くなったもとい、弟と夢の二人暮らしのために 謀殺したお父さんとお母さんに顔向けすることができないわ」 「いや、ちょっと待て。数秒待て・・。今、とんでもないことを言わなかったのか」 「そ、そ、そんなお姉ちゃんのことを性欲に飢えた狼の瞳で見つめないで 恥ずかしすぎるぅぅぅよぉぉぉおぉぉ!!」 「華麗にスルーしやがった・・このクソ姉」 「巴君・・乱暴な言葉遣いしないの・・。さあ、お姉ちゃんがベットの中で 大人の保健授業を教えてあげるから♪」 「うん。全力でお断り致します」 「そ、そ、そ、そ、そんな。実の姉、義理の姉、血の繋がらない姉に欲情しない 弟は不潔よ。不潔よぉぉ!! 巴君はそんな悪い子じゃないよね?」 「残念ながら・・最近、嫉妬スレやヤンデレスレを見て悟ったことがあるんだ」 「何かな?」 「キモ姉というのは弟の事を考えずに激しい独占欲と嫉妬心で檻に閉じ込めるのがスタンダードらしい。 これはあるある捏造なんてレベルを遥かに超えている都市伝説なんだけど・・ 姉は違うよな?」 「・・・・檻に閉じ込めるなんて・・そんなことは全国にいるお姉ちゃんなら誰だってやっていることじゃない!!」 「((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル」 「愛しい弟に近付く泥棒猫から守るためには家から一歩に出さないわ。プライベートも巴君の自由な時間すらも お姉ちゃん権限で全て管理してあげるよぉ・・。ずっと、お姉ちゃんは巴君の傍から離れないわ」 「ま、ま、まさか。キモ姉は実在していたのか・・」 「うふふふ・・巴君巴君巴君・・お姉ちゃんだけの巴君・・」 「ちょっと待ってよ・・本気で俺を檻に閉じ込めるのか?」 「お姉ちゃんの布団で肌と肌を重ね合うように抱きしめてくれるなら 檻に閉じ込める件については保留してもいいですよ」 「保留かよ!!」 「嫌なら今すぐにこの時のために作った地下牢の中に閉じ込める」 「ううん・・俺も今すぐにお姉ちゃんと一緒に寝たかったんだよ」 「やったぁーーー!! じゃあ、お布団の中に入ろうね」 結局、キモ姉を持っている弟は絶対に逆らうことができないだろうと 俺は姉の暖かなゆりかごに包まれながら、意識は遠くなって行った キモ姉SSをちらりと書いてみた 今は猛烈に反省している ヤンデレスレ向けのネタがあったから転載してきた キモ姉サイコーーーー!! 363 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/05(木) 11 29 52 ID IJ3OTuT5 修羅場に出てたやつか… 364 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 12 16 37 ID 9vR8WUur 358 全身痙攣! 365 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 12 18 16 ID YVIfEc41 364 見よ! 366 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 12 46 43 ID wcmF69gv 362 何このキモ姉・・・テラモエス 364 監禁室は血で染まっている! 367 名前: 364と 365の間に…[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 13 58 17 ID 9vR8WUur 電波狂乱! 368 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/05(木) 21 59 39 ID LecRitZn 社会人になっちゃってからこのスレを離れていたが… やっぱ無理やーーー!!ヤンデレがない生活なんて考えられない!! 369 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 22 00 42 ID LecRitZn 間違ってageちゃった。やっぱ疲れてるみたいだ… 370 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 22 11 33 ID x4RNbPa8 最近とある喫茶店でバイトしていたのだが、9日働いたらクビになってしまった。 そしたら先程そのバイト先から、また来てくれと連絡があった。 次であの喫茶店に行くのは10回目。 まさかな……………。 371 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 22 44 10 ID 4xBz1KzQ 370 お前はすでに死んでいる 372 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 22 53 43 ID bTlG1StJ 南斗水鳥拳 373 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 22 57 57 ID x4RNbPa8 372 効かねえよ。 肌に粗塩を擦り込んであるからな。 古代のベアナックルの選手は、そうやって切れにくい肌を作ったものさ。 バイト行って来まーす! 374 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 23 18 03 ID r9nm0KRu 一週間後―そこには元気に監禁される 373の姿が 「まさか、あの人が私のものになってくれるなんて思っていませんでした。 店長にはとても感謝しています。」 375 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 23 29 24 ID 4xBz1KzQ 373に敬礼!! 376 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/05(木) 23 44 42 ID 5lRL2Fmz 待て、男のバイトは何で雇うんだ。 377 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 03 10 ID yZP5QFvh 監禁するために決まってるじゃないか 378 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 19 02 ID qT8bVEa2 373はきっと扉を開けたのだよ。 379 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 44 28 ID wP2+pi59 376 「店長さん、実は秘密にしてたことがあるの。」 「どうしたの?〇〇ちゃん。怒らないから言ってごらん。」 「実は私の好きな人はお客さんじゃなくて同僚だった人なの。 その人の名前は―」 「 373さんだね?しかも一目惚れ。」 「?!」 「なんで知ってるの、って顔してるね。おじさんを見くびってもらっちゃあ困るなぁ。 言ったでしょ? 君の意中の彼が店にくるように仕向ける、って。 なにも客としてだけなんて言ってないよ。」 「じゃあ、なんで彼をクビにしたんですか!! もう会えないかもしれないじゃないですか!!!」 「落ち着いて。彼にもう一度店で働かないかって電話したから。 一度クビにしたのは彼に君との世界以外のものとお別れさせるため。 たぶん、もうすぐ来るさ。 あっ、ちょうど10回目になるからあなた達2人は寿退職だ! おめでとう!! 幸せになるんだよ。おじさん、応援してるよ。」 きっとこういうことがあったのさ 380 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 50 29 ID oKsZ0FHK そんな店長もありだったかな、と思いつつ、少しだけ投下。 381 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 51 33 ID oKsZ0FHK 俺は、メイド喫茶の店長というものをやっている。 店長という肩書きが引っ付いているが、実際店を回しているのは副店長で、 俺は椅子に座っているだけで、何も(と言っちゃなんだが)していないようなものだ。 俺がやっていることは、モニタを見ることと、スイッチを押すことと、メールを見ることだけ。 ひとつずつ説明していこう。 まずはモニタについて説明する。 モニタには、喫茶店の、内外の様子が映っている。 つまり、仕掛けてある監視カメラの映像を見ているのだ。 事務所の中に置いてあるモニタの数は6つ。 喫茶店の入り口から路地を見渡すように一つ。 店内に四つ置いてあるテーブルをそれぞれ監視するために、四つ。 カウンター内にいる店員の頭上からカウンター席を望むように、一つ。 いずれも、客が不審な行動をしていないかを監視するために設置されている。 たとえば――入り口に一番近い位置にあるテーブルに座っている若い男。 文庫本などを読みながら、注文の品が届くのを待っている。 たった今、本を畳んでしおりを挟み、それをテーブルの上に置いた。 大きく伸びをして、あくびをしている。 誰にも見られていないと思っているのだろう。 天井に顔を向けながら、顎が外れんばかりに口を開けている。 しかし、監視カメラを見ている俺からは、男の口内がよくわかる。 店員のメイドの一人が、トレイの上にカップを乗せて男のいるテーブルにやってきた。 男はあくびをやめて、腕をテーブルの上に置いた。 テーブルの上に置かれたカップを左手で持ち、唇をつけた。 そして、ソーサーの上にカップをもどすと、また文庫本を手にとり読み始めた。 店員はそのテーブルに背を向けて、立ち去った。 男は文庫本片手に、カップの中にある液体をちびちびと飲んでいる。 どうやら、まだこの男は10回目に達していないらしい。 普段ならこの時点で眠気を催して、テーブルに突っ伏しているからだ。 もしくは、店員がテーブルに近づいた時点でカップの中身を男にぶちまける。 その後で、その男は店の奥に連れて行かれるはず――おや? 382 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 51 43 ID yLs1zJQn ツンデレ喫茶が完全予約制のように、 ヤンデレ喫茶は選ばれた男性しか来られないんだろうな。 何も知らない人がやってきた場合、どうしていいかわからんもん。 383 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 52 33 ID oKsZ0FHK 先ほどまでカウンター席に座っていたスーツ姿の男が立ち上がって、 店員に向かって何かを言っている。 彼の前にいる店員は、ぺこぺこと何度も頭を下げている。 監視カメラに併せて集音・録音用のマイクを設置したりはしていないのでよくわからないが、 男がジャケットを脱いでそれに顔を近づける様から考えるに、店員が粗相をしてしまったようだ。 普通の店ならこの場で店長なりが登場するのだが、生憎俺はそんな面倒なことはしない。 カウンターの前にいる男は店員に何か怒鳴っている。 彼に向かって、店員が申し訳なさそうに頭を下げる。 店員のメイドが何かを喋ってから、男の手をとった。 店員は男を奥へ引っ張っていこうとするが、男はその手を振り払った。 カウンターに背を向けて、男は喫茶店の入り口へ向かって歩いていく。 ――どうやら、出番が来たようだ。 数少ない俺の仕事の一つ。 事務所の机の上を占領しているスイッチ類の操作。 数にして、およそ……50ぐらいだろうか。 ときどき無造作に増えているのでよく覚えていない。 ともあれ、今回のような『10回お店に来たお客様へのサービス』を拒む、 入り口へ向かって今も歩き続けている男に対しては、『car-2』スイッチを使う。 スイッチを押す。すると、カチッ、とあっけない音がした。 店先を映し出している監視用モニタを見る。 路地に停めてあるミニバンタイプの乗用車が動き出した。 乗用車には、もちろん人が乗っている。 運転ばかりは、ここにあるスイッチでは役不足というものだ。 今のスイッチは、ただミニバンの運転手に合図を送るためだけのものだ。 店の入り口と壁に張り付くように、ミニバンが停車する。 それを確認したあと、店内の様子を監視カメラで観察すると、 スーツのジャケットを腕にかけた男が入り口のドアを開けようとしていた。 喫茶店のドアは外開きになっているので、今のように外に車が停車していたら、もちろん開かない。 男は扉に向かって怒鳴ったあと、先ほど粗相をしたメイドの元へと向かう。 彼がジャケットを店員に手渡すと、店員が笑顔を浮かべたのが、俺からも良く見えた。 店員のメイドが男の腕を掴むと、男はたたらを踏みながらそのままメイドの腕に引っ張られて、 カウンター横のドアをくぐっていった。 ――さて、仕上げだ。 手元の、『K-01』スイッチを人差し指で軽く押す。 しかし、特に何が起こるわけでもなく、店内はいつもの静けさを保っていて、 店員のメイド達も普段の業務へとすでに戻っている。 では、このスイッチがなんなのか、というと。 ――かいつまんで言えば、お客様へ向けた、当店のサービスです。 384 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 53 48 ID oKsZ0FHK 最後に、メールについて。これが一番簡単な仕事だ。 事務所においてあるPCに届くメールを見て、プリントアウトすることだけ。 送り主は女の子ばかりだ。では、ついさっき届いたばかりのメールの内容を紹介するとしよう。 ----------------------------------------------- タイトル: お店で働かせてください 本文: 先日、A町の街頭でお会いした者です。 名前は、T村K子です。年齢は19歳。大学生です。 私と彼の近況を明記してください、とのことでしたので、以下に記します。 私と彼は大学の同じサークルに所属しています。 講堂でも、お互い隣同士の席になることがよくあります。 いつも、彼のほうから私の隣に座ってくるんです。 彼は、私のことが好きなんです。そうに決まっています。 でも、一つ問題があります。 彼の姉と名乗る人物が、私たちの仲を壊そうとしてくるんです。 この間、私は彼のためにお弁当を作りました。 腕によりをかけて、愛情をいっぱい、いっぱい込めました。 お弁当を持って、昼食の時間に彼を探し出しました。 そのとき、彼の隣には女が座っていました。 私はあふれ出す怒りを押さえ込み、彼らの隣に偶然を装って近づきました。 彼の隣に座っていた女、彼の姉の目といったら、もう、憎くてたまりません。 『なによあんた』『私の弟に近づかないで』 『あんたみたいな他所の女に弟は渡さないわ』という、独占欲が丸出しになっていたのです。 私は彼に弁当を渡すことなく、その場を立ち去りました。 大学から家に帰って、私は泣きました。 せっかく作ったお弁当を彼に食べてもらえなかった。 あの時、無理矢理にでも押し付けていけばよかった、と後悔しました。 何時間も泣き続けて、泣きつかれて眠って、起きたときに私は決断しました。 彼を、絶対に私のものにする、と。 そのためには、彼をあの女の手の届かない場所に連れて行くことが一番だと考えました。 あなたの言うとおりに、誰も知らない場所に監禁してしまえば、 あの女もきっと彼を諦めるに違いありません。 お願いです。私をあなたのお店で働かせてください。 どうしても、私は彼が欲しいのです。 彼も、私に監禁されることを望んでいるに決まっています。 最後に、彼の名前と年齢を記します。 O谷Tくん。19歳です。 他にも必要な情報がありましたら、連絡をいただければお教えします。 ----------------------------------------------- 385 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 54 56 ID oKsZ0FHK 事務所にあるPCに届くメールは、どれもこんな内容ばかりだ。 決まって、メールを送ってくる相手は年頃の女の子だ。 そして、男を手に入れるためにここで働きたい、ということが必ず書いてある。 ちなみにメールに書かれている『あなた』というのは、俺のことではない。 『オーナー』のことだ。 『オーナー』が、どんな人物なのかとか、何歳なのかとか、俺は何一つ知らない。 ただ、副店長の父親だということだけがわかっている。 副店長は、18歳の女の子だ。 身長は、160cmぐらい。 スリーサイズは、俺の目測では93・60・89。カップはF。 体重は、怖くて聞いていない。 ただ、いつも俺の体に乗ってくるときにそれほどの重さを感じないから、 体型に合わせたぐらいのものだと思う。 髪型はおかっぱで、メイド服と組み合わせるとかなりいい感じになる。 彼女がいつも浮かべている微笑からは、幻想的というか、非現実的な印象を受ける。 とはいえ、顔立ちがいいからいつもその笑顔を見ているだけで俺は癒されてしまう。 副店長――春香は、俺の恋人でもある。 俺たちの関係は、このメイド喫茶に俺がお客としてやってきたことから始まった。 そのころから、春香は喫茶店でメイド服を着ていた。 当時はまだ、副店長ではなかった。俺が店長になってから彼女も副店長になったからだ。 一目見た時から、俺は春香に惚れてしまった。 さきに挙げたように、周りにいるメイド達と比較しても際立つ魅力を放っていたからだ。 あの頃の俺はまだ女を口説くことに慣れていなかったから、声をかけることができなかった。 だから、春香に会うために俺は何度もこのメイド喫茶に足を運んだ。 椅子に座ってコーヒーを注文して、しばらく待っていると春香がトレイにカップを乗せてやってくる。 彼女が優雅な仕草でテーブルの上にカップを置く。 ナプキンを敷いて、ミルクと、砂糖と、銀製のスプーンをその上に置く。 春香は「ごゆっくりおくつろぎくださいませ」と言って頭を下げる。 きびすを返し、コツコツ、と小さな音を立てながら、俺のいるテーブルの前から居なくなる。 その一連の動作と、彼女の微笑を見ているだけで、俺の胸は締め付けられた。 ――春香が欲しい。 ――俺のものにしたい。 ――彼女を、抱きたい。 メイド喫茶にあししげく通っていたころの俺は、いつもそう考えていて、 その考えがそのまま目に宿っていたのではないか、と今では思う。 普通に考えれば、通報ものだ。 ともあれ、10回メイド喫茶に通うことになったあの日。 ――願いが、現実になった。 386 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 00 57 05 ID oKsZ0FHK 連投規制にかかりそうなので、一旦切ります・・・・・・ ただいま、エロシーンを書き続けております・・・・・・ 一時間~二時間はかかります・・・・・・ 387 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 01 22 46 ID M1TXGoEp 386GJ! 388 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 01 44 55 ID yLs1zJQn 386 割り込んですんませんでした~。 寝てる間に完成しそうなのでゆっくり待ちまーす。 389 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 02 42 13 ID oKsZ0FHK 投下します。レイプ注意。 ↓ : : : 大学からの帰り。 人でごったがえしている都内の大通りを俺は歩いている。 大通りに面する場所には、色々な、多種多様な店舗が軒を連ねている。 大手百貨店、大型電気店、数十階建てのビルに、古今東西の料理店。 通行の邪魔になるような小型の立て看板を手でどけて、人の波を避ける。 ――めんどくせえ。 しかし、それでも俺の足は浮き足立っていた。 まるで天にも昇ろうかという気分ですらあった。 それは何故かというと、春香のいるメイド喫茶へと向かっているからだ。 今から春香の癒しの笑みを拝むことができるかと思うと、人の波もなんのその、というやつだ。 ホームセンターとコンビニの間に置いてある立て看板をどけて、通り抜けてからまた元に戻す。 人が一人余裕を持って通れるぐらいの幅の路地に入ると、 俺はいても立っても居られなくなり、駆け出した。 ――この先に、春香がいる。 それだけしか、今の俺の頭の中にはない。 それ以外は考えない。走りながら、勢いをつけすぎて軽く前のめりになる。 倒れそうになったところで、体を軽く前に倒して足を強く踏み込む。――倒れずに済んだ。 ボロボロの服で春香に会うなど、俺にはできない。 そうなったら今日は春香と顔を合わせることもできない。 こけるわけにはいかないのだ。 その後はスローペースで路地を走って、メイド喫茶の前に到着した。 緊張で震える手で、喫茶店のドアの取っ手を掴み、静かにドアを引く。 喫茶店の店内が、良く見えた。 木製のフローリングになっている床。 右手にふたつ、左手にふたつ、向かい合わずに交互に並ぶテーブル。 グラスやカップや大小の皿が納められた食器棚が奥に置いてある、カウンター。 そして、入り口のすぐ近く。 俺の立つ場所から見ると、右斜め前の位置。 「おかえりなさいませ。ご主人様」 メイド服を着て、ほほえみを浮かべる春香がいた。 390 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 02 43 01 ID oKsZ0FHK 「お席に、ご案内させていただきます」 春香が優雅に頭を下げる。俺は首を軽く前に倒した後で、店内に足を踏み入れた。 春香は音を立てるなと命じられたかのように、小さな靴の音を立てて、前を歩いている。 思わず、その後ろ姿に息を呑んだ。 そのまま近づいて、彼女の細い体を抱きしめたくなったが、自分を叱り付けてそのまま歩く。 「こちらのお席にどうぞ」 春香がカウンター前の椅子を引き、座るよう促した。 無言でその椅子に座る。音を立てないように。クッションをゆっくりと潰すように。 「何にいたしましょう。ご主人様」 ――君を。 などとは言えるはずもなく、「コーヒーをください」とだけ告げる。 「かしこまりました。それでは、少々お待ちくださいませ」 そう言って、春香は手を前に合わせて、カチューシャを見せるように礼をした。 後ろを振り返り、春香はカウンターの中へと入っていった。 店内をカウンター席から見回す。 どのテーブルにも客はいないし、他のメイドさんもいなかった。 時刻はまだ四時を少し過ぎたばかりだというのに、めずらしいこともあるものだ。 「~~♪」 カウンターの向こうから、春香の鼻歌が聞こえる。 コーヒーを淹れながら、彼女は目を細めた、優しい笑顔でそこにいた。 彼女が嬉しそうにしていると、俺の心の中にも花が咲く。 そのまま、春香のハミングを目を閉じたまま聞いていると、しばらくして歌が止まった。 春香が、コーヒーカップをトレイに乗せて、カウンターから出てきたのだ。 「ご主人様。コーヒーをお持ちいたしました」 メイド服を着た春香が、左掌の上にトレイを乗せて俺がいる席の前へとやってきた。 コーヒーカップが乗せられたソーサーの縁を右手で持って、カウンターの上に置いた。 同じくカウンターに置かれたミルクと砂糖を入れようと手を伸ばすと、白い手が横から伸びてきた。 391 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 02 43 44 ID oKsZ0FHK 「今日はご主人様が来られてから10日目になりますので、私めにやらせてくださいませ」 そう言うと、彼女は砂糖を入れて、次いでミルクを入れた。円を描くように。 コーヒーと乳白色の液体をスプーンで混ぜたあと、カップを差し出された。 「どうぞ。お召し上がりください」 右手の人差し指をカップの取っ手に回し、コーヒーを飲む。 いつもより、美味い。 なぜだろうか。――いや、愚問だな。 春香が淹れたコーヒーに、春香が入れた砂糖とミルクが合わさっているのだ。 俺の味覚は、これ以上美味いものは存在しない、と断言している。 そのコーヒーを味わって飲んでいるうちに、いつのまにかカップの中身が空になった。 残念に思いながら、カップをゆっくりとソーサーの上に置いた。 すると。 「ご主人様。もう一杯、いかがですか?」 春香がポットを持って、俺におかわりをすすめてきた。 せっかくの誘いを断るわけがない。 俺は「いただきます」と言って、コーヒーを淹れてくれるよう頼んだ。 ポットから、黒と琥珀の中間の色をした液体がカップに注がれる。 春香がコーヒーを注ぎ終わったあと。 なんのはずみかはわからないが、彼女の手が滑ってポットが俺の膝の上に落ちてきた。 膝の上で一旦止まり、ポットが床に落ちる。 ――ガシャン という音を立てて、ポットが割れた。 「も、申し訳ありません!」 と言って、春香が床に膝をつき、布巾を持って俺の膝を拭き始めた。 彼女は泣きそうな目をして、俺のジーンズを布巾で擦っている。 そして、彼女の手が右膝から左膝に移ったとき。 ――ドクン 心臓の音が俺の耳に届いた。 392 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 02 44 54 ID oKsZ0FHK 春香はしゃがんで、俺の――股間の前にいる。 彼女の目は潤んでいた。 今にも泣き出しそうな顔をしていた。 その顔を見ているうちに、俺は、自分の喉が締め付けられるのを感じた。 普段より、目が大きく開いた。 目は、初めのうちこそ春香の顔を見ていたが、いつのまにか視線が下へと向かっていった。 その先には、メイド服のエプロンを押し上げている、春香の胸がある。 俺の手はポットが落ちたときの驚きで肩の辺りに上がっていたが、 その手が、肘が、腕が、うずうずとしていた。 手が震えている。 寒いわけでも、武者震いをしているわけでもなく、勝手に動いている。 俺の意識は「動くな」とだけしか言わないが、頭の奥の深い部分が言っていた。 ――――春香を犯せ。 ジーンズに押さえつけられている肉棒が脈を打った。 睾丸の辺りから骨盤を通り、へその下の部分に得体の知れないものがたまり始めた。 ――これは、肉欲だ。 「ご主人様? どうなさいましたか?」 春香の声が、下から聞こえた。 それは俺の耳だけに聞こえるはずだったが、股間にまでその声が響いてきた。 怪訝な顔をして、春香が俺の顔を上目遣いで見つめてきた。 奥歯を強くかみ締める。 鼻から大きく息を吸う。 唇を固く、離れないように強く押し付ける。 それで、なんとか体の感覚を春香に向けないようにすることができた。 が。 「ご主人様……?」 春香の白い顔が俺のすぐ目の前にやってきて、 俺は――顔の力を抜いた。 393 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 02 45 48 ID oKsZ0FHK 両手で春香の顔を鷲づかみにする。 柔らかい髪が俺の指の先をとおりすぎ、指の間に埋まった。 春香は口を薄く開けて、俺をまっすぐに見据えている。 彼女の唇が薄いピンク色をしていることを理解したあと、そのあとは何も考えずにキスをした。 策も、技も、加減もなかった。 ただ、彼女の唇に自分の唇を合わせて、舌を突き出した。 彼女の舌を求めて、俺の舌は動き出す。 春香の舌の先端を、舌の裏を、舌のくぼみを舐める。 舌の先端に、意識は全て集中していた。 春香の舌は、俺の舌のなすがままにされていた。 従順に、荒い波に揉まれつづけるようにたたずんでいた。 唇を離す。 春香は呆然として俺の目を見つめている。 けれども、その目に嫌気が混じっていないことを悟った俺は、再度くちづけた。 今度は、唇を当てて、舌で舐めるだけではなく、頭までが動いた。 首の力を使って、唇を強く押し付け、舌を深く突き出す。 俺が首を左右に振りながらキスをしていると、春香の首までもが応えるように動き出した。 「ん、ふぅ……はぁ、ん……」 お互いが首を曲げるたびに唇の結び目から声が漏れる。 しかし、俺も、春香も唇をくっつけたまま、離そうとはしない。 この熱を、放したくなかった。 春香の脇に、左右それぞれの手を差し込み、彼女を立ち上がらせる。 まだ、お互いの唇は離れていない。 手を春香の背中に回し、抱きしめる。 柔らかい。 まるで、ぬいぐるみかなにかのように、ふわふわしている。 春香の頭に手を当てて、さらに強く唇を押し付ける。 もう――止まることはできない。 その体勢のまま、春香の体を抱えるようにして前進する。 喫茶店に置いてあるテーブルに、春香の体がたどりついた。 そのまま、春香をテーブルに押し倒す。 394 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 02 47 36 ID oKsZ0FHK 一旦唇を離す。 俺と、春香の唇が結びついていた証のように、透明な細い糸が伸びる。 春香を見る。 顔が紅い。 目は潤んで、目じりは垂れ下がっている。 俺が見ていることに気づいたように、口の端を少しだけ上げて笑った。 その笑顔はいつも俺の心を癒すものだった。 が、今ではその笑顔すらも蹂躙することができる。 ――その一手が俺には与えられている。 首を下に曲げて、春香の胸を見る。 呼吸に合わせて、上下に動いている。 二つのふくらみが、メイド服の胸元を押し上げて、その存在を主張している。 膨らみの頂点に向けて伸びるしわを見ているうちに、俺はそれに手を伸ばしていた。 両手でエプロンの上から乳房を揉む。 柔らかな、布の感覚が両手にある。 だが、――物足りない。 左手を春香の背中に回し、エプロンの結び目を探る。 丁度、腰のうしろに布の塊があった。 力任せに引っ張る。すると、結び目がよりいっそう大きくなり、解けなくなった。 何度やっても解けない。 ――ならば。 エプロンがずれないようにするための、肩の布を引きちぎった。 エプロンをひっぺがすと、今度はブラウスが現れた。 左右の布を結び付けているのは、小さくて、黒いボタンだった。 両手の指をボタンの間につっこむ。 勢いよく腕を、外に向けて開く。 「あっ……」 ピンクのブラジャーがそこにはあった。 小さなフリルのようなものが、アクセントとして飾り付けられていた。 その形と色は俺をさらに興奮させた。 背中に手を回し、手探りでホックを取り外す。 背中から、ゆっくりと体に這わすように、手で下着と肌を引き剥がして、体の前に持っていく。 正面に手がやってきた時点で、そのまま手で布を押し上げる。 そこには、春香の乳房があった。 下着をつけていなくとも、それは形を崩すことなく、そこにあった。 右の乳房の頂に、くちづける。 唇の先で甘噛みすると、それは柔らかい感触を残したまま、潰れていく。 一度唇を離す。 今度は舌を唇から突き出し、ぺろり、と舐める。 すると、春香の口から喘ぎ声が漏れた。 舌を動かすたびに、その声はさらに甘さを増していく。 395 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 02 48 28 ID oKsZ0FHK ロングスカートを手で掴む。 それは何度か手を往復させていないと完全に捲くれないものであったが、 何度か、繰り返していく内にスカートの縁が俺の手の中におさまった。 春香の白い太腿に、口をつける。 舌で押しやると、柔らかく押し返す。そんな感触だった。 ショーツの上から秘所に手を当てると、そこはすでに愛液が溢れていて、ぐっしょりと濡れていた。 親指をそこに当てて、軽く押す。 「…っん、くぅ…はあっ……」 それだけで、春香の両足に力がこもった。 続けて、強く押したり、上下に押しやる。 そのたびに春香の白い足は力を込めて動き出す。 腰に手を当てて、ショーツの端を指で引っ掛けて、膝を通り、足首から脱がせる。 俺の目の前には、彼女の膣口があった。 そこからはすでに彼女の愛液が滴り落ちていて、スカートにしみを作っていた。 舌をその割れ目に這わせて、舐め上げる。 「る、ぁ、めぁぁ……ごしゅ、じ…ん……ぁ…」 幾度となくそれを繰り返すうち、彼女の陰裂はふるえてきた。 春香の足も、ふるふると動いていた。 両手で、彼女の腰に手を回す。 テーブルの上から、彼女の腰だけをはみ出させるようにする。 俺は、下半身を覆う全ての衣服を脱ぎ捨てて、それから、彼女の体と向かい合う。 目の前には、春香のあられもない姿があった。 口からはよだれを垂らし、胸元を隠す衣服は破かれ、白い乳房がむき出しになっている。 そして、俺の腰の前に、春香の陰裂がある。 へその下から彼女の体にぴたりと体を合わせて、少しずつ腰を近づける。 亀頭を春香の入り口に当てて、そして、一気に腰を突き出す。 春香の口から、叫び声が飛び出した。 その声が、まるで誘っているような響きに聞こえてくるほど、俺はおかしくなっていた。 腰を突き出して、肉棒を深く突き刺し、一気に引き抜く。 「ご、ぉっ、し……いん…ああ! …さ……ふぁっ!」 突き出すと春香は歓喜の声を上げる。 引き抜くと、切ない声を上げる。 ――たまらない。 止まることなど、熱に浮かされた体では考えもつかなかった。 じゅ、じゅ、という音が聞こえてきた気がする。 だが、俺には春香の喘ぎ声しか聞こえない。 そして、大きく、理性の壁を破壊する流れが股間に集中して――俺は果てた。 396 名前:ヤンデレ喫茶の事務所にて ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 02 53 47 ID oKsZ0FHK そのあとは、よく覚えていない。 欲望が爆発して、そのときの記憶を頭と体から、おしやった。 その後で、体を包む倦怠感とともに目を覚ましたとき――俺は、椅子に縛り付けられていた。 : : : 俺の足首とパイプ椅子は、手錠でつながれている。 そのため、腰を浮かすことはできても歩くことはできない。 初めて自分の置かれている現状を見て、俺は「監禁されている」と理解した。 だが、特に不満なことはない。 用を足すときや、風呂に入るとき、服を着るときには、春香ガ手錠を解いてくれるからだ。 できれば食事も自分の手で食べさせて欲しいものだが、嬉しそうな春香の顔を見ていると、 何も言うことができなくなって、俺は春香のなすがままになってしまう。 そして、今もそう。 たったいま事務所にやってきた春香が、俺の前で両手を合わせながら、語りかけてくる。 「ご主人様。ごきげんいかがでございますか? 今日も、お二方が結ばれましたよ。 男性に手錠をかけて、ベッドに押し倒し、目隠しをしたときのあの女性の表情は、 本当に幸せそうで……私も、思わずご主人様に同じことをしたくなってしまいましたわ。 そうそう。また明日も一名、この喫茶店で働きたいという方がやってくるそうです。 きっと、彼女たちも結ばれますわよ……私達のように。 うふふふふ……本当に、本当に、なんと楽しいことなのでしょう。 お父様のおちからが冴えている、ということですわ。 このままゆけば、きっと……私達はさらに素晴らしい存在になれますわ。」 『――――うふふふふ』 女性の笑い声が聞こえてきた。 その声は、俺がこの椅子に座ってから、何度も聞いてきたもの。 そして、俺はこの声を聞くために、ここに座っている。 そして、これからも座り続けるだろう。この喫茶店がここにある限り。 終 ------- こんな感じです。 店長に期待した人。ごめんなさい。 397 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 03 41 45 ID 1Q9taPxk 一番槍GET!GJ!店長は副店長の傀儡か 398 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 03 43 41 ID uCtXdUKl 二番槍GET!GJです。地味に店長も病んでる 399 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 06 05 16 ID yLs1zJQn まさか誘い受けとは・・・。GJ! 400 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 06 27 29 ID Lj9glFke まさか薬を盛られてたとかは無いよな・・・・ 401 名前:ヤンデレ喫茶訂正 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/06(金) 07 38 39 ID oKsZ0FHK 396 用を足すときや、風呂に入るとき、服を着るときには、春香ガ手錠を解いてくれるからだ。 用を足すときや、風呂に入るとき、服を着るときには、春香が錠を解いてくれるからだ。 でした。申し訳ないです。 402 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 09 29 41 ID 91sWNAal 400 違うのか? てっきり薬盛られたから襲ったんだと思ってた 403 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 10 10 39 ID dzuS8Sa8 結ばれたというよりは監禁された表現が正しいのではww 404 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 10 35 50 ID wP2+pi59 403 それは「愛」だから結ばれるで正しいのさ 405 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 12 34 31 ID 1Yx8SgSg GJです 個人的には薬(媚薬?)盛られたと思ってる。それっぽい描写もあるし まあ、その方が嬉しいって事もあるがw 406 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 12 37 10 ID Lj9glFke 402 いや、わざわざ書くって事でその意図を察してくれると嬉しかった 407 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 15 37 54 ID xv/RXmbz ようするに襲った理由は・・コーヒーの中に薬が入っていたからかな? 408 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 21 31 13 ID FkjBvFGN ふと妄想した。 409 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 21 36 27 ID FkjBvFGN すまん、途中で送ってしまった。 意中の彼を監禁するために、ヤンデレ喫茶に勤めたはいいが、そこのメイドに気に入られて逆に監禁される…。 というの妄想をしたんだ。 410 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 21 46 15 ID yLs1zJQn 百合スレに行け 411 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 22 21 34 ID wP2+pi59 410 意中の彼→彼女 に変換すれば問題なし 412 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 22 26 10 ID 23dpMhH8 主人公に協力すると見せかけて、実は…というやつか 結構いいかも 413 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 22 54 08 ID Jkl2MzdC メイド喫茶を執事喫茶にすればいけるんじゃね? ただの監禁レイプになりそうだが 414 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/06(金) 23 13 46 ID wP2+pi59 413 妙案だな……………………………………と言いたいが、店長は恋する乙女だけの味方さ!! 415 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 00 47 32 ID nA+rX4nK 別に男のヤンデレが駄目とは言わんが、監禁とかとなるとウザイというのが本音だな 416 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 00 54 36 ID qekcZacK 百合でも歓迎。嫌ならスルー 417 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 00 59 30 ID JZkh7eRL 某スレに名前出されたせいでこっちにも流れてきた? 418 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 10 13 05 ID E8jGwZ4Q 417 嫉妬SSスレのこと? 419 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 12 57 29 ID RASyGi3T どうでもいいさ。 二人だけの楽園を邪魔する存在には、例外無く血の裁きが下されるのだから。 420 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 16 35 38 ID LUDJ3kz8 396 GJ!! これで子供ができたら無限ループの悪寒。 421 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 17 53 24 ID LXhQbhJd とりあえずこの喫茶店はどこですか? 422 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 18 10 30 ID nA+rX4nK 君の心の中にあるのさ 423 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 18 59 54 ID dIQDsftg 421 君の周りに恋する乙女がいたら、後をつけてみよう。終着点にそれはある。 結界として秘密保持のために消されるかもし(ry 424 名前:慎 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/07(土) 19 09 12 ID okgjui4L 421 君が心からあってほしいと望めば、ヤンデレ喫茶は君の前に現れるのさ。 さて投下。2ルート第2話になります。前回の続き。 425 名前:慎 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/07(土) 19 10 15 ID okgjui4L 俺は家に帰り、絵里のうちへ行く準備をしていた。だが、なんとなく気分が浮かない。 服を用意し、今日はご飯はいらない、泊まってくることを母につげ、家を出た。 坂ををくだり、登り、下ってまた登る。 どうしてこうも複雑な地形をしているのか最近恨めしく思えてきている。 この近辺は山が二つあり片方の山に俺が通う高校、そして対面の山にうちがある。 高さはないが勾配が急で、そのせいか、うちの高校は自転車通学が禁止されている。 そもそも校則で禁止されなくても誰がするか!と言うぐらいきつい登りで、そんな坂を延々のぼった先にうちの高校はある。 生徒はバスで通学するのだが、乗り遅れたが最後。きつい登りを必死で登る必要がある。 あるものはタクシーを使うが、ばれると怒られるので模範的な生徒は使わない。 まったくなんでこんなところに学校を建てたんだか。 通学にするしても、いたずらに体力を消費するだけだし、いいことなんて一つもない。 足腰が鍛えられるといっても、運動部でない俺が足腰鍛えたってどうしようもない。 そう、まったく意味がない。坂を登り下りするという行為も、この思考もまったく意味がない。 そもそも意味があるものとは?と言われると困る。だが今の俺にはまったく意味がない。 何故こんなことをしているかと言うと、俺の頭の中がすこし困ったことになっていたからだ。 どういうことかというと、俺の頭の中で奈津子の最後の言葉がリピートされている。 ”駅前で待ってるから” 表情から声質まで完全に再現されたこの言葉が、ずっと俺の脳内をリピートしている。 俺は今から絵里のところへ行くというのに、奈津子のことばかり考えてしまっている。 そのことを忘れるための思考なのだ。 そう絵里のことを考えなきゃいけないけど、よくわからないができないから、別のこと考えて気を紛らわしているだけ・・・だけなんだ。 さて次は何を考えよう・・・と思っていたら絵里が住むマンションに着いてしまった。 絵里が住むマンションは少し変わっている。下の階は全部駐車場で、3階分ある。 そのためのエレベーターにまず乗り、駐車場の上の4階まで上がる。 そこからは今度は居住階用のエレベーターに乗り換える。階段でいけば一発なのだが、 絵里の住んでる所は10階だし、そんな体力は残ってなかった。 1004号室。 絵里の住む部屋である。 すぅ、と一息すって俺はインターホンを押した。 ピンポーン 「ハーイ♪」 中から明るい声がする。 ガチャ 「慎君やっときた~♪」 明るい声を出しながら絵里がドアを開けてきた。 426 名前:慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/07(土) 19 11 40 ID okgjui4L 「よう」 普通に挨拶をする。 「遅かったね、もう夕方だよ?」 確かに、もうそろそろ6時だ。 「あぁ練習しててさ。下校時刻ぎりぎりまでいたんだ。だから遅くなった。」 「へぇ~偉い偉い♪ぎりぎりまで練習だなんて慎君はまじめだね♪」 そのまま俺の頭をなでなでしてくる。今日の絵里は明るいな・・・ いやいつも確かに明るいんだが、いつもと違う感じの明るさ・・・ 異質な感じがする。来てくれて嬉しいにしてもこのハイテンションは異常だ そんなに不安だったのだろうか・・・なんにしても今日の喜び方は・・・すこしおかしい。 気のせいだろう。というか俺の自惚れだ。さて、変なことは考えないで、早速本題に入ろう。 「それで、今日は何の教科教えてほしいんだ?」 「え~と・・・全部♪」 「全部って何だよ全部って。」 「全部は全部。どうせ今日うちに泊まってくからいいでしょ?」 そう、俺はここに泊まっていく予定・・・だがまだ俺の頭から奈津子の声が離れない。 ”待ってるから” 俺は・・・ 「慎ちゃんどうしたの?」 絵里が心配そうに見つめてく聞いてくる。 「いやなんでもない。うん少し考え事してただけ。」 「・・・駄目」 「・・・へ?」 「考え事なんかしちゃ駄目。あたしのことしか考えちゃ駄目!」 「じゃぁ勉強教えれないじゃないか!」 「あ、そうだね。じゃぁ勉強のことは考えてもいいよ♪」 おかしい・・・キャラが違いすぎる。そしてもう一つ。 まとっていたオーラが、雰囲気が、一瞬変わった気がした。 不安、憎悪、嫉妬・・・何かは分からないが一瞬だけ負の感情とでもいうんだろうか・・・ そんなものが絵里の周りに見えた。 すぐになくなったが、そんな今日の絵里の様子に俺は疑問をぬぐいきれなかった。 「じゃあじゃあまずは数学からやろうか」 絵里が話題を変えるように提案してきた。 特に異論はない。まずは家庭教師役をこなすことにする。 それならば特に問題はない。そう、ない。皆無だ。ナッシング。 問題ないことを自分になぜか言い聞かせながら、 俺は絵里に招かれるままに、部屋に入っていった。 「さぁ~やるぞー!」 やけに明るい絵里に疑問を感じながら・・・ 427 名前:慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/07(土) 19 13 27 ID okgjui4L 「はやく~」 絵里が手招きしてくる。どうやら自分の部屋に入れとのことのようだ。 何度か通ったことはある。 しかし、小学生のころの話だ。中学生になってからは絵里のマンションには行ったことがなく、 俺が部屋に入ると絵里は部屋を出て行った。 今回が久々の訪問になるわけだ。どうやら部屋の場所は変わってないらしい。 この部屋でよく遊んだものだ・・・女の子と遊ぶなんてことは確かに数は少なかった。 その数少ない一緒に遊ぶ女の子が絵里だった。 思えば、絵里と一緒にいるときはいつも楽しかった。 いつも絵里と一緒にいたいなと思い、この感情が恋なのかなと思っていた。 しかし、今回のことで、いやもう前々からかもしれないが、本当に自分は絵里に恋をしているのか? という疑問が心の多くを占めるようになっていた。 もしかして俺が恋に落ちているのは奈津子のほうじゃないのか? さっきから俺がぐるぐるとした思考を続けてるのは奈津子のことが気になって仕方ないからだろ? そう、ずいぶん前は疑念だった。ついさっきは、否定したかった。しかし今は確信している。 俺は・・・奈津子のことが好きだ・・・ 絵里とは・・・友達的な感情・・・そう友達だ。一緒にいることは楽しい。楽しいが何か違う。 そう、俺は奈津子のことが・・・っ! でももう遅い。いまさら気付いても、俺は絵里のもとにいる。 今日という日をうまくやり過ごすしかない・・・そう俺は思い始めていた。 「慎く~ん♪」 絵里の声が聞こえる。さて、どうやって何事もなくすごすか・・・ 「何だ?」 「ご飯は~?」 「まだいい」 「お風呂は~?」 「それもまだでいい。絵里、お前ちゃんと勉強する気あるのか?」 「あるよ~。でもさ、ほら、おなかがすいて勉強できなくなったりしたら大変じゃない? すっきりして勉強したほうが、効率よくない?そう思って聞いたんだけど」 「おれはやるべきことやってすっきりさせるほうがいいと思うな。」 「う゛~」 「・・・勉強しないなら帰るぞ。」 「・・・分かった」 絵里はしぶしぶながら従ってくれた 「じゃあ数学から。問題集は?」 絵里がすっと出してページを開く。 さぁお勉教タイムの開始だ。 428 名前:慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/07(土) 19 14 21 ID okgjui4L 絵里の高校は、ここからバスで40分くらいかかるところにあり、女子高である。 ワンピースタイプで黒タイツという露出を抑えた制服で、キリスト教系。かなり厳しい校風である。 その昔は、男子とは友達としても付き合うことは許されず、 お兄さんと歩いてるところを見られ学校から処分をくらった生徒もいたそうだ。 いまはそんなことはまったくない。じゃなかったら今俺はここにいない。 成績のレベル的には俺が通う高校とは、何段階かは落ちる。 うちの地元では私立と公立の差は、果てしなく広い。 絵里が通ってる高校は大学を持ってる高校で、そのままその大学へ行くこともできるので、進路にさして困らないだろうが。 問題集のレベルはやはり高校のレベル差を反映してか、俺が使ってるものより少しやさしめであった。 いやむしろ俺の高校がやたらと高いのをさせてるだけかもしれないが。 先生方に過度の期待って言葉を教えてやりたいもんだ。俺には少し荷が重過ぎる。 まぁ絵里が持ってきた問題集ぐらいなら、 成績中間の俺でも教えることにはまったく問題はない。 教え始めてから気づいたんだが、絵里の理解力はすごい。俺が教えることを次々に理解していく。 この理解力を、受験のときに発揮すればよかったんだろうが・・・ いまさら何を言っても手遅れか。そう今さらだ。 絵里の抜群の理解力も手伝ってか数学、英語、と順調にこなしていき気づけば九時になっていた。 「もう九時だね」 「え・・・あーもうそんな時間か。よくがんばったな。」 もう九時か・・・ ふと不意に、本当に不意に奈津子の言葉がよみがえってきた。 ”いつまでも待ってるから” まさか・・・あの野郎・・・そんなことあるはず・・・ 俺は急に不安に襲われる。 まさか今でも、駅前で待ってるというのか・・・? 俺が来ると思って、俺が来ることを信じて・・・。 いいのか俺?ここまで思ってくれてる女の気持ちにこたえなくていいのか? 今日さえやり過ごせばなんて思っていいのか? もし、待ってる間に奈津子がトラブルに巻き込まれたら、一生後悔することにはならないか? 奈津子のもとへ行かなくていいのか? 答えは・・・明白だ。行かなければ。 一刻も早く行かなければ。何かが起こってからは遅い。 ちょうど勉強も一段落着いたころだ。抜け出すには絶好のチャンスのはず。 どう絵里に切り出すかを考えなければ・・・ 「ねぇ」 俺がいかにして抜け出すかを考えてると絵里が声をかけてきた。 「さっきから何考えてるの?」 さっき俺が一瞬だけ感じた負のオーラを全開にして。 429 名前:慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/07(土) 19 15 59 ID okgjui4L まずい。さっき感じたときもそうだが、このオーラを出してるときの絵里は・・・ 絵里であって、絵里じゃない。 今日の昼の奈津子のいろんな表情が混じった表情を見たときよりもさらに違和感を感じる。 もっというなら戦慄だ。本能が恐怖を感じている。 なんとかしなければ・・・とにかく逃げ切るしかない。 「い、いやなんでもない。うん、別に。」 「嘘」 絵里がぽつりと言う。その顔からはだんだんと表情が欠落してきている。 「いや本当になんでもないって。ところでさぁのど乾いてないか? 俺からからでさぁ。アイスも食べたいなぁなんて。そうそのこと考えてたんだ。」 「アイスならあるよ。飲み物もあるよ。」 「いや、ほらそこのロー○ンで最近売り始めアイスがあるんだが、あれが気に入っててなぁ 買いに行きたいんだが・・・」 「駄目」 「そこを何とか・・・」 「ならあたしが買いに行ってくる。何がほしいかメモして」 「いやほらちょっと外の空気でも吸いたいというか・・・散歩したいというか」 「ねぇ・・・慎君もしかして帰りたいの?」 ばれた。というかばれるか。ここまで必死だと。 「だったら?」 開き直ってみる。が、失敗だった。絵里の目が・・・今の一言で完全に死んだ。 「なんで帰るの?何か不満?慎君のいうことは何でも聞くよ?ねぇ何で?」 「いやちょっと帰らなきゃいけない用事があってな。」 「そんなことさっきまで言ってなかったじゃない。」 「今思い出しだよ。うん帰らなきゃ・・・」 「駄目よ・・帰っちゃ駄目・・・駄目、駄目・・・」 ふらりと立ち上がる絵里。そうして俺のもとへふらふらとやってくる。 来るなり胸倉につかみかかってくる。死んだ目のまま話しかけてくる。 間近で見ると、やはり表情が怖い。 「嫌よ、いまさら帰るなんて。そんなの許さない。」 「しかたがないだろう、帰らなきゃいけないんだから。」 「嫌って言ってるのが分からないの?」 「わがまま言うな。」 「嫌。嫌だよ・・・やっと、やっと、やっとチャンスが来たのに・・・」 「じゃ、じゃあこの辺でな・・・またお泊りは別の日にな?いいだろそれで」 強行突破を腹に決めた。 と、とたん俺は絵里に押し倒された。 「・・・」 430 名前:慎太郎の受難2ルート第2話 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/07(土) 19 16 42 ID okgjui4L 「おい絵里苦しいぞ。離せ」 「慎君がその気じゃないなら・・・」 「じゃないなら?」 「さっさか犯ってしまえばいいんだ♪」 はぁ?!ちょっとまてと言うまでもなく、絵里は着ていた部屋着を脱ごうとし始めた。 「ちょ、ちょ、ちょっとまて。意味が分からんし、流れが分からん。」 「まぁまぁ♪気持ちいんだからいいじゃない♪おとなしくあたしのものになりなさい♪」 あっという間に上を脱ぎ終わる。と、俺のズボンに手をかけ始めたじゃないか! ここで犯されるのは本望じゃない。俺は力を出して、絵里が俺のを出すために 一瞬腰を浮かせたのを利用して、抜け出した。 「きゃ!」 絵里はそのまま、仰向けになって倒れた。 「いたた・・・」 腰を押さえ仰向けのままで、しばらく立ち上がれない絵里。 その隙に荷物をまとめてしまう。 さぁ出ようというときに、またもや絵里が立ちふさがってくる。 「駄目じゃない暴れちゃ・・・おとなしくして♪」 その表情は先ほどとは違い、何かこう・・・穏やかな目になっていた。 「慎君の中には、悪魔が住んでるんだよ。私のことを嫌いにする悪魔が。 そんな悪魔、ちゃっちゃか追い払わなきゃ♪」 「追い払うって、どうやって?」 「私とHすれば追い払えるよ♪さぁ!」 「さぁ、じゃねぇよ!お前がやりたいだけじゃないか!」 「違うよ。これは儀式なの・・・2人が結ばれるための、大切な、大切な儀式・・・さぁ!」 さっきの転倒で壊れたか?だが俺の決心に変わりはない。俺は行く、駅前へ、奈津子のもとへ。 「絵里・・・すまん、通せ!」 強行突破を決め込んでいた俺は、思いっきり真正面に突っ込み力づくで突破した。 しがみつく絵里を振り切り、部屋を出る。 エレベーターは4階。遅い。俺は階段を猛スピードで降りる。 マンションを出て、一番近いバス停へ向かう。時刻表を見る。 幸いにして、バスはすぐ来るようだ。 やってきたバスに乗り込み、俺は速くついてくれと思いながら、バスの流れる景色を見ていた。 奈津子・・・待っててくれてるのか・・・? なら、今すぐ行くから、もう少し辛抱してくれ。すぐに、すぐに行くから。 夜は更けていく・・・そして時間は残酷にもだんだんと過ぎてゆく・・・ はやる気持ち。 遠い駅。 時間よ、止まってはくれないのか? 431 名前:慎 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/07(土) 19 18 08 ID okgjui4L 投下終了です。前にも告知しましたが、諸事情により鳥変えました。 ご了承ください。 432 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 20 08 00 ID dIQDsftg 待ってました! 鳥?そんなの気にしない! 433 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 20 22 16 ID nA+rX4nK ザ・ワールド! スンマッセン言ってみたかっただけッス…… それはともかくGJッス! 主人公の流されない性格が好ましいッス 434 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 21 45 30 ID sgWa/GIZ こんなの愛情【あいじょう】じゃない!ただの異常【いじょう】だ!! 435 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 22 00 20 ID dIQDsftg 434 坊主、大人になったらわかるようになるぜ 436 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/07(土) 22 13 29 ID DleaXnrW 435 お前カッコイイな 437 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/08(日) 00 27 06 ID v85lzZEU 433 いやいやいやいやいや、流されていないように見えるが、優柔不断さが垣間見えてるような・・・。 以前にハッピーエンドと言っておきながら、バッドエンドのフラグが立ちまくってる気がする。 438 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/08(日) 12 07 39 ID yypZ4o+7 サイ娘の異常な愛情 または私は如何にして正気であるのを止めて彼だけを愛するようになったか だぁあっ、435の前では霞む( A`) 439 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/08(日) 16 38 18 ID 0+lgzImK キモ姉&キモウト小説を書こう! http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176013240/ 440 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/04/09(月) 13 35 10 ID XQlaIcYs 俺的キモ姉の条件、キモく美しく。 441 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/09(月) 14 22 06 ID 0nKh07st キモく犯しく美しく 442 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/09(月) 14 30 31 ID tkIqVqTo おおっ!まとめサイト更新されてる 阿修羅氏乙カレーです! 443 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/09(月) 14 31 10 ID tkIqVqTo すまん激しく誤爆した 444 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/09(月) 16 18 29 ID s1IFIC97 442 期待してしまったではないか 445 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/09(月) 16 19 10 ID s1IFIC97 442 期待してしまったではないか 446 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/09(月) 16 52 48 ID oh2eAwB7 444-445 どれだけ期待してたかはよーくわかったからもちつけw てか俺もちょっと期待しちゃったorz 447 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/09(月) 21 14 07 ID frP+UqEQ 俺もかなり期待したorz 448 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/04/10(火) 02 36 42 ID vgC7m8Qf 投下します 注意 フタナリです 「あっ…、私は否命、秋月否命。宜しくね、凛ちゃん」 「りっ、凛ちゃん!?」 凛はその言葉を、まるで聞いた事がないかのようにオウム返しに言った。 「えっと…違った?」 「いえ、合ってるわよ」 「…………」 「…………」 自己紹介を終えた二人の間に沈黙が訪れる。本来ならば気まずいはずの、この沈黙を凛 は楽しんでいるようだった。顔には相変わらずのニヤニヤ笑いが浮かんでいる。一方、否 命は落ち着きなく視線を動かしながら、沈黙に耐えられずに言葉を探していたが… 「~~~~~~~!!」 凛がなんでニヤニヤ笑っているのか知り、思わず顔が真っ赤になった。 凛は未だに否命の股間で硬直し、ビクッ、ビクッと震えながら精液の残滓を放出してい るマラを眺めていたのだ。否命は咄嗟にスカートでマラを隠したが、それでも尚マラはス カートに染みを作りテントを張る形で自らの存在を主張していた。覆い隠されたことで、 妙な淫猥さがそこにある。 否命は凛の顔を見て、隠したことを後悔したが、隠した以上、まさか再び露出させるわ けにはいかない。しかも、なぜかそんな状況においても否命のマラは雄雄しくそそり立っ たままであった。そしてスカートの染みはどんどん広がっていく。 「凛ちゃん…何処を見ているの?」 半ば無駄だと分かっいたが、否命は恐る恐る訊ねてみた。 「気になる?」 あくまで視線はマラに注いだまま凛は言う。 「うん」 「どうしても?」 「どうしても…」 「ごめんなさい。だけど、私は貴方のマラが気になって仕方ないの………どうしても」 「~~~~~~~ッ!!」 叫びたかった、否命は思い切り叫んでこの、同年代の少女に射精直後のマラを見られて いる…という羞恥プレイを誤魔化したかった。 「あら、そんなに赤くならなくても大丈夫よ、秋月さん。気にするほど、貴方のマラ、大 きくないもの」 「はぅぅ…」 人の気も知らずに…いや、凛のこの言葉は明らかに人の気を知ってるからこそのもので あろう。そして事実、否命の陰茎は12センチをやや下回る大きさであるから、日本人の 平均より下位に位置している。世界的に見ても、この長さは短小の分類である。 「って、大きい、小さいの問題じゃないもん!!」 そう真っ赤になりながら抗議する否命の様子を見て、凛はわざらしく小首を傾げ、口に 人差しを当てて思案にふける…ふりをする。それから「嗚呼」と頷いて、 「そういうことね。それも大丈夫よ。だって、貴方の12㎝小型キャノン砲には、砲身を 起こしても、ちゃんと包皮セーフティーがかかっているじゃない。機密は守られてるわ」 そういう問題でもなーーーい!…、と云い掛けて否命は固まった。重大な事に気づいて しまったのである。 449 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/04/10(火) 02 37 19 ID vgC7m8Qf (って、凛ちゃんはずっと此処にいたんだよね?ということは、私がパソコンで×××を 見ていたところも、マラを×××しているところも見られて…あっ、あぁぁぁぁ!!) 「そっ、それで、なっ、なんで凛ちゃんが私の家に?ていうか、どうやって入ったの?私 ちゃんと鍵しめたはずだし…、防犯ブザーだって…」 否命は羞恥を隠したい一心でここまで一気にまくしたてた。 「なんでって、普通に貴方…秋月さんと一緒に家に入っただけよ」 「えっ…?」 「だって秋月さん、私が声をかけようが、手を翳そうが気付かなくて…」 「ごめんなさい…」 「いいのよ。そのおかげで灘神影流奥義・脱骨術を駆使したフタナリ美少女によるアクロ バティックオナニーショーを見ることが出来たのだから」 そう言って、凛はニッコリ笑う。そう言われて、否命は心の中で絶叫をあげる。 (神様、私、泣いてもいいですか?) 否命は既に半べそをかいていた。 「それと秋月さんに話したい事が後二つあるのだけど、いいかしら?」 「うん…」 (まだあるの?) 否命は、もし下が地面であれば、必死になって穴を掘って埋まろうとしていただろう。 「秋月さんには残念だけど……」 凛は始めて視線をマラから逸らして…、 「どんなに頑張っても、貴方とゴミ箱の間に子供は出来ないわよ」 ゴミ箱に積まれたティッシュの山を見ながら言った。 「あ、愛は性別や年齢、有機物と無機物の壁だって超えられるって沙紀さんが…」 「それと、もう一つ!これが本題よ!!」 否命の抗議…ではなく反論を突然、凛は大声を出して遮った。 「なっ、何?」 「財布、返して頂戴」 そう言われて、否命は自分が凛の(?)財布を持っていたことを思い出した。 「………」 「今度は聞こえているのでしょう?さぁ、財布を私に渡しなさい」 「………」 「なんで黙っているの?」 「………」 「秋月否命さん、ちゃんと聞こえているわよね?じゃあ……財布を渡せ!今すぐに!」 450 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/04/10(火) 02 39 52 ID vgC7m8Qf 最後に込められた言葉の力強さは、衝撃的でさえあった。それは相手の意思を一切、認 めない命令だった。否命はあまりの凛の変貌ぶりにただ呆然とした。凛の目は見開き、異 様な輝きさえ帯びえている。 二人の間に沈黙が訪れた。しかし、先ほどの沈黙とは違って凛の顔にニヤニヤ笑いは浮 かんではいない。代わりに凛は否命に、爬虫類の如き冷酷な視線を向ける。 戯れの時間は終わったのだ。 凛と目を合わせられた否命は、自分の背筋が凍えるのを感じていた。否命は、ほとんど 反射的に目を逸らそうとしたが、どうしたわけか否命は凛の瞳から…この可憐な少女には 似合わない、何処か汚い瞳から…目を逸らす事がどうしても出来ないのだ。 そうして否命は、凛の瞳が本当に爬虫類と同じ金色をしている事に、気がついた。 恐怖があった、否命の中に、この瞳から目を逸らしたら、何か起きるではないか…とい う予感にも似た不安が渦巻いているのである。 凛の視線にはある種の鋭さがあった。人にまるで、喉に刃を突きつけられているかのよ うな威圧をかける類の鋭さである。そして凛の様相は相手の態度によっては、その刃を喉 に突きつけるだけでは終わらないと、確信させる凄みがあった。 否命と同年代の少女にしては異様なものがある。凛は恐らく、何度もこういった事をし ているのだろう。そうでなければ、このような目を意図的に作る事が出来るはずもない。 そして、その経験こそが凛の金色の瞳に凄みを与えているのだ。 しかし、それでも尚、否命はオドオドしながらも 「やっぱり駄目だよ…、この財布はあの人の…地回りさん(?)ものなんだから」 っと、凛の要求を突っぱねた。凛の顔が驚きで歪んだが、それは一瞬の事である。凛は 腰掛けておいたソファーから立ち上がり一歩、否命へと距離を縮めた。 「今は私のものよ」 「でも………」 「渡さない…というのね」 「………うん。ね、ねぇ、凛ちゃん、この財布、あの人に返しに行こう?」 「貴方は…」 そう言って凛は、また一歩、否命のほうに歩む。 「そんな事して、五体満足で帰れると本気で思っているのかしら?」 「でっ、でも、やっぱり、こんなのおかしいよ」 消え入りそうな声で、泣き出しそうな目で否命は言う。否命の姿はこれ以上ないほど、 脆弱で、今にも崩れてしまいそうである。 それでも健気に頑張る否命の微笑ましい姿を見て、凛はつい口元が歪んでしまう。凛は 否命に好意を感じ始めていた。否、凛は否命をからかった時の反応を見て、はっきりと心 が和むのを感じていた。もっとも、本人には迷惑な話であろうが…。 そして凛がこのような気持になれるのは、この場の支配権を完全に握っているからであ る。だからこそ、凛は余裕をもって否命の事を観察し、可愛いと思えるのだ。 だが、これとそれは全くの別問題である。凛は直ぐに、歪んだ口を直して言った。 「そう、貴方はどうしても私に財布を渡さないというのね」 それから一拍おいて、クスリっと凛は悪戯っぽく笑うと、 「私に、貴方とゴミ箱の×××な関係を公表されても?」 と、問いかけた。 それは一見、冗談のような言葉でありながら、 その言葉が否命に与えた影響は、凛の想像の及ぶ域を遙に超えていた。 451 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/04/10(火) 02 41 45 ID vgC7m8Qf その言葉を聞いた否命は、身体が電気を打たれたように痙攣し、小刻みにガクガクと震 えだした。否命の顔色がまるで死人のように、みるまに白くなる。否命の歯の鳴る音は凛 にも聞こえるほどであった。 凛の言葉は詰まる所「貴方がフタナリだっていうことを、バラされても?」と言ってい るのである。しかし、冷静に考えれば凛は否命の人間関係など知らないはずだし、、まし てはメガホンを片手に、通行人に片っ端から否命がフタナリであることを叫ぶことなど出 来るはずもない。 だが、否命が冷静に考えられない理由は二つあった。 一つは、否命が凛に迫られ、精神的に磨耗し正常な思考能力が低下しつつある事。 そしてもう一つは、否命の忌まわしい過去が蘇ったことにある。 否命の脳裏に走馬灯のように浮かぶのは、自身の股間に生えているマラ故に、自分の元 から去っていった家族、あるいは家族同様の人間達。 姉の梓…、親戚達…、もう一人もやはり、否命の元から去っていった。 その走馬灯の後、否命の元から去っていなく、そして否命の身体の事を知らない、今や 唯一人の家族同様の人間である沙紀の顔が浮かんだ。 否命が家に厳重な防犯体制を強いているのは、全ては沙紀に自身の秘密を知られたくな いが故であった。 その秘密をばらされる…否命は、つい頭の中で未来をシュミレートしてしまった。 それは頭で考えるだけで、耐えられない悪夢の光景であった。そしてこの悪夢は現実に なってしまうのだろう…、沙紀に自身のマラの事を知られれば……、否命はそう考えてし まった。 そして一度考えると、もうその悪夢から逃れる事は出来なかった。悪夢はヘドロのよう に落とそうとすれば、落とそうとするほど、より内部へ、より深く染み込んでいった。 否命のその想像は明らかに飛躍しすぎたものであったが、忌まわしい記憶が明確に蘇り 強迫観念にも似た感情が身体を支配している中、否命はそれが飛躍した考えに過ぎないと 気付くことは出来るだろうか? 否命の背から恐怖が生温い汗となって滴り落ちる。不安が震えとなって身体を揺らす。 悲哀が冷たさとなって体温を奪う。 452 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/04/10(火) 02 42 37 ID vgC7m8Qf 「ちょ、ちょっと秋月さん、大丈夫なの?」 明らかに戸惑っている凛の声。その凛の声に振り向いた否命の眼を見て、更に凛は驚愕 した。 「凛ちゃん…、お願い」 「………」 「お願い…、沙紀さんには…絶対に言わないで」 否命は、まるで命ごいするかのような眼をしていた。その顔も形が変わるほ、歪んでい る。 「だ、だったら、早く財布を渡しなさい」 それでも凛は不安を隠し、虚勢を張った。これは凛の望んだ通りの展開であったが、こ こまで劇的な変化を否命にもたらすとは、予想だにしていなかった。 「ねぇ、絶対に言わない!?」 「だから財布を…」 「ねぇ!!」 そう言って否命は凛の腕を掴む。それは少女の力とは思えないほど力強く、そして今に も折れてしまいそうな程、脆かった。 「お願い…、私の身体のことは、沙紀さんだけには…」 否命の声は弱弱しく、言葉は凛の慈悲を請うものである。それなのに、それは凛に対し て圧倒的な強制力を持っていた。 「他のなにをしてもいいの!だけど…」 「分かったわよ、貴方のことは誰にも言わないわ」 「本当に!本当だよね!?」 「ええ、本当よ」 途端、否命の顔がパァーっと明るくなる。 「凛ちゃん…有り難う」 「どういたしまして…?」 否命の、あまりに純粋な喜びと感謝の笑顔に思わず凛は気が抜けてしまった。 「それで…」 っと、その時、言い掛けた凛の言葉を遮るように玄関に仕掛けられた防犯が鳴る。 沙紀が帰ってきたのだ。 投下終わります 453 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 08 05 19 ID yIJWsQe3 自分がナニしている現場を見られたって……俺だったら立ち直れないよorz 454 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 11 00 26 ID rqFERMGb 百合板でやったればええやん(´・ω・`) 455 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 15 06 26 ID LIP3Yfkf 454 頼むから、某スレに帰ってくれ。 ここは初期の頃から百合モノ投下OKなんだよ。 456 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 15 58 01 ID rqFERMGb ふーん、専用板があるのにね。 457 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 16 03 46 ID LIP3Yfkf 百合板にSSスレなんて有ったっけ? SSを語るスレしか見たことないぞ? 458 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 16 13 17 ID rqFERMGb 801は隔離されて何故百合はOKだというのだ ワガママにしかならんけど苦手な人もいるってことを知って欲しい 459 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 16 19 43 ID KIfivyrL 角煮に関連スレがたったので報告 ヤンデレ総合スレ http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1176178896/ 460 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 16 22 47 ID LIP3Yfkf 458 ◆HrLD.UhKwAの部分を選択 → NG処理 はいこれで終了。 あなたのブラウザ上には表示されなくなりました、っと。 459 thx 461 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 16 33 42 ID rqFERMGb 百合板にSS投稿したらいかんちゅうルールはないでしょ? 数字板みたくヤンデレ百合ーとかスレ立てやって好きなだけやりゃあいいのに 住み分けってできないのかな、801の人とは違って 言いたいこと言ったからもういいや ここまでの俺の発言なかったことにして すまんかった 462 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 17 02 27 ID umqJ4Mab 461 ウセロカス 463 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 18 19 11 ID PwvTECI2 俺も特別に百合が好きなわけじゃないが、テンプレにヒロインって書いてあんだろ?だから百合はおk なんでそこでやおいが出てくんだよ 464 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 18 20 56 ID 9jBB63c3 463 あれよおいちゃうねん 見苦しいホモ小説ハムニダ 465 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 18 38 52 ID rqFERMGb 別にやおいと変わんねえと思ったもんでwwwwww 女だったらいいんすねwwwwwwサーセンwwww 466 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 18 41 04 ID coJAkc59 百合って分かってんだから読まなきゃいいじゃん 467 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 18 50 10 ID jAa2jYt2 ヤンデレ喫茶で、自分を監禁してくれるメイドさんを見つける方法。 友人と一緒に喫茶店に行き、ワザとコーヒーなどをこぼさせる。 それを見て、上書きしようと、自分もコーヒーをかけようとするメイドが、あなたの運命の監禁主(ひと)です。 468 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 18 56 33 ID k7sjF5at 467 それなんていう「上書き」の加奈? 469 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 19 12 00 ID +563xTiT ヤンデレ喫茶の女性視点も読みたいが・・ まあ、楽しみに全裸で待っています 470 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 19 24 01 ID RBYrLGuO 女の子がヤンデレしてりゃ何でもいいってのか。 そりゃ権利の濫用ってもんだろ、アホらしい。 471 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 20 33 07 ID OJ73W12z ヤンデレは何も気にしないからヤンデレなんだよ 472 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 22 55 24 ID rqFERMGb 471 そいつは微妙に違うな 「わたしのこと以外、なんにも気にしちゃ駄目だよ……?」 つまりどちらかといえばヤンデレの獲物の方こそが何も気にしなくなるものなんだよ!! 473 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 23 19 22 ID w5ohQDxF 448 ゴミ箱に二回やられたw GJ それと名前と言葉遣いと行動及び今回の(爬虫類)と(金色の目)で確信したんだけど、凛のモデルってグリーヴァス将軍? なんか、気になってしょうがない。 474 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 13 57 41 ID iu2pnztU スレの雰囲気…まことに悪うなり申した 475 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 15 57 55 ID 0B3EMRDf 空気悪い空気悪い言うよりその悪い空気をズバッと変えるような話題を提案する方が有意義だと思うんだ兄さん! 476 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 16 16 42 ID lVF54DiY 475 あまり上手くないけど、ネタ投下 「ヤンデレについて」 南條範夫 ヒロインの感情が極端にはしるところにヤンデレはうまれる。 問題が無く、日常生活が平穏に営まれているところにはヤンデレはあらわれない。 しかし、ひとたび問題が起こり、社会や世間、とりわけ人間関係がその問題を 和らげることができず、その状況の中で人間の感情が極端にはしる時、 あらわれてくるのはヤンデレだ。 ヒロインの感情が極端にはしる場合はさまざあって、例えば三角関係などもそうである。 私がヤンデレの女房などを小説にする場合には、三角関係を描くことになるが、男の、ヘタレの問題を 小説にする場合には、修羅場を描くことになる。私は、男の、ヘタレのことを多く小説に描いて いるので、「ヤンデレ」が当然多くなる。 ヒロインの感情がはっきりと判るのは、病んだ時である。 ヘタレ男も一応の優しさを示す。しかしそれはどこか的外れもの、かえってヒロインを傷つけるものになる。男の場合、ヘタレになる時 その本性、読者すら敵に回すウザサが出てくる。だから男の世界を現実につかみだすとすれば、それはヘタレだ。 今も、昔からもずっと、世界中のどこでもそうだ。歴史上の問題を何か一つつかんでみるとよい。 そこを突き詰めると必ずヒロインが病んでいくような状況があるだろう。 私は主にヤンデレ小説を書いて来たが、昔の社会というものにはヤンデレがあらわれやすい。 そこでは何もかも病んでいるのだ。戦国時代の武将達のように、対立を和らげる組織がないとことでは、 それぞれが敵対者、泥棒猫と直接にぶつからねばならない。自分が勝つか相手に殺されるかだ。 また一方で、今も、昔も人々は上のものに対しても仲間に対しても、普段は感情を抑えて生きていたから、 一旦それが破れると普段抑えていたものが、みなぶつかり合う。嫉妬、独占欲、変態性欲、狂気、様々なものが一気に噴出し、 感情は極端にはしる。ヤンデレになる。 人間はヤンデレなものである、などということではない。 何か問題が発生した時、それが対立に向かわないように取りまとめようとする人ももちろんいる。 穏やかで、ヤンデレが表面化してこない社会も、歴史上いくらもあった。ヤンデレが表面化しないように しっかり抑えるのが、そもそも恋愛物語の主人公の使命だともいえる。 しかし、問題のない物語、あってもその問題を受け入れ何も事を起こさない、マグロ、 というものは小説にならない。私はそうしたものに興味はない。 私が取り上げるのは、何か問題が生じた時、それを抑え和らげようとするのではなく、むしろ カンカンになってしまう人間、感情を極端にはしらせる、つまりヤンデレである。(談) 477 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 17 19 58 ID N23Uq9oZ >476 ヤンデレ道はシグルイなり。 478 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 19 09 40 ID DwY+RYEG 476 新規にヤンデレキャラを産み出すよりは既存のヤンデレを探した方がいい、まで読んだ。 479 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/11(水) 19 18 18 ID OxTDTRQy わからぬか その者にとっては ヤンデレなど三次のごとき萌えないゴミに過ぎぬと・・・ 480 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/12(木) 22 10 59 ID MSuSMdO5 479 二次オタ・・・・三次もいいぞ・・・・ 481 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/12(木) 22 24 55 ID lWsKybgf 三次ヤンデレか……俺が常駐しているスレのスレ主が そういったタイプの女の子に好かれてやすくてウラヤマシスなんだが。 ちなみに本人「超」がつくほどのお人よしで やはりそういう男に惹かれるものなんだろうか 482 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/12(木) 22 37 07 ID XonC/nqr エロパロのスレで三次の良さを語られてもな 483 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/12(木) 22 38 40 ID lWsKybgf それもそうだな すれ違いスマソ 484 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/12(木) 23 00 43 ID vNLhR3/+ さっきほど、 「男側が病んでるってどうだ!?新しいな!!スゲー!」 と思って書いてみたら、ただの変態SSになったorz 485 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/12(木) 23 05 29 ID VBFDIWWX 読みたい・・・ 投下しないか? 486 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/12(木) 23 10 18 ID nu2K3tEq 男側を病ませるという発想は前からあったが、いざ書くとなると難しいもんな。 だが誘い受けは勘弁だ、今すぐ投下すんだ、さぁ早く。 487 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/12(木) 23 36 03 ID nFzbdN4X 男側が病むと「キモイ」「ムカつく」になりかねないからなぁ。 変態ではなく、狂人方向にもっていければあるいは… 488 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 00 25 44 ID C7YrzPfn 女ヤンデレ化→女と一緒にいるため男も病む。 とかなら大好きだけどな。 少し違うかもしれんが沙耶の唄のカップルなんか最高。 489 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 00 48 28 ID wP/DDkd+ 488 「上書き」なんかは主人公もいい感じに病んでいたな。 490 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 18 52 ID f7lY9HEd 「起立、礼」 「ありがとうございました。」 皆が担任の田並先生に礼をすると一日の終わりだ。 いや僕にとっては一日の『始まり』だろうか、100m走も万年ビリから数えて四人目な僕がカモシカに変身したが如く、全速力で家 路に着く。部活の準備をしたり、仲間とぺちゃくちゃと話をしている連中の間をすり抜け、人が廊下に出てくる前に、無人の野を行く ように、って、無人だからそのままだったっけ、下駄箱へ行く。で、そこから愛用の自転車に乗り、後は十五分間いつもの道を走り 続けるだけだ。 説明すると長いのだが、とにかく今日も全速力で帰るとしますか。 と言うわけで、前述の通り、教室を神速で出て、廊下を走り、下駄箱に・・・、ってところで僕より先に来ていた、北方さんに腕を掴ま れた。 北方さんは僕の隣の席に座っているクラスメイトで、妙に落ち着いているというか、クールな感じで、僕からするととっつきにくい人 だ。そのため、この人とはあまり口を利かない。 「な、なんですか。急いでいるんですよ、僕は。」 急に思わぬところで、思わぬ人に足止めを食らわされて狼狽してしまったのだろう、声が裏返ってしまった。 そんなこちらの様子を見て、彼女はクスリと小さく笑うと、「図書室の片付け手伝ってくれないかしら?」とのたまった。 は、はい?今、なんていいました?図書室の片付け? 僕は今すぐ家に帰って、漫画を読んで、アニメを見て、ネットゲームをやると言う責務が待っているというのに! なんてひどい人だ。 491 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 19 58 ID f7lY9HEd どう扱ったらいいか分からないので、適当に用事があることにしてしまおう。 「え、ちょっと今日は用事があって無理。」 すると顔を近づけてきて、無表情な目をこちらに向けて、 「今、適当に用事のせいにしてしまえ、って思ったでしょう?」 やべぇ、顔に出ていたようだ。まずいな、何とかしなければ。 「いいのかしら?あなたが学校にいろいろと持ち込んでいるの、私、知っているわ。誰に告げ口されたい?」 独特の落ち着いた声に、氷のような冷たさが混じる。 下駄箱に生徒が随分と来ていたようで、北方さんが早く答えてくれないか、と促した。 しかたない、学校に持参しているアレをばらされるよりは、彼女の手伝いもするほうが賢明か。 なんだか、女子に負けてしまってみっともないような感じがするが気にしないことにしておこうか。 「わかったよ、じゃ、手伝いますから、はい。例の事は・・・・。」 「ええ、黙っておいてあげるわ。じゃ、そのまま図書室に来て。」そういうと、下駄箱の近くにある階段を登ろうとしたが、ふと思い出 したように立ち止まり、踵を返した。彼女長い黒髪がフワリとゆれる。 そして「案外に松本君、素直なのね。」と言った。 まったく、人を脅しておいて、何が『素直なのね。』だ・・・。実にこっちはひやひやしたものだ。 ここで、いきなり約束を破って、変えるというのも手なのだが、男に二言はない、だ。 なんて、格好をつけてみるが、単に僕って脅されて使われているだけだよな。 ・・・・・。をいをい、いいのか、これで。 どうするんだ、俺! 492 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 20 47 ID f7lY9HEd というわけで、そそくさと四階にある図書室に向かった。 荷物を持って、四階まで上るのは実に気が引ける。万年文化部の僕の場合、息すら上がる。 ひいひい言いながら、図書室のドアを開ける。放課後、いつもは鍵がかかっているのだが、図書委員の北方さんが先に来ている ので当然すんなりと開くわけだ。 図書室の隅に鞄や荷物類を置いた。 「で、何をすればいいんですかね、図書委員さん。」 「返却された本を私は戻したり整理するから、松本君は箒がけをして。」 素直に掃除用具箱からT字箒を取り出し掃除を黙々と行った。 というのは、最初の数分だけの話。僕にそんな集中力があろうはずも無く、適当なことを考えながら適当に仕事する。 北方さんが図書準備室にいて、こちらの様子が分からないときは箒を動かす手を止めて、こちらに来て、本の整理をし始めたら、 手を動かす。そんな感じだった。 ふと、不覚にもさっき顔を近づけてきた北方さんの容姿を想像した。 よくよく考えると、腰にまで届こうかというほどの長い瀬戸黒の髪に、目鼻立ちの整っていて、人形のように繊細で、落ち着いた容 姿から言えば、かなりがつく美人なのだろう。まあ、顔が良くとも、性格についてはどうか分からないのだが。彼女はあまり他人と 話さないようだが、どうも人の弱みをきちんと握っているようで、あまりよいとはいえないかもしれない。 現に今だって、僕は脅されていたのだから。 いずれにせよ、実に女と言うのは扱いにくい生物だな。 持論を力説し、自己完結させて、頭を上下に動かして頷くところを北方さんに見られていたようだ。 「あら、終わったのかしら?こちらは終わったのだけれど・・・。」 おお、相手が終わったのなら、こちらも無理に掃除を続ける必要はない。 やったぜ!農奴解放令が出た!我々は長年にわたる闘争を終え・・・、北方さんは、こちらを不機嫌そうに切れ長の目で見ている 。 「・・・・・嬉しそうね。」 無言のままでも強い圧力を掛けられているようだったが、口を開けば開いたで実に刺すような痛みが感じられた。 493 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 21 30 ID f7lY9HEd ああ、やってしまったか・・・。そう思ったが、彼女が口にしたのは予想とは別物であった。 「仕事、無理強いしてごめんなさい。私の家、この学校のすぐ傍だから、寄っていかない?お礼させていただくわ。」 「お、お礼?」 思わぬ言葉に鸚鵡(おうむ)返しにしてしまった。 「ええ、そうよ。」 ふと、図書室の時計を見ると・・・・南無三。見たかったアニメの時刻をゆうゆう過ぎてしまっている。それなら、特に断る理由がな いと思って、彼女についていくことにしました。 図書室の鍵をかけ、その鍵を二回の職員室に返しに行き、校門を出た。 僕は自転車を転がしながら、北方さんについていく。いままで、彼女の家については実際に見たことはないのだが、仲間から聞い ていて、それは随分と大きい家らしい。 北方さんの家は学校から歩いて五分ほどのところにあった。 学校の東は小高くなっており、閑静な住宅地になっている。ここは市内でも裕福な人が住んでいる場所の一つだ。 立派な門が堂々と立っており、門柱には重々しく北方と書かれた表札が掲げられていた。 門は開いたままで、内側の様子が見えていたが、手前に池のある広々とした庭があり、その奥に純和風の母屋があり、落ち着い た佇まいを見せていた。 「さ、自転車は適当にその辺に停めて。」 門の前に言われるがままに停める。そうしているうちに当たり前のように北方さんは庭には目もくれずに、ずんずん母屋のほうへ 向かっていた。まぁ、彼女の家なのだから当たり前なのだけれども。 「ち、ちょっと待って。」 こんなところに取り残されたのでは困る。あわてて、彼女の後を追いかける。 まず、母屋の中に入ると客間に通された。さっきの庭に面しており、池とその横の木々が見えた。 十畳ほどの部屋にはテーブルと腰掛がいくつかあり、床の間には掛け軸がかけられ、高そうなつぼが置かれていた。 「へぇ~、北方さんの家って、随分広いね~」と喉元まででかかったが、さすがに失礼だと思ってやめておいた。 それを見透かしてか、クスクスと彼女は笑っていた。 あいも変わらず無表情な笑いであったが、学校でのそれとは違う感じがした。 494 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 22 06 ID f7lY9HEd 腰掛に腰掛けると、彼女は学校のこと、家族のこと、趣味のこと、様々な話をしてきた。学校の彼女とはまた違った一面を垣間見 れたような気がする。 あ、よくよく考えてみると、こんな風に女子の家に行った事って、これが初めてだったっけ。 そう意識してしまい、なんとなく途中から話しにくくなってきた。 「あ、適当にお菓子とお茶持ってくるわ。」 「いや、結構です。気にせずに。」 「そうは言っても、喉、渇いたでしょう?」 「それはどうも。」 「この家に呼ぶ人、そう多いわけじゃないし、たまにだから。」 あまり良く理解できない理由のような気がしたがそれはおいておくことにしようか。 彼女がお菓子を持ってくるまでの間、読書でもしようと、鞄の中にある、本を読む。 マンガ好きな僕もたまには活字の本だって読むことがあるのだ。それもラノベだが。 ・・・・。 ・・・・・・・・・。 七、八分するとお茶と茶菓子を持ってきた彼女が戻ってきた。 「持ってきたわ、和菓子と洋菓子でどちらにしようか、迷ってしまって・・・。」 「え、気を遣わなくて良いのに。」 「で、どっちが好き?」 「へ?」 「だから、和菓子と洋菓子。」 「ああ、お菓ね・・・。うん、洋菓子。」 「そう、残念だわ。」 そういうと、彼女は本当に残念そうな顔をして、緑茶とお茶請けの羊羹を僕の前に置いた。 黙々と北方さんは羊羹を食べ始めた。 テンションはかなり低いようだ。というより、いつもの無表情に戻ったと言うべきところだろうか。 それからいくらか羊羹をつまみ、お茶を飲んだりしながら、いくつか話題を振ってみたのだが、北方さんは「ええ」や「そうね」としか 返さなくなったため、なんとなく気まずい感じになってしまった。 何か彼女の機嫌を損ねるようなことをしてしまったのは確かだろうが、それは何であろうか? さっきの和菓子と洋菓子の質問くらいしか思い当たらない。しかし、何だってそんなことが関係しているのだろう? ふと、彼女の視線が僕のさっきまで読んでいたラノベにいっている。 興味がありそうなので、このラノベについて話題を振ってみた。 話題に食いついてきたので、ノリでいくらか話し続けて、時計が六時半をさしたころに帰途につくことにした。 そとは暗くなっていたので、随分と長居したことが改めて感じられたが、まあ、たまにはよかろう。 しかし、アニメ録画予約してたか、激しく気になった。 495 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 22 50 ID f7lY9HEd 女子の部屋とは思えないような瀟洒な部屋に一人、北方時雨は佇んでいた。 松本君と話していた時間は夢のように早く過ぎていった。 彼が洋菓子のほうが和菓子より好きだとは調べが不十分だった。 私が作った羊羹をほめてくれて、彼の優しい心遣いには涙すらとめどなく出てくるが、本当に彼の好きなケーキかプリンかを作っ てあげればよかったと後悔している。 それにしても、あんなにも人と話をして楽しい、そう感じられたのは久しぶりだ。 私は生まれつき人と話をするのが苦手だ。 だから、学校でも話をしない。 ごくごく規則的なつまらない毎日を消費するだけ。 こちらから話さなければ相手からも話されず、自然と距離が生じてくるものだ。 でも、そんな私にさえ、隣の席に座っている彼は話しかけてくれた。 彼は私にとってのオアシスのようなものだ。 だから、自然と私は彼に惹かれていった。好き、という言葉では言い切れない感情。当然、こちらから話しかけたいと言う気持ちが 無かったわけでもないが、それでも、話しかけることができず、三年間もの間、同じクラスでありながら無為に過ごしてきた。 引き出しから、今のクラスの全体写真を取り出す。 その写真のただ一点のみを眺めているその写真に写っている松本君、そうそのただ一点。 それ以外の人間なんて要らない。 さらに言うと、彼だけしか写っていない写真がほしいのだが、私にとっては度の過ぎた贅沢というもの。 496 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 23 19 ID f7lY9HEd 今日、彼は私に自身の妹について話した。 彼に対して異常なまでに粘着質であり、世話焼きであるため、自分からはなれず困っているといっていた。 妹の存在については話される前から知っていた。 一学年違いなので、学校で本人を知っているのだ。 みるからに脆くはかなげな感じの子で、えらく、おとなしく従順そうな、寧ろ誰かの従属的なポジションにいたいという感じがした。し かし、同時に直感で彼女が内に黒々したものを秘めているのを感じた。 私はあまりああいう子は好かない。 そして、あんな魔女の大鍋のような醜い心を持った害毒があの心優しい、松本君の傍に、私よりもはるかに近いところにいること が許せなかった。本当に許せない、許せない、許せない、許せない。あんな子に彼が毒されることがないと祈りたいが、彼から私 に相談してくるくらいなのだから、かなり彼女のいわば寄生によって病状は悪化しているようだ。 あんな子は松本君から相手にされず、クラスでも苛められても自分の深い罪に気づかないだろう。百歩譲って、その罪深さに気 づいて自分の罪を贖ったところで、到底、贖いきれるほどのものではない。 現に彼女はその罪に気づいていない。そんな害毒は誰かの手を借りて滅せられなければならない。それが社会のルールにのっ とっているというものだ。 497 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 24 03 ID f7lY9HEd 本当にあんな毛虫か寄生虫のような子、死んでしまえばいいのに。それも、尋常じゃない殺され方で。 だって、そうされても仕方ないことをしたんだもの。 私の大切な命にも代えがたい松本君を穢して、寄生して、あそこまで追い詰めているのだから。 いけない、いけない、感情的になりすぎたようだ。 確かに今から、とっくの昔から位置を知っている、彼の住む家に武器を持っていって、ごくごくわずか、千数百秒のうちに彼を解放 してあげたい。 でも、それは重病患者に手術を強いるようなもの。決して賢明ではない。彼にとっても、あんな寄生虫でも肉親ということになって いるのだから、彼を悲しませるようなことは私にとっては絶対のタブーだ。 だからといってこのまま放置しておいたのでは、取り返しのつかないことになってしまうだろう。 それを防ぐためには、積極的ならなくてはならない。話すのが苦手だとか言っている場合ではないのだ。 彼を守れるのは私だけ。そして彼に心から尽くすことがふさわしいのも私だけ―。 498 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 01 25 02 ID f7lY9HEd 読みずらくなってしまって、すみません。 とりあえず、続くかもということで。 499 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 02 15 08 ID DsThKMK7 488 ナカーマ 俺も沙耶の唄の主人公カップル大好きだ。 500 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 02 30 23 ID YoRHa50v 乙!
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/469.html
1 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/01/22(月) 23 38 55 ID fF6rd5LU ・このスレッドはヤンデレの小説を書くスレッドです。 ・既存のキャラの使用アリ。 ・プロット投下やニュースなどのヤンデレ系のネタ大歓迎。 ・ぶつ切りでの作品投下もアリ。 ・作者のみなさんはできるだけ作品を完結させるようにしてください。 ヤンデレとは ・主人公が好きだが(デレ)その過程で心を病んでしまう(ヤン)状態の事をさします。 (別名:黒化、黒姫化など) ・ヒロインはライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつ確実に病んでいく。 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することがある。 ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 http //yandere.web.fc2.com/ 前スレ ヤンデレの小説を書こう! http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148704799/ 2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 23 44 56 ID sXcPKANe 1 乙 3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 23 53 28 ID BIfER8Q2 1乙 お茶会の人も大河内さんも全力で期待してます。 4 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 00 53 09 ID bYCtaPEW 1乙 まさかテンプレを使ってくれるとは思っていなかったw 3 サンクス 書く気力が補充された 5 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 03 05 18 ID JHNR49Db 回避 6 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 13 59 38 ID pi8YjqwB キモウトの続きも待ってる 7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 14 08 42 ID 6zwSdDZP 1乙 関連スレ 嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その27 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1169469610/ 8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 16 57 49 ID Bo5DfLAq 1 乙!!さてwktkしながら続きを待つかな 9 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 17 41 41 ID 7w9uNgyP 7 まだこっちにしておいた方が無難だろ。 下手するとそっちの子は切られるかも分からんぞ。 関連スレ↓ 嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その26 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1168129885/l50 10 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/01/23(火) 17 50 53 ID fzH8Kh8m 神無士乃=マッド・ハンターと予想 そうなると周りの女はみんなお茶会関係者になるなwwww 11 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 18 08 04 ID LSqEQ80P 10 じゃあ俺は如月更紗=マッド・ハンターと予想。 鋏を使ったミスリードかも知らんが……。 12 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/01/23(火) 19 37 52 ID HdISiKlr 11 俺もそう思う ところで「彼」を自分のものにしたいがために拉致・監禁するのってヤンデレ? 13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 21 10 09 ID +4orXTIq 11 俺は 如月更沙=首きり(首狩り?)女王 神無志乃=チェシャ って予想する。女王は昔マッド・ハンターの話の中にチラっと出て来た。 14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 21 10 58 ID +4orXTIq 12 ヤンデレだっ……連投スマソ 15 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/01/23(火) 21 20 04 ID fzH8Kh8m お茶会の準備が終わるまで、ずっと、まってるからね? 16 名前:投下準備完了 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 13 44 ID bYCtaPEW 『あなたと握手を』を投下してもおk? 17 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/01/23(火) 22 15 51 ID fzH8Kh8m おけ 18 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 20 29 ID bYCtaPEW その日の夕方、大河内桜は学校の部活動に姿を現さなかった。 部員たちは不審に思ったものの、部長である海原英一郎の左手を見て事情を悟った。 憧れの先輩が練習に参加できなくなったことにショックを受けてしまったのだ、と。 剣道部員たちにとって二人は恋人同然の関係だと認識されている。 毎日校外練習のあと二人きりで帰っていることを知っているので、 未だに恋人の仲になっていないことが不思議なくらいだった。 今回のことは二人の間で解決するしかないと思った部員たちは、深く詮索しないことにした。 海原英一郎は、しばらく練習に参加できないこと、 大河内が来ていないため今日の校外練習はできないことを副部長に伝えると、 鞄を持って先に帰ることにした。 19 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 21 17 ID bYCtaPEW 自宅へまっすぐ帰るのなら正門を出て左に曲がるのだが、 いつもの癖で右――練心館の方角――に曲がってしまった。 でも、引き返さずにそのまま歩き出すことにした。 しばらく練心館には行けなくなってしまうから、見納めをしておこうと思ったのだ。 歩きながら考えたいことも、あったから。 まず、この左手のこと。 全く動かなくなるという可能性は低いと思う。 痛覚があるということは神経は通っている、ということだ。望みはある。 ただ、竹刀を握って高校生を相手に試合ができるほどの握力が戻るとは限らない。 大学生を相手に片手で試合をする選手もいる。 彼は何年かけてあそこまで強くなれたのだろう。三年?五年?十年? いや、同じ時間をかけても俺がああなれるとは限らない。 ならば、いっそのこと剣道を―――― やめろ。馬鹿馬鹿しい。 まだ怪我をしたばかりだ。そこまで悲観的になる必要は無い。 今は怪我を治すことに専念しろ。 次に考えるのは、大河内のこと。 心に引っかかっているのが、あの絶望を味わったような表情だ。 予想では、怪我の話をしたときに過剰に心配してくると思っていた。 しかし実際には――こう言うのも変だが――俺が死んでしまったと聞いたような反応だった。 何かが引っかかる。俺は言わなくてはいけないことを言わなかったのではないか? そこまで考えてから、自分がいつのまにか練心館に着いていることに気付いた。 「大河内ともしばらくは一緒に帰れなくなるなぁ・・・」 そうつぶやくと、この怪我が本当に恨めしくなる。 女生徒を助けようとしたことを後悔はしていない。 ただ、あのとき怪我をしないように動いていれば。 女生徒の姿を目にした瞬間に動き始めていれば。 「・・・帰るか。」 ここにいるといつまでも自分を責め続けてしまうような気がした。 道場に向かって一礼して、背を向けた瞬間。 『オマエかァァァッ!!』 『ガッ!シャァァァァン!』 道場から女の声と、ガラスを派手に割る音が聞こえた。 20 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 21 51 ID bYCtaPEW ようやく見つけた。海原先輩に助けられた恩を忘れ、立ち去った女を。 ・ ・ ・ 昼休みに学校を抜け出し、海原先輩が事故にあった現場を見に行った。 昼の忙しい時間帯は交通量も多く、事故の痕跡を発見することはできなかった。 この中にもしかして先輩の左手を轢いた車がいるのだろうか。 許せない。歩道にいた先輩を発見することもできずにそのまま走り抜けたへたくそドライバー。 どいつだ。そこの図体だけでかい箱みたいな車か。それとも塗装の剥げ落ちている小さい車か。 違う。携帯電話で会話しながら信号待ちしている車高の低い車。たぶんこいつだ。 その汚い金髪を引き抜いて間抜け面の皮を引き剥がして左手の爪をペンチでじわじわとめくっていって手首から先の骨を粉々にしてハンバーグに入れて・・・ いや、待て。そんなことをしている暇はない。 一刻も早く例の恩知らず女を見つけて報いを受けさせねばならない。 事件の関係者が現場に戻ってくるというのは通説だ。 この場で同じ高校の女生徒を発見したらすぐに捕まえなければ。 午後二時。待ち伏せてから一時間経過。 犬を連れて散歩する人しか通らない。まだまだこれから。 午後三時。待ち伏せてから二時間経過。 黄色い帽子をかぶった小学生しか通らない。私と目が合った女の子が驚いて逃げて行った。失礼な。 午後四時。待ち伏せてから三時間経過。 ようやく同じ制服を着た女を見つけた。しかしよく見たら剣道部の女子部員だった。 今日は重い日だったから部活に参加しなかったらしい。 まぎらわしい。今度は胴を打つときにわきを狙ってやる。 午後五時。すでに四時間待っているが、それらしき人物は発見できなかった。 今日は現れないのかもしれない。 仕方がない。今日は引き上げることにしよう。 21 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 22 37 ID bYCtaPEW 私は今、練心館の男子更衣室の中に一人でいる。何もしていない。ただ膝を抱えて座っているだけ。 自分の部屋に一人きりでは居たくなかった。 海原先輩との思い出が染み付いている場所に居たかった。 先輩に会った日から、この時間には毎日のように一緒にいたというのに。 いきなり会えなくなるなんて耐えられない。 先輩が剣道部を辞めてしまったらもう、二度と会えないなんて・・・ 膝の上に涙の雫が落ちる。二滴。三滴。何度も。何度も。 寒気がする。先輩とさよならの挨拶をしたときに感じるあの寒さ。 こたつに入っても、お風呂に入っても、布団にもぐっても、この寒さからは逃げられない。 背中が震える。肩が揺れる。膝が痙攣する。歯がガチガチと音を立てる。 知っている。この寒さの正体は『寂しさ』だ。 「一人に、しないで・・・いっしょにいてくださいよぉ、せんぱぁい、ふ、うぅぅぅぅぅ・・・」 寒い。苦しい。逃げたい。もう嫌。これほどの寒さは初めてだ。 「せんぱい、・・・たすけて・・・助けて、ください・・・たす、けてぇ・・・」 視界が揺れる。脳の中がかき回される。 わたし、もうこのまま―― 22 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 23 29 ID bYCtaPEW 『誰もいないじゃん。嘘ついたんじゃねえだろうな?』 ――? 男の声がした。剣道部の男子部員だろうか?でも聞いたことのない声だ。 『ほ、ほんとです。いつもはここで、ぁがっ!』 また別の男の声。その声は震えていた。 更衣室の窓から道場裏を覗くと、男三人と女一人がいるのが見えた。全員同じ高校の生徒だ。 男の一人は口をおさえている。さっきの声はこの男のようだ。 『いないんじゃしょうがねえ。帰ろうぜ。』 『おう。でもあの海原ってやつもしかしてその後死んじまったんじゃねえの。』 『あ、そうかも。なんかガードレールに頭打ってたし左手なんか潰れてたし。』 ・・・こいつら、いまなんて言った? 『海原』『ガードレールに頭を打っていた』『左手が潰れていた』。 そして『同じ高校の女生徒』。 『死んじゃったんじゃ私の傷とケータイのお礼参りできないよね。 ごしゅうしょーさま。きゃははは!』 ここから導き出される答えは一つしかない。 この女だ。海原先輩に助けられたくせに救急車を呼ばずに立ち去った女。 私達の仲を引き裂く原因を作った女。そして先輩を馬鹿にした女! 更衣室を飛び出し、左手に木刀を掴み、 置いてあった面を道場裏のドアに向かって全力で放り投げる! 「オマエかァァァッ!!」 ガラスが砕け散る。割れた窓を飛び越えてガラスの破片の上に着地する。 足裏にガラスが刺さるのがわかる。だが痛みは感じない。 この程度ではこの怒りを抑えることはできない。 許 さ な い。 私から先輩を奪ったお前は許さない! 23 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 24 43 ID bYCtaPEW いきなり窓から飛び出してきたポニーテールの女に、その場にいた四人は度肝を抜かれていた。 女は緩慢な動作で地面に落ちている面を拾い、 「な、なんだよテメげぐっ!」 左に立っていた男の、左側頭部に勢いよく叩きつけた。 男は横向きに倒れ、側頭部から血を流している。 「てめぇ!何しやがる!」 正面に立っていた男は拳を女の顔面に向かって振り下ろし―― 女が盾にした面の、金具の部分を殴った。 男はその痛みに声をあげる前に股間を蹴り上げられ、 うずくまったまま、動かなくなった。 もう一人いた男は恐怖で声をあげられなかった。 それは、懸命な判断だった。 数秒で男二人を気絶させた女は、声をあげた存在に対して攻撃をする獣になっていたからだ。 大河内桜は恐怖で動けない男を一瞥し、 「こいつじゃない・・・」 顔が血の色で染まった男と、うずくまった男を見下ろし、 「こいつらでもない・・・」 自分の右で腰を抜かして倒れている女を見下ろすと、カッと目を見開き、 「おまえだっ!!!」 大音声で叫んだ。 24 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 25 39 ID bYCtaPEW 勢いで戦闘シーンを書いた。 正直、やりすぎたかもしれないと反省している。 次で終わりです。たぶん、明日の今頃投下します。 25 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/01/23(火) 22 26 56 ID fzH8Kh8m GJ!!!!! 最高です 26 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 30 21 ID 2PeEq9pZ 大河内にはハッピーエンドを与えてあげてください・・・ かわいそう・・・ 27 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 33 09 ID bYCtaPEW 25 ありがとう。君も最高だ。 26 ご心配なく。 前スレでの予告のままに。 28 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 22 43 22 ID LSqEQ80P え? つまり、海原が助けたのはDQN女だったって事? うわぁ……。 大河内カワイソス(´・ω・`) 29 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 23 03 13 ID pi8YjqwB GJ! 大河内さんも海原もカワイソス でも躊躇なく殺意を叩き込む大河内さんオソロシス(*´Д`)ハァハァ 30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/23(火) 23 09 35 ID F2RdmnTt 24 明日を楽しみにしています。 助けた女といちゃくちゃがあるかと思ったら まさかDQNとは・・・ 31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 00 00 30 ID U7RgVbaF 投下しますよ 32 名前:『首吊りラプソディア』Take0[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 00 01 57 ID U7RgVbaF 書類整理を一段落させると同時に、俺は伸びをした。仕事柄、普段から体をそれなりに 体を鍛えているものの、長い間机に向かっていると体に堪えるものがある。背もたれに体 を預けると、軽い音が連続で響いた。まだ二十代の半ばだというのに、随分とくたびれて いるものだと思う。新人と話が噛み合わないときも多いし、少し自分が不安になった。 電子音。 「もうこんな時間か」 冷めた珈琲を一口含み、立ち上がる。 同僚に軽く挨拶をして部屋を出ると、退屈そうに立っている女性と目が合った。名前は よく覚えていないが、顔には見覚えがあった。確か新人の中でも郡を抜いて活躍していた ことで有名だったような気がする。報道部の友人と先日飲みに行ったときに、彼女のこと を色々言っていた。曰く、十年に一人の逸材だとか、専門の学校を歴代トップで卒業した だとか、早くも昇進が考えられているだとか。 だが俺には関係ない、住む世界が違うのだ。 素通りしようとすると、何故か後から着いてきた。最初は偶然だと思ったのだが、歩く テンポも、それどころか足音さえも重ねてくる。どうにもやり辛くなり立ち止まって彼女 に振り向くと、同じタイミングで止まってこちらを見つめ返してきた。 「何の用だ?」 「気にしないで下さい」 気にするなと言われても、それは無理だろう。だが彼女はそれきり口を閉ざし、ずっと こちらを見ているだけだ。どうにもならない。相手をするだけ無駄かもしれないと思い、 吐息をして再び歩き始める。やはり彼女は一定の間隔を持って着いてくる。 33 名前:『首吊りラプソディア』Take0[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 00 06 45 ID U7RgVbaF 目的地に辿り着き、数回ノックをしてドアを開く。 「うん、時間通りだね」 「それだけが取り柄です」 そう言うと、俺の正面、皮張りの椅子に腰掛けた初老の男性は愉快そうに顔を崩した。 「今回の用事は何ですか?」 僕を呼び出した張本人である署長は、煙草に火を点けると旨そうに煙を吸った。脳天気 にすら見えるときもあるのだが、それでも悪い印象が浮かばないのは独特の雰囲気がある からだろう。第37監獄都市管理局局長という堅苦しい役職名があるにも関わらず皆からは 親父と呼ばれて親しまれているのも、一重にこの人の人柄だ。 「虎吉君、君は『首吊り』という話を知っているかね?」 知っているも何も、この辺りでは知らない人は居ないだろう。居るとすれば、そいつは かなりのモグリか最近こちらに来たばかりの奴だけだ。 『首吊り』というのは一年程前から流行りだした都市伝説で、夜な夜な殺人を繰り返す 化け物のことだ。殺人方法は様々なのだが、全てに共通しているのは死体を首吊り自殺の ように紐で吊るしていること。隣の第36監獄都市に出没するらしいが、どこにでもある類 の話だと思っている。こんな噂話は昔から無くならないものだし、監獄都市の中では殺人 というのも珍しいことではない。表通りこそ穏やかだが、裏のスラムではそれこそ毎日の ように行われているものだ。それを誰かが脚色したものだと思う。 「それが、どうかしたんですか?」 「居るんだよ、本当に」 34 名前:『首吊りラプソディア』Take0[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 00 07 45 ID U7RgVbaF 馬鹿馬鹿しい。 「局長、もう少しストレートに言ったらどうでしょうか?」 声に振り向くと、先程の女性が立っていた。いつの間に部屋に入ってきたのだろうか、 全く気が付かなかった。彼女もこの場所に居る以上は、今の件に関わっているのだろう。 それに先程の発言から察するに、既に話は伝わっているらしい。 数秒。 局長は煙草の煙と共に溜息を吐くと、書類を差し出した。 「『首吊り』の最有力容疑者だと言われている者だ」 目を通し、一瞬思考が停止した。 「僕は反対したんだが上からの命令でね。本当に済まないと思っているんだ。君からして みれば信じたくない話だろうしね、彼女のことは」 こいつがあの凶悪な『首吊り』である筈がない。信じたくないのではなく、信じること が出来ない。いつも微笑みを浮かべていて、誰よりも優しかったこいつが犯人である筈が ないのだ。それなのに、何故こんなに酷い仕打ちをするのだろう。 「このサキ君をサポート役として、彼女について詳しく調べてほしい。それに、悪いこと だけではないと思うよ。サキ君は優秀だし、彼女が無実だった場合はすぐに捜査も終わる。 それが分かるように、このチームを組んだのだからね」 言葉が何も浮かんでこない。 「こちらも、精一杯協力しよう」 そうだ、無実だと証明出来れば良い。彼女がこんなことをする筈もないから、無駄だと すぐに分かるだろう。ついでに監獄都市から出してやることも出来るかもしれない、局長 の言う通りに悪いことばかりではない。寧ろ、メリットの方が多いかもしれない。 「よろしくお願いします」 「こちらこそ」 決意をし、再び書類を見る。 容疑者『カオリ・D・D・サウスフォレスト』、罪人ランクF、現在16歳。 そして、俺の幼馴染み。 35 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 00 09 09 ID U7RgVbaF 今回はこれで終わりです 投下ペースは遅くなるかもしれませんが、 完結はさせるつもりです 36 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 00 37 20 ID CNIs1fEG 35 ィヤッホオォォォ!!GJ!! 閉鎖的状況プラス壊れてそうな人々GJ!! 37 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 01 08 20 ID r7DkZkAp ロボ氏ktkr 38 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 04 20 11 ID ZwqzZZSa ヤンデレ抜きで普通に物語として面白そうな件。 サキとカオリのどちらがヤンデレなのか、どちらもなのか。 今のところサキの罠っぽいな 39 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 10 08 55 ID S6jVvqli 35 GJ!! ロボ氏はここでも連載をしてくれるというのか! なんたる僥倖! それはともかくwktk 40 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 10 22 12 ID LdvqcTQQ ロボ氏キタ━━(゚∀゚)━━!! ミステリアスな雰囲気GJ! 41 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 11 35 36 ID DysJ2xkm 急に読むのが忙しくなってきた!嬉しい悲鳴 。・゚・(ノ∀`)・゚・。 42 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 12 56 24 ID +BAZjMrB 神が舞い降りた地はここですか? 43 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 13 02 37 ID /kyF+zEH 嫉妬スレはもう終りだな俺はこっちに移ることにするよ 44 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 13 31 44 ID YipNbHL+ かえれ 45 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 14 10 56 ID S6jVvqli 43 「あ、お父さん。こんなところにいた。 もうだめだよ。今夜はすき焼きなんだから。 たっくさんお肉があるからね。うふふふふ。 早く私たち『ふたりだけ』のお家に帰りましょ。」 46 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 15 10 46 ID Q5iZszqB なんというヤンデレ… スレタイを見ただけで反応してしまった。 俺達は間違いなくヤンデレ萌え 47 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 16 05 05 ID Z4U+K8Uf なんという良スレ! 俺が常駐していた嫉妬スレ以上のすばらしさ 俺は悪いがヤンデレに転向するからな 48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 16 11 05 ID jRZfo3cX なんか盛り上がってると思ったら……。 また、荒らしか……。 49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 16 14 55 ID c6tc9Ru2 どうぞどうぞどうぞ 50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 17 47 59 ID xiZ2ykrL あ、後ろに包丁を持った女のこがくぁwせdrftgyふじこlp;:「」 51 名前:9割書き終わった ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 20 43 39 ID VkGvZHfe 『あなたと握手を』にエロシーンを入れるかやめるか迷っているのだが・・・ どうする? 希望者がいたら 『ヤンデレスレはエロエロよー!』 と書き込んでくれ。 後日投下希望ならば 『マッガーレ』 と書き込んでくれ。 52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 20 55 34 ID r7DkZkAp ふんもっふ 53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 20 57 41 ID CAsJZ2Ym ヤンデレスレはエロエロよー! 日時は神のご意思のままに 54 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 21 03 40 ID hKllmp0y ヤンデレスレはエロエロよー! 55 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 21 26 12 ID LdvqcTQQ ヤンデレスレはエロエロよー! 56 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 21 41 18 ID CNIs1fEG ヤンデレスレはエロエロよー ヤンデレスレはエロエロよー ヤンデレスレはエロエロよー ヤンデレスレはエロエロよー ……まずい楽しくなってきた。 57 名前:9.5割書き終わった ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 21 48 34 ID VkGvZHfe 52 だがね●くん。そこまで期待されても応えられるとは限らないよ。 私にはそんなプレイを文章にできる力は無い。 53 54 55 56 サンクス。 1~2時間後に投下する。 58 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 22 13 44 ID Zl51SM0K 57 期待するしかない 59 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 23 28 10 ID VkGvZHfe 期待されちゃあこたえねぇ訳にはいかねえ。 まずはジャブだ! ↓ 海原先輩に怪我を負わせる原因を作ったこの女が憎い。 そしてこの女が先輩を馬鹿にしたことが許せない。 近寄っただけできつい香水の匂いが鼻をつく。臭い。 先輩から事故の話を聞いた後、この女に報いを受けさせてやろうと思った。 でも、あの場から立ち去ったことを先輩に謝るつもりでいたのならば、 先輩に免じて平手一発お見舞いするだけで済ませようと思っていた。 しかし、この女はどうしようもないほど馬鹿な女だった。 お礼参りだと?助けてもらったくせに。 先輩が居なければお前もあの携帯電話のように潰されていたんだ。 それなのにお前は膝をすりむくだけで済んで、代わりに先輩の左手が潰された。 「あ、あんた一体なんなのよ!」 「――さっき自分で言ったことを覚えてる?」 「・・・え?」 「海原先輩に、お礼参りするって、言ったでしょう?」 木刀を女の眉間に突きつける。女の顔が恐怖で醜く歪む。 「それがなんなのよ!あんたに関係なくぁっ!?」 左手を突き出し、何か言おうとした女を黙らせる。 女は後頭部を地面に打ち、気絶した。 喋るな。カメムシ女が。いや、人に害を成したこの女はカメムシ以下だ。 この世に存在していてはいけない。こいつは生かしていたらまた犠牲者を生み出す。 潰してやる。あの夜に本来なるはずだった姿に変えてやる。 いや、そんなものでは生温い。一瞬では終わらせない。 じわじわと、確実に恐怖を与えながら、 理不尽な力を前に自分の無力さを味わいながら、己の行いを悔いるがいい。 女の左肘を踏みつけて押さえる。木刀を振りかぶる。まずは、左手。 柄を握る手に力を込め、振り下ろそうとした瞬間。 「大河内ィィッ!」 あの寒さを、一瞬でかき消してくれる声が聞こえた。 60 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 23 29 05 ID VkGvZHfe 道場裏の光景を目にした俺は、自分の目を疑った。 自分と同じ制服を着た男が、一人は顔を血の色に染めて、一人は地面にうずくまっている。 唯一、震えながらもなんとか立っている男は、それとは別の光景に目を奪われていた。 大河内が、女生徒に向かって木刀を振り下ろそうとしていた。 なんだこれは?これを大河内が一人でやったっていうのか? 倒れている二人の男はどちらも大柄で、力比べをしたら俺でも勝てるかわからない。 その二人を、俺よりも小柄な後輩が一人で倒したということが信じられなかった。 いや、今は呆けている場合ではない。 大河内の木刀は今にも女生徒に襲い掛かろうとしている。 一度襲い掛かったが最後、そのまま女生徒の命を奪うまで止まらないのではないだろうか。 そして血を流している男の出血もただごとではない。 「おいっ!」 「ひっ!?ぼ、ぼくですか?」 「今すぐ救急車を呼べ!早く!」 「え、と・・・あ、はい!」 呆けている男を一喝し、救急車を呼びに行かせる。 倒れている男に対してはこれでいいだろう。 次は、大河内をなんとかして落ち着けないといけない。 「先輩。やっと私を助けに来てくれましたね。寒くて、死んじゃうかと思いましたよ。」 そう言った大河内の目は、絶望の色に染まっていた。 61 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 23 29 54 ID VkGvZHfe 大河内は何を言っているのだろう。『私を』助けに来てくれた。 どう見ても助けないといけないのは倒れている男とお前が踏みつけている女だろう。 「寒かったんですよ?本当に。先輩がいないのに道場に一人きり。 先輩の匂いを少しでも感じたかったからここに来たのに、こんなことなら来なければよかった。 ・・・あ。違いますね。このカメムシ女を発見できたんだから来て正解でした。」 「・・・落ち着け。・・・大河内。」 もっと何か気の利いたことを言えよ!俺! 「落ち着く?無理ですよ。やっとこのカメムシを捕まえたんですから。 先輩に怪我をさせたこの害虫。 それなのに助けた恩を忘れてまた先輩に害を加えようとしたこの害虫! ――それとも、先輩はこの害虫のことを?」 俺に怪我をさせた?気絶している女生徒が? そうか!あの夜俺がかばったのはこの人か! 「だめですよぉ?先輩。害虫のことなんか気にしちゃあ。 先輩は人間なんですから、人間の女の子を好きにならないと。 先輩のことを好きな女の子だってここに、・・・・・・ここに練習に来る子の中にいるんですから。」 俺はお前のことが好きなんだよ!って言ってやりたい。 でも、違う。俺が今言わなければいけないことはそれじゃない。 なんだ?もう少しでわかりそうなのに。くそ、落ち着け俺! 「先輩の左手が動かなくなっちゃって・・・そしたら先輩は剣道部をやめちゃって・・・ その後、私はひとりぼっち。そんなの、いやです。寒いのはいやです。 誰も助けに来てくれない場所に一人きりで震えているのはもう・・・嫌なんです。」 俺が、剣道部をやめる?そんなことは言ったことがない。 なぜ大河内はそんなことを―― 「でも、もうだめですよね。 こんな暴力的な女の子、先輩だって怖いですよね。 先輩に嫌われたら私、生きていけません。 この女を潰したら、私も――」 62 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 23 30 40 ID VkGvZHfe そうか。今言うべき言葉が見つかった。 俺が左手を怪我してしまったから、『剣道部をやめてしまう』とこいつは思っている。 おそらく大河内が恐れているのは『俺とのつながりが無くなってしまうこと』。 ならば俺が言うべき言葉は決まっている。 おそらく、大河内が一番聞きたかった言葉。 「さよなら。せんぱ――」 「大河内。俺は剣道部を辞めないよ。」 大河内の動きが止まった。女生徒に向けられていた目が俺に移る。 その目にはよろこびの色、とまどいの色、おどろきの色が移っている。 「え!え。え、でもそんな、だって先輩は・・・」 「左手が動かなくても、部活動には来られるし、なんならマネージャーでだって構わない。 俺は剣道部をやめない。やめたくないんだ。」 そしてこれから言うのは、俺が一番言いたかった言葉。 「お前と一緒にいたい。 お前と離れたくない。 俺は、お前のことが、好きなんだ!」 死ぬほど恥ずかしい台詞だ。顔が紅くなるのがわかる。 でも言って正解だった。 大河内は振り上げていた木刀を落とし、 顔を耳まで紅くして驚愕の表情を浮かべている。 ようやくこいつの驚きの表情を拝むことができた。 めちゃくちゃにしたいほど可愛かった。 俺はこの表情を脳内に永久保存することに決めた。 63 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 23 32 18 ID VkGvZHfe 「ふえぇぇぇええぇん。ぅえぇぇぇぇん。」 驚きの表情から立ち直った大河内は、大声で泣き出した。 泣き顔もかわいいな。この顔も永久保存して――って、そんなことしてる場合じゃない。 「大河内、逃げるぞ。」 「ふぇぇぇぇぇ・・・ぅえ?なんれぇれすかぁ。しぇんぱいぃ・・・」 男二人と女一人が気絶していて、全員が怪我を負っている。 このままここにいたら、暴力事件の加害者として俺と大河内は補導、もしくは逮捕ということになるだろう。 この場から立ち去れば――浅はかな考えだが――加害者を特定しにくくなると思ったのだ。 「早く行くぞ。人が来たらまずい。」 「うぁっ!あ、ちょ、ちょっと待ってください。私、足が・・・」 足元を見ると、血の痕がついていた。 靴下を脱がして足裏を見ると、ガラスの破片が刺さっていた。見たところ深く刺さってはいないようだが・・・ 「この足じゃ、歩くのは難しいな。」 「はい・・・でも、一つ良い方法がありますよ。」 大河内が俺の首に腕を回してくる。 「お姫さま抱っこしてください。」 「は?」 「お姫さま抱っこしてください。お姫さま抱っこしてください。」 「二回言わなくても聞こえてる。左手が動かないのにどうやってやれっていうんだ。せめておんぶにしてくれ。」 「私が先輩の首に手を回しますから、左手を使わなくても平気ですよ。 ・・・それとも、私をお姫さま抱っこするのは、嫌ですか・・・?」 上目遣いは卑怯だぞ。大河内。 「わかったよ。じゃあ、しっかり捕まってろよ。手、離したら頭から落っこちるぞ。」 「心配御無用です。だって・・・私も先輩から離れたくないですから。」 俺の首に回した腕に力を込めて、顔を寄せてきた。 潤んだ瞳に、俺の顔が映っているのが見える。 「本当は先輩より先に言うつもりでしたけど・・・今が絶好の機会だから言っちゃいます。 先輩。私は先輩のことが好きです。初めて会った日から・・・好きでした。 私を、先輩の・・・海原英一郎先輩の恋人に、してください。」 「・・・目、閉じろ。」 無言で大河内は目を閉じる。 俺も同じように目を閉じ、 OKの返事の代わりに、くちづけた。 64 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 23 33 11 ID VkGvZHfe 右手一本で大河内を支えて家まで運ぶのは正直、骨が折れた。 大河内の家族は全員居ないらしく、俺が大河内家かかりつけの医者を呼んで、足裏の治療をしてもらった。 幸い、ほとんどがガラスによる裂傷で、刺さっていた破片は全て取り除くことができた。 消毒薬を塗り、包帯を巻き終えると『では、お大事に』と言って医者は帰っていった。 「とりあえずは、一安心だな。」 「ええ。」 ここで、一つ気になることがあったので聞いてみた。 「なあ、なんで俺が剣道部を辞めるだなんて思ったんだ?」 「・・・だって、それは・・・もし左手が動かなくなったとしたら、先輩は練習に参加しなくなって、 そしたら練心館にも来なくなって、一緒に帰れなくなって・・・ いつか先輩は剣道部にいる意味なくして、やめちゃうって・・・思ったからです。」 ・・・また涙目になってしまった。そこまでこいつは俺が剣道部をやめることを恐れていたのか・・・ なんだかいたたまれなくなってきた。右手で大河内の頭を撫でる。 柔らかな、絹のような感触がする。 「あ。 ・・・先輩の手、大きいですね。まるでお父さんみたいです。」 あそこまで俺は巨漢ではない。 「今『あそこまで巨漢じゃない』とか思いましたね?」 「いや、思ってない。断じて思ってないぞ。」 「先輩には、おしおきをする必要がありますね・・・」 「待て落ち着け話せば分かるもうむちうちは――」 「私、――もう、我慢できません。」 「は?」 大河内が俺に体当たりしてきた。 そのまま俺は押し倒され、キスをされた。 65 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/24(水) 23 34 09 ID VkGvZHfe すまない。もう少し待っててくれ。 もうちょっとでエロシーン書き終わるから。 66 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/24(水) 23 58 19 ID xCWNvGPM + + ∧_∧ + + (。0´∀`) (0゚つと ) + + と__)__) 67 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 00 03 47 ID BbVwOBjk 65 ワクワクテカテカ 68 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 00 25 54 ID sCO44oSb _ ∩ ( ゚∀゚)彡 ワッフルワッフル!! ⊂彡 69 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 03 37 ID VgLGiMfZ こいつでとどめだ!最終話! ↓ 大河内は俺と唇を重ねながら、体をすり寄せてくる。 その次は、舌を絡ませてきた。必死に俺もそれに応える。 「ん・・・ふ・・・んちゅ・・・ん、・・・ふぁ・・・れろ・・・」 唇の裏を、歯の裏を、舌の裏を絡ませる。 ひとしきり俺の口内を味わった少女は、何故か睨みつけてきた。 「先輩・・・誰かとキス、したことあるんですか?」 「は?なにいって・・・」 「初めてキスされたんだったら、舌で応えてくるなんてありえません。」 「・・・誰がそんなこと言ったんだ?」 「お母さんです。」 抗議の声をあげようとしたが、もう一度唇を奪われた。 「んん・・・せんぱぁい?だぁれと・・・んちゅ・・・したんですかぁ・・・? そんなせんぱいにはぁ、もっときついおしおき、してあげます。」 俺のベルトに手をかけて、ジッパーをおろすと、トランクスの上から陰茎を撫でてくる。 「ふふ。せぇんぱい。おぉっきくなってますよぉ?」 「こんなこと・・・してたらそう、なるのがあたりまえだ。男ってのは、そうっ、いうもんだ。」 ひとしきり楽しんだのか、今度は下着をずらして直接手を触れてきた。 未知のものに触れるかのように最初は亀頭のあたりを握ったり離したりしていたが、 「くっ・・・・・・、・・・うぁ」 カリを撫でられた途端、俺の口から声が漏れた。 その反応に妖艶な笑みを浮かべた少女は、指先を裏筋にそって這わせてくる。 指づかいが巧みすぎる。お前こそどこでこんなこと覚えてきたんだ。 「ふぅん。じゃあ、誰がやってもこうなっちゃうってことですよねぇ。」 「曲解をっ、するんじゃ・・・ない。あれは、ふ、うぁ。お前にされたら・・・ってぃうぁ!」 竿を掴みながら、カリの裏、鈴口を順番に舌で舐めた。 未知の快感に大きな声をあげてしまった。その声に納得したようにうなづいた少女は、 「もう、充分ですね。・・・今度は、私が気持ち良くなる番です。」 スカートを脱ぎ、次いで下半身を覆う下着を脱ぎ捨てた。 70 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 04 23 ID VgLGiMfZ 「せんぱい、そのまま動かないでくださいね・・・」 コンドームの包みを破り、俺の陰部に装着する。 俺のズボンとトランクスを脱がすと、腰の上に跨った。 そそり立った俺の陰茎の上には、少女の花弁が当てられている。 そしてそのまま大河内は一気に腰を下ろした。 「はぁっ!う、あ、ぁ、あああああぁぁ!」 処女膜を貫いた感覚が俺にも伝わってきた。 俺の胸に手をついて、肩を上下させている。 「大河内、苦しいんなら、もう・・・」 「いや、です。・・・へいき、です。への、かっぱ・・・」 その目に、迷いはなかった。 「動きますよ。せんっ・・・、ぱい。」 ぬちゃ、ジュプ 腰が上がり、今度は下りてくる。 陰茎を咥えている膣から、血と愛液の混ざったものが滴り落ちる。 「くぅ、う・・・か、は・・・」 俺はすでに大河内と繋がっているこの行為の虜になっていた。 柔らかく締め付け、暖かく刺激を与えてくる。 何度も、何度も。 ずっと好意を寄せていた少女に快感を与えて、同時に与えられているという この行為は、すさまじい勢いで俺の脳を痺れさせる。 「さ、くら、もう・・・俺は、・・・くぁ・・・」 「わたしも、も・・・・・・せ、んぱ、い。一緒に・・・」 限界がすぐそこまで来ていることがわかる。 俺が全力で腰を動かすと、応えるように大きく腰を振る。 「はぁっ!はっ!はぁっ!あ、も、だめ! くるぅ!いっちゃぁう!あ、ああ、ああああああああああああぁぁ!」 俺は欲望を吐き出し、大河内はそれを受け止める。 「・・・あつい・・・あついよぉ・・・あったかいのが、たくさん・・・せんぱぁい・・・」 その声は、喜びに満ちていた。 71 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 04 54 ID VgLGiMfZ ・ ・ ・ 季節は夏。 道場には剣道部員の掛け声と踏み込みの音、面を打つ音が響いている。 その音が一旦止まり、 「籠手打ち、始め!」 部長の掛け声をきっかけに、再び音が道場に響く。 日曜朝7時、ここ練心館で始まった三年生最後の校外練習は二時間続く。 72 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 05 29 ID VgLGiMfZ 練習が終わり着替えを済ませ、外で部員全員が出てくるまで待つ。 この道場の持ち主の娘であり、今日から剣道部の部長を任された者としての務めだ。 海原先輩を除き部員全員が帰ったことを確認した私は、鍵を閉めることにした。 「おい、待て桜!まだ俺がいるって!」 「うーん、海原先輩の声が聞こえますねー。先輩は遠い星になってしまったというのに・・・。」 「勝手に故人にするな!すぐに出るから、って言いながらも鍵を閉めるんじゃない!」 先輩が出てから再び施錠をする。うん。確認OK。 「さ、先輩帰りましょう。」 「桜。お前なあ・・・」 「今まで自分がやってきたことがわかりましたか? 毎日再三同じことをやらされたからすっかりパターン化しちゃいましたよ。 部長になったらこれやってみたかったんですよねー。」 「・・・・・・。」 「先輩は、ぐうの音も出ないようだ。」 「考えてることを喋るな! ・・・まあ、いいや。さっさと映画見に行こうぜ。」 そう言って先輩は左手を差し伸べる。私はその手を握って先輩の左隣に寄り添う。 「でも先輩。今日はいつもより着替えるのが遅かったですね。 どうかしたんですか?」 「ああ、まあ、ちょっとノスタルジックな気分になったというか。 ここでは本当にいろいろあったなと思ってな。」 「ふふ。違いますよ。『これからも』もっといろいろなことが起こるんですよ。」 「・・・言われてみれば、そうだな。お前が恋人である時点ですでにいろいろやっかいなことがおk」 「そうだ先輩。映画は中止にしてうちの道場でワイヤーなしのワイヤーアクションしましょう。 ちょうどお父さんが漫画に影響されて『竜巻』って技を編み出してましたから。」 「ごめん嘘。前言撤回。頭から落ちるのは勘弁だ。」 こうやって冗談を言い合える関係でいられることが、とてもうれしい。 73 名前:あなたと握手を ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 06 28 ID VgLGiMfZ あの冬、練心館で私が気絶させた三人は、あの事件のしばらく後に退学した。 正直言って、学校に報告されたらどうしようかと不安に思っていたのだが、 校内で私とすれ違うたびに目をそらす彼らは、あの時の光景がトラウマになってしまい、 何のアクションも起こせなかったようだ。 私の足裏は後遺症を残すことなく完治した。 靴下と、剣道の踏み込みで厚くなっている皮が細かい破片を通さなかったからだ。 これは運がよかった、と言うべきだろう。 先輩の左手がほぼ元通りに直ったのは運ではなく、努力の賜物だ。 四月に先輩の手から包帯がとれたときには、握力はかなり低下していた。 しかし、先輩は握力を取り戻すためのリハビリを欠かすことなく、 七月の頭には怪我をする前以上の実力を見につけ――夏の全国大会の個人戦で、優勝した。 上手く行き過ぎだと思った。 ここまで上手くいくと何らかの力が働いているとしか思えない。 そしてその通り、ある力が先輩と私の間には働いていた。 それは私達の間に、確かな『つながり』があったから。 この『つながり』があるかぎり、私達の心が離れることはない。 もう、あの寒さを味わうことはない。 今では、いつでも春の暖かさが私の心を包んでいる。 「じゃあさっそく行きましょう!ほら!手を繋いで!」 二人の『つながり』を消さないために。 二人の心が離れることのないように。 あなたと、握手を。 完 74 名前:あなたと握手をあとがき ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 08 00 ID VgLGiMfZ エロ妄想をしながら書いた。 正直、俺にエロの才能はないとわかった。反省している。 75 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 17 00 ID BbVwOBjk GJ! 76 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 21 50 ID Ujj7CPCT GJ!! 良い作品だった! できれば次回作もお願いしたい! ヤンデレ成分強めで 77 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 45 39 ID LmMEUhhQ 投下しますよ 78 名前:『首吊りラプソディア』Take1[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 46 37 ID LmMEUhhQ 「やぁ性犯罪者、楽しそうだね」 友人の言葉に、俺は溜息を吐いた。 「黙れカマ野郎」 俺にカマ野郎と呼ばれたこいつの名前は、フミヲ・轟。外見は出来る女、部類で言えば 現相棒に指定されたサキ・立花に似た雰囲気があるが、こっちの場合はれっきとした男だ。 そこらの女よりも見栄えが良いのだが、先程の発言だけでも分かる通りに口が悪いので、 全てを台無しにしてしまっている。口さえ開かなければ、どれだけ周囲の反応が変わるか 分からない。人の外見が印象を左右するという、分かりやすい見本だ。 男なので当然スカートの中身が見えることを気にせず、豪快に足を開いてベンチに座る。 そしてこちらを見上げると、愉快そうに口元を押さえて肩を震わせた。 「いや、しかし笑えるわね。性犯罪でSSランクなんて」 堪えきれなくなったのか、フミヲは腹を抱えて笑い出した。 俺だって好きでなった訳ではない、上からの指示でしかたなくこうなっているのだ。 首に付いているのは黒い金属製の二つの首輪、つまりはSSランク罪人の証だ。潜入捜査 の為には罪人になる必要があるのも分かるし、基本的に立ち入り禁止の場所が皆無になる SSランクにされるのも理解が出来る。そこまでは良いのだが、何故よりにもよって罪状が 性犯罪なのだろうか。それを局長から告げられたとき、カオリが『首吊り』容疑者として 考えられていると言われたときとは別の目眩がした。犯行内容も悪質極まりないもので、 猥褻物陳列罪及び多数の変態的行為というものだった。強姦罪などの直接的なものが何故 か含まれていなかった為に、余計に変態臭く思えてくる。何の問題も起こさずに監獄都市管理局の平局員として真面目に 働いてきたつもりだったのだが、上層部は俺にどんな恨みがあるというのだろうか。 79 名前:『首吊りラプソディア』Take1[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 49 08 ID LmMEUhhQ 「今まで前例が無かったらしいわよ、変態SSランクなんて」 それはそうだろう、俺も聞いたことがない。俺と同じ境遇の罪人を躍起になって探した けれど、過去のデータベースの変態罪人の中でも精々Aランク止まりだった。因みにその 馬鹿はある式典で大統領演説の際、全裸で会場ジャックをしたという猛者だった。そんな 奴よりも上だと知ったとき、良い歳をして本気で泣きたくなった。娑場で一生懸命働いて いる両親に対し、申し訳ない気持ちが溢れてくる。 嫌なことを思い出し、俺は再び吐息。 「もう帰れ、頼むから帰ってくれ」 「何よ、折角有給取ってまで遊びに来たのに」 そんなことに大切な有給を使わないでほしい。代わりに仕事をする同僚が可哀想だし、 何よりも俺らは公務員だ。国民の大切な税金から給料が支払われているというのに、その 行く先が変態罪人見物の為に使われていると思うと怒り心頭だろう。しかも真っ先に怒り の矛先を向けられるのは、真面目に対応をする俺のような人間なのだ。勘弁してほしい。 「それで、噂の相棒ちゃんはどこ?」 「ん、今カオリの方に行ってる。俺の名前を盾に、最近の行動を……」 直後。 最後まで言うことなく、俺は慌てて背後に飛び退いた。次の瞬間には、俺の立っていた 空間を不可視の塊が通り過ぎてゆく。それは進行先の大木にぶつかって、轟音をたてる。 幹の幅が5m程もあるにも関わらず、全体が大きく揺れていた。 80 名前:『首吊りラプソディア』Take1[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 50 47 ID LmMEUhhQ 「虎吉ちゃん、早まっちゃ駄目!!」 「早まっているのはお前の方だ!!」 声の方向に向き、反射的に叫ぶ。 本当に危ないところだった。この大木は第36監獄都市のシンボルであると同時に、硬度 が高い木としても知られている。それなのに今の攻撃は樹皮だけでなく幹本体をもえぐり、 小さな子供ならば中に入ることが出来るような穴を作っている。もしもこれが自分の体に 当たっていたかと思うと本当に恐ろしい、カオリの調査どころではなくなっていた。 誰がやったのかと思えば、カオリ本人だった。 「何しやがる!!」 「ご、ごめんなさい。このお姉さんが、虎吉ちゃんが世界一の変態になったって言ってて、 それで女の人とお話をしてたからつい。ごめんなさいごめんなさい」 つい、で殺しかけてしまうのか。昔から性格が優しかった割に容赦がない奴だったが、 ここに入って悪化しているような気がする。特に今のものは洒落になっていない。 カオリが撃ったのは、恐らく空気弾だ。空気を固めて撃ち出すという、目に見えないが 打撃力も熱量も高い、軍事兵器としても使われているもの。普通ならば複雑な制御が必要 なので大型の確率システム制御装置が要る筈だが、見たところ身に着けているのは市販の 指輪型のものが一つだけ。才能があると思ってはいたが、ここまでとは思わなかった。 「すみません先輩、もう少し威力の低いものを勧めるべきでした」 「お前の指示か」 「ここのシンボルが、あんな無惨な姿に」 81 名前:『首吊りラプソディア』Take1[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 52 17 ID LmMEUhhQ 俺の心配は無いらしい。 初めて会ってから一週間足らず、まだ間もないというのに俺は嫌われているのだろうか。 しかも毎日会っていたという訳でもなく、合計すれば三日も会っていない。それなのに、 ここまでされる理由が分からない。嫌われる瞬間も何も、そんな機会すら無かったのだ。 たった数分の間に一気に疲れが溜り、肩を落とす。 「大丈夫、虎吉ちゃん?」 「大丈夫だ、今はまだ」 これからは多分、もっと酷いことになるだろう。気合いを入れる為、改めてカオリの姿 を見る。カオリの今の姿を忘れてはいけないと、守らなければいけないと自分を戒める為。 今にも壊れてしまいそうな弱い娘を、壊さないようにする為に。 「どうしたの、そんなにじっと見て? 何だか恥ずかしいよ」 「綺麗になったな」 「やだもう、お世辞ばっかり」 カオリは照れ臭そうに顔を背けるが、これは本音だった。 カオリと別れてから二年になるが、その短い間に子供は急成長する。最後に会ったとき はまだまだ子供だと思っていたけれど、どことなく大人びて見える。身長が伸び、それに 合わせて体のラインも確かに女性のものになっていた。第四惑星の血が少し混じっている のでやや小柄だが、それは目に見えてはっきりと分かる。 82 名前:『首吊りラプソディア』Take1[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 53 23 ID LmMEUhhQ ただ、変わらない部分の方も同等に目に着いた。 灰色の髪は最後に見たときと変わらずに長く綺麗で、緩く波打っているのも変わらない。 相変わらずドジな部分が多いのか膝や肘が少し擦り剥けているし、喋り方も昔と同じだ。 それに顔を見ていると、人の根っこの部分は簡単に変わらないのだと思う。垂れ目がちの 大きな瞳、それがよく似合う柔和な笑みは幼い頃からずっと変わっていない。何の根拠も なく、カオリはやはりカオリなのだと思ってしまう。 「変わらないな、カオリは」 口に出して言うと、はにかんだ笑みを見せる。 「さっきと言ってること違うよ?」 「良いとこだけ伸びたってことだ」 「そう?」 「先輩は、悪い部分が伸びたみたいですけど」 サキの発言にカオリは軽く首を傾げ、すぐに意味を理解したらしく俺の顔を心配そうに 覗き込んできた。その顔が僅かに赤く染まっているのは何故なのだろうか。 「あのね、虎吉ちゃん」 言わないでくれ。 「その、変態になったのは本当なの?」 カオリの口からだけは、訊かれたくなかった。思わず否定してしまいそうになったが、 サキの視線が飛んできたことにより寸前で堪える。これは潜入捜査で、しかも対象は俺に 問うてきている本人なのだ。簡単に言ってはいけない。それは分かっているが、俺の心は 悲鳴をあげていた。カオリの純粋な視線に堪えられない。 沈黙を破るように、サキが咳払いを一つ。 「この首輪が見えないのですか?」 「やっぱり、そうなんだ」 頼むから納得しないでくれ。 どうにもならなくなり、俺は頭を垂れた。 83 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日:2007/01/25(木) 01 56 25 ID LmMEUhhQ 今回はこれで終わりです 『甘獄と青』と世界は同じですが、 読んでない人でも分かる話にする予定です 意味が分からない単語が出てきたときは、そんなもんだと思って下さい 84 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 02 07 07 ID c9ccpKjw 虎吉と聞いてとらとらシスターを思い出したのは俺だけ? 85 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 04 08 24 ID J1GQFbD1 連続投下キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!! 74 GJ!大河内さんも海原も幸せになってよかった(*´∀`*) 83 GJ!主人公が不幸だw そしてこれから誰が病んでいくのかwktkです 86 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 08 36 34 ID XeFIWhqF 83 ロボ氏GJ! 虎吉ちゃん濡れ衣着せられてカワイソス 87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 10 27 02 ID mDe6Ynjo 74 2人とも生きて幸せになれて良かったよ…(つД`)。゜ というかヤンデレ大河内さんを普通に受け止める海原先輩スゴス 83 なんか変な人いっぱいいるぅぅぅ!!カオリの今後にwtkt 88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 11 49 52 ID sCO44oSb ◆Z.OmhTbrSo氏、ロボ氏、共にGJ!! ここもついに活気付いて来たな!! 89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 19 45 27 ID DXtDyYh7 無口系ヤンと幼馴染系ヤン… これにはwkwkせざるを得ない 90 名前:埋めネタ投下終了 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/25(木) 22 51 47 ID VgLGiMfZ 『ひどいよ!おおこうちさん』を前スレに投下しました。 もしよろしければご一読を。 注意:ヤンデレ分五割増し 91 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 23 23 19 ID BbVwOBjk パラレルかと思ったらオチに糞ワロタwwww 92 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/26(金) 07 48 59 ID ZSZVQ/6V 90 床に置かれていたのモップを手に取り、 床に置かれていたのモップを手に取り、桜めがけて 床に置かれていたのモップを手に取り、桜めがけて突進する。 ちょwwwのモップてwwww 93 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/26(金) 23 27 26 ID UnvIt1gf 間があいてすいません 九話投下します 94 名前:ミツバ[] 投稿日:2007/01/26(金) 23 48 54 ID r8DAWahY お茶会きた―――!! これからも頑張って下さい。 95 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/26(金) 23 51 28 ID UnvIt1gf 教室に如月更紗の姿はなかった。 「………………」 いつまでも教室の入り口に立ちすくむのもあれなので、扉を閉めて自分の席にまで向かう。如月更紗が普段ぼうと窓の外を 眺めている椅子には、誰も座っていない。机の上に何も置かれてもいない。無人を主張するように、ある種の空白感をとも なってただそこにあるだけだ。 人の座らない椅子と机ほど虚しいものはない、と思う。誰かが風邪で休んだとき、あるいはいなくなったとき、そのたった ひとつだけの空白はとても目立つのだ。 ふと、何の脈絡もなく椅子とりゲームを思い出す。椅子が全て埋まっているのに、人間が一つ余っているという不思議。 椅子に意識があれば、きっとそのときの人間と同じなんじゃないかと僕は思う。 一つだけ余っているのも。 一つだけ足りているのも。 それは同じことだ。向きが違うだけで、はみ出していることには変わりない―― 「…………」 なんてことをつらつら考えながら、如月更紗の席から視線をそらした。彼女との奇妙な関係はまだ 誰にも知られていない。始業ベルのなっていないこの時間、空席が一つしかないわけでもない。如月 更紗の席ばかり見ていたら、勘のいいやつには怪しまれるだろう。 如月更紗は、学校では大人しい優等生なのだし。 僕だって――ごく普通の、学生だ。 周りの皆と、同じように。 それは、即ち。 周りの皆も――一歩見えないところでは、同じように壊れているのだろう。 「……結局、僕だって平均値なんだよなあ」 姉さんもそうなのかな――と思いながら、席につく。 どうも今日は思考が散漫している。朝から色々なことがありすぎたせいだろう。まだ学校に来たばかりだと いうのに、帰って昼寝したくなる。いや、帰らなくても昼寝はできるか。一限目だけ授業に出て、ニ限目から は寝るかな……一回や二回休んだところで対して授業に問題は出ないし。こういうとき『困るのはどうせ自分 だ』とでも呟くべきなのかもしれないが、しかし、テストで赤点をとろうが停学になろうが退学になろうが僕 は別に困らないのだった。 姉さんがいなくなった、三年生までは在校したいと、その程度にしか考えていない。 なんで――僕はここにいるんだろうな? そんなことは、誰にだって分からないのだった。 「……本格的につかれてるな」 誰にも聞こえないように呟く。呟かなければやってられなかった。こんなこと、他の誰かに聞かれたら説明に 困るので、できるかぎり音を立てずに口の中だけで響く程度まで声を落とす。そこまでしなくても、朝のがやが やとした教室内では目立たないが、念には念をというやつだ。 神無士乃はいない。年代が違う彼女はここにはいない。それだけが唯一の安息内容だった。 ――と。 がら、と扉が開く。教室の喧騒こそ収まらないものの、何人かの視線が扉へと向かう。時間的に教師がくる可能性 もあったが、なんとなく予感があった。恐る恐る、僕も彼らと同じように扉を見る。 案の定、如月更紗がそこに立っていた。 朝見たとき――つまりは全裸だ――とは違う、きちんと制服を着た姿。ただし、家から出るときに持っていた巨大な キャリーケースは手にしていない。その細い手が持っているのはごく普通の学生鞄で、あの長い鋏が握られていたりも しない。一度自宅に帰ったかなにかして、どこかで荷物を置いて来たのだろう。 そりゃああんな大荷物持って学校にはこれないな――と思う反面、疑問がわいた。 自宅。 如月更紗は、いったい何処で、誰と住んでいるのだろう。 まさか木の股から生まれてわけでもあるまい。両親や家族はいるだろう。住む家は……まあ、無いと 言われても驚きはしない。さもありなん、と思うだけだ。 如月更紗は、僕のことを深く知っていた。 僕は――如月更紗のことを、何も知らない。 「…………」 それが少しだけ、心に棘を刺した。その棘が何なのか、よく分からなかったけど。 如月更紗は僕に一度だけ視線を向け、止めることなく視線を流した。ぼうと空の机を 見ていた僕とはえらい違いだ。一瞬視線が絡んだことなど、僕と如月更紗以外には誰にも 分からなかったに違いない。 誰に挨拶もせず、如月更紗は教室を縦断し、彼女の席についた。話しかけるものは誰もいない。 いつも通りの朝だった。 いつも通りに、始業の鐘が鳴った。 96 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/27(土) 00 25 21 ID zq2tTUAY 二限目。授業をさぼって保健室に行くと 「遅かったわね」 当然のように、如月更紗がベッドで横になって僕を待っていた。 「…………」 つい数時間前に見た光景をデジャヴして脳がくらりと悲鳴をあげる。幸いというか、最悪にというべきか、 如月更紗は服を着ていなかった。脱いだ制服がきちんとハンガーにかけられている。上も下もきちんとかけられ ているので、今毛布の下の如月更紗は下着姿だろう。 「偉いでしょう? 皺にならないようにしてるのよ」 僕の視線を読んだのか、如月更紗はどこか自慢げにそういった。 悪いが、全く自慢にならない。 「せめてジャージでも着てろよ……」 「あら、あら、あら。冬継くんは体操服とブルマがお好みと?」 「誰がそんな話をした! 僕が言ったのはジャージだ!」 「嫌よ」如月更紗は眠そうにあくびをして、「あんなものを着るのは、私の美意識が許さないわ」 「まあ、あの野暮ったいジャージがお前に似合いそうにもないことは保証してやるが……」 「ちなみに下着も着ていないわ」 「それは着ろよ!」 「私の美意識が――」 「お前のソレはただの露出癖だ!」 首の下あたりまで毛布が被さっているため、如月更紗の言葉が真実かどうか判別するすべはない……いや、むきだしの首 筋とか鎖骨とかが見えていて、肝心の下着の紐が一切見えていないということは、少なくとも上はつけていないことになる。 朝のときといい、今といい、寝るときには何もつけないタイプなのだろう。 しかし……学校でまで…… 僕の疑問をやはり顔から読んだのだろう。如月更紗は微笑んで、 「生まれるときと――死ぬときくらいは、余計なものはいらないと思わない?」 「…………」 「装飾品を全て削り落として、人格も全てこそぎ落して、何もかもをなくして―― さながらチェスのように、白と赤に染まって終わりたいとは、思わない?」 「……チェスは白と黒だ」 一応突っ込むが、如月更紗の微笑みは変わらない。僕にだって分かっている――彼女の言うところの『チェス』は、 普通のチェスではない。 赤と白のチェス。 言うまでもなく、不思議の国のアリスだ。 「白い肌が赤い血に染まって――ってか。寿命って線はないのかよ」 「考えられる?」 「ちっとも」 そこは素直に頷く。 僕にせよ彼女にせよ誰にせよ、寿命で死ぬところなど、想像もつかない。 「毛布をはぎとりたそうな顔をしてるわね」 「してねえよ! 脈絡のない嘘をさらりと言うのは止めろ!」 「毛布をはぎとりたそうな存在をしてるわ」 「存在意義すら捏造された!?」 「ちなみに私は――きっと、毛布をとりたそうな顔をしているのでしょうね」 「格好つけて言うのは構わないが、やっぱりお前のそれはただの露出癖だ」 童話で脱ぎたがりの御姫様とかいたっけな……狂気倶楽部でのコイツの二つ名は、きっとそんな感じに違い ない。棘姫とか、その辺が適任なんじゃないだろうか。鋏持ってるし。 「それで……なんでお前ここにいるんだよ」 無理矢理に話を戻す。無理矢理戻さないとずるずると脱線してしまうことを、ここ数日の付き合いで思い知っている。 つぃ、と、如月更紗は僕へと手を伸ばした。何もつけていない、付け根から指先まで肉のない細い裸腕が僕へと伸ばされる。 伸びた爪先が、惑うことなく僕を狙っていた。 「貴方が、ここにいるから、よ」 「…………」 97 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/27(土) 00 54 51 ID zq2tTUAY 「話したいことがあったから、先に来てたのよ」 眠かったしね、と冗談めかして如月更紗は付け加え、手で口元をかくして欠伸をした。 移りそうになる欠伸をどうにか堪える。この女の前で大口あけて欠伸をしたら、その口に鋏 を突き入れられる気がしてならない。 どうせ、毛布の中か枕の下にいつもの鋏を隠しているんだろう。 「……眠いのか?」 「一晩緊張していたから」 「チェシャがくるかも、と?」 「そうね」如月更紗は頷き、「いつ貴方に襲われるかと戦々恐々と緊張していたわ」 「前後の文が繋がってねえ! そもそも自分から裸になっておいて――」 「据え膳を食べる男なのね」 「…………」 そういわれると立つ瀬がない。実際、神無士乃がきていなかったらにゃんにゃんしていた可能性だって なきにしもあらずなのだ。 いい加減恥かしいので、話を戻す。 「チェシャは――人の家に平気で真夜中に襲撃かけるような常識知らずなのか」 「いえ。常識を知っているからこそ、よ」 言って、口元を押さえていた手をするりと枕の下にもぐりこませ、如月更紗は見慣れた鋏を取り出した。 何度見ても心地良く感じない、物騒な鋏。その鋏の持つ部分に指をかけ、くるりと回して、如月更紗は切っ先 を僕に向けた。 「狂気倶楽部には、二つの原則がある。遺書を書くことと――外側と線を引くこと」 「…………」 遺書と――区分分け? 「前者は置いておくとして……この場合の問題は後者。チェシャもアリスも、常識を知っているから、常識を知りすぎて いるから、決して学校や人前でしかけてくることはない。けれど逆に――路地裏や廃ビルや、夜中の家や街だと、遠慮なく 襲ってくる。『日常と違う場所』という、一種の異界だから」 「異界って……同じ世界だろ」 「そう、同じ世界。けれど、違う世界だと思い込める、そういう場所が必要なの」 これはこれは、大きな大仰な『ごっこ遊び』なのだから。 そう、如月更紗は言葉をまとめた。 「ごっこ遊び……」 「儀式、と言い換えてもいい、そういう場が必要なの。その線を越えれば――ヤマネのように事件になる」 また――知らない名前だ。 ヤマネ。 恐らくは、不思議の国のアリスに出てきた、眠り続けるヤマネのことだろう。そしてそれは、狂気倶楽部 の人名でもあるはずだ。 そいつもまた――姉さんの事件に、関わっているのかもしれない。 そう思うと、黙って話を聞く以外の選択肢はありえなかった。 「だからこそ今は安全で……だからこそ、今は休息を取らないと。 今夜にでも、あの子は来るのかもしれないわ」 ふぁあ、と如月更紗はもう一度欠伸をして、鋏を元に戻した。案外、本当に眠いのかもしれない。 「だから冬継くん」 「なんだよ」 「今日は一緒に手を繋いで帰りましょう」 「手を繋ぐ意味はあるのか……?」 「私が嬉しいわ」 「……。嫌だといったら?」 「手を繋いで帰るわ」 そこで如月更紗は言葉を切り、にっこりと笑って、 「あなたの手を切り取って、繋いで帰るわ」 「怖いことを笑顔で言うな! 余計に怖いだろうが!」 「冗談よ」 「それこそ嘘だろ……」 「 98 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/27(土) 01 05 01 ID zq2tTUAY はぁ、とため息一つ。無論それは形だけだ。 一緒に帰ろうという如月更紗の提案は、学生同士の甘酸っぱい約束でも何でもなく、純粋に『学校 帰りに襲われる可能性がある』と指摘しているに過ぎない。僕の身の安全を保証するといった如月更 紗が下校を共にしようというのは、わからないでもない。 同年代の女の子に守られることに抵抗がないわけでもないが……それよりも、何よりも。 狂気倶楽部同士で食い合ってくれたほうが――僕としては、都合がいい。 「…………」 ただ問題があるとすれば、下校を一緒に帰るということは、神無士乃を置き去りにしなければ ならないということだ。如月更紗と神無士乃の三人で一緒に帰るなどという自殺行為をする気は ない。それどころか、朝臭いを覚えられている可能性がある以上、引き合わせることさえ危険だった。 そもそも、今日の放課後は神無士乃と約束があったんだっけ。 どうしよう、と悩みながら、悩む時間を確保するために、僕は如月更紗に質問する。 「なあ、如月更紗」 何? と首を傾げる如月更紗。むきだしのうなじと鎖骨が艶かしく蠢く。学校でこんな 姿をしてるなんて――十分倒錯的だ。一応カーテンでしきられているものの、誰かに見られたら どうするんだ。 ……既成事実ができるだけか。 心の中で、心の底からため息一つ。 「お前、先回りしたって言ったよな」 「言ったね、言ったわ」 「どうして――僕が保健室にくるってわかったんだよ」 「ああ、そんなこと」 くすり、と、如月更紗は意味ありげに渡って。 「入学したときから、ずっと見てたもの――貴方が保健室にいくときの態度くらい、覚えてるわよ」 「…………」 ストーカー? ストーカー……なんだろうなあ。 狂ってる? 狂ってる……んだろうなあ。 人のこと、言えないけど。 ちょっと可愛いと思ってしまう辺り――もう駄目なんだろうけど。 さて。 そんな如月更紗に対して、僕はどうするべきなんだろう――――? 99 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/27(土) 01 07 51 ID zq2tTUAY 以上で九話終了です 先人を見習って選択肢でもつけてみようかと思います A.如月更紗と時間を過ごす B.神無士乃と時間を過ごす C.今すぐ家に帰って姉と会う 100 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 01 15 07 ID 6OO4cR14 99 A!!! 101 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 01 15 52 ID BLGls1Cl いない君といる誰かキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!! GJ! >ちょっと可愛いと思ってしまう辺り――もう駄目なんだろうけど。 俺はとっくの昔に更紗たんに萌えまくり(;´Д`)ハァハァ だから選択肢も当然 rアA 102 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/27(土) 01 19 51 ID N3CylHm4 99 GJ!!です どこかエロスを感じさせる文章にゾクゾクさせられてます 文章の書き方も見習わせていただきます 本当にありがとうございました 103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 02 34 36 ID YRtPIB7z 99 A以外選択肢が見えない件 104 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 04 27 36 ID kKCDeWwi 99 Dのニア ころしてでも いきぬく 105 名前:埋めネタ投下終了 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/27(土) 05 02 00 ID N3CylHm4 流れを切ってしまってすいません。 『ひどいよ!おおこうちさん』を前スレに投下しました。 もしよろしければご一読を。 注意:パロディです。 ただ、ちょっと時間の感覚を掴みにくいかもしれません。 では先ほどまでの続きをどうぞ ↓↓↓↓↓↓↓↓ 106 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/01/27(土) 05 07 54 ID qP+9mHCU 99 欲張りな性格なので全部ということで 107 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 11 21 05 ID b6Tld6i3 更紗はどことなく森野っぽいな 懐かしい 108 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 14 43 53 ID 613OV8Yp 99 もうAしか見えない 109 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 15 46 49 ID 6OO4cR14 105 あなたもGJ Aがいいとは言ったものの死んだ姉に会いに行くのもなかなか危険で良い気がしてきた… 110 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 15 52 53 ID xD6FLWAu Bで 111 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 15 58 33 ID P74dswY9 アネスキーの俺にはCしか見えないな 112 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 17 05 44 ID iKaAdTYm Aですね。 113 名前:ミツバ[] 投稿日:2007/01/27(土) 17 09 46 ID 6hTEtMR1 Bでお願いします。 114 名前:渋沢夏恋の話◇ミツバ[] 投稿日:2007/01/27(土) 17 32 49 ID 6hTEtMR1 ――告白しよう。 私こと渋沢夏恋は、唯一の肉親である、渋沢剛毅を誰よりも愛している。 思えば私は、剛毅がより私の愛を感じる事が出来るように、いろいろと手を尽くしてきた。 十五年前、剛毅に対して私以上の愛情を注いでいた両親を、交通事故に見せかけて亡きものにした。 ――私以上に剛毅を愛する者などあってはならない。 両親の葬儀の際、多くの人が『可哀想に…』と私に同情してくれた。 けれど、剛毅とのふたりきりの生活を夢想する私にはどうでもよいことだった。 私達を引き取ろうとする親族もいたが、丁重に断った。 「ふたりきりの家族ですから、これから支えあっていきたいと思います」 親族達はそんな私を気丈だと誉め、そっとしてくれた。 ――正直助かった。もし強引に引き取られでもしたら、その人たちまで殺さなくてはいけなくなるところだった。 殺人はどうでもよいが、警察に嗅ぎつけられたら剛毅と離れ離れになってしまう。 115 名前:渋沢夏恋の話◇ミツバ[] 投稿日:2007/01/27(土) 17 49 51 ID 6hTEtMR1 剛毅が小学校に上がる時はとても心配だった。 剛毅は私の為に操を立ててくれると信じでいるが、クラスの汚らしい雌餓鬼共が剛毅を誘惑するかもしれないからだ。 私の危惧は当たった。 剛毅が雌餓鬼を連れて帰ってきたのだ。 掴みかかりたい衝動を堪え、よそ行きの笑顔を張り付かせた。 唇を噛むと、血が滲んだ。 その痛みの報復は、その日のうちに晴らした。 ――次の日、剛毅は酷く落ち込んでいた。 駄目だよ?私の前では笑顔でなきゃ。 剛毅の笑顔はこの世で一番可愛いんだから。 夕食になっても剛毅は落ち込んだままだった。 話を聞いてみると、昨日一緒にいた雌餓鬼が、バラバラにされて発見されたらしい。 なぁんだ、そんなこと、剛毅が気にする必要ないのよ? その夜、剛毅を慰めるために、私たちは一戦を越えた。 116 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 19 05 09 ID Hy1Lr/32 キモ姉ですか。 ……これからに期待させていただきます。 ところで、トリップは付けないのでしょうか? みたところ、直接◆の後に「ミツバ」と入れているようですが……。 117 名前:ミツバ[] 投稿日:2007/01/27(土) 19 16 21 ID 6hTEtMR1 トリップは立派な職人さんの証だと考えているので、恐れ多くてつけられません この話は一人称のみで書いていきたいと思っています 118 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 19 24 44 ID N3CylHm4 115 剛毅が小学校に上がる時はとても心配だった。 ちょwwww早すぎwwww あ、このスレでは普通か 117 では、気が向いたら使ってください。 ↓ トリップの付け方(嫉妬・三角関係まとめサイトより) 名前欄にタイトルのあと、「半角# + 秘密の文字列」でトリップが出ます。 (例) 鮮血の結末 7#abcdefg → 鮮血の結末 7◆v/rTh0HxaQ になります。 119 名前:ミツバ[] 投稿日:2007/01/27(土) 19 31 54 ID 6hTEtMR1 わかりました。 あ、しばらくは夏恋の回想で話を進める予定です。 ちなみに登場人物の現在の年齢は、 剛毅→17歳 夏恋→20歳 …あれ、てことは夏恋は5歳で童貞を失ったということに…… 120 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 19 51 51 ID N3CylHm4 119 小岩井よつば吹いたwwww 121 名前:ミツバ[] 投稿日:2007/01/27(土) 20 00 49 ID 6hTEtMR1 120 小岩井……? すみません、勉強不足で元ネタ分からないので教えてください。 122 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 20 06 29 ID N3CylHm4 小岩井よつば(♀) あずまきよひこの漫画「よつばと!」の主人公。 めがっさ元気な女の子。五歳。 googleで検索したほうがわかりやすいと思う。 123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 20 19 52 ID lTBU4TLV 何か色々と素人っぽいように見えますが、作品の『先』は見えてますか? 長編を書くつもりなら、ある程度筋書きを決めておかないと終われませんよ? 124 名前:埋めネタ投下終了 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/28(日) 07 21 29 ID wFSh9mQ6 『ひどいよ!おおこうちさん』を前スレに投下しました。 もしよろしければご一読を。 また脳内に妄想が浮かんだら新たなSSを投下しますので、 そのときはよろしくお願いします。 125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 07 42 42 ID VVpTfat0 GJ! 126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 14 52 20 ID mqZacx+v これ置いておきますね つ「病み鍋PARTY」 ttp //amane.dyndns.info/yami/ 127 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 17 02 58 ID bT6KQYqF 126 本州か・・・おいは九州の人間だから本州さ怖くて行けねぇ。 行ってみてぇけんど、ヤンデレ本欲しいけんど、むりだぁ。 みんなで楽しんできてけろ。 128 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 18 27 03 ID +4y5EUiI 行く人は報告ヨロ。 委託してたら買うかも知らんで。 ちなみに、俺は愛知県。 5回乗り換え、約3時間半と約11000円かけねば行けね……orz 129 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 18 52 43 ID SQxqzpns 今ならイベント参加もぎりぎり間に合うのか 問題は金と絵と時間だな…… 見るだけ見にいってみるかなあ 130 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 19 32 18 ID FMqSkYE+ これは…行きたいけどひぐらしとハルヒ知らない俺にも買えるオリジナル物はあるのかな。 131 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 19 37 44 ID MfdIXOF/ 130 ちょい待て。ハルヒはこのスレ的にヤンデレで決定してるのか? ・・・・・・まあ俺もハルヒはヤンデレものを好んで読んでるけど。 132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 20 07 55 ID FMqSkYE+ 131 ハルヒがヤンデレと言うよりヤンデレの二次創作物はハルヒが多いかな、と思って。 冬コミでも見かけたし、ヤンデレ二次創作物は他はひぐらしくらいじゃないのか? 133 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/29(月) 20 27 27 ID SQxqzpns 「あら、駄目ですよ」 後ろからかかる声と共に――止められた。 無理矢理に、脚を止められた。 止めざるを得なかった。 横薙ぎに脚を包丁で切られれば、誰だって足を止めるだろう。 右足から感覚が消え、うまく走ることができずに右半身から床に倒れこむ。受身を取ることすら できなかった。どうにか手をついて頭を床にぶつけるのだけは防ぐ。 遅れて――痛みがくる。 脚に、痛みが。 痛い。 それ以上に――熱い。脚が熱い。熱いのに、冷えていく。 脚から血が、抜けていく。 「兄さんに乱暴しようなんて――私が許しません」 上から声がする。さっき後ろで聞こえていた声が、今度は上から聞こえてくる。高い、女の子の声。 聞いたことのない声は、笑っている。 楽しそうに、笑っている。 「兄さんに触れるなんてとんでもない。触れていいのは、私だけです」 笑い声が近づいてくる。同時に、きぃ、きぃと車輪の音が聞こえる。 何の音だ――疑問に思いながら、力を振り絞って、身体を仰向けに戻す。 車椅子に乗り、血に濡れた包丁を手にした少女が、楽しそうに笑っていた。 「男の方も、女の方も、関係ありません。兄さんの側にいていいのは私だけです。 私は兄さんだけのもので、兄さんは、私だけのものです。 そうでしょう――兄さん?」 最後の言葉は、僕ではなく、松葉杖をついた男に向けられたものだった。 男は、目の前で起きた惨劇に眉一つ動かすことなく、退屈そうに答える。 「お前が言うなら、そうなんだろ」 「ええ、その通りです。だから――貴方は、邪魔者です」 退屈そうな男と対照的に、少女はどこまでも楽しそうだった。 おかしそうに、笑っている。 犯しそうに――笑っている。 「お前、は……」 脚の傷を手で押さえる。ぬるりと、血に濡れる感触がする。それでも血が止まらない。フローリングの床に、血が だくだくと、だくだくだくと広がっていく。的確に、これ以上ないくらいに正確に動脈を切られたのだろう。 急いで手当てをしないと、間違いなく死ぬ。 いや、手当てをしても怪しい――そして、それ以上に。 目の前の少女が、それを許すようには見えなかった。 「ごめんなさい。ここは貴方の家なんでしょうけど……今は、私と兄さんのための世界なんです」 くすくすと、車椅子の少女は笑う。血塗れの包丁にはそぐわない、純粋無垢な笑みだった。 少女は笑う。 男は笑わない。 僕は―― 「は、はは」 僕は、笑った。 「はははははははははははははははははははははははははは!」 笑うしかなかった。 なんだ――これは。 一体なんで、こんなことになっている。理不尽だ。曖昧だ。唐突すぎる。伏線も前ぶれも何もなく、理由も意味もなく、 ――僕は、殺されるのか。 姉さんを殺した奴にですらなく。 その妹に――邪魔だという、それだけの理由で、死ぬのか。 馬鹿げている。 狂っている。 どいつもこいつも――狂ってやがる。 「はははははははははははははははははははははははは!」 僕は笑い、笑い、笑って、 「煩い」 喉に包丁が突き刺さって――それ以上、笑うことはできなかった。 134 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/29(月) 20 29 50 ID SQxqzpns げ ごめんなさい投下先間違えました 前スレに埋めネタ投下中です 135 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 20 59 23 ID MfdIXOF/ 本当に会いに行ってしまった・・・・・・ だがGJ!! 132 ひぐらしの二次創作って 『あの時こうしていたらハッピーエンドだったのに』 っていうのが多いのかな? 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 22 50 31 ID GflRSjlw ひぐらしのヤンデレものは表層的で好かんな 狂ってしまうほどに真っ直ぐ主人公を愛するヒロインの一途さに惹かれるわけで。 退廃的なエロス万歳! 137 名前:名無し@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00 06 02 ID /y3XY1Td 「ね、ね、にーちゃ、きょ、今日、お家いるの?」 「あ? いるけど? 何、なんか用?」 「う、ううん。よ、用事とかじゃ、な、ないんだけど。えへ、に、にーちゃと一緒にいれるな、て。お、思ったから。う、嬉しいな。えへへ」 俺は力任せに妹の鼻っ柱を殴りつけた。華奢な身体の妹は、二メートル近く吹き飛んだ。俺は妹に近寄ると、髪の毛をわし掴む。 「や、にーちゃ。い、いた、痛いよぅ」 「いいかい、美都? 俺はお前の何?」 「に、にーちゃ」 「違うだろ」 もう一発、鼻に入れる。ただ、さっきより全然力は入れていない。 「ご主人様。オーケー? 言ってみな」 「ご、ごしゅじんさまぁ」 「ん、良い子だね美都。ほら、キスしてあげるよ。お前犯されるの好きだろ?」 「ん、んぅ、や、にゃ、に、にーちゃ。気持ち、いい、よぅ」 「んー良い子良い子。ほら、鼻血出てるぞ。ご主人様が舐めて拭いてあげるよ」 「く、くすぐったよぅ。に、にーちゃはやっぱりやさ、や、優しいね。えへ、えへへ。に、にーちゃ大好き」 「……美都、俺はお前の何?」 「え? え? に、にーちゃはにーちゃだよ。ち、違うの!?」 「……んーん。違わないよ、美都。ほら、おいで。部屋でいい事したげる」 「う、え、えちぃのはや、やだよ? こ、怖いから、や、だよ?」 「お前は本当バカだなぁ。まあそこが可愛いけどね。あと俺に命令すんな」 「え、えへへ。ほ、褒められちゃった。に、にーちゃに褒められ、ちゃった。う、嬉、嬉しいなぁ。えへへ」 屈託の無い妹の笑顔。俺は妹の唇に自分の唇を重ね合わせると、そのまま押し倒した。欲望が、止まらない。 「にゃ? ふぇ? に、にーちゃ、だ、だめだよ! こ、ここ廊下だ、だよ!? は、恥ずかしいよぅ……」 「いいだろ。どうせ父様も母様も今日は帰って来ないし。俺が一日中犯してあげる」 「ほ、ほんと? に、にーちゃきょ、きょお、お家い、いてくれるの?」 「おうそうだよ。なんせ俺はエライからね。ほら、喜べよ」 「えへ、え、えへへへ。う、嬉しいなぁ。に、にーちゃがずっとい、一緒にいてくれ、いて、いてくれて嬉しいなぁ」 「おうおう。俺もお前をずぅっと犯せて嬉しいよ。ほら、我慢出来ないからさっさとヤらせろよ」 「に、にーちゃ、だ、大好き」 「はいはい」 俺は、ひどく性欲を誘発するその幼い肢体に、舌を這わせる。 練習してみた。正直ぜんぜんヤンでる気配がないのは俺の力不足ということで一つ。 138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00 25 32 ID vVDVVog3 投下しますよ 139 名前:『首吊りラプソディア』Take2[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00 26 48 ID vVDVVog3 結局何の誤解も解けないまま、俺達は食事に向かうことになった。勘違いされたままで 向かうのは不本意だが、久し振りにカオリと食事をするというのは胸が踊る。可能ならば フミヲとサキが居ない方が良いのだが、フミヲは何が楽しいのだろうか、いつもの下品な 笑みを浮かべていて帰ろうとする様子は欠片もない。サキはサキで俺から離れようとせず、 既にお馴染みとなった無表情のまま黙って着いてくる。こいつの場合は仕事の相棒だし、 常に隣に居るのが不自然だと思われないよう、監視しなければいけないという理由で俺と 共に行動している。真面目なのは良いことだが、それのせいで人を完全に性犯罪者として 扱ってくるのは流石に疲れる。今とて近寄るだけで妊娠してしまいそうだと理不尽な理由 を付けて微妙に離れているのだ。何と極悪なんだろう。 「虎吉ちゃん、どこで食べるの?」 「焼肉かと、とにかくスタミナの付くやつを食いたい」 ここに入るまで引き継ぎやら委託やらで疲れているので、体力がほしいのだ。カオリが 『首吊り』でないと証明するだけでなく、ここから出してやる為の捜査もしなければいけ ないので、これから忙しくなるだろう。頭脳担当のサキのような人間ならともかく、現場 で叩き上げられたタイプの俺は足で調べることしか出来ない。 意見を求めてカオリを見ると、少し嫌そうな顔をしていた。 140 名前:『首吊りラプソディア』Take2[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00 28 37 ID vVDVVog3 「最近腰の辺りがちょっと」 それもそうか。俺にとってカオリは妹といった感覚がの方が強く子供扱いをしてしまう けれど、こいつも年頃の娘だ。流石に野暮だったかもしれない。 「それに先輩にスタミナ料理など与えてしまったら、どうなるのか分かりません。何しろ 過去に前例のない変態なのです、精力が付いたら一大事になります」 サキは黙れ。 「なら近くに良い店知ってるわよ。第三惑星の極東地区料理のお店なんだけどね」 それが無難なところか。元々俺もカオリも第三惑星の出身だし、下に馴染んだ味の店と いうのは助かる。第二惑星の料理は苦味が多いし、第四惑星の料理は基本的に辛味が強い のであまりカオリには食べさせたくない。変な味という訳ではないが、癖の強い味に慣れ てしまうと娑場に出たときに大変だろう。過保護という言葉が、不意に思い浮かんだ。 フミヲに案内されるままに歩いていると、立ち入り禁止のテープが見えた。こんな仕事 に就いていると珍しいものではなくなってくるが、善良な罪人として普通に暮らしている カオリには辛いものがあったのだろう。悲しそうに目を伏せ、テープから視線を外した。 「どんなだった?」 「両手が吹き飛ばされていたらしい、気分悪い」 「『首吊り』って、本当に居たんだ」 141 名前:『首吊りラプソディア』Take2[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00 30 44 ID vVDVVog3 野次馬の方に耳を傾けてみると、どうやら『首吊り』の仕業だったらしいことが分かる。 本当に厄介だ、しかも殺し方がえげつない。早く解決しないといけないと自覚し、カオリ の頭を撫でた。その存在に只でさえ怯えていて、しかもその容疑はカオリにかかっている のだ。それにこのままでは都市伝説どころではなく実在の殺人鬼だという話が流れ、監獄 都市自体も正常に機能しなくなる可能性もある。 何か証拠があるかもしれない。 そう思いテープの向こう側を見つめていたが、側頭部に軽い打撃が来たことにより思考 が遮られた。衝撃の方向に視線を向ければ、サキの冷たい顔が見えた。サキは首筋を指で 示した後でカオリを見て、小さく首を横に振る。それだけで言いたいことが分かった。 カオリを無視して現場に向かえば、捜査がばれる。どうせ鑑識の人間が調べているのだ から、今はそちらに意識を向けず、普通に振る舞っておけということだ。 俺は軽く頷くと、先に進んでいたフミヲに小走りで追い付いた。 「メシはまだか?」 「そこだよ」 指差す方向を見れば、店の看板。 「あ、何か良い感じ。虎吉ちゃん、早く入ろ」 先程のことを忘れる為だろうか、急かすカオリに促されて店に入る。少し進むと、随分 と懐かしい匂いが漂ってきた。故郷の匂いとでも言うのか、家の匂いというのか、幼い頃 から体に馴染んだ極東地区料理独特の匂いが何とも快い。フミヲは慣れた様子で店員に何 か一言二言告げると、奥の座敷に向かった。俺達もそれに続く。 142 名前:『首吊りラプソディア』Take2[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00 31 31 ID vVDVVog3 「うわ、懐かしい。畳なんて久し振りに座ったよ」 「少し金がかかるが、管理局に届ければ注文出来るぞ?」 たまに畳でないと寝た気がしないどころか、生活している気にならない人も居る。俺も 管理局に入った頃はそんな状態で、仕事よりも寧ろそっちの方が辛いときもあった。それ は飲食物も同じで、今ではすっかり自炊が特技の一つになってじまった程だ。 「それにしても、よくこんな店知ってたな?」 「報道課は範囲が広いし、よその噂も情報の一つだからね」 成程な、フミヲなりに頑張っているという訳か。食べ物屋は自然と情報が集まる場所で、 管理局の人間が居ても怪しまれない。報道課としては、捜査の上で必要なのだろう。 「そういえば、最近大量の上様領収書が来ていると事務課の友人が言っていましたが」 俺も愚痴を言われたことがあるが、まさか、 「お前か?」 「必要経費よ、必要経費」 このカマ最悪だ。 「ね、虎吉ちゃん。どれ食べる?」 カオリは嫌な話題を変えるように、苦笑を浮かべてメニューを広げた。この四人の中で 一番の年下だというのにフォローもしっかりしている、何とよく出来た16歳なのだろう。 違う、この場合は年下の少女に気遣わせている俺達が問題なのか。良い年をした大人三人 が、一体何を馬鹿やっているのだろうか。 吐息をしつつ適当に料理を注文し、茶をすする。 「あれ、サキちゃん飲まないの?」 フミヲに言われて気付いたが、サキの湯飲みの中身が全く減っていない。 143 名前:『首吊りラプソディア』Take2[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00 32 34 ID vVDVVog3 「もしかして極東地区の食い物が駄目だったか?」 「そんなことないです。わたしは第二惑星出身ですけど、寧ろこっちの方が好きで」 サキも第三惑星出身だと思っていたが、違ったようだ。第三惑星でなら平均に近い身長 だけれど、基本的に大柄な人間が多い第二惑星では小柄な部類に入る。なるほど、それで 納得がいった。サキの乳が小さい理由は、遺伝子的なものだったのだ。身長が小さいなら、 それにバランスを合わせるように乳の成長も小さな時点で止まるだろう。しかしカオリの ように小柄でありながらも少し乳の大きな奴も居るし、何と言うか、 「可愛いなぁ」 「どこ見て言ってるの!?」 いかん、つい凝視してしまった。 カオリは恥ずかしそうに顔を赤らめ、慌てて胸を腕で隠した。そして変質者を見るよう な目でこちらを眺めてくる。うっかり忘れていたが、俺は今は前代未聞の変態という設定 なのだった。これでは本格的に痴漢と変わりない、俺は改めて首輪と上層部を呪った。 「それで、何で飲まないんだ?」 強制的に話題を戻し、サキを見る。 「猫舌なんです」 意外だった。てっきりこいつのことだから、どんなに熱いものでも顔色を変えずに淡々 と食事をすると思っていた。それに熱いなら熱いで確率システムを使えば簡単に冷ませる と思うのだが、そうもいかないらしい。サキは悔しそうな表情で俯いて、 「温度調節は苦手で」 再び意外なことを言った。 エリートだし、新人の中でトップの成績だというので万能だと思っていたのだが、サキ もやはり人間だったということか。どんなに完璧に見えても、誰にでも欠点はある。 代わりに少し冷ましてやると、 「ありがとうございます」 いつも通り抑揚の少ない、無感情な声で言って、飲み始めた。 144 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 00 35 52 ID vVDVVog3 今回はこれで終わりです 次回でやっと『首吊り』登場 理想のヤンデレが書きたいです 145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 03 55 22 ID LlhQwxlc 137 こういうの凄く好きだわw 続き書いてくれたりしませんか 144 GJ 次回にwktk 146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 07 11 30 ID 4JoeR5yd 144 GJ! これからの病みっぷりに期待しています 147 名前:完全世界[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 07 26 38 ID WgKNhTCo 「…ゴメンネ…ゴメンネ…」 そう呟きながら僕の胸に頬を擦り付けるように抱きついているのは幼馴染みの祐子だ。 小さかった頃には、ゆうちゃん、なんて呼んでいた仲だ。 今では、その…恋人になっていた。 その祐子に何で謝られてるのか、だって? それは、祐子が─── 「…ゴメンネ…ヒック…、ゴメンネ…ふ、フライパンでぶっちゃったりして…グスッ…」 と、言うことだ。 「ゆ、祐子、わかったから、この、手を縛ってる紐、解いて、くれない…?」 「…ダメ」 あまりの痛さに、朦朧としながらの僕の願いは、苛立ちを隠さない祐子によって即却下された。 「な、んで…?」 「だって、そうしたら○○ちゃん、どこか行っちゃうでしょ…?」 「どこにも…いかないよ…?」 なんだか要領を得ない言葉を紡ぐ祐子。 僕の言葉にも黙って首を横に振るだけだ。 僕の言葉に嘘は無いのだけれども。 「ゆ、ゆう、こ?」 「だ、だって、だってね? ○○ちゃん、私の事今まで、『愛してる』って言ってくれない、んだもん…グスッ」 「……」 148 名前:完全世界[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 07 27 55 ID WgKNhTCo 「私は、私はね? ○○ちゃんの事、ずぅぅぅっと、ずぅぅぅっと、愛してるの… でも、でもね? ○○ちゃんは、私の事、『好き』なんでしょ? わ、私はね? 本当は、ズルい、嫌な女なの…ヒック だから、『好き』じゃ、不安なの… ううん、足りないの…グスッ… だからね? ○○ちゃんを、私だけの物にしよう、って ちょっとだけ、痛いかもしれないけど…アハハ…。 い、良いよね?○○ちゃん…アハッ…」 狂った眼で、狂った笑顔で、狂った詞(ことば)を、真摯にぶつけてくる祐子。 それに、僕は、狂っているとは思わなかった。 僕はむしろ、情けなく、悔しく、そして、ほんの少しだけ、嬉しかった。 「…い、いよ」 「え?」 「ぼ、僕を祐子の物にしても…いいよ」 「○、○○ちゃん!」 「でも、一つだけ、伝えたいんだ」 「…」 「祐子、ずっと愛してる」 「…ヒック…グスッ…わ、私も、ずっと愛してます」 そう、二人で言葉を交わした後。 祐子が持っていた、鈍く光を反射して輝く刃。 それで、お互いの首筋を────裂いた。 それぞれの血を体に浴びながら 僕と祐子は誓いのキスをした。 永遠で、絶対の、約束。 そうして、僕達の世界は、完全世界になったんだ。 149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 07 30 03 ID WgKNhTCo 突然思い付いたので書いてみた。 もしかしたら、『~世界』シリーズを作るかもしれない。 150 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 07 43 20 ID 4p8rZw3G 137 144 149 そろってGJ!!そしてwktk しかし、ヒロインだけでなく主人公もどこか病んでるな。 やはりヤンデレ女を受け止められるのはヤンデレ男だけなのか? 151 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 12 42 49 ID gQDfGKGv 406 :名無したん(;´Д`)ハァハァ :2007/01/29(月) 10 00 16 ID 0CUCKJoS ttp //kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi72370.jpg ttp //kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi72372.jpg.html 152 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 16 00 14 ID GqLZUNZh そういやヤンデレ男を中心にしたSSって見ないな もっとも描写力が足りないとヤンデレ男は変質者にしかならないってこともあるがw 153 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 17 13 09 ID MfeofgEp 150 朱に交われば赤くなる、なんてのも。 154 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 19 05 26 ID 0z4voIX5 ◆Z.OmhTbrSoさんの嫉妬SSスレ 295ネタを寝ないで待ってる俺が居る… 155 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 19 59 44 ID g6cZmyPM 154 呼んだ? 元ネタ ↓ 295 :名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 09 23 41 ID FMqSkYE+ 小学生くらいの子供がさ、弟妹ができたときにお母さんを取られたと思って 弟妹が嫌いになる話ってあるよね。 あれで思いついたんだけど、弟妹が欲しくて欲しくて仕方がなかった女の子が、母親が 妊娠したと言って大喜びするんだけど、母乳を飲んだり母がべったりと甘やかすところを 想像して"弟妹"ではなく"母親"に嫉妬。 まだ生まれていない愛しの弟妹を奪うため、母親のおなかを包丁で…なんてのが頭に浮かんだ。 「うふふ、きみはお姉ちゃんが産んであげる。 だからママのおなかなんてところからはさっさと出ようね…ううん、出してあげる!!」 こんな感じ。でもこれってここじゃなくてヤンデレスレ向きだなぁ… 細かいところは違うので、そのつもりでお願いします。 156 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 00 32 ID g6cZmyPM 姉弟(おやこ)の絆 『誠二、おかえりなさい』 姉さんの声が聞こえる。 暖かくて、包み込まれる声。 でも普段聞いている声とはどこかちがう。なんだろう。 『もう。十ヶ月も目の届かない場所にいたなんて・・・・・・ これからは私のそばから離れちゃだめよ』 ・・・・・・?おかしい。 記憶にある限りでは、学校行事を含めても姉さんから 一週間以上離れていたことはない。 『でも、大丈夫。 私とあなたの間には強い絆があるから。 誰もそれを引き裂くことなんて出来ないわ。 これからは、ずっと一緒よ――』 声が遠ざかり、光が射してくる。 この感じは――夢だ。 どおりで姉さんの声が子供っぽく聞こえるわけだ。 「誠二ー! 朝よー! 起きなさーい!」 あれ?いきなり大人っぽくなった? ・・・・・・違うか。この声は昨晩おやすみの挨拶をしたときと同じ声。 今年27才になった姉さんの『現在』の声だ。 からっぽの頭に無理やり意識を詰め込む。 目を開けると、姉さんの顔が目の前にあった。 「おはよ。清子姉さん」 157 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 01 16 ID g6cZmyPM 姉さんの顔が目の前にある。近い。近すぎる。 僕が上体を起こすか、姉さんが顔を下ろせばすぐにキスできる距離。 さらに腕をがっちりホールドされている。逃亡不可能。 「姉さん・・・・・・今日は上から? 右から? それとも左?」 「さぁ? わかっちゃったら面白くないでしょう・・・・・・? こ・う・い・う・こ・と・は」 ゆっくりとした動きで体を摺り寄せてくる。胸のあたりに柔らかい、ふくよかな感触がある。 その感触は姉さんの動きに合わせて変幻自在に形を変える。 「無理やりは反則だからね」 「あら残念。私は無理やりも結構好きなんだけどなぁ・・・・・・」 潤んだ瞳で僕の目を見つめてくる。 「そんな目をしてもだめ。それより、今日はいつもより時間をかけてやってもらうからね」 「じゃあ、私はあったかいものをいっぱいいただこうかしら・・・・・・」 そう言って姉さんは目を閉じる。目を閉じたまま顔を近づけてくる。 僕はそれに対して―― すぐさま右に首を曲げて、姉さんの唇を避けた。 「ちっ!今日はそっちだったか!今日こそはと思っていたのに・・・・・・」 「はい、僕の勝ち~。じゃあ今日のご飯当番は姉さんだね。よろしく。」 しぶしぶうなづいて姉さんは僕の体の上からどいた。 しかし、部屋を出て行くことなく僕の方を見つめている。 「・・・・・・なに?姉さん」 「うふふ。うふふふふ。せいじくぅん? それは何っかな?」 「へ?・・・・・・だぁわぁぁぁぁぁ!」 姉さんは僕の――生理現象&さっきのやりとりで大きくなってしまった――股間を見つめていた。 「お姉ちゃんに欲情して劣情を抱いてソコが感情を爆発させてしまったのね?」 「でてけぇぇぇ!」 「照れなくてもいいのに・・・・・・『全部』、知ってるんだから。 じゃあ、早く来てね。今日はいつもより手の込んだ料理作るから!」 怪しい笑みを浮かべて、姉さんは台所に向かった。 なぜかいつもよりご機嫌だった。 158 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 02 26 ID g6cZmyPM いつもより豪華な朝食を食べてから学校に行く準備をしていると、 スーツを着た姉さんが部屋に入ってきた。 「姉さん。今日は編集部で打ち合わせ?」 「ええ。ついさっき電話があってね。・・・・・・まったく。今日は大事な日だって言うのに」 なにやら苦々しい表情をしている。最後に言った言葉はよく聞こえなかった。 「それでね誠二。今日ね・・・・・・より道しないで早く帰ってきて欲しいんだけど」 「? 今日なにかあったっけ?」 「え? 今日何の日か覚えてないの?」 本気で驚いている。そう言われても・・・・・・姉さんの誕生日はこの間祝ったし。 今日は学校があるんだから祝日でもないはずだ。 「いえ、思い出せないならいいのよ。それで、早く帰ってきてくれる?」 「うん。いいよ。今日は誰とも会う約束してないし」 僕の返事を聞くと、姉さんは嬉しそうな顔で部屋を出て行った。 ・ ・ ・ 学校での生活を普段どおりに送って家に帰ってきたら、姉さんが笑顔で迎えてくれた。 「誠二! おかえりなさい! さぁさぁ早く上がって! お祝いしましょ!」 「え、ちょ、ちょっと待って! なんのお祝いなのさ!」 「入ればわかるわよ! ほらほら歩いた歩いた!」 姉さんに背中を押されて居間に入ると、朝食以上に力の入っている料理が テーブルの上にところ狭しと並べられていた。 「うふふ。どう? お姉ちゃん頑張ったのよ」 「すごい量だね、これは・・・・・・それで今日は一体何の・・・・・・って、あっ!」 壁にかけてあるカレンダーにはこう書いてあった。 『1月30日 誠二19才の誕生日』 「そっか。今日は僕の誕生日だったんだ・・・・・・全然思い出せなかった」 「そういうこと。さ、座って。お祝いしましょ」 「う、うん・・・・・・」 姉さんの笑顔を見ていたら反論するのを忘れてしまった。 ――僕、まだ18なんだけど。 でも、毎年姉さんは僕の年齢に一を足して数えている。 だからいつものことだと思って姉さんとの誕生パーティーを楽しむことにした。 159 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 03 26 ID g6cZmyPM どこの貴族の食事かと思うほどの美味しい料理と誕生日ケーキを食べ終えて、 その余韻に浸っていると、姉さんがアルバム写真とデジタルカメラを持ってきた。 「じゃあ早速、19才になった誠二の写真を撮ることにしましょうか」 「姉さん。僕はまだ18才・・・・・・」 「誠二。笑って笑ってー。お姉ちゃんが夜這いかけてきたと想像してー」 『カシャッ』 デジタルカメラがフラッシュを放ち、僕の姿を写真におさめた。 いきなり撮られたからどんな顔をしていたか分からない。 できたらもう一度撮り直してほしいところだが―― 「うん。よく撮れてる。じゃあ待っててね。すぐに印刷してくるから!」 せっかちなカメラマンの姉さんはそう言い残すとすぐに居間から出て行った。 あとには僕一人が残された。 手持ちぶさたになったので、アルバムを開く。 中身は全部僕の写真で埋め尽くされている。 ほんと、姉さんは几帳面だな・・・・・・僕が赤ん坊のころからずっと続けているなんて。 一番最初の写真はどれだろう。一番最初のページの左上の写真。これだな。 日付は・・・・・・ 『1988.2.18』 あれ? 確か僕の生まれた年は1989年のはずだ。 不審に思い、写真を裏返したらこんな文章が書いてあった。 『やったやったやったやった! 私の弟が家に来てくれた! お母さんありがとう!』 私の弟、ということはこれを書いたのは姉さんだな。 ん?ということはやっぱり僕は1988年生まれで、今日19才になったってことなのか? 次の写真を見てみると、また赤ん坊の写真だった。今度は 『1989.2.19』と右下に印刷されている。 写真の裏にはこう書いてある。 『ようやく誠二が家に帰ってきてくれた。 もう離さないからね。誠二』 160 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 04 19 ID g6cZmyPM ・・・・・・どういうことだ?写真の赤ん坊は――正直言って見分けがつかないけど、 一年も経っていればもう少し成長しているはずだ。 もしかして成長が遅い病気?・・・・・・いや、それはないだろう。 もしそうなら僕は同年代の皆と同じ体格をしていないはずだ。 だとすると、この『1988年』生まれの赤ん坊と 『1989年』生まれの赤ん坊は別人ということになる。 それはつまり。 「僕が・・・・・・『誠二』が二人いる・・・・・・?」 頭が混乱する。どうなっているんだ?僕の誕生日は?・・・・・・1月30日だ。 じゃあ生まれた年は?・・・・・・1989年だ。 でも、本当にそうなのか? 今まで何度誕生日を迎えたんだ?18回?19回? だめだ。小さい頃の記憶なんてまったくない。 僕にはわからない。誰か他に知っている人は・・・・・・ 「お待たせー。いい写真ができたわよー」 ・・・・・・居た。姉さんだ。姉さんに聞けば分かるはずだ。 「ね、ねえさん・・・・・・この写真のことなんだけど・・・・・・」 「え?ああ、誠二が『この家に初めて来た日』と『ひさしぶりに帰ってきた日』の写真よ。 本当、嬉しかったわ。特に帰ってきてくれた日なんか親戚みんなが集まっちゃって」 ――この写真を見て、おかしいと思っていないのか? 「ひさしぶりに帰ってきたって・・・・・・僕はどこに行ってたのさ?」 僕のこの質問に対して姉さんは、 「え?そんなことも忘れちゃったの? あなたは十ヶ月くらい、私のおなかの中にいたのよ」 とても嬉しそうな表情で答えた。 161 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 05 28 ID g6cZmyPM 思考が働かない。落ち着け。 よく思い出せ。姉さんは今なんて言った? 『あなたは私のおなかの中にいたのよ』 姉さんの、おなかの中にいた・・・・・・?僕が? 「忘れてても無理ないか・・・・・・居なくなったとき、まだ誠二は0才だったものね」 僕は0才のときにいなくなった・・・・・・ 「せっかくだから教えてあげる。誠二が居なくなったあの日、家に強盗が入ったの。 そんなときに限ってお父さんが運悪く居なくって、体調を崩してたお母さんと誠二が襲われた」 僕と母さんが襲われた・・・・・・ 「ちょうどそのときに帰ってきた私が見たのは、血に濡れたナイフを持った強盗と、 血を流して倒れてるお母さんと誠二の姿だった。 その後は私も殴られて気絶してしまったから、二人を助けることが出来なかった」 じゃあ、僕は一度死んでいた・・・・・・? 「その後は本当に生き地獄だったわ。お母さんはいない。誠二もいない。 何にも食べられなくなったし、何もしようと思わなかった。 あのころ、私が何をしていたかなんて全く記憶に無いわ」 やっぱり、僕は死んで・・・・・・ 「でも、ある日おなかに違和感を感じたから親戚のおばさんと一緒に病院へ行ったの。 そしたらね! 私のおなかの中に子供がいるって言われたの! 私は確信したわ。 『誠二はやっぱり生きていた。生き残るために私の中に避難してたんだ』って!」 でも、実は生きていて姉さんの中に・・・・・・? 「それから、周りの人間たちの反対を押し切って私は・・・・・・あなたにようやく再会したの。 十ヶ月ぶりに見るあなたはあのときのままで、本当に嬉しかった」 頭がさらに混乱する。僕は死んだけど、実は生きていた。 いや、ちがう。死人は甦ったりしない。そんなことはありえない。 ということはつまり。 「・・・・・・僕は二人目の『誠二』・・・・・・」 162 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 06 58 ID g6cZmyPM 信じていたものに裏切られた気分だ。 清子姉さんは『姉』じゃなくて『母』だった。 姉さ・・・・・・じゃなくて、母さん?ずっと、物心ついたときから一緒にいた女性が母さん? つまり、この人は。 「僕をずっと、騙していたんだね・・・・・・」 「騙していた? 何のことを言ってるの?」 「ね、――清子さんが! 僕を産んだってことだよ!」 「違うわよ。あなたは強盗から逃げるために私のおなかに避難した。 そしてもう安全だと思ったから、私に会いたいと思ったからおなかから出てきた。 『出産』じゃないわ。『再開』よ」 いつもと何も変わらない話し方だ。 自分の言っていることに何の疑問も持っていない。この人は。 「あなたは私の弟よ。1988年1月30日生まれ。19才。 父親の名前は一誠。母親の名前はみどり。姉の名前は清子。 好きな人はお姉ちゃん。好きな食べ物はお姉ちゃんの作る料理。 将来の夢は、お姉ちゃんのお婿さんになること」 「うそだ・・・・・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ! 全部嘘に決まってる!」 こんなの、嘘だ。 僕の母さんは居ない。清子さんは姉さんだから母さんじゃない。 でも、清子さんは姉さんじゃない。僕を産んだんだから母さん・・・・・・? 「朝起きて最初に考えることはお姉ちゃんのこと。 学校で考えることはお姉ちゃんのこと。 寝ているときに見るのはお姉ちゃんと結ばれる夢」 じゃあ、目の前にいる女の人は誰だ?母さんでも、姉さんでもない『家族』。 この女の人は、誰なんだ? 誰なんだよ!あなたは一体僕の何なんだ! 「私はあなたの『姉』。実の『姉』。 そして、あなたの全てを知っている人間。 だから――あなたの全ては私のもの」 わけがわからない。目が回る。吐きそうだ。 もう、立っていられない―――――― 163 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 07 40 ID g6cZmyPM ・ ・ ・ 「おはよう。誠二」 「おはよう。姉さん」 「誠二。今日の朝――んンッ?!」 「ん・・・、ふぁ・・・ねえ、さん・・・・・・」 「ちゅ・・・んはあ、せいじぃ・・・・・・んちゅ・・・・・・」 「ん・・・・・・ぷはぁ。今日も僕の負けだね」 「もう・・・・・・いきなりするのは反則よ」 「だって、姉さんの顔を見てたら我慢できなくてさ。 だから・・・・・・」 「あら。嬉しいこと言ってくれるじゃない。 じゃあ、私も今日はいつもより激しくしてあ・げ・る」 ・ ・ ・ 「ねえ、誠二?」 「なに?姉さん」 「私はあなたの『なに』?」 「そんなの決まってる。 最愛の『姉』にして、僕の生涯の伴侶さ」 「んふふ。いい子ね。 そんないい子の誠二くんには、 一日中一緒に寝てあげるご褒美をあげます」 「ありがとう・・・・・・姉さん。愛してる」 「私もよ・・・・・・誠二」 僕たちは、姉弟だ。 164 名前:姉弟(おやこ)の絆 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 10 03 ID g6cZmyPM 嫉妬SSスレのほうを巡回していたら 『ヤンデレ』のキーワードに反応して、書いてしまいました。 もし破綻している部分があったら・・・・・・存分にお叱りください。 165 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 14 06 ID 0z4voIX5 ヒャッホォォォォォォォォォォォォォォォォォウ! GJです。待っていた甲斐がありました、ご馳走様でした。 ところで父親が気になります。8歳での妊娠は不可能ではないといえね。 166 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 28 50 ID iiwiEutx GJ!! レイープされたショックで病んでしまった母親ですか? ……これも、なかなか。 167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 40 16 ID t6kctdyq 152 流石にヤンデレ男じゃ萌えないよ 168 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 20 48 19 ID 4JoeR5yd 164 GJ! こういう病み方も(・∀・)イイ!! 169 名前:訂正 ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/01/30(火) 23 21 45 ID g6cZmyPM 162 『出産』じゃないわ。『再開』よ」 『出産』じゃないわ。『再会』よ」 でした。ごめんなさい。 170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/31(水) 07 32 41 ID ql59vair SS保管庫更新ハヤス 管理人さんご苦労様。 171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/31(水) 12 20 40 ID BjVtf4Zb この強盗になりたいと思った性犯罪者予備軍は手をあげろ ノシ 172 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/31(水) 12 37 53 ID jqzVvAh1 171 悪いがそれはお前だけだ 173 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/31(水) 20 47 12 ID 0qUkUVJe 172 ワリィ、オレもなりてぇとおもた。 174 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/31(水) 21 01 44 ID j2NFLfp9 おまいら・・・・・・ 175 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/01/31(水) 23 16 57 ID 0ZE27T3t 弟の方が羨ましいだろ、常識的に考えて…… 176 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/31(水) 23 39 55 ID C6nX4lQD 十話(A.如月更紗と時間を過ごす)を投下します 次が多分山場突入なので、少し短めですがごめんなさい 177 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/31(水) 23 40 54 ID C6nX4lQD 「……話したいことっていうのは、他にはないのか」 言って――僕は如月更紗の隣、白いベッドの上に腰掛けた。学校の保健室のベッドなんて、 そんな大そうな大きさを持っているわけではない。一人用の、こじんまりとした安物ベッドだ 。手を届くまでもなく、如月更紗と毛布ごしに身体が触れてしまう。毛布の下に何もきていな いと考えると、色々こう、心にくるものがあるが――その辺は勤めて考えないようにする。 如月更紗の黒い髪が、黒く長く綺麗な髪が、白い毛布の上に広がっている。その内の一房を 、特に意味もなく手にとる。手の中を流れていく柔らかな感触があった。 「今なら……なんでも聞いてやるぞ。どうせサボったついでだ」 元々――授業はサボるつもりだったのだ。なら、隣のベッドで寝るのも、如月更紗の話を聞 くのも同じことだろう。 だったら、話くらい聞いてやってもいい気がした。 今は――そんな、気分だった。 如月更紗は、僕に提案に、ベッドに横になったままかすかに微笑み、 「冥土の土産に教えてやるぜ――という奴かしら」 「お前の中の僕はどれだけ外道な奴なんだよ!?」 保健室で寝ている同級生の寝込みを襲うような奴に見えるのか……? 冗談ならばともかく 、真顔でうん、と答えられたら恐らく一生モノのトラウマになることだろう。 如月更紗はしばらくの間真顔で考え込み、 「……メイドに土産を教えてやるぜ?」 「何を教えるんだ何を」 「それは勿論、勿論のことナニを――」 「そういうオヤジみたいなことを言うな!」 裸の同級生にオヤジ発言をされると、倫理観が崩壊しそうだった。 元から崩壊しているかもしれないが。 「冬継くんはメイド服、好きなのかしら?」 「え、話そっちに飛ぶの? さっきまで僕ら真面目な話してなかったっけ」 「言っておくけど、言っておくけれど、メイド服とゴスロリ服は違うわよ」 「……?」 意図が分からない。 意図ではなく、意図がわからない。 はてなマークを浮かべる僕に、如月更紗はどこか陰鬱そうに言葉を続けた。 「似たような服でも、職業制服と精神論では大違い――ということね。忠告しておくけれど、 人によっては同一しただけで怒るわよ」 「怒るのか」 ウィキとウィキペディアを混合すると真っ赤になるような人と似たようなものだろうか。 「怒るどころではないわね。例えば私の知り合いに《逆転ビーバー》という人がいるけれど」 「また愉快な二つ名の友人がいるんだな」 「いるけれど。その人の前でそんなことを言って――生爪を剥がされた人がいるわ」 「…………」 生爪。 生爪を――剥がす。 想像しただけでも痛い、絶対に想像したくないことだった。まだナイフを腹で刺されるとか 、屋上から突き落とされるとかの方が想像としてはマシだ。爪剥ぎという行為は、妙にみみっ ちくて現実味があるせいで、余計に痛そうに感じる。 逆転ビーバーがどんな人間かは知らないが、会いたいとは思わなかった。下手なことを言っ ただけで爪をはぐような相手とお知り合いになりたいとは思えない。 178 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/31(水) 23 42 07 ID C6nX4lQD 「ちなみに、同じ場で『脱がせば一緒のことだね』言い放った人もいるわ」 「お前だろ、それ」 間違いなく、お前だ。 お前以外にいるとは思えない。 というか、いてほしくない。 「そういうわけで冬継くん、貴方はメイド服とゴスロリ服、どちらが好きなのかしら?」 「僕? 僕は――」 不意の質問に考えてしまう。 メイド服。 ゴスリル服。 考えたこともなかった。どちらがいいとか、そういうことを考えたことは全くなかった。 姉さんは――そういうことに、無頓着だったから。 少なくとも、家の中では。 「……姉さんは」 「?」 「姉さんは、狂気倶楽部では――」 どんな服を着ていたんだよ、と言いかけて。 め、と、如月更紗の人差し指が、すばやく僕の唇に添えられた。 それ以上話してはいけないと、瞳が語っていた。 「その名前は――外で、気軽に口にしていいものではないの」 「…………」 「秘密中の秘密。抱えたまま死ななければならない。もし狂気倶楽部に終わりがくるとすれば ――それは間違いなく、一蓮托生なのだから」 その言葉は、きっと何の誇張もないのだろう。 調べた限り、狂気倶楽部にいる人間は、誰も彼もが傷を負っている。 それは、 身体の傷だったり、 心の傷だったり、 それ以外の傷だったりする。 共通するのは、誰もがまともではいられなかったということだ。もし狂気倶楽部という場が なくなれば、それだけで暴走してしまう人もいるだろうし――無秩序めいた秩序が崩壊するこ とによって、暴走する子も出てくるに違いない。 陽が沈めば、おままごとはお終い。 ふと。 全てが終わった後でも、如月更紗は、変わることなく生きていくのだろうかと、そんなこと を思ってしまった。 「……いいのかよ、そんなこと言って」 「ん?」 「僕の願いは――狂気倶楽部の破滅かもしれないんだぜ」 姉さんを殺した奴の破滅を願っている。 姉さんを殺した奴らの破滅を願っている。 それが、狂気倶楽部そのものに向かないとは、自分でも言い切れない。むしろ、姉さんがい なくなってしまった以上、何もかもを道連れにしたいと――考えていないといえば、嘘になる 。 考えてしまえば致命的になってしまうので、考えないようにしているけれど。 179 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/31(水) 23 43 07 ID C6nX4lQD 「ああ、ああ、ああ! なんだ、そんなこと」 如月更紗は、本当に、心の底からどうでもよさそうに言った。 存続も滅亡も。 生も死も――関係がないと、言うかのように。 如月更紗は、言い捨てる。 「それもまた、面白いわね」 ぞくりと、した。 横になったまま、僕を見上げている如月更紗の言葉には、微塵も嘘が含まれていなかった。 いつもの韜晦でも、冗談でもなく、真に面白いと言い捨てているのだと、如月更紗の瞳は告げ ていた。僕を見つめる瞳がそらされることはない。揺れることもなく、惑うことなもく。 如月更紗の瞳は、にやにやと、にやにやにやと、笑っている。 楽しそうに、笑っている。 ――ああ。 今更に、思い出す。 今更に、思い知らされる。 こいつもまた、狂気倶楽部の一員なのだと。 そんな僕の心境に気付くこともなく、如月更紗はいつものように微笑んだ。 「まあ、私は臆病だから……沈む船から逃げさせてもらうけれどね」 「脱兎の如く――ってか。お前はウサギじゃないんだろ」 「そうね。今のウサギは、あの兄妹。それに冬継くん、一つ言わせて貰うけれど、沈む船から 逃げるのはネズミよ」 「そうだったっけか?」 脱鼠の如くって言葉は無かったような……ああそうか、そもそものことわざが違うんだ。あ あれはもともと、沈む船からは鼠が逃げていくという、そういった伝承を元にしていたはずで、 脱兎の如くとはまったくの別物だ。 「もっとも、あの勇敢な鼠の騎士は、最後の最後まで船に残って……ついには東の海の果てに まで、いってしまったけれどね――」 そう言葉を結んで、話は終わりとばかりに、如月更紗は瞼を閉じた。口実ではなく、本当に 眠かったのかもしれない。 あまり邪魔するのもあれなので、僕はベッドから離れようとし、 「――――」 離れようとした裾を、毛布の腋から伸びる、如月更紗の手がつかんでいた。 立ち上がろうとした微妙な姿勢で僕は止まり、ぎぎぎと、音のしそうなほど不自然な動きで、 如月更紗を見る。如月更紗は、まるでウィンクでもするかのように、片目だけを開けて僕を 見ていた。 瞳は、楽しそうに笑っている。 「おやすみなさい」 笑ったまま、如月更紗はそういった。けれど手は離さない。ここにいろ、ということなのだ ろう。 どうしようか、悩むまでも無く。 ため息を一つ吐いて、僕は再び、如月更紗の横に腰掛けた。そして如月更紗の髪を、いつの 日にか姉さんにしたように撫でて、僕は言う。 「ああ、おやすみ」 僕の言葉に満足したのか、如月更紗は片目を閉じて、今度こそ眠りについた。暫く待つと、 すう、と、安らかな寝息が聞こえてくる。 こうしていれば――普通の同級生にしか、思えないのに。 僕も、こいつも、普通の高校生にしか見えないというのに。 「…………ふう」 ため息を一つ吐いて、僕は如月更紗の髪を一房つかんだまま、彼女に沿うようにして上体を 倒した。 今くらいは、何も考えずにゆっくりと休みたかった。 180 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/01/31(水) 23 43 43 ID C6nX4lQD 以上です 181 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 00 21 42 ID +xvnNo/H 180 GJ! ヤバいな、ここまで物語に引き込まれたのは初めてだ……次回の山場に期待してます 182 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 00 28 09 ID iJP02Vjg GJ! 更紗派の俺はwktkが止まりません 183 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 02 51 15 ID i1K/FEjt ちょww 冬継君はこのまま寝たら『学校で同級生と同衾した変態』扱いに……。 184 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 07 35 36 ID vZfTTU6H いいやそれだけなら…。 全裸の同級生と…変態! GJ!! 185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 09 39 22 ID 53EV+rUE このスレは本当に質が高いな。GJ! 186 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/01(木) 23 18 02 ID 5llf4frG 前スレに埋めネタを投下しようとしたら既に埋まってた 187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 23 22 29 ID i1K/FEjt Bルート投下キボンヌ(゚∀゚)!! 188 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 23 45 55 ID 1U+KQnna 今、俺の目の前にはチョコレートがある。 そして俺はいったいこれからどうすればいいのか考えていた。 数ヶ月前、28才彼女無し趣味は2chの俺は何をどうやって奇跡を起こしたのか姫野亜弓に 告白された。駅で見て一目惚れしたと。彼女は少し痩せ気味ではあったが青白いほどの 肌をした割と美人な女性だった。告白されたのだが、二次元にしか興味が無くロリ属性を 兼ね備えた俺は丁寧にお断りした。もう少し正確に理由を言えば手首に刻まれた何本もの 傷跡が俺を思いとどまらせた。 そして、姫野亜弓はストーカーになった。 まず、無言電話から始まった。電話をとらなければ一晩で50回以上かけてきた。 履歴が50までしか残らないので本当は軽く3桁をこす回数なのだろう。着信拒否をかけると 公衆電話からかかってくるようになった。 この頃からメールも来るようになった。俺が朝何時に起きて飯は何を食い、誰としゃべって トイレにいつ行ったかこと細かに書いてあった。そして、夕飯がカップラーメンってのは 健康に良くないです、体を壊さないか心配です、とか、今日話していた子は化粧が濃くて あなたには釣り合いません、などと逐一コメントがあった。 非通知電話と 189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 23 47 23 ID 1U+KQnna 5人の友人に姫野から電話があった翌日、俺は帰り道で物陰から姫野をひきずり出して 思い切り平手で殴った。 そして大声でふざけんなストーカー女がいい加減にしろ、てめえの事なんざゴキブリ程度にも 思ってねえんだよというようなことを喚いて去った。 それが3日前だ。 そしてつい数時間前。 「はじめまして姫野真弓です」 姫野亜弓の妹だという女が訪ねてきた。 とりあえずその子を家にあげることにした。制服だし見たとこは女子高生だ。 「これ、お姉ちゃんからです」 「…えーと、俺にってこと?」 「はい。チョコレートです。バレンタインの。少し早いですけど」 「ちなみに今…亜弓さんはどうして…?」 「傷がちょっとやっぱり膿んじゃって発熱してます。あ、命に別状は無いから大丈夫ですよ」 「俺のせいか…」 「え?違いますよ?手首です手首。傷つけることは良くあったんですけど切り落としたのは初めてで…やっぱり危ないですよね。だから指にしようって言ったのに」 「……」 「じゃあ、長居するとお姉ちゃんに殺されるんで私帰りますね」 「あ…ああ」 「チョコ、絶対に食べて下さいね。お姉ちゃんの身を削った愛が詰まってるんですから」 190 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 23 48 58 ID 1U+KQnna むしゃくしゃして書いた。反省はしている。 このスレのみんなに早いにも程があるバレンタインを。 お茶会の方、Bルートお待ちしております!! 191 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 23 58 12 ID 1U+KQnna き……途中で切れてる…投下しなおしてみる… 192 名前:1/4[sage] 投稿日:2007/02/01(木) 23 59 22 ID 1U+KQnna 今、俺の目の前にはチョコレートがある。 そして俺はいったいこれからどうすればいいのか考えていた。 数ヶ月前、28才彼女無し趣味は2chの俺は何をどうやって奇跡を起こしたのか姫野亜弓に 告白された。駅で見て一目惚れしたと。彼女は少し痩せ気味ではあったが青白いほどの 肌をした割と美人な女性だった。告白されたのだが、二次元にしか興味が無くロリ属性を 兼ね備えた俺は丁寧にお断りした。もう少し正確に理由を言えば手首に刻まれた何本もの 傷跡が俺を思いとどまらせた。 そして、姫野はストーカーになった。 まず、無言電話から始まった。電話をとらなければ一晩で50回以上かけてきた。 履歴が50までしか残らないので本当は軽く3桁をこす回数なのだろう。着信拒否をかけると 公衆電話からかかってくるようになった。 193 名前:2/4[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 00 00 25 ID 1U+KQnna この頃からメールも来るようになった。俺が朝何時に起きて飯は何を食い、誰としゃべって トイレにいつ行ったかこと細かに書いてあった。そして、夕飯がカップラーメンってのは 健康に良くないです、体を壊さないか心配です、とか、今日話していた子は化粧が濃くて あなたには釣り合いません、などと逐一コメントがあった。 非通知電話と彼女のアドレス(とおぼしきもの)も受信拒否をすると電話はさすがに 無くなった。が、メールだけは東南アジアだとかアフリカだとかの訳の分からないサーバーを 経由して送られてきた。姫野亜弓にはハッカーの才能があったらしい。 登録しているアドレス意外からはメールを受け取れないようにした。すると今度は 2日に一回、郵便受けに手紙が舞い込むようになった。 俺は次々と連絡手段を絶つ意外は一貫して無視の態度をとっていた。 下手に反応を返せば喜ぶと思ったからだ。 だが、しばらく手紙攻撃が続いた後で友人達に手が及んだのには腹がたった。電話で もう彼とは付き合わないで下さい、あなたといるとあなたの汚さが彼にうつるかもしれない、 彼をたぶらかさないで下さい等々と述べたてたらしい。 194 名前:3/4[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 00 01 14 ID xMkeqk+n 5人の友人に姫野から電話があった翌日、俺は帰り道で物陰から姫野をひきずり出して 思い切り平手で殴った。 そして大声でふざけんなストーカー女がいい加減にしろ、てめえの事なんざゴキブリ程度にも 思ってねえんだよというようなことを喚いて去った。 それが3日前だ。 そしてつい数時間前。 「はじめまして姫野真弓です」 姫野亜弓の妹だという女が訪ねてきた。 とりあえずその子を家にあげることにした。制服だし見たとこは女子高生だ。 「これ、お姉ちゃんからです」 「…えーと、俺にってこと?」 「はい。チョコレートです。バレンタインの。少し早いですけど」 「ちなみに今…亜弓さんはどうして…?」 「傷がちょっとやっぱり膿んじゃって発熱してます。あ、命に別状は無いから大丈夫ですよ」 「俺のせいか…」 「え?違いますよ?手首です手首。傷つけることは良くあったんですけど切り落としたのは初めてで…やっぱり危ないですよね。だから指にしようって言ったのに」 「……」 195 名前:4/4[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 00 02 22 ID xMkeqk+n 「じゃあ、長居するとお姉ちゃんに殺されるんで私帰りますね」 「あ…ああ」 「チョコ、絶対に食べて下さいね。お姉ちゃんの身を削った愛が詰まってるんですから」 姫野真弓は言いたいことだけ言って帰って行った。 そして俺の前にチョコレートが残されている。どうすべきか。 食べるという選択肢は無い。一切無い。…切り落とした手首の行方を俺は知りたく無い。 だが捨てるのは…果たして捨てて大丈夫な代物なのか。腐敗臭のする可能性のある状態で あれば俺が疑われる危険性がある。 とりあえず箱を開けて形状を確かめればいいのだが…もし手の形をしたチョコレートが 入っていたら俺はきっと立ち直れない。 俺はいったいどうすればいいのか。答えは当分出そうに無かった。 196 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 00 03 30 ID xMkeqk+n ミスすまんorz 197 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/02/02(金) 00 20 05 ID NEr9ZgPx gj! 嫉妬スレ見てたらギャルゲの中のヒロインに襲われるみたいな奴あったけどあれなんかどうよ! 198 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/02/02(金) 01 10 09 ID vnQLuJ/g これは程よく病んでますね(*´ρ`*) 個人的には 189の科白で終わるのも嫌いじゃない。 199 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02 12 03 ID 7Ww8SaUH GJ! やっぱりホワイトデーに襲われて手首切り取られるんだろうか Bルートはトゥルーなので、Aの本ルートが書き終わったら書くかもしれません。 というわけで11話投下します 200 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/02/02(金) 02 13 44 ID 7Ww8SaUH いい天気だった。 どうしようもないくらいにいい天気だった。真上に太陽があるせいで、余計にそう思う。遠 くに流れる雲はあるものの、夏の近づく空は遠く遠く遠くにまで蒼い。あの空を泳げたらさぞ かし気持ちがいいだろうとがらにもなく思う。それほどまでに、いい天気だった。 太陽が真上にあるせいで、陽射しが余計に強く感じた。じりじりと、コンクリートから照り 課す熱を感じる。 「……昼間だから当然だよな」 虚しい独り言を言うが、虚しさに変化はなかった。むしろ言葉に出したせいで、感じる必要 のない物寂しさまで覚えてしまった。 横に立つ如月更紗が、突如立ち止まって空を見上げて独り言を呟いた僕を見遣り、暑さを感 じさせない淡々とした声で言う。 「悲しい姿ね」 「お前が言うなよ」 「さもしい姿ね」 「お前が言うなよ!?」 「いやね、いやだわ、冬継くん。さもしいにはえっちぃとかそういう意味は含まれてないわよ」 「お前自覚してんじゃねぇか……」 ちなみにさもしいの意味はいやしい、浅ましいであって、この場合どちらにも当てはまらな い。 空を見るのが虚しくなってきたので、視線を地に落す。 隣に、如月更紗がいる。 周りには誰もいない。広い道路の上にいるのは、僕ら二人だけだった。 「なあ、如月更紗」 「なぁに、冬継くん」 「……どうして僕はお前と手を繋いで下校してんだ?」 ぐい、と右手をあげて言う。あがったのは僕の右手だけではない。つられるように、繋いだ 如月更紗の左腕もあげられた。普通の握り方ではない。指と指を交互に絡める、俗に言う恋人 繋ぎだ。如月更紗の指は体温が低いのか、触れていて心地良いくらいに冷たい。だから、繋ぐ ことは不快ではないが――さすがに恥かしい。 学校を出るなり、自然と、ごく自然に、恋人同士がさりげなくやるように、不自然さの欠片 もなく如月更紗から手を繋いできたのだ。あまりにも自然すぎて、数十メートル歩くまで手を 繋いだことに違和感を感じなかった。 如月更紗は繋いだ手を『今気付いたわ』という顔を見て、 「……右手と左手、逆の方が良いの?」 「そういうことを言ってるんじゃねえ」 「でも、駄目」 ふるふると首を振り、如月更紗は重苦しい口調で言った。 「右手は、繋ぐわけにはいかないの」 「……どうして?」 嫌な予感がしつつも、訊く。どうせろくでもない返答が返ってくるのだろうが、万が一、億 が一くらいの確率で、マトモな返事が返ってくるかもしれない。 問いかける僕の顔を、僕よりも少しだけ背の低い如月更紗は、かすかに顔を上げて微笑んだ。 幸せそうな、微笑みだった。 「右手で鋏がもてないじゃない」 「本当にろくでもない理由だった――!」 この女、左手で確保して右手で斬る気か。 何から何までやる気満々だった。 「左手でも扱えるけれど――右手の方が速いもの」 「ああそうか分かったからちょっと黙れお前」 はぁ、とため息一つ。万事がこの調子なので、もう大分慣れてしまった。 手を繋ぐのは嫌ではないので、このまま放っておいてもいいだろう。 どうせ、見ている人もいない。 ヤンデレの小説を書こう!Part2-Page2
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1060.html
1 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 12 26 08 ID 4pZbteHl ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。 ○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど) ○ぶつ切りでの作品投下もアリ。 ■ヤンデレとは? ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。 →(別名:黒化、黒姫化など) ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。 ■関連サイト ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 http //yandere.web.fc2.com/ ■前スレ ヤンデレの小説を書こう!Part7 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1180240137/ ■お約束 ・sage進行でお願いします。 ・荒らしはスルーしましょう。 削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、 削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。 ■投稿のお約束 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため) ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。 2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 12 31 23 ID hc+6WlFf 1 乙 3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 12 33 21 ID 27vyMvRd 1乙 関連スレ ヤンデレ総合スレ http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1176178896/ 4 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 18 59 26 ID KNY2XH0W 1乙です 投下します 5 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 01 09 ID KNY2XH0W 「朝歌ちゃん、どうしてここに?」 そう問う織倉由良の表情は硬い。 ある種の感情を無理やりに塗り込めたかのような相好。 無に見える有。 後輩の無とは明らかに違う外貌だった。 対する一ツ橋は先輩の無表情などどこ吹く風と僕を見る。 「約束通り迎えに来ました」 「え?」 約束? 迎え? そんなことあったろうか。 僕が怪訝な顔をすると、心情を代弁するように織倉由良が口を開く。 「どういうこと、朝歌ちゃん」 「言葉通りです」 さ、往きましょう。 一ツ橋は僕を促す。 「ちょ、ちょっと待って!」 先輩は僕を掴む。 「・・・・どういうこと?」 なんで朝歌ちゃんと? どういう約束? 無の隙間から噴出した憤怒を双眸に乗せて織倉由良は僕を見る。 やはり、最近の先輩はどこか変だ。 以前の彼女ならば、穏やかに「どうしたの?」と問うはずだ。 腕を掴むことも、睥睨することも無かったろう。 しかしどういう態度で問われたところで僕には答えようが無い。 迎えの約束なんてした覚えが無いのだから。 (どういうことだ) 目で後輩に訴える。 一ツ橋は僕を睨めつける先輩の間隙を縫って、人差し指を己の口の前に移動させた。 (静かに) 自分に合わせろと云わんばかりに。 「部長。先輩は今日日直なんです。それで私に起こすよう依頼されました」 「朝歌ちゃんに?なんで私じゃないの」 「部長の家は学校を挟んで正反対です。私なら、ここは通り道ですから」 ね。先輩。 「あ、ああ。そうだった。そうなんですよ。先輩。一ツ橋に頼んでたんです。僕がネボスケなのは 先輩も良く知ってるでしょう?」 後輩の思惑はわからないがこれは渡りに船だろう。もしもこのまま織倉由良の朝食を食べて、そのこと が綾緒に知れたら、次は爪一枚なんて生易しい罰では済まなくなる。 幸いすでに着替えは終わっているし、荷物も揃っている。家を出ることに支障は無い。 僕は一ツ橋の発言に乗っかることにした。 「すいません、織倉先輩。そういうわけで、今日は急ぐんですよ」 「・・・・・日ノ本くん。私のご飯が食べられないの?」 「いえ・・・。そういうわけじゃありません。ただ、日直が・・・」 「日直なんてどうでもいいじゃない。貴方は私の持ってきた食材を無駄にするつもりなの?」 「ではそれは私が頂きます」 一ツ橋は遮って先輩の前に立つ。 「・・・・・・・・・・・・・」 織倉由良は暫く小さな部員を見つめていたが、 「そう。わかった」 呟いて、歩き去って往く。 「織倉先輩」 僕は声をかけるが聞こえていないのか聞くつもりが無いのか、答えることなく消えていった。 「・・・・・悪いことしたなぁ」 「平気です。あとでフォローしておきますから」 「すまん。助かる」 僕は一ツ橋に頭を下げた。 「それにしても、今日はなんで急に家に来たんだ?」 6 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 03 08 ID KNY2XH0W 「なんとなくです」 後輩は呟くように。 「昨日、部長と先輩の連枝で一悶着ありましたので、なにか面白いものでも見れるかもしれないと 思って伺いました。私の勘、結構当たるんです」 一ツ橋は瞳だけこちらに向ける。僕の顔ではなく、左手に。 「あ、コレは・・・・ちょっと転んでな」 「・・・・・・」 包帯の巻かれた左手を隠す。 すると後輩は珍しいことに顔をこちらに向けた。 「嘘吐き」 「う・・・」 「昨日、そして今。私は先輩を助けました。その見返りを要求しても良いでしょうか?」 「・・・・・わかったよ」 僕は仕方なく“罰”を語る。 一ツ橋は相変わらず興味があるのか無いのか良くわからない無表情。 総てを聞き終えると「そうですか」とだけ呟いた。 「助かったってのは、食べずに済んだってだけじゃなかったってことだよ。綾緒との約束を破る訳には いかないからね」 天井を見上げる。 口からは自然とため息が漏れていた。 「先輩」 「うん?」 「先輩は、そのイトコの方に迷惑しているんですか?」 「迷惑?まさか」 僕は体を後輩に向ける。 「“こういうの”は正直勘弁して欲しいけどね。でも、僕は綾緒が可愛くて仕方ないんだよ。 あんなに兄思いの妹はそうはいないさ。そりゃ多少往きすぎてるところもあるけど、その辺も含めて 僕は綾緒が気に入ってる。甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるところも。おしとやかで穏やかな ところも。怒ると怖いところもね。全部含めて、大切な妹だよ」 「貴方は莫迦です」 「今頃気づいたのか?」 「再確認です」 再び前を向く後輩。 そう云えば、この娘との付き合いも長い。小学校2年のときからだから、幼馴染と呼べなくも無いの だが。 (いや――) 僕は首を振る。 幼馴染と云うよりはもう一人の―― 「朝歌」 「なんですか。お兄ちゃん」 「・・・・ちょっと待て、一ツ橋」 「なんですか。先輩」 「なんで“お兄ちゃん”と呼ぶ」 「貴方が今、私を名前で呼んだんですよ、昔みたいに“朝歌”って。だから私も昔のように云った だけです。“お兄ちゃん”と」 「・・・・・」 そう。 以前、僕はこの後輩を妹として扱っていた。一ツ橋も一ツ橋で僕に兄事していた。 中学に上がってから照れもあって呼び方を変えたが、そのときから彼女も先輩と呼称したのだ。 今―― 僕は幼馴染と云うよりは妹に近いと考えたから、自然この娘を名前で呼んでしまったのだ。 「・・・・なんか、変に恥ずかしいな、この呼び方」 「いいえ」 憮然とした表情で首を振る。 「こっちの呼び方のほうが、長いです」 「いや、それはそうだけど・・・・って、ああ、そうか」 僕は拍手を打つ。 「どうやって家の中まで入ってきたのか疑問だったが、鍵を渡していたよな、昔」 小学生のときに。 7 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 05 12 ID KNY2XH0W 「はい。持ってます。ですが必要ないと云えなくもないです。鍵の隠し場所、変わってないよう ですから」 「・・・・」 確かに、子供のころから一度も変えていない。 僕は織倉由良を思い浮かべる。 だから先輩は合鍵を作れたのか。彼女も僕の家の鍵の隠し場所を知っているはずだ。 「なあ、一ツ橋」 後輩に問う。 「先輩、最近おかしくないか?なんか妙にあせってるって云うか、鬼気迫るものがあるって云うか」 「具体的にお願いします」 「だからさ、普段の先輩なら、僕を教室まで迎に来たり、朝飯を作りに来たりはしないと思うんだ。 ましてや、家の中に勝手に入ってくるなんて・・・」 「素養はありましたけどね、昔から」 「え?」 「今まで鉄壁だと思っていたガードに実は穴があった。それに気づいただけでしょう。あの人、そんな に強くありませんから」 「どういうことだ?」 僕は首を傾げる。 後輩はあいも変わらず無表情。 前を向き、どこに意識が集中しているのかもわからぬまま。 「――人は、見たいと欲する現実を見る動物である」 そう呟いた。 かの有名な終身独裁官の言葉。 「唐突だな」 「あの人は私のもの。この人は私を愛している。先輩は良い人に違いない。彼女は兄思いの妹だ」 「何が云いたい?」 「MEGALO MANIA」 きついな、一ツ橋は。 「――なら、そう云うお前はどうなんだ?」 「je pense,donc je suis」 返ってきたのは澱みの無い仏蘭西語。 「それ、同類ってことかい?」 僕がそれに皮肉で返すと。 「立場が違います」 動じない後輩は瞳だけ向ける。 「私、唯の傍観者ですから」 「すまんね、急に呼び出して」 楢柴文人(ならしば ふみひと)は到着した僕に頭を下げた。 ここはさる高級レストラン。 時間は夜。 食事を摂るには少々遅い時間。 呼び出しがあったのは夕方のことだ。 綾緒の父にして、母の兄。 名閥・楢柴の総帥にして僕の伯父。 それが楢柴文人。 僕をここへ呼んだ張本人だ。 白いテーブルクロスのかけられた円卓の向こうに座る伯父の姿はやり手の紳士といった感じで、 立ち居振る舞い、表情、雰囲気、総てが良い意味で貴族的な人物である。 「左手、怪我でもしたのかね?」 挨拶を済ませると、伯父はすぐに僕の左手に目を向けた。 「あ、ちょっと転びまして」 「ふむ。そうか、気をつけたまえ。きみが怪我をすると、綾緒が悲しむ」 伯父は荘厳に微笑む。 僕は頷いてそれに返した。少しぎこちなかったろうか。 「きみは――まだ酒は呑めんよな」 ワイングラスを持った伯父は僕に勧めようとして苦笑した。 「ええ。まあ、建前は」 「そうだな。えてして実よりも虚。中身よりもラベルのほうが重要なものだ。ここではそれでいい」 8 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 07 19 ID KNY2XH0W 伯父はグラスを口に運ぶ。唯、飲酒をする。それでもさまになる人はいるものだ。 「伯父さんて、日本酒党でしたよね?」 「ああ。日本酒は実に美味い。だがここで和酒なんぞ飲んでいても嫌味になるだけだ。付き合いで飲む のもワインのほうが多いくらいだしな」 伯父はそう云ってにやりと笑った。 そこに料理が運ばれてくる。高級を謳っているだけあって味は良い。唯、根っからの庶民である僕には こういう空気はどうも馴染まない。 「それで、今日はどうしたんですか?」 空気を払拭するように僕は問う。 楢柴の総帥でもある伯父だ。忙しくないはずが無い。身内相手とはいえ、無意味に食事に誘う暇など あろうはずも無いだろう。何某かの意図ないし企図があるはずだ。 伯父は「うむ」と呟いて酒を飲んだ。 「どうだね、娘とは最近」 「綾緒ですか?仲良くやってますよ。あいかわらず僕が凭れ掛ってはいますけど」 「謙遜をしなくてもいい。押し掛けているのは娘のほうだ。ただ、あれもきみの世話焼きが楽しくて 仕方ないのだろう。往き過ぎた部分は多めに見てやってくれ」 その言葉に笑って返す。綾緒が往き過ぎなのは世話焼きな部分ではないのだから。 「わかっているとは思うが、アレは本当にきみの事を慕っていてね。家でもその事ばかり話すんだよ」 「光栄ですね」 「あの子は孤高、故に孤独だ。だからなのかな、きみがあの子の中で占める割合は私なんぞとは比較に ならん。まるできみしか見えていないようにね」 「・・・・・・」 「正直、あの子に危うさを感じるときがある。恐怖と云ってもいい。海千山千の政治家や、やり手の 同業者、経済界の黒幕、ヤクザの首魁とも問題なく渡り合える私が、愛すべき実の娘に恐怖を覚える。 滑稽な話ではあるが、それが現実でね。夜叉と向き合うような違和感があるのだ。――きみはどうだ? あの子と相対して、何か感じるものはないかね?」 「――」 それは――無くは無い。 綾緒は『従』の中に何かを潜ませている。 僕の左手。 剥がされた爪は、その何か――伯父の云う所の『夜叉』が顔を覗かせたのだと思っている。 けれど。 「・・・・それでも、僕は綾緒は良い子だと思っています」 「・・・“それでも”か」 伯父は目を閉じた。 何かを考え、逡巡している様子だ。 「創くん」 「はい」 「今日きみを呼んだのはね、娘に頼みごとをされたからなんだ」 「綾緒に」 「私自身、その頼みごとには丸で乗り気ではなかったんだが、とりあえず、きみを見ておこうと思って ね」 「・・・・・綾緒はなにをねだったんです?」 「すまんがそれはまだ云えん。近いうちにわかるとは思うが」 伯父はため息を吐いた。 その吐息にはどんな意味が込められているのだろう?感情が読めない。 「――冬来たりなば、春遠からじ、か。しかし冬に死に絶えるものにとって、春の到来など何ほどの 意味を持とうかね。・・・・・・きみには迷惑をかけると思う」 伯父はそう云って頭を下げる。 その顔はどこか疲れているようにも見えた。 「にいさま、くすぐったくはありませんか?」 「ん~。大丈夫。気持ちいいよ」 休日。 従妹は朝から家にやってきて、家事全般をこなす。 それが済むと従兄を膝枕し、耳掃除を始めていた。 つまり、今の僕は綾緒の太腿に頭を乗せていることになる。 従妹は朝から妙に機嫌が良い。 掃除をされる耳の中には先ほどから鼻歌が入ってくる。 9 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 10 01 ID KNY2XH0W 「なあ綾緒、何か良い事でもあったのか?」 ついこの間の伯父の件もある。僕は思い切って聞いてみた。 「はい!わかりますか、にいさま」 「そりゃぁね」 ニコニコニコニコと笑う従妹の顔を見ていれば嫌でもわかる。 綾緒は耳掻きをどかし、僕の頭を撫で始めた。 「実はとうさまに以前よりねだっていたある事を許可されたんです。とうさまは、にいさまが本当に 望んだらと条件をつけましたが、にいさまが綾緒のお願いを拒絶することはありませんから、事は 成ったも同然です。綾緒はそれが嬉しいのです」 「僕?僕がどうかしたのか?僕に関係することなのか?」 つい身体を起こす。けれど従妹の手が僕の身体をやんわりと押さえ、再び頭を己の膝に乗せた。 「にいさまの、ではなく、にいさまと綾緒、二人のことになります。実は本日ここに伺ったのも、 その話をするためなのです」 従妹は妙に優しい手つきで僕を撫ぜる。 気味の悪いほどの穏やかな声。 『何か』を感じずにはいられない気配。 「・・・・・・それ、どんな話だい?」 僅かの戦慄を伴なって綾緒を見上げる。 従妹は笑顔を紅潮させて僕を見下ろしていた。 「女の立場からこのような事を申し上げるのは甚だ無礼であるとは心得ておりますし、面映くもあるの ですが・・・・」 従妹は手を止める。 「にいさま。綾緒とどうか――夫婦(めおと)の約定を結んで下さいませ」 「――え?」 今、綾緒はなんと云ったのだろう。 「ま、待ってくれ、綾緒」 僕は身体を起こし、従妹と対面する。 「今――なんて云った?」 鏡が覗けば、恐らく蒼い顔があったに違いない。 僕は震える声でそう尋ねた。 蒼に対するは、赤。 従妹は頬を手で覆い、「何度も言わせないで下さい」と身を捩る。 「た、頼む、もう一度云ってくれ!」 今のは聞き間違いであるはずだ。 「にいさま・・・そんなに綾緒の口から祝事を聞きたいのですね」 祝事? この子は何を云っているんだ? 従妹は背筋を伸ばす。破顔していた表情を凛と引き締め、 「楢柴綾緒は日ノ本創にいさまをお慕いしております。どうぞにいさま、綾緒との婚約を了承して 下さいませ」 「 」 僕は声が出ない。 この子は今なんと云った。 従妹とはいえ家族そのものと考えている相手だぞ。了承できるものではない。 「綾緒、お前・・・本気で云っているのか?」 「当然です。このような重大事に虚偽を用いるほど綾緒は落ちぶれてはおりません」 「・・・・・・・・・・・」 僕は頭を抱えた。 伯父の逡巡はこれだったのか。 「綾緒」 「はい」 「すまないがそれは出来ない」 「え?」 従妹は呆けた顔をする。 「僕は綾緒を大切な妹だと思っている。だから異性としては見れないよ」 「・・・・・・」 「伯父さんには僕から云っておく。綾緒と婚約なんて出来ませんって」 「・・・にいさま・・・」 綾緒が掠れた声を出す。 10 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 12 02 ID KNY2XH0W 「いくらにいさまでも、このようなときに戯言を口にしてはいけません」 「いや、冗談じゃないよ。今更綾緒をそんな風には見れない」 わかってくれ。僕は従妹に手を伸ばす。 刹那―― 「に い さ ま」 綾緒の雰囲気が一変する。 「あ・・・・」 僕は手を止める。 (まずい) これは、 (まずい) 夜叉が覗いている。 従妹は耳掻きを手に取ると、ゆっくりと立ち上がった。 「にいさま。綾緒の言葉が聞こえませんでしたか?たった今御耳を掃除したと思っておりましたが、 まだ足りぬようですね」 綾緒は僕を抱き寄せて、耳元に口を寄せた。 「聞こえていますか、にいさま?」 「う・・・あ・・・・」 僕は頷く。 体中から汗が噴出しているのがわかる。 「そう。これくらい近ければ聞こえているでしょう。では、もう一度云いますね。――綾緒と夫婦の 約定を結んで下さいませ」 怖い。 恐い。 こわい。 コワイ。 (でも――) こんなのは間違ってる。 「ご、ごめん綾緒。それは受け入れ――」 ずん。 何かが耳内を走り、勢い良く突き刺さっていた。 「――あ゛」 耳。 耳の奥が―― 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい いいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 頭!!! 痛みが頭に響く! 熱くて、痛くて!僕はのた打ち回る。 「こちらの耳は不良品ですかぁ?仕方ありませんねぇ。綾緒が掃除して差し上げます」 グリ。グリ。グリ。グリ。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!」 耳を! 耳掻きの入った穴の奥を! 従妹は何度も何度も突き刺し、掻き混ぜて往く。 「や、止めてくれええええええええええええええええええええええええええ!!!!」 ドクドクと血が流れて往く。 11 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 14 03 ID KNY2XH0W 耳の中を何かが動いているのに。 こっちの耳からは何も聞こえない。 痛みだけが響くのに! 自分の絶叫が聞こえない!! 「にいさま。こちらの御耳はどうですか?綾緒の声、聞こえていますか?」 グリグリ。グリグリ。 『不良品』の耳を穿りながら、従妹はもう片方の耳に囁く。 「やめ・・・やめてくれえええええ!!!!」 「聞こえておりませんか。ならばこの御耳も――必要ありませんね」 綾緒はそう云って耳掻きを引き抜く。 見慣れていたはずのそれは、先から数cmまでもがぬめついた赤で染まっていた。 「き・・・!きこ・・・てる!きこぇてい・・・から・・・!!」 だからもう止めてくれぇ!!! 痛い。 痛いぃぃ!! 「それはようございました。聞こえているのですね?ではにいさま。にいさまのくちから、祝事を 語って下さい。矢張り女の口から云うべきことではありませんから。ささ、にいさま。殿方らしく にいさまの口から綾緒に云うのですよ?」 僕は頷いた。 痛いけど、嫌だけど、それ以外になにが出来るんだ! 「あ・・・綾緒・・・・」 「はい」 涙が止まらない。 「ぼ、僕と、」 それは痛みのせいか。 「僕と――」 それともこの境遇のせいか。 その日、僕には将来を誓う婚約者が出来たのだった。 12 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 15 34 ID KNY2XH0W 投下終了。 痛いのは苦手です 13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 19 48 42 ID k5iSZYuE 後輩がお兄ちゃんて呼んだこととか、従妹のプロポーズとかより、耳が、耳がああああ! この難敵に対して、先輩はどう戦うつもりなのか? もうこうなったら、去勢しか…… 14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 20 14 35 ID h0pzYodH 楽しみに待ってるかいがあったほど今回も痛面白かったです。GJ! ただ、鼓膜突き破ってぐりぐりしての耳血は生爪はがすとかより危険で 即入院レベルだと思う。平衡感覚失うし、再生しないし、人工内耳だし。 なんかそこだけ気になったけど、一ツ橋さんも本格参戦でどう絡んでくるか期待してます。 15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 20 34 06 ID gRKiTYX2 12生爪剥ぐとか鼓膜突き破るとか読み慣れてないから正直キツい… 包丁で刺したり首締めたりは逆にニヤニヤしちゃうけど、 これも一般人にはキツいんだろうなぁ。 16 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 20 41 44 ID e3B2pmQl 12 流石にグロ注意ぐらい書いてくれよ… GJとは言えん 17 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 21 29 40 ID yrrMrgiO 一回目読んだときは、『痛いなぁ』と思ったけど、二回目は逆にニヤニヤしてしまった。 18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 21 35 43 ID gVtbUO4+ ヤンデレスレでこのくらいでグロ判定?と思った俺は多分間違いなく病んでいる・・・ 19 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 21 36 45 ID EZnFMtXA ドMな俺にはGJだったよ 20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 22 06 58 ID 38eHF/uN 日ノ本くんはラストまで生き残れるのだろうか・・・ 21 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 23 09 04 ID 6JUFTQP/ 慕ってる相手の事を傷つけるってのはどうもなあ・・・・、この間まで読んでなかったのは直感的なものだったのか 22 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 23 45 38 ID QAY4DsS5 この間、ゴルゴシリーズに収録してある漫画が、かなりヤンデレしてた 男に別れてくれと言われた女が、基地外起こしてその場で自殺 で、男は別の女と結婚し娘が生まれたが、その娘は別れた女の魂が転生した姿だった 娘は成長し、母親を殺してしまう 男はやっと娘の正体がわかったが、時既に遅かった 男は何もかも諦めてしまい、娘(魂は別れた女)は永遠に愛する人を手に入れた エロス分が無かったのが、唯一の心残り… 23 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/27(水) 23 52 23 ID 1+d9Kse1 12 先輩の病みが進んで来たり 後輩が暗躍してくるのかな とかwktkしていたが最後の耳で全部吹っ飛んだ 綾緒怖いよ綾緒 だがそれがいい 24 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/28(木) 01 20 28 ID yFEn8nKW 12 もう本当にディモールトってかんじ 25 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 01 21 50 ID 3WHFT+B6 下げ 26 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 04 29 19 ID 5aZ1rA1E 細川忠興ってヤンデレ入ってるよね。 27 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/28(木) 09 41 15 ID gPQiqZbI 綾緒みたいな妹がほしい!! 28 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 10 31 10 ID HKgN4U3m 細川忠興はただのキモストーカー 29 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 15 04 46 ID g9Yc4iK+ 最近こういうのを知ったのであれだけどもTOのカチュアとかはヤンデレかな? いまだに強烈な印象の残ってるキャラだが 30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 16 36 34 ID 5aZ1rA1E 28 得てしてヤンデレはそういうものじゃん。 31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 20 44 40 ID yIBkmRe9 後輩には頑張って欲しい 過去の妹扱い設定にはキタ━━━━(゚∀゚)━━━━と興奮した そして従姉妹に恐怖w 32 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/28(木) 21 02 47 ID 3Vyj5dXx 29 あれは良いキモ姉だった。義理だけど 思えばあそこから足を踏み外したのかな…… 33 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/29(金) 00 48 54 ID HLXhpKAK 32 同志がいたか。 おれもよくよく突き詰めたらカチュアが可愛いって思ったところからこの属性に気づかされたよ カオスルート二章冒頭の「こんな島からは抜け出して二人で静かに暮しましょう」ってところで頷きたかったなぁ 34 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/29(金) 02 48 27 ID Qx4QIuzW まさかのお兄ちゃん発言に驚くとともに、参戦への期待にwktk 綾緒はこの怖さがたまらんwww 先輩がどうでるのか楽しみ。作者さんGJ 35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/29(金) 08 36 49 ID VorGdpFq 30 奥さんが反逆者(今でいう犯罪者?)の娘でも離縁せずに監禁、 脅迫として周りの人の耳鼻を削ぐが本人には危害を加えず、 奥さんに目をつけた奴は即切り捨て。 奥さんが死んだ際に見捨てた奴は即効絶縁なんだっけ? これを男女逆にすれば使えなくもないね。 36 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/29(金) 18 50 01 ID o9macKcb 父娘ネタが少ない気がする・・・何でだろう? 37 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/29(金) 19 28 05 ID /LeFVcVo 36 ならば自分で書いてみよ 38 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/29(金) 21 54 43 ID hSX4wNgf 36 実の父と姉がそうだったらどう思う? みんな嫌悪してるんだよ 39 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/29(金) 23 19 00 ID fFxB8GBX ? 40 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/29(金) 23 29 27 ID bgv938J5 そこかしこで 「オンリー同人即売会」「ヤンデレ音楽企画」「ヤンデレ同盟」 ってのがあって、なんだか萎えるな。 小説系リンクにも堂々と「ヤンデレ」という文字を入れちゃう作家も増えてるし、 これからの衰退っぷりがものすごく良く見える気がする。 41 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 00 21 47 ID 0kOY1Z9R ヤンデレ音楽企画はまだいいんじゃね? 愛故にとか、死ぬほど愛してるとか一応そこら辺は理解してるようだし。 42 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 01 38 34 ID /IplaJWB そもそも衰退するほど興隆したジャンルでもない気が 43 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 04 34 12 ID DdWZC3/g 36 あんまり例がないからじゃね? 44 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/30(土) 04 49 30 ID Or4OTajm 36 父親となると相当なロリヤンデレでないと中年になってしまう ↓ 1:おっさん(父親)に感情移入したくない←脳内姉・妹はいても脳内娘は想定の範囲外(属性がない)な人が多いため 2:脂ぎった中年が恋愛の中心にいても華がない 3:そもそもおっさんと少女の恋愛関係は血縁でなくても爛れた印象を受ける 4:1に関連して、脳内自分は永遠の18歳だから とか 45 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 04 51 52 ID Or4OTajm sage忘れスマンorz 46 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 04 56 39 ID 0kOY1Z9R おっさんっていうなよ。ダンディーなナイスミドルって考えろよ。 47 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 07 44 37 ID rSlfd+Vg 46 1 現実にナイスミドル、ダンディ、ちょい悪と呼ばれているヤツにろくな男がいない 2 あの胡散臭いオーラは異常 3 住人の平均年齢がナイスミドルと呼ばれるにふさわしい年代より若いため、自分と重ね合わせて考えにくい 4 おっさんに美少女を奪われていくのは歯がゆい 48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 10 02 43 ID F4nzXjHd ・主人公は25歳。バツイチ。 ・18歳でできちゃった結婚をした。生まれてきたのは娘。 ・娘が7歳のとき、妻が事故死。主人公、以前よりさらに娘を大事にする。 ・娘、母を失ったショックと、父の優しさを一身に受け、ファザコン化。 これならどうだ? 49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 10 12 16 ID MjYkY+Qo 47 お前の価値観など些細なことが 50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 10 33 44 ID k+RyFRT+ ・主人公は18歳。男子高校生。大学生の姉に対して重度のシスコン。姉と父の馴れ合いを見てやきもきしてる。 一度告白するも見事に玉砕。 ・姉20歳。女子大生。重度のファザコン。大好きなお父さんの為なら私の初めてもあげる!と息巻いてる。 ・父45歳。会社員。上場企業に勤めてるが窓際族。中年太りと頭の後退・加齢臭に悩まされてる。 妻と似ても似つかぬ美人な娘に対して娘以上の感情を持っている。ラブラブ状態も満更ではない。 これどう? 51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 12 18 53 ID yd01kdKP 50 それ主人公いる意味あるのか? 52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 13 34 01 ID tefvMgi8 主人公が不老不死で、気まぐれに拾った少女が十年後には見事にヤンデレておりましたとか、そんな厨設定しか思い浮かばない。 てか、兄妹ものとそんなに内容変わらん気がするぞ。 53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 13 50 48 ID ZSqhLz4Z 確かに父娘だったら、同じおっさんでも叔父姪の方がよく見る気がする。 年齢の制約が少しだけ軽くなるし、いやなおっさんの役割は父親役に押し付ければいい。 ところで。 ここの住人には皆、それぞれヤンデレに一家言あるだろうから聞きたいことがある。 先日たまたまリアルの知り合いとヤンデレについて話す機会があったのだが、 「ヤンデレってそもそもどんな感じの属性なんだ?」と聞かれて、俺は説明に窮してしまった。 周りの目もあったものだからあまり常軌を逸したことも言えず、 聞いてきた相手にはそういう方面の知識が少なかったから、具体例を探すのも難しい。 その時の俺は咄嗟に六条御息所みたいなもんって言ってしまったんだが、個人的には病み具合が足らない気がする。 非ヲタでも知っていそうな知識の中からヤンデレの具体例を探すとしたら、誰を挙げたらいいと思う? 54 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 14 15 05 ID aKg88qH8 阿部定 エロ漫画だとわりと多いぞ>娘の嫉妬もの ヤンデレかというと、ヤンデレもの自体あまりないしなあ 55 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 15 29 46 ID 66bKGIUa 恋敵を抹殺して行くっていうと、ギリシア神話のヘラとか? 嫉妬じゃなくて恋ゆえに暴走するタイプだと八尾屋お七 56 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 15 42 05 ID 7SPDPKWC 新井素子のひとめあなたに読ませりゃ良いんじゃないかね? 57 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 16 01 36 ID 66bKGIUa チャイニーズスープの奥さん? 58 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 16 05 53 ID seTP0dIV 48さんの設定でビビっと来たのですが。 48さん、書いてよろしいでしょうか? 59 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 16 08 11 ID BqmD+zNW 期待 60 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 18 09 30 ID 0kOY1Z9R 38の父と16の娘なら年頃でいいんじゃないか? 16歳ならもうエッチするには十分な体つきだし、 38ならまだ中年にも行かないキビキビした年頃だ。 61 名前:48[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 18 35 36 ID F4nzXjHd 58 俺が断るわけないじゃないか! ワックワックテッカテッカ 62 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 19 21 13 ID seTP0dIV 25と7歳で超絶ファザコンヤンデレ娘で行こうかなと(`・ω・´)b 48さん、構想ありがとうございます。 63 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 26 56 ID Vw45L8oY 投下します。 64 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 27 41 ID Vw45L8oY ”本当の恐怖”を感じると、体は微動だにしてくれず、頭は悪い方向へどんどん想像を 膨らませていく――そんなことを聞いたことがある。 正直それは違うと思っていた。恐怖を認識したらすぐにそこから逃げようとするだろう し、必死に状況を打破する策を考える為に思考を巡らせもするはずだと信じていたから。 事実今まで加奈には結構”見られちゃマズイもの”を目撃されてきたけど、その度に俺は 何とか乗り切っていた。保健室での一件は島村の助け――今となってはそれが本意だった のかは定かではないが――を借りて丸く収められたし、体育館裏でのことも島村に対して 敵意を露わにしていた加奈を結果的に宥められた。それは、それらの状況が全て言い訳や 最善の行動でとりあえずはどうにかなる程度のものだったからだ。逆に言えば、そのこと がわかっていたからこそ、心に巣食う畏怖を騙しながら行動を起こすことができた……。 ――つまり、俺が加奈を見据えたまま立ち上がることができないのは、今までのような 生温かいものじゃない”本当の恐怖”を覚えているからなんだろう。 加奈に『上書き』されている時に似た冷え切った思考がそんな結論を導き出していた。 俺が島村に”傷付けられている”という現実を目の当たりにして、加奈がどんな行動を 取ってくるかなんてわかっている。加奈は俺に掠り傷ですら付くのを許しはしなかった。 放っておけばすぐ治るような本当に小さい傷を”汚された証”と称し、”自分が付けた” ということに『上書き』してくる。自分の好きな人に他の人間が触れてほしくないという 当たり前の欲求を歪に肥大化させてしまった、俺の唯一無二の想い人――城井加奈。その 彼女が、俺の体が屈折した手段で汚し続けられているのを見れば、”それ以上に屈折した 手段で、それ以上に浄化する為に、それ以上に傷付ければいい”と考えるのは目に見えて いる。ただでさえ気を失いそうなほど暴行を加えられているというのに、それを更に凌駕 する苦痛を与えられたとしたら、俺は多分――。 そんな末路をも冷静に受け止めることができるのは――受け入れるのを拒否して感覚が 麻痺しているだけかもしれないが――俺が諦観しているからだ。言い訳しようのない事態 を前にして、もう何をしても無駄だと心が訴えかけているんだ。今までと違い今回は加奈 に事の一部始終を見られてしまっている。どんなことを言ったとしても、それは加奈の耳 には届かないだろう。”今まで”と同じように。そして俺は『上書き』”される”……。 もしかしたら加害者の島村に対して何かするかもしれないが、だからといって俺の運命が 変わる訳でもない。結局俺の小ずるい努力なんて、二人の女の子を傷付けて、挙句の果て は自身を破滅させるだけ……。滑稽過ぎる。何だか急に虚しくなってきた。今まで上手く やっていけていたつもりだったが、それは俺のただの思い込みでしかなかったって訳か。 視線の先で肩を震わす加奈の存在が、俺に奇妙な絶望感を煽ってきた。 自分が恐い状況にあることはわかっているはずなのに、不思議と恐怖という実感が全然 湧かない。あまりにも大きい恐怖を感じることを心が拒否したということなのであろう。 俺、無意識下でも逃避している……。――そんな人間がどうして人を幸せにできるんだ? 「はは……」 自嘲気味に笑いながら、せめてもの意地で加奈から目を逸らすことはしない。今逃げて いる分際で下らない自尊心なんかを持ち合わせているからこんなことになったのかな、と 思いながらほぼ生気を失った視線を加奈に投げ掛け続ける。機能としてだけは見ることの できる加奈の表情は、予想通り”受け入れ難い現実”を突きつけられたことで色を失って いる。それが嵐の前の静けさということを知っているだけに穏やかな気分にはなれない。 そんな顔を眺めていると――『上書き』してくる時もそうだが――、一つ疑問に思う。 ――加奈はどうして俺のことが好きなんだ? こんな『幼馴染』ってだけしか接点がなく、目立ったような美点もないような俺なんか の為に、どうして”そんな顔”をしてくれるんだ? どうして『上書き』してくるんだ? こんな疑問に答えなんてないのはわかっている。俺だってどうして加奈が好きなのかを 訊かれたら答えられない。だって、加奈とはずっと昔から一緒にいたし、それが当たり前 だと思っていたから。だが、俺の加奈への想いが思い込みなんかではないってことだけは 絶対に断言できる。 そう、理由なんてあってないようなものだ。どんなに探したって、絶対だと言い切れる ような解答がある訳がない。 65 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 28 46 ID Vw45L8oY それでも俺がそのことを追究したいと思うのは、自責の念に駆られているからだ。この ままではこんなにも俺のことを好きでいてくれている加奈に申し訳が立たない。何もして やれずただ膨張した独占欲の赴くまま『過ち』を犯させてしまった。誰よりも加奈のこと を知っているはずだった俺が――確実に狂気に蝕まれている加奈の様子を見てきたこの俺 が――、一番近くにいた存在であるはずの俺が何一ついい方向に事を進められなかった。 もう、この『罪』を抱えたまま死にたい。……いや、これから死ぬんだったっけ……。 「加奈さん……ッ!」 近くから島村の声が聞こえる。顔こそ俺は見ていないが、さっきまでの不気味なまでの 冷静さはどこへやら、動揺を隠し切れていないのが声色からわかる。そんな不安定な声を 聞いていると嫌でも、二週間前俺が島村に”遅過ぎる告白”をした時の様子を思い出す。 そこで不意に島村が俺のことを好きだという事実が脳裏に過ぎった。思い返せば、島村 も加奈と同じくらい俺のことを愛してくれていたのかもしれない。方向性こそ違えど、俺 を好きであるという点では加奈と同じ。そして今になってようやく気付いたが、結構加奈 と島村は似ている。二人共どっちかと言えばサディストなところとか、俺の為には形振り 構わないところとか――俺のせいで狂ってしまったところとか。 俺は加奈だけに止まらず、島村のことも滅茶苦茶にしてしまったんだ。島村は俺のこと を好きになった『きっかけ』があるようなことを匂わせていたが、どんな理由にせよ普通 彼女持ちの男を手に入れようと思うか? それほどの理由ってのは一体何なんだ……? 興味はあるが、訊くほどの気力は最早残っていなかった。島村に痛みつけられた箇所の 苦痛のせいもあるが、何より心が後ろ向きな考えしかしてくれないのが一番辛い。恐怖を 感じることさえ放棄した完全な無気力状態――それが俺の結末だ。周りの人間を散々掻き 回した挙句、地面の上で無様に転がっているクズ男――俺に相応しい『最期』だったな。 「来ないで下さい……! まだ駄目なんです……まだ……まだ……」 頼りなさそうに震える島村の声が耳に入ってくる。そこから感じ取ることのできる露骨 に動じた様子は、正直かなり人間味に溢れている気がした。今までの島村の周りへの対応 には殆ど『素』が感じられなかった。ただの無意識的な行動なのか、それともトラブルを 避ける為に他者と壁を隔てる手段なのか、理由はわからない。しかし、俺に怪我をさせて しまって何度も心配をして声を掛けてきた時や、クラスの人間に自分と俺の関係を知られ そうになって赤面していた時の島村には”それ”が感じられる。何の歪みもない、純粋な 一人の女の子としての一面を垣間見ることができる。それが、島村の真の姿なんだろう。 ……あれ? そうなると、俺はとんでもない勘違い野郎ってことになる。 俺は今まで危害を加えてくる島村の姿を『本性』として受け止めていた。しかし、実際 の島村は、いい意味で”普通の女の子”であって。俺は島村のことを理解せずに、自分の 都合に合わせて”良かれ”と勝手に思った道を選んでいた訳か。――最低だな。 「誠人くんは渡しません……! あなたになんか渡しません……絶対に」 突如首に腕を絡まれたと思ったらそのまま体を起こされた。そして俺の体は島村の体へ と引き寄せられる。痛いほど強い力で島村は俺を離すまいと言いたげに抱き抱えている。 その力に反して押し付けられた島村の体は柔らかい。ずっと嗅いでいたいと思えるほどの いい匂いもする。そこに『性』の違いを改めて感じる。島村は普通の女の子だ。きっと俺 なんかに惚れさえしなければ、他の男と付き合って真っ当な幸せを歩んでいたんだろう。 そう思うと罪悪感を覚える。島村は俺のことをこんなに好いているというのに、俺は今の 今まで島村に対して『勘違い』をし続けていたのだ。愛を受ける資格なんて俺にはない。 それでも島村の温かみに快楽を感じている自分に嫌悪しつつ、加奈に”最悪の光景”を 披露し続ける。今までの俺ならこんな状況を加奈に見られたらだとか色々考えて、すぐに 島村から離れていただろうな。それは自分の保身の為であり、加奈の為でもあった……。 手遅れな現実を享受し、俺は諦観と共に目を瞑ろうとする――刹那。 俺の目に映ったのは――。 俺に背を向け、走り出していった加奈の姿だった。 66 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 29 49 ID Vw45L8oY 「加奈……!?」 自然と呆けた声が漏れた。 全く意味がわからない。加奈は俺を『上書き』する為に一目散に俺の下へ向かってくる はずなのに、実際は俺に背を向けて行ってしまった。”今までの”加奈なら俺が傷付く様 を黙って見ているだけだなんて理性的な行動が取れる訳がない。それなのに何でなんだ? ほぼ事実だと認識していたはずの推測が引っくり返ってしまって、俺は戸惑っている。 だけど、今俺の胸をじりじりと焼き焦しているのはそんな『疑念』だけではない。俺の 心を掻き回し、心臓を跳ね上がらせている真の要因――それは、『焦燥感』だ。 加奈に『上書き』されることを半ば諦め気味に享受しようとしていた――腹の底では、 傷付くことを恐れていた――その俺が抱くにしては明らかに矛盾している感情だ。だって このままおとなしくしていれば自分に危害を加える存在である加奈から離れられるのだ。 なのに、既に視界から消えてしまった加奈の姿を追いかけたいと思っているのは何故だ? ――馬鹿野郎。そんなの、加奈が好きだからに決まってるだろ。 今まで呆れるほど痛感させられ続けたこと。俺はどんな加奈だって好きなんだ。たとえ 狂っていたとしても、そんなこと些細な問題でしかないと思えるくらいに。加奈を愛して いる。だから失いたくない。離れていってほしくない。 初めて俺を拒絶するかの如く逃げ去っていった加奈を見て、どうしようもない不安が俺 の心中を支配している。このままでは加奈を失ってしまうのではないかという恐怖が余計 に俺の焦燥感に油を注ぐ。早く行かないと、二度と元に戻れない気がしてならない。 一緒にいるのが当たり前だった幼馴染を――加奈と離れてしまう。 その最悪の光景が脳裏に過ぎった瞬間、泥沼の奥底へと沈み続けていた『力』が完全に 奮い起こされた。有り余るほどの『意志』が爆発して、数分前までの自分を死ぬまで殴り 続けてやりたい気分だ。俺は何をやっていたんだ? ”何をやっても無駄”と勝手な憶測 で無気力という逃避手段への理由を作って『努力』を怠たる、なんてふざけ過ぎた話だ。 一番傷付いているのは、加奈なんだぞ? 『上書き』してくるのだって、俺が他の人に 傷付けられたことに――穢されたことに傷付いて、自分でその罪を被ってまで俺のことを 守ろうとしてくれているからだ。だけど、俺は油断が原因で傷を増やし続けた。それらを 何度も『上書き』していく内に、段々と制御が利かなくなっていて今の加奈が存在する。 ――ということは、加奈を狂わしたのは、俺か? 最低最悪の解答だった。加奈の狂気の循環を助長していたのが自分だってことくらいは わかっていたが、加奈が奇行に走るそもそもの原因は加奈の内に秘める大きい独占欲だと 思っていた。だが実際は、根源すらも俺が作り出していたんだ。俺が加奈を無意識の内に 煽って、それに反応した加奈をまた煽って、の繰り返しだ。『罪』を被っているのが加奈 なのをいいことに、俺に『上書き』してくる加奈を”狂っている”と解釈して、”救う” だとか最もらしいことほざいて正当化してたんだ。自分の『罪』から目を背けてたんだ。 「加奈……! 待ってくれ、加奈ッ!」 恥も外聞もなく、対象のいない情けない声を張り上げる。行き場を失った音が静寂の中 に溶け込む虚しさに孤独感を感じつつ、そんなことを気に掛けている時じゃないと自らを 叱咤する。 幸いにも俺は腐り切ってはいない。何故なら今の俺は、はっきりと思っているからだ。 ”謝りたい”と。今までの過ちを受け入れそれを悔い改め、その被害者となってしまった 加奈に謝罪をしたいと心から思えているからだ。”とりあえず”なんて軽いものでなく、 誠意を以って加奈に自分の好意を示したいという想い。それを俺は感じられているのだ。 後先なんてどうだっていい。加奈にとって最善であると思えることを遂行するまでだ。 俺は体中から漲る力を使って起き上がろうとする。が、 「! ま、誠人くん!? どこに行く気ですか! まさか……」 ほぼ本気で動こうとした俺の力は、それと同等かあるいはそれ以上の力によって虚しく 相殺されてしまう。そこでさっきまでの朧げな記憶が、俺が島村に抱き抱えられていると いう事実を突きつけてきた。慌てて離してもらおうと島村の方へ顔だけを向ける。 「まさか、加奈さんのところへ行くんですか? まさかですよね、誠人くん……!?」 今まで加奈のことだけで頭が一杯だったせいか、懐かしく感じさせた島村の顔は、余裕 の笑みで塗りつぶされていたものから、涙が悲嘆を彩るものへと様相を変えていた。 67 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 31 26 ID Vw45L8oY 「行かせませんよ……!」 抱きつかれる力が急激に強まる。細い腕から出てるとは到底思えない強い力でより一層 拘束の手を強めてくる。言葉通り、絶対に逃がさないという意志が痛いほど感じ取れる。 とはいっても女の子の力だ。本気を出せばすぐに腕の中から抜け出せるだろう。しかし そうすることを俺が躊躇してしまったのは、涙に濡れた島村の顔を見てしまったが為だ。 その涙は俺が流させたものだ。誰も傷付けたくないと思いながら自分の保身も絶対に念頭 に置いていた、そんな利己的な俺の押しの弱さが招いた最悪の結果だ。そのことに対して 俺は責任を感じたいと欲しているのだ。”今すべきこと”から逃げ出す為の手段として。 それだけは絶対に、死んでもしてはならないことだ。 「ちょっと待ってくれればいいんです。すぐに私は『加奈さん』になります。そうすれば わかりますよ! 私と加奈さん、どっちがいいかってことが! 私は”今は”誠人くんに 痛い思いをさせてしまっていますが、誠人くんが私を愛してくれるというのであればもう 何もしません! ”それ以上のもの”は望みません! 私は加奈さんとは違うんですよ! 幸福を噛み締めることも知らずに、子供のように欲を露わにするあんな人とは違います! だから! だから……!」 島村が加奈を貶める発言をしていることに怒りはない。そんなことを言っているのは、 全て俺が原因なんだから。理性が理不尽な本能を押さえ込んでいる。今回だけはいつもの 呆れるくらい冷静な思考に感謝するしかないなと思いつつ、俺は体を思い切り捻る。 その勢いで、島村はいとも簡単に俺の体から放り出される。女の子にそんな対応をして しまうなんて申し訳ないと思いながら、自由になった体に溢れる力で即座に立ち上がり、 そのまま島村から数歩距離を取る。精神的動揺から来る動悸を抑えつつ島村を見下ろす。 一瞬視線を泳がせた後俺を見つけて安堵したかの如く息を吐いた島村は、しかし緩んだ 口元とは裏腹に目を”信じられない”と訴えかけるように見開かせていた。制服を肌蹴て 涙を目の淵に溜めながら見上げてくる島村のその凄惨な姿を前に、またしても心中に常時 用意されている自堕落な道への一歩を踏み出しそうになるのを何とか堪える。 「島村……聞いてくれ」 そして、優柔不断な過去の自分への決別の為に、俺は言葉を――紡いだ。 「俺はどんなことがあっても城井加奈を永遠に愛し続ける――それを、”お前に”誓う」 ”最善にして最悪の手段”で、俺は島村を守り、そして傷付けた。 「……聞きたくない……聞きたくない……」 体を震わしながら耳を塞ぎだした島村に、俺は更に残酷な仕打ちを続ける。 「頼む。聞いてくれ、島村。俺が好きなのは――」 「加奈さんなんですよね!?」 地面に座り込んでいた島村が瞬間の内に立ち上がり、精一杯の声を投げかけてきた。腹 の底から、そして心の底から搾り出しているような嗚咽混じりの声は、俺の心を揺さぶる には十分過ぎるほどのものだった。 「だから私は加奈さんになるんですよ! その私を誠人くんが好きになってさえくれれば 誠人くんは幸せになれます! してみせます! 姿形が同じ人間がいたとして、常に暴力 を振るうような人と相思相愛になれば愛情を注ぐ――その二人のどっちを取るんですか? お願いですから正気になって下さい。”あの人”じゃ誠人くんを幸せにはできません!」 捲し立てるように語り終えた島村は、胸の内にあった感情を全て吐き出したからか、肩 を上下させ怯えるような目線を俺に送っている。俺も視線を外さない。 島村の言っていることは正しいのかもしれない。加奈を選べば俺はこれからもその狂気 に身震いしながら生活しなければならないのかもしれない。それよりは島村のような女と 普通の恋人生活を送った方が客観的に見れば幸せなのかもしれない。だが、幸せは個人の 問題だ。――俺の幸せは、俺が決める。 一歩”前に”進みたい衝動を寸でのところで抑え、俺は一歩”後ろに”下がった。その 意図を理解した島村は、今まで天秤のように微妙な割合で揺れ動いていた表情を完全に黒 の絶望に歪ませた。そして俺は、その島村に追い討ちをかける。 「俺の幸せは――加奈を好きであり続けられることだ」 膝を地面につけて崩れ落ちる島村を見つめ続けながら、最後に、最低の一言を告げた。 「俺のことが好きなら、その幸せを――叶えさせてくれ」 そして―― 「いやぁあああああ!!!!!」 発狂の如き叫び声を発す島村に背を向け、俺は走り出した。 一言だけ言わせてもらえるなら言わせて欲しい――”ごめん”って。 68 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 32 23 ID Vw45L8oY 走る。頭の中でひたすら加奈の名前を連呼しながら。多分その様を”俺が”見たら非常 に無様なものに映るだろう。先程までのことを思い返せば、それは俺が泣かしてしまった 少女から逃げているようだから。勿論そんな気は全然ない。”加奈を追いかける”ことを 大義名分にして島村から逃げるだなんてことは絶対にしていない。そのことは断言できる のだが、自分を好いてくれていた娘に対してあんな対応をしてしまったことに関しては心 を痛めずにはいられない。あれほど残酷な言葉をぶつけることが彼女にとって最良の対応 になってしまうまでの過程は俺が作り出したのだから、それに罪悪感を感じるなんて失礼 極まりないことだとはわかっている。だけど、それでもこんなことを思ってしまうんだ。 ――二人共傷付けずに済む方法はなかったのか、って。 今でもこべりついている”中途半端な優しさを振りまく偽善者”な俺がそう語りかけて くる。しつこく言い聞かせていたはずの答えを無理矢理捻じ曲げようとする未練たらたら な自分が未だに存在することが恥ずかしい。人間、どんなに表層的な余裕の態度を装えて もそう本心をリセットすることなんてできないもんだ――そんな風に開き直れたらどんな に楽なことか。当然島村に大きな傷を残してしまった俺なんかにはできないことだ。何年 もの間培ってきた甘ちゃんな俺がそれを許すはずがない。そう、俺が島村を傷付けたのは 事実だ。それでも――俺は”正しい道を歩めている”。自尊心や自己満足や、そういった 身勝手な感情に振り回されながらも、やっと正解への一途を辿っている。 ――それでいい。 たとえ心がついていけなくても、実際に周囲の人間に影響を及ぼす『行動』として俺は 頑張れている。今まで『自分』を軸にして考え行動してきた俺が、行動で以って他者への 労りを示せている。それは加奈が幸せになる為に俺が大いなる成長を遂げている証拠だ。 加奈の幸せを願う俺自信が良い方向に進めている。小さなことだがそれは重要なことだ。 だから走る。もっと『正解』に近付く為に。 ――ただ、一つだけ気掛かりなことがある。今は加奈を探すことに専念していて冷静に 思考できないからなのかもしれないが、さっきの島村の発言が妙に引っ掛かているのだ。 警鐘のように繰り返し聞こえてくるその言葉を整理してみるが、中々答えはわからない。 何か素通りしてはならないことを聞き落としているような気がしてならない。喉に小骨が 刺さっているようなその感覚に不快感を覚える。 思い出せ。島村は何て言ってた? 「あ」 しかし、漏れた自身の呆けた声が過去への回帰を中断させた。知らぬ間に上がっていた 息を整えながら、前方を見据える。 いた。 学校中至るところを探したが見つからなかった。友達に「帰ってた」と言われて荷物も 持たずに慌てて学校を飛び出した。いつもの通学路を隈なく見渡した。 俺に”そこまで”させるほど大きい存在である――城井加奈がいた。 俺と加奈が幾度となく談笑しながら登下校を繰り返した通学路の途中にある簡素な土手 の真ん中で佇んでいた。俺に背を向けているから表情はわからないが、俺がすべきことは 決まっている。再確認するまでもない。俺は躊躇なく一歩踏み出しながら叫ぶ。 「加奈ァーーッ!!」 土手に響き渡る俺の声。加奈に届ける為に体中から搾り出した声。加奈はすぐにその声 に反応するように小さく体を震わした。そしてゆっくり体を九十度俺の方へ向けてきた。 それでも俯いたままの顔と長い黒髪が邪魔して、表情を見ることは叶わない。右半身だけ をこちらに見せつけながら、加奈は無言でその場から動こうとはしない。俺までつられて 動くことが許されないような気がして数秒固まっていたが、すぐに業を煮やして重い足を 上げる。土手の急な傾斜を足早に下っていき、平地へと体を落ち着ける。 俺がいる坂の末端部と、その反対側にある川との間にいる加奈との距離は十メートルも ない。同じ間違いをし続けて、それでもここまで詰めた『正解』との距離。手を伸ばせば 届きそうな、それでいて果てしない距離。しかし”見えている”。道標があるから絶対に 迷うことのない光明への一本道。手放さない。貪欲で純粋な決意を胸に秘め、口を開く。 「加奈、俺――」 「――誠人くん」 加奈と向き合ったらまず最初に言おうと思っていた謝罪の言葉。それは加奈の小さくも 聞き逃しようのない澄んだ声によってかき消された。俺に断ることなく、俯いたまま加奈 は続ける。 「あたし、守ったよ。『約束』」 69 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 33 13 ID Vw45L8oY 「――約束? 何言ってんだよ……」 「誠人くんが言ったんだよ。『誰も傷付けちゃ駄目だ』って」 加奈のその言葉が、”あの日”のことを思い出させた。加奈を俺の家に泊めてお互いに 相手への愛を再確認し合った夜のことを。あの日、確かに俺は加奈にその約束をさせた。 それは加奈に自身の狂気を認めさせ、戒めとさせる為にやったことだ。それは理解できる が、何故今そんなことを言い出すのかがわからない。その約束と加奈の行動とに一体何の 関連があるのかが全く見えてこない。加奈のことで”わからない”ことがあるという事実 が太い杭となり俺の胸に突き刺さる。その傷口から漏れ出す歯痒さに心が苛まれる。身を 焦がしながら、無言に徹するしか術のない自分に怒りを覚える。今まで如何に自分が加奈 との年月を無駄に垂れ流していたのか痛感させられる。それでも、深い自己嫌悪の闇の中 で無責任に感情を吐露し、自暴自棄に陥るなどという今までと同じ過ちを犯しはない。今 すべきことはそんな下らない自省なんかじゃないのだから。”わからなければ、知ろうと すれば良い”――奇しくも今問題になっている”あの日”に俺が加奈に誓ったことが思い 起こされた。そう、”わからない”ことを嘆いていても前進はない。”わかろうとする” ことの方がそれよりも大切なのだ。そのことを、自分本位に行動してきていたはずの過去 の俺は知っていた。 そういうことを思えていたから完全に腐食し切らずに済んだのかと一人で納得しつつ、 視線を前方に固定したまま固唾を呑んで加奈を見守る。長い沈黙が俺と加奈だけの世界を 徐々に作り上げていくような妙な感覚を覚えていること数秒――その世界は壊された。 「だから何もしなかった。誠人くんが傷付いているのを見ても、『上書き』したくても、 我慢したんだよ。何度も何度も、言い聞かせたんだよ――『我慢できなかったら誠人くん から嫌われちゃう』って……。そんなの耐えられない……誠人くんから嫌われちゃったら あたし生きていけない。それでもあたしの中の汚い心は誠人くんを傷付けようとするから ……『上書き』したいしたいって騒ぐから……逃げるしかなかった。傷付いた誠人くんを 直視しないようにすれば”あたしの中のあたし”を抑えられると思って。誠人くんから、 逃げるようになっちゃったのはごめんなさい……。でも、”そうすれば”何とかあたしは 平生を保てる。誠人くんを傷付けずに済む……。”離れれば”いいんだよ……」 ねぇ、と続けながら、加奈はようやく顔を上げた。そして、俺と目が合った瞬間、堰を 切ったように涙がその両目から零れた。顔だけでなく体もこちらへと向け、言葉だけでは なく加奈は悲壮感を露わにした表情で俺に主張してくる。 「頑張ったよねあたし? 誠人くんの”望む通り”になれたよね!? 偉いよねあたし! ……だから、嫌わないで……。これからも誠人くんの言う通りにし続けるから、何だって するから……だからお願い。あたしを嫌いにならないで……他の娘のとこ行っちゃったり しないで……誠人くん。あたしを……あたしを彼女のままでいさせてっ!! お願い!」 俺の両目を逃がすまいと見つめ続けてくる加奈。長い独白を終えた彼女は、全てを吐き 出した反動から感情の代わりに涙を流し続けながら咳き込むように嗚咽を漏らしている。 その姿を見ながら俺は――打ちひしがれるしかなかった。 俺はまたしても知らぬ間に罪を――それも、死に値する大罪を踏んでいた。俺が加奈に させた約束は、彼女との未来を心配してのことだった。事実この約束が果たされれば、俺 の身の安全は保障されるし、加奈が過ちを犯すこともなくなる。二人の幸せの為ならば、 良い事尽くめの選択だ。だが、やはり過去の俺は『自分』を軸でしか物事を考えられては いなかった。だから気付けなかった。その約束が加奈にとって――『鎖』になるってこと に。 それは残酷な『鎖』だ。加奈が俺の為なら何だってするなんてことはわかり切ってた。 だから、俺が「傷付けるな」と言えば加奈はそれに従う。でも、その無理矢理加奈の狂気 を抑え込む手段では、当然反発が返ってくる。その反発――俺を『上書き』したいという 衝動――を誤魔化す為に、加奈は「俺から離れればいい」と言った。確かにそうすれば、 加奈は限界ギリギリのところで理性を保っていられるのかもしれない。 だが、これは明らかに本末転倒なことだ。 だって、二人が幸せになる為に――、一緒になる為にやろうとしたことなのに、その為 に離れるだなんて、馬鹿げているにも程がある。 70 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 35 29 ID Vw45L8oY 何でこんな矛盾が起こってしまったんだ? 自問自答の答えはすぐに導き出された。簡単なこと。わかってしまえば何てことない。 ――俺は、”変わろうとしなかった”。 今まで俺は加奈を普通の女の子にしようということばかりに目を取られていた。しかし 加奈を変えようとしてはいたが、自分が変わろうとは一度もしなかった。表面では何度も 気合いを入れ直したようなフリして、実際は自分では努力せず加奈を自分の都合良い様に 変えようとしていた。自覚なしで。最も性質の悪い、無意識下の行動で。「加奈の為なら 何だってする」だなんて意気込んでおきながら、今まで一度も”狂気に呑まれた加奈”を 受け入れようとしていなかったのが何よりの証拠だ。肉体的な苦痛に意識を持っていかれ て、俺への愛故に狂った加奈を愛しいと思えなかった。加奈の”いいところ”だけを見て それだけを『加奈』だと認識していた。上辺だけで加奈を”決め付けていた”……。 「ふざけんじゃねぇ!!」 気付けば叫んでいた。必死に我慢し続けていた自身への怒りがここにきて遂に臨界点を 越えてしまった。加奈は俺から嫌われない為に苦渋の選択をしようとした。加奈だけじゃ ない。島村だって、自分を捨ててまで変わろうとした。皆、”手に入れる為”に最大限の 努力をしてきている。なのに俺は一人何をしてきた? 何もしなくても自分を好きでいて くれる娘たちに依存して、俺は生意気に踏ん反り返ってたんじゃないか。 そんな自分が情けなくて、許せなくて。 「ま、誠人くん? どうしたの? 泣いてるの?」 加奈のその言葉を受け目を擦ってみると手に涙が付着した。どうやら本当に泣いている ようだ。格好悪いと思いながら、俺はその涙を止めようとするようにに天を仰いでみる。 もう夕方らしく、空は茜色に染まっている。その澄み切った空模様を見ていると、何だか 心が浄化されていくような錯覚に陥る。そんなことはしてはいけなことだとわかっている が、”今だけは”そう思わせて欲しい。 ――これからすることを、せめて綺麗な心で終えたいから。 一縷の願いと共に、俺は歩き出す。一歩一歩、加奈へと近付いて行く。 「誠人くん、駄目」 加奈が目と言葉で俺のことを止めようとしてくる。その強い意志に満ちた力に屈すこと なく、俺は歩を進めて行く。 「駄目だよ、誠人くん。そんなに近付いちゃあたし……」 俺と歩調を合わせるように、加奈は後退りする。俺と視線を合わせたまま。その目線は 恐怖を感じているのか揺れている。俺が近付くことによって、俺が一方的に『駄目』だと 決めつけた”加奈の本当”が抑えられなくなると思っているのであろう。そして、それに よって俺から嫌われることに、心底怯えているのだろう。 加奈を恐がらせていることに罪悪感を感じつつも、足を止めることはない。 「来ないで……お願い、来ないで!」 その叫びと共に加奈はゆっくりと後退っていた足を突然止め、制服のポケットから徐に カッターを取り出した。見覚えのある形。それはそうだ。そいつは加奈が島村を切りつけ ようとした時のものだから。 俺を威嚇するように睨みつけながら、カッターの刃を素早く出してくる。僅かに覗く陽 の光が、その存在を際立たせるように照らし出している。簡単に人の命を奪える凶器―― それにさえ臆することなく突き進んで行く。 加奈は驚きと戸惑いが混じったように表情を歪めながら、これ見よがしにカッターを俺 に突きつけてくる。きっと刃物を見せれば俺が止まると思ったのにそうならなかったから 状況を理解できないのだろう。だけどすぐわかる。これからその『答え』を示す。 「加奈」 一言告げてもう一歩近付く。俺と加奈の距離は加奈の腕とその手に握られたカッターの 長さの分だけにまで狭まっていた。殺意をまるで感じさせないその刃物を一瞥してから、 俺は”これからすることへの理由”を述べた。 「ごめん……好きだ」 そして、カッターを持った加奈の腕を掴み、それを――自分の首元へ刺し込んだ。 「え!?」 加奈の驚いた声が聞こえたと同時に、首元に冷たさを感じた。その寸秒後、それは一瞬 で生暖かいものへと変わる。肌にべたつく気持ち悪い感覚と共に、何かが流れていく認識 を覚えた。 「誠人くん!? 誠人くん! ……」 加奈の声が薄れかける。本格的にヤバイ。もたもたしていられない。このまま深い眠り へと堕ちていきたい欲を抑えながら、俺はもう一頑張りする為に心の内で叱咤をする。 もう声は出ないけど、行動で俺の気持ちを示す為に、喉下に刺さったカッターをすぐに 引き抜き――加奈にも突き刺した。 71 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 36 32 ID Vw45L8oY 既に俺の返り血で制服を赤に染めていた加奈の首元から、勢い良く血が噴き出る。それ が俺の体をも赤く染め上げていく。俺たちの周囲が俺たちの血で、俺たちの赤に染まる。 これで良かったんだ。今まで加奈にばかり無理をさせて自分が変わる努力をしなかった 俺の、最後の思いやり――。”加奈を受け入れる”。一番簡単で、一番すべきはずのこと を、俺はした。俺のことを『上書き』したいと願う加奈の願望を叶える為に、俺は自分の 身を捧げた。 だけど、一時的な満足感に浸った後、加奈が罪悪感に苛まれ心を病むということは目に 見えていた。だから、加奈を将来的に苦しませない為に、加奈も殺すことにした。 物凄く身勝手なことだってわかっている。もしかしたら加奈は生きててやり残したこと があるのかもしれない。俺は加奈の『未来』を奪い去った。 でも、これが間違った選択だなんて風には、微塵も思っていない。だって。 目の前の加奈が、こんなに幸せそうに笑っているから。 俺の血を浴びながら、共に死の実感を共有し合いながら、まるで一心同体だとでも言い たそうな表情で、俺のことを見上げている。 ――これこそ、俺たちが目指した『幸せ』なんじゃないだろうか? お互いに崩れ落ちながら先に倒れた加奈に覆いかぶさるように倒れる。加奈の温もりに 包まれながら逝ける――なんて幸せなことなんだろうか。 きっと加奈もそう思っている。俺がそう思っているから。 「 」 喉から息が漏れて言葉で伝えられなかったけど、きっと加奈には伝わったはずだ。俺の 言いたかったこと――理解してくれているよな? 加奈のことを抱きながら、俺はようやく手に入れた幸せを噛み締めつつ、目を閉じた。 ―――――――――――――――――――― 72 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 38 18 ID Vw45L8oY 投下終了。次回最終話です。 73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/30(土) 23 49 51 ID 2lrKrqEv ””と『』が多過ぎるのと主人公が果てしなくムカツクのが残念 74 名前:実験的作品[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 00 18 28 ID llysDH3v 投下します。 「ねぇ、P君はどういうのが好きかな?」 そのお店の中には、なんともいえない雰囲気が漂っていた。 一言で言えば特殊な衣装や特殊な用途に使う物品が並んでいるお店。 コスプレ……と言ってしまえばそうなんだろうけど、どうして黒や赤系統が多いのだろうかと、思ってしまう。 なんというか、普通のオタク系のコスプレ衣装を売っている店とは毛色が違うというか… 革やエナメルの質感がなんとも言えずにエロティックで、壁に並んでいる手錠をはじめとする拘束具や多種多様な鞭の数々がどうも本物っぽいといいますか…… もしかしてここは本物のSMグッズのお店なんでしょうか。 しかも、千鶴さんはまるでオタク系の店での俺のように、ボンテージなどを手に取り身体に併せ 「どうかなぁ……似合う?」 などと返答に困る質問をしてくれたりするのだ。 いや、似合いますとも、似合いすぎてまるで本職の女王様っぽいといいますか。 いえ、可愛いんですよ?可愛いのですけど、可愛い前になんと言いますか黒いオーラといいますか、 彼女食べる人、俺食べられる人って立場を自覚させられるんですけど…… 「P君ってこういうのは嫌いだった?」 いや、嫌いじゃないです。寧ろ好きなほうだとは思うんです。 ただ、二次元で妄想しているのと実際に目の当たりにするのは違うんです。 なんといいますか、縛ったり鞭を打ってみたり、拘束してみたいと思いますけど、スキルも度胸も甲斐性も場所もないですし。 第一、千鶴さんにそんなことできっこないす。 緊張のあまり押し黙る俺。いや、人間緊張すると喋れないといいますか、 「嫌いじゃないけど……」 けど、なんだ!けどって。 素直に好きと言えなくて、といいますか俺Mじゃないと思うんです。 いや、そりゃいつも襲われてばっかりのヘタレな俺ですからMと間違えられるのも仕方がないのはわかるんですけど、妄想世界では何度も千鶴さんにあんなことや(以下文部省検閲につき削除)をしているんです。 と、気がつけば千鶴さんは手に黒い袋を手に持って俺の傍に佇み、 「じゃぁ、お昼御飯でも食べにいこっか。」 俺の手をとると、店の外に引っ張っていく。 えっと、その袋の中にはなにが入っているんですか?千鶴さん。 75 名前:実験的作品[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 00 20 35 ID llysDH3v 気がつけばいつものオタク系店舗にいる俺と千鶴さん。 って、どうして千鶴さんがこの店を知ってるんですかっ!! 俺はこの店の痕跡物を家に残したことはないはずだし、この店の話をしたことだってないはずなのに。 そんな俺の思いを知ってか知らずか店内を見て回る千鶴さんの姿。 おもわずその姿に驚き、そそくさとその場を立ち去り何事かと遠方から千鶴さんを窺う野郎に、動かざること山の如しとエロマンガを物色する猛者たち。 そんな中に立ち入り、おもむろに一冊のエロマンガを手に取り 「P君、こういうの好きでしょ?」 ええ、好きですけど周囲の視線が死ぬほど痛いです。なんというか、空気が悪いっす。 「この人の本持ってたよね?」 ええ、持ってますっていうか、どうしてそんなこと知ってるんですか? 「これまだ持ってないよね。買うの?」 買いたいですけど、今日はなんというか買えるような雰囲気じゃないですっす。 「こういう人形はP君興味ないの?」 いえ、あるんですけど、家に飾れないんです。ほら、俺覚悟が足りない人ですし。 というか落ち着いて買い物をする雰囲気じゃないというか、千鶴さんはどういう店舗なのか見学するために来たようで特に何を買うわけでもなく 一通り見終わると店を出てしまった。その際に言われた言葉が俺をどきりとさせた。 「今日は何も買わないの?」 今日はって…… 76 名前:実験的作品[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 00 22 12 ID llysDH3v 次に向かったのは所謂ビデオレンタル……なんだが、どうして千鶴さんがそのコーナーにいるんですか? 「ねぇ、P君。どういうのが面白いの?」 おもいっきりアニメのコーナーの前でにっこり微笑む千鶴さん。 なんなんでしょう……この、死刑直前に刑務官が見せる 「何か最期に言い残すことはないか?」 ちっくな優しさというか違和感は。 しかし、無言でいるわけにも行かない。無難にアンパンマンをお勧めするべきだろうか。いやいや、ここはヅブリの映画を…… 「あ、これ確かP君、これのゲームもってたよね?」 はい、よりによってそれですかぃ。 絶対にオススメしてはいけない上位ランキングぶっちぎりで1位のそれを選びますか。 って、待て。うえいとあみぬぃっと。 どーして千鶴さんがそのゲームを持っていることを知っているんでしょ? あれはデスノートばりに厳重に秘密の机の奥にしまいこんだはずだし、侵入者の形跡もなかったはずだが……。 いや、まて。 待つんだ。 落ち着け。 ここは無難に否定してみるのはどうだろう…… いやまて19話や20話を避ければ単なるハーレムアニメに過ぎないのだから、1話だけ見せてみるのはどうだろうか? いやいや、キャラクター物のアニメは避けるべきだろう。せっかくあの千鶴さんがアニメに興味を持ってくれているんだ。 内容のあるアニメを見せてみるのがいいのだろうか?ならなにがお勧めだ。お髭のモビルスーツ?いや、ルパンルパーン?或いは努力と根性? と、とりあえず無難なものを4本選ぶと、素直に微笑む千鶴さん。 「へぇ、楽しみ♪」 ……あの、あなた本当に千鶴さん? 77 名前:実験的作品[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 00 25 12 ID llysDH3v 家に帰り、ビールを片手に千鶴さんとDVD鑑賞。 夢のような光景のはずなのだが、どうにもこうにも千鶴さんの顔は真剣そのもので、まるで教育番組を見る留学生のように画面を凝視し続けている。 なにを考えているんだろうなぁ、などと推測するが微妙にわからない。急にオタク文化というか俺の趣味に理解を示してくれた背景に一体なにがあったんだろうか。 いや、仮にそうだとしても、人には見られたくない暗部ってものがある。 俺はこっそり隠れて独りこそこそとオナニーしたい性質だし、見られて恥ずかしい部分ていうのはある。 そりゃ千鶴さんとオタク系の会話ができるようになることはある意味歓迎するべきことなんだと思う。 だが、何かが違う気がする。 千鶴さんがこのことがきっかけで腐女子化してしまうのも俺のエゴなのかもしれないが千鶴さんにはこのままでいて欲しいと思っていた。 そりゃ確かに俺も男なんだから都合のいいことを思ったりもするさ。 だが、なんというか千鶴さんは高く気高い尊い存在であって欲しかった。 ある意味、俺なんかと付き合ってくれているだけで贅沢な話なのだが、それが原因で千鶴さんが駄目になってしまうのはいやだった。 だからといって千鶴さんと別れることなんてことも当然できない俺なのだ。 そうだ、認めよう。俺はこんなに駄目な奴なのにどうして千鶴さんは俺なんかと付き合ったりしてくれるんだ。 金も顔も名声も甲斐性も将来性もない俺なのにどうして千鶴さんはこうまでしてくれるんだ。 千鶴さんにいったいなんのメリットがあるんだろう。 その夜、千鶴さんはあの店で買ってきたあの衣装を着てくれた。 俺は初めて千鶴さんに命令をした。 いや、千鶴さんが命令して欲しいとお願いしてきたのだ。 わけがわからない。 でも、そうしないといけない不安に駆られた。 そうしなと千鶴さんがどこかに行ってしまうような気がした。 恐怖と背徳感。 いつもは見上げる千鶴さんの顔を俺が見下ろしている。 ぞくりとする。 そしてたった一言がきっかけで何かが弾けた。 「咥えてよ。」 その夜、初めて俺は無我夢中で千鶴さんを自分の物にした。 78 名前:実験的作品[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 00 26 24 ID llysDH3v 投下完了です。 79 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 02 48 56 ID LD2bgLYv 72作者が意図したものか否か解らないが、いらっとする主人公だな。 グダグダ言い訳した挙句、自己完結の無理心中で問題放棄したように見えてしまう。 78お互いが今までちょっと遠慮してたぶん、千尋さんの方が一気にヤンデレ化しそうで楽しみ。 GJ!! 80 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 04 18 01 ID GcRWPsWA 72 「やっぱり島村さんはいいなあ」とか呑気していたが あああああ! なにやってるんだ誠人! リアルに( ゚д゚)ポカーンとしてしまった 78 地味に洗脳されつつあるような このまま進むのかなにかのキッカケで爆発するのか 千鶴さんの危うさが出てきた感じでwktk 81 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 04 37 34 ID iBgej3OJ 72 ふむ、主人公の行動には少し考えされらるものがあるな。 自分は正しくあれと思い、そう振舞うのは偽善だったと気付き自己嫌悪に落ち、 ならば偽善をなくそうとし、だけど偽善を意図的に振り払おうとするのもまた偽善。 結構深いものがあるな。 82 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 04 59 44 ID KzLJvUtD かなり出遅れた感があるけど空気読まずプロットを…… ・主人公は過去に近所のキモ姉に監禁逆レイプされた経験がある ・幸運にも救出されるがキモ姉家族は居た堪れなくなって引越す ・数年たって事件のことを忘れ始めていた主人公の前に突然娘を名乗る女の子が現れる ・ずっと父親からの愛情に飢えていたため十数年分を取り戻すかのように甘える娘を主人公も次第に愛おしくなってゆくが……どうなる、みたいな このプロットなら精通さえ迎えていれば小学生でも子供ができる 83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 06 46 40 ID EA36+iPh どこで読んだか忘れたんだが・・・・ ファンタジー物で、ある一人の魔道師(剣士だったかも)が戦場で一人の娘を拾い、その娘がヤンデレ化してセックスみたいなSSがあったんだが、こんなのはどうだ? 84 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/07/01(日) 07 46 45 ID 86yV6aIp 82 ダディフェイスのキモ姉版? 85 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 10 59 37 ID vOf1ohUI ダディフェイスって言うから一瞬クールなほうを想像しちゃったじゃないか 86 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 11 16 58 ID Zamv8YiL あの女の臭いがする! /\___/ヽ /ノヽ ヽ、 / ⌒ ヽ,,,)ii(,,,r ヘ | ン(○),ン 、(○) | |`ヽ、 | `⌒,,ノ(、_, )ヽ⌒´ l | ヽl . ヽ ヽ il´トェェェイ`li r ;/ .| i | /ヽ !l |,r-r-| l! /ヽ | l | / |^|ヽ、 `ニニ´一/|^|`,r-| 「 ̄ / | .| | .| ,U(ニ 、)ヽ / | .| | .|人(_(ニ、ノノ 87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 11 20 09 ID prRwsgdU ダディフェイスは是非読め、電撃から出てるから 88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 11 51 26 ID KTYKZGPL 87 キモいのか? 89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 12 26 41 ID PRf3a/Sc 72 前から誠人は理屈っぽい所があったが最後に壮絶に空回りしてしまった希ガス 最終回で二人が幸せになれますように(-人-) 78 >その夜、初めて俺は無我夢中で千鶴さんを自分の物にした。 しかし実情は千鶴さんにいいいようにもてあそばれてるのか……?w このまま何も気付かない方がいいのかもしれんねw 90 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 12 28 10 ID HD2asF8v 87 あれはキモ嫁だべ。 長女や長男もやや依存っぽいが描写が出てきてるけれど、 姉弟間での絡みは無いしなぁ。 91 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 15 14 43 ID Am9zaEBA 九頭龍 左龍鉄刃!! 92 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/01(日) 17 20 37 ID 25AUCktU ガリガリはキモかろ 93 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 00 51 35 ID 7bBOmpW3 50 すみません、その設定を頂いても宜しいですか? 94 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 01 12 59 ID VnWxpkG0 88 主人公の設定が、幼い頃に嫁(便宜上の呼び名だが)を助けて半身不随の怪我をする。 その後嫁と離別して、強くなろうとして習得した仙術で半身不随を克服。 その後、半身不随にした事を心配に思っていた嫁が再会。だが再会初対面で気付かず、知らない人とはっきり言ってしまったため言い出せない。 その後、主人公が風邪をこじらせるのだが、体調が悪くなると仙術を維持できないため、半身不随状態に戻る。 それを診察した医者に、半身不随が残ってる事を聞かされた嫁は頭を掻きむしって頭血だらけ。 どうも離別した直後ぐらいは半身不随にした影響か頭をよく掻きむしっていたらしい。 95 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 12 54 01 ID 67zPExO7 58です、同じ内容で全く違う作品を書きました。 AとB、人気が高い方を書いて行きたいと思います。 Aは正規ヤンデレ娘でBは「頭を病んでいる」ヤンデレです。 稚拙な文ですが、暇潰しにどうぞ 96 名前:試験作品 A[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 12 58 23 ID 67zPExO7 最愛の妻が他界してから早3年。 毎朝見慣れた光景とはいえ、頭を抱えずにはいられない。 横を見ると、10歳になる娘が安らかな寝息をたてて寝ているからだ。 「起きろ百合花。」 百合花の体を何回も揺らすと、のっそりと起きて部屋を見渡し、俺の姿を見るとニッコリと微笑む。 「おはようございますお父様。」 「おはよう、百合花。ところで何個か質問があるんだけど良いか?」 「何でしょうか?」 「どうして、ここで寝ているんだ?」 まるで何を言ってるのか分からないという風に首を傾げる。 「どこの世界に小学4年生の女の子が父親と同じ布団で寝るんだ?」 「ここに居るではありませんか。」 嬉々として返事する娘の事を考えると。 また一つ大きな溜め息が流れ、このやりとりは一体何度目なのか・・・と自問自答してしまう。 「いつも言ってるけどな、もう少し父親離れしたらどうだ?」 「嫌です。」 「でもなぁ 「嫌です。」 「だか 「嫌です。」 「・・・」 「・・・」 互いに無言になる。 俺はきっと渋い顔で百合花を見ていると思うが。 それとは対象的に百合花はまるで恋人を見るかのように俺を凝縮する。 「・・・馬鹿馬鹿しい・・・。」 「何か仰いましたか?」 俺は百合花の父親だ。3年前に妻を交通事故で亡くしてから、俺は父親として百合花に出来る限りの事をしてきたつもりだ。 「なんでもない、それより学校の準備しないとダメなんじゃないか?」 「はい、それではお父様失礼します。」 百合花は丁寧にお辞儀すると、静かに部屋から出て行った。 大きく背伸びをすると、まだ眠たい頭を我慢しながら顔を洗うために洗面所へと足をのばした。 97 名前:試験作品 B[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 12 59 49 ID 67zPExO7 最愛の妻が3年前に他界した。 いつもと変わらない光景がそこにはあった。 「良い加減寝た振りを止めたらどうなんだ?」 「あら、お父様やっとお目覚めですか?」 横には娘の百合花が居た。 「いつ、忍びこんだ?」 「それは違いますわ、お父様。」 「どういうことだ?」 「忍び込んだのじゃなくて、夜這いです。よ ば い。」 今回で何回目だ? 百合花が入ってこないように、南京錠まで掛けたのに、容易く突破されてしまった。 「南京錠なんかで私達の愛は止められませんわ。」 身悶えする百合花を見ながら、俺はどこで教育を間違えたのか自問自答していた。 「お父様の真剣な姿も素敵ですわ、あ・・・涎が、失礼。」 じゅるりと出てきた涎を拭きながら、俺に近寄ってくる。 「なんで近寄る?」 「目覚のちゅーですわ」 「するかあああああ!!!!!」 俺は抱きついてくる百合花を振り払うと、本気で家から飛び出した。 98 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 13 01 29 ID 67zPExO7 以上です、色んな意味でやってしまいましたorz 99 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 13 41 55 ID cI3MLG/U GJ! なんだがえーと……この展開は正規ヤンデレなのか? それならばA! 100 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 15 51 14 ID cdweoY0k 最初Aで完結したらBきぼん 101 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 15 54 16 ID DAJNNDqW Bのほうが続き読みたいって思ったのでB 102 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 16 27 13 ID 85zBu5nZ 短編ならBが読みたいが 長編ならAが読みたいな 結論:両方 103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 17 04 58 ID +VeezHyW ( ´∀`)σA 104 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 19 12 02 ID 4On+ZodA 勿論どっちも 105 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 20 41 32 ID HOr9q90g 俺も 102 106 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 21 21 08 ID 67zPExO7 どっちもな意見が多かったので、まずAを完結させてからBを書きます。 執筆頑張るので、お待ちをorz 107 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 22 50 57 ID OzYayXKh 106 よし!息子以外は全裸で待ってます。 108 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 23 18 02 ID 6MJNjySa ヤンデレはある意味でヤンデレを発見するヤンデレな歴史を作る作業なんだよな・・ 109 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/02(月) 23 41 47 ID iVrnNsaX 足の裏を山羊に舐めさせながら待ってます 僕が狂死するまでに書いてください 110 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/03(火) 10 01 49 ID MYNXK1qj 「 109くんの足の裏を嘗めていいのは、高校も中学校も小学校も幼稚園も保育園もずっと一緒でおうちも隣でずっと 109くんの足の裏を嘗めてきた、あたしだけなの……!」 「何を言う、私など 109が生まれたときから、姉として足の裏を嘗めてきたんだ。譲る気はないね」 一方その頃妹は唇を奪った。 111 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/07/04(水) 06 46 48 ID AKA28tOO 保守 112 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 08 08 44 ID d6W9+muc スクイズ見レナ過多 113 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 09 42 05 ID YSVGaCwq 110 (*´Д`)ハァハァ、こんなの実際に居たらいいね。 114 名前:58[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 11 32 19 ID KPfaKu2r 短いですが、投下します。 お楽しみ下されば幸いです。 115 名前:家族A[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 11 34 41 ID KPfaKu2r 朝、朝食を食べた後にコーヒーを飲みながら何気なくニュースを楽しんでいたのだがその静寂は声によって阻害される。 「お父様、今日は何時ぐらいにご帰宅なさいますか?」 洗い物担当の百合花が濡れた手をエプロンで拭いながら話しかけてきた。 「7時ぐらいかな。」 「分かりました、出来るだけ早くお願いします。」 「何か用事あるのか?」 「いえ、余り遅いと心配になりますから。」 親が子を心配するなら分かるのだが、子が親を心配するのはいかがなものだろう? これじゃ、立場が反対だな。 思わず苦笑が洩れる。 「お父様、何か楽しい事でも?」 俺が笑っていると、百合花まで楽しくなるのか。 自分の事のようにくすりと微笑む。 「なんでもない、それより時間良いのか?」 「もうすぐ出ます、その前に・・・失礼します。」 それだけ述べると、百合花はエプロンを外して俺に抱きつく。 甘えん坊なところは昔から変わってない。 「やっぱり安心するなぁ」 普段丁寧語の百合花だけど、この時だけは本来の口調に戻る。 「ねぇ、お父様」 「ん?」 「お母様の事大好き?」 「あぁ、今も心から愛してるよ。」 「そっかぁ、それじゃ私は?」 「自分の娘を嫌うと思うか?」 抱きついたまま、百合花は頭を横に振り。 よりいっそう俺に抱きつく。 5分ぐらいそうしたであろうか、不意に離れると。 俺に向かって一礼。 「お父様、失礼致しました。」 「気をつけてな。」 「はい、行って参ります。」 制服の乱れを丁寧に直すと、リビングから出て行く。 玄関の音がした後、会社に向かう為着替えることにした。 朝、タイムカードを切ってから俺の仕事は始まるのだ。 「おはよう、白石さん」 「おはようございます、川内さん」 彼女は俺の部下でもあり、同じ大学で学んでいた友人でもある。 その美貌から求婚されるのは多いらしいが、全て断り。 今現在でも、独身キャリアウーマンとして頑張っている。 妻が亡くなった時最も悲しんでくれた人で。 俺自身幾ら感謝しても足りないぐらい恩を受けている。 って・・・そろそろ仕事しないと。 俺は深く深呼吸すると仕事に取りかかった。 116 名前:家族 A[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 11 36 40 ID KPfaKu2r 白石 小夜 「ただいま」 誰の返事も帰って来ないのは分かっているが、真っ暗な闇に対して帰宅を告げる。 ふと目に止まった電話機には親からのメッセージ。 聞かなくても内容が分かりきっているので全て削除する。 十中八九お見合いしろ・・・ということだろう。 全くもって下らない。 私には既に心に決めた人が居るのだ。 その人の名前は、川内 智也。 私が彼を見かけたのは大学2年の時、たまたま同じ講義を受けていた頃に遡る。 黒曜石にも似た、黒い髪に引き締まった体。 瞳は湖の様に澄んでいて、優しげな風貌を醸し出していた。 一目惚れだった。 それからというもの、私は彼との絆を築きたくて努力して友人になることができた。 嬉しかった、実際会話してみても想像していたものと一緒・・・いやそれ以上だった。 だが、私の至福の時は長く続かなかった。 彼には妻と娘が居たからだ。 それを聞いた時、私は絶望の本当の意味を知った。 叶わぬ恋・・・。 それでも彼と一緒に居たかった為に、卒業後。 同じ会社を受けた。 新人研修の時の彼の驚きは記憶に新しい。 ずっと、私の恋は叶わないと思っていた。 だが3年前のあの日、私の恋は再び始まることになる。 117 名前:家族 A[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 11 40 13 ID KPfaKu2r 忘れもしないあの日、洗い物をしていた時に電話がかかってきた。 「失礼ですが、白石さんのお宅でしょうか?」 相手は愛しいあの人、本来ならば暖かな声はガラガラに枯れていた。 「何かあったの?川内くんっ」 受話機を強く耳に充てるとひそかに泣き声がした。 「・・・妻が、香代が本日、な・・・亡くなりました・・・」 嗚咽と混じり混じりに言葉を紡ぎ出す。何だって? 妻が、亡くなった? 誰の? 「葬式を執り行いたいので・・・つきましては・・・」 愛しい彼のだ!!!!! 何たる幸運!! 彼にとっては悲報かもしれないが、私にとっては吉報だ!! 一生叶わないと思っていたのにこんな形で流れ込むなんて!!! ふとすれば、流れ出てしまう歓喜の笑いを抑えつつ。 震える声で私は彼を慰めた。 「それでは失礼しました・・・」 「元気だしてね、今から会いに行くから」 「ありがとう」 その言葉を最後に電話が切れた。 電話が切れた後、私はどうやって彼を手に入れたら良いのか考えた。 だが、どうにも良い考えが浮かばない。 彼は私を只の友人としか見てないだろう。 私の気持ちにさえ気付いているか、疑問が残る。 彼を取り巻く、人間関係は、娘ただ一人。 両親からは大学卒業後、縁を切られたと聞いた記憶がある。 娘・・・彼に最も近く、切っても切れない関係・・・。 ならば利用してやる! 118 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 11 42 37 ID KPfaKu2r 以上です。 歳は28と10でお考え下さい。 119 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 12 27 10 ID AKA28tOO 28と10 ( ゚д゚) (つд⊂)ゴシゴシ (;゚д゚) (つд⊂)ゴシゴシ _,._ (;゚ Д゚)?! 120 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 12 41 47 ID olH06CST キモ娘10歳児だとぅっ! これは新 境 地 続き楽しみにしてまつ。 121 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 12 49 18 ID evNu1o/G 今のところはむしろ白石さんに萌える、これから楽しみ あとお父さんの過去が気になる 高校生でできちゃった婚したのだろうかw 122 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 15 54 51 ID ITiwAeu0 お父さんが3月後半生まれなら、大学1年次の6~7月までにヤっちゃえば ぎりぎり18歳でパパになれる。 (人間の妊娠期間は大体266日=38週間前後、早産の場合を除く) どちらにしても続きが楽しみだ。特に娘の方。 作者さんGJ! 123 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/07/04(水) 18 17 51 ID LZ1gtyEX GJ! 娘さんガンバレ!! 124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 21 27 10 ID SPkJzbTa この手のシチュは大好物なのでwktkが止まらない キモムスメと白石さんに期待だぜひゃっはー! 125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 21 28 07 ID yPp0lh3Z 保管庫更新乙です 126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 00 49 11 ID l7qMN1M4 更新乙 127 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 11 41 31 ID YAOTTSwf 更新乙です 128 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 14 31 45 ID w0kg14Zz 下手っすがよずり姉さん http //s.pic.to/enoxe 129 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 17 06 38 ID b3Vby/Io 128 ちょw なんか怖いw 130 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 17 20 36 ID VJ9ieQsy 誰か、転載よろしく。 131 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 21 09 02 ID 4/D3YiMS 128 なぜそんなところに上げるのか理由を聞かせて貰おうか。 132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 21 31 02 ID w0kg14Zz マジスンマセン 133 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 21 55 05 ID 16I/bFbM 132 PC許可は無理なのかな? 携帯で見ればいいんだろうけど 134 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/05(木) 21 58 39 ID 16I/bFbM あ、PC時間制限されてるのか スマソ 135 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/06(金) 02 10 05 ID wkGdRlXk VIPのヤンデレゲーム作ってるとこ、現在体験版公開中。 個人的に、 立絵 : ○ 背景 : △ シナリオ : △ システム : ? イベント絵 : ◎ 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/06(金) 17 11 35 ID K3jRpqlC 135 シナリオはこのスレの作者さんにも来て欲しいな 137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/06(金) 17 26 41 ID ut4FjtV6 そういえばお茶会のゲーム化の話って進んでるんだろうか 138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/06(金) 18 01 14 ID POtrJYeU 136 もうシナリオ完成してるんじゃないの? ゲーム化企画ってだいたいSS師はあまるけど 絵師とか音師が足りなくてひーこら言うものだと思って敬遠してたが・・・ 139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/06(金) 18 11 07 ID NQ+PWGhq 頻繁に関連スレに宣伝来てるよ 140 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/07/07(土) 06 37 05 ID qF8F0BcQ 上ゲ 141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/07(土) 21 34 00 ID SpYWVM4X [ (★) ]_ 丶´Д` (ミ 北 )<嫉妬スレが職人不足・・・このスレの職人さん・・助けて・・・ ) |( 〈_フ__フ http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1181224518/ 142 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/07(土) 23 03 00 ID ersBxxDh 短編投下します † これから話すのは、少しばかり奇妙な体験談だ。といっても、私の身に起きた ことじゃない。お話の中に私が登場しないし、したとしても物語の本筋に関係の ない脇役、語り手、通行人、そういった役くらいのものだ。あくまでも主人公は 私の友人である三角・徹で――これは徹の物語で、彼の体験談だ。 他人の体験談を、私が語ることを許して欲しい。こればっかりは仕方のないこ となのだ。なにせ、もう私以外に、あの事件について詳しく語るものはいないの だから。 当事者は、もう、どこにもいない。 だからこれは、終わってしまったお話だ。体験談で、昔話で、御伽噺だ。 どこか遠くでおきた、いつかどこかでおきた、少しだけ奇妙で、僅かばかりに おぞましい、愛情の話だ。 だから、語りだしは、自然とこうなる。 すべての御伽噺は、こうして始まるのだから。 昔々、あるところに―――― ■ 狂人は愛を嘯く.Case1 143 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/07(土) 23 19 47 ID ersBxxDh 「これ、恋人」 五月に入ったばかりの暑い日に、炎天下の下で三角・徹は前触れも前置きもなく、 いきなりそんなことを口にした。 暑さのあまり、蜃気楼でも見たのかと思った。 暑さのせいで、ボケてしまったのかと思った。 それくらいに――唐突で、脈絡のない、話だった。 「……ふうん」 それ以外に私にできる反応はなかった。むしろ、「ふうん」と返事を返せただけ まともだったといえる。実際、私は「ふうん」の後に続く言葉を、何一つとして思 いつくことができなかった。 私の返事が気に喰わないのか、それとも十分だと思ったのか、徹は何も言わない。 徹の横に立つ女も――やはり、何も言わない。にこにこと笑って、傍に立っている。 「…………」 二人が何も言わないので、私は黙ったままに視線をめぐらせた。まだ五月だというのに、 直射日光があたる場所は暑い。大学のキャンパスには人が溢れていて、大多数は日陰を選択 して歩いていた。日向にぽつんと立っている私たちは、少しばかり奇異に見えただろう。 徹――さして古くもないが、そこそこの付き合いである彼はいつもと変わらない格好だった。 洒落っけはないが、清潔な格好。短く刈り込んだ髪と相まって、何かのスポーツをやっている ように見える。 彼がこの上なくインドアな趣味を持つのだと、見た目からでは想像はできない。常に浮かべて いるほがらかな笑みは、同人誌即売会よりはテニスコートのほうが似合っていそうだった。 人それぞれ、だ。 そちらのほうはさして問題はない。問題があるとすれば…… 「……恋人?」 ようやく、私はそれだけを言えた。視線は、徹ではなく、その隣に立つ少女へと向けられている。 少女。 キャンバスにいる以上、年齢は多少前後する程度で、「女」と呼んだほうがいいのだろうが、私には 彼女を「女性」と呼ぶ気にはなれなかった。少女、と言葉がいちばんしっくりきた。それは、ただ単純に 背が低いというだけでもなく、どこか少女趣味な服を着ていたからでもない。 目だ。 子供のように純粋で――少女のように危うい目をしていた。取り出して磨けば、ガラス球のように向こ う側が透けて見えるだろう。 経験上、こういう目をした相手は、大概が忌避すべき相手だ。 できるかぎり目をあわせないようにする私を、けれど、少女は見てはいなかった。その透明な瞳は、た だ一点、徹にのみ注がれていた。 恋をする少女の熱心さで。 「ああ、恋人」 「……ふうん」 再び、徹は言った。話がまったく進んでいない。 仕方なく、私の方から、もう一歩だけ踏み込むことにした。 「付き合っているのかい」 「まあね」 「男女交際?」 「男々交際に見えるか?」 「さてね」私はそらとぼけて、ちらりと少女を見た。もちろん彼女は男には見えないし、 徹が実は女だということもない。健全な――健全かどうかは知らないが――男女交際だろう。 144 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/07(土) 23 28 13 ID ersBxxDh とはいえ、徹が何を言いたいのか、まだわからない。 まさか、ただ単純に自慢しにきただけだろうか。徹がそういう人間だとは知らなかったが、初めて 男女交際を味わえば、人間が代わってもおかしくはないのかもしれない。 愛情とは、そういうものなのだろう、多分。 「いつからだい」 胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけながら私は聞いた。こんな話、素面でしたくなかった。酒 があればそちらのほうがいいのだが、生憎、真昼間から酒を持ち歩くほど不健康な生活はしていない。 ゆっくりと立ち昇る紫煙は、けれどゆるやか風に流されていってしまう。 「先月のイベントで出会ったんだ」 へえ、と私は頷いた。少しばかり興味がわいた。イベントで出会った、ということは、彼女はご同類 ということになる。書き手なのか読み手なのか、少しばかり気になった。 が、その僅かな興味は、徹の次の言葉に掻き消された。 「俺の本を――気にいってくれたらしい」 「…………」 危うく、煙草を取り落とすところだった。 今の私は間抜けな顔をしているに違いなかった――それだけの驚きを、徹はその言葉で与え てくれた。 ――本を読んで気にいった? 私は三度、少女を見た。いまだに名前も教えてもらっていない少女は、じっと、徹を見ていた。 徹以外の何も見ていなかった。その眼球の中に、私の姿は映っていなかった。 そういう出逢いがあることは知っていた。 けれど。 「……あの本を?」 「あの本を」 徹は頷く。彼も彼で、私しか見ていなかった。隣に立つ少女を、見ようとしていなかった。 ようやく――私は悟る。どうして彼が、恋人が出来たことを報告するように、私のもとへと 訪ねてきたのかを。 理由はわかった。 何がしたいのかは、わからないが。 「ふうん……」 私は灰を落としながら思考を一ヶ月前へと飛ばす。三角・徹が出した本というのは、 複数人のライターによる小説本で――ようするに、文芸サークルの身内本だ。地元の 即売会にも参加しているが、当然のようにほとんど売れない。同じようなサークルと 売りあったり交流するために参加しているようなものだ。 そのことについては、別にいい。 問題は―― 「君の――話かい?」 「そうだ」 念を押すように言うと、徹は頷いた。かすかに、視線が泳いでいた。 仕方のないことだ。視線をそらすくらいはするだろう。なにせ、先月の本は、徹は―― 原稿を落として、代筆を私に頼んだのだから。 あれは徹の本だが、 私の話なのだ。 145 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/07(土) 23 43 12 ID ersBxxDh 友人に代筆を頼むことはそう珍しいことではない。この場合ただ一つ問題なのは、 作品が徹の名前で出ていることだ。私は自身の名前が出るのを疎ましく思ったし―― 徹は自身の原稿を落とすことを拒んだ。そういう利害の一致で、徹の名義であの作品 は出されたのだ。 そして、 この少女は、それを読んで気に入ったのだと言う。 「あの本は――面白かったのかい」 徹にではなく、私は未だ名を知らない少女に向かって言った。 反応は、遅々としたものだった。 始めの五秒、少女は自分に向かって話しかけられているのだと、気付いていなかった。 私は辛抱深く待ち、十秒ほど過ぎた頃、少女はゆっくりと、言葉を咀嚼するようにして、 私の方を振り向いた。 視線が、あった。 あわなければよかったと――そう思う、瞳だった。 少女は、透明な瞳で私を見て、 ――はい、大好きなんです。 細い声で、そう言った。 「……そうかい」 私は頷き、煙草を携帯灰皿へと捨てた。足元へと捨てたかったが、学生課に注意されて 以来慎むようにしている。少女はすぐに私から徹へと視線を戻し、私もまた、徹へと視線 を戻した。 彼は、私を見ていた。 私を見る彼に、私は言った。 「よかったじゃないか」 ――つまりは、そういうことだ。 少女はあの話を読んで、徹と付き合うことを決めたのだろう。徹ではなく、本を大好き だと言った少女の態度は、無言でそう告げていた。 ならば、 徹にとって、『真実』など疎ましいものに違いない。 言葉の裏に真意をこめて、私はよかったじゃないかと言ったのだ。 ――黙っていてやるよ、と。 そう、意味をこめて。 「ああ、有難うな」 私にだけ通じる真意を言葉に込めて、徹は答えた。別に、有難いことだとは思わなかった。 わざわざ真実を口に出すつもりもないし、彼の幸せを壊そうとも思わなかった。 ただ、 徹がその少女に惚れていることが、少しばかり意外だった。彼の趣味は今まで知らなかったが、 こういう儚げな子が好きだったらしい。 146 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/07(土) 23 54 34 ID ersBxxDh 「それで、今日は自慢でもしにきたのかい」 完全に興味は失っていたし、彼が私に釘をさすという用事も終わっていたが、一応言葉を 続けてやった。そのくらいの甲斐性は、私にもあるつもりだった。出来ることならば、今す ぐ話を切り上げ、次の講義を休み、どこか昼間から開いている居酒屋で酒を飲みたいとそう 思ったが、実行はしない。 徹はかすかに安堵したように笑って、それから、 「いや――果敢那がさ」 「ハカナ?」 「ああ、こいつの名前」 言って、徹は隣に立つ少女を指さした。指をさされてもなお、少女は微動だにしなかった。 果敢那、というのが彼女の名前なのだろう。下の名前を呼ぶ程度には、仲が良いらしい。 「それで?」 話の続きを促すと、徹は「ああ、」と前置き、 「うちのサークルに入りたいっていうから――部長のところに、連れていくところだ」 「成る程」私は意味もなく形だけ頷き、「そのがてらに見かけたから、自慢をしにきたという所かい」 彼が話しやすいように誘導すると、案の定、徹はにやりと笑って、 「まあ――そんなところだ」 と、言葉をしめた。 これで、表向きにも、裏向きにも、用事は終わった。 これ以上この暑い場所にいる必要もない。私は「馬に蹴られる前に、退散することにするさ」と だけ告げ、踵を返そうとした。 その私の背に、予想外の言葉が投げかえられた。 徹のものではない。 少女の――果敢那のものだった 「――さようなら」 ただ、一言だった。 その言葉が、どういう意味を持ったのか私にはわからなかった。とくに考える気もなかった。 振り返らずに、そのまま去る。振り返っていれば、彼女が私を見ていただろう。けれど、振り返 らなかった私には、彼女がどんな表情をしていたのか、最後までわからなかった。 振り返って、あの瞳と目があうことを考えると、それは正しい判断だったのだろう、きっと。 147 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 00 11 11 ID 7Iqx920E お話は、だいたいそんな風に始まった。徹と果敢那が付き合い始めたことは一気にサークル の中に広がった。徹のような人間が交際を始めた、という驚きのせいかと思っていたが、話を 聞いていると、どうやらあのあと二人は、サークルの人間に手当たり次第に挨拶に回ったらし い。新入生の挨拶というよりは――恐らくは、牽制のような意味で。その証拠に、後で知った ことだが、あれは徹からではなく、果敢那の方から言い出したことらしい。 ――付き合い始めたのですから。 ――皆さんに知ってもらいましょう。 ――私たちが付き合っているということを。 つまりはそういうことだ。彼らはカップルとなったのだ。無理矢理に、自他ともに 認められることによって。そして果敢那は、徹を自身以外の誰にも渡したくはなかっ たのだろう。 その独占欲は、嫌いではない。好きでもないが、嫌いでもない。 よくあることだ。 ただし、辟易したことが二つある。一つは、彼らの『交際宣言』から半月ほどたった 日のことだ。私の家に、徹が菓子折りと酒を持って訪れてきた。 似合わぬ手土産に、嫌な予感がした。 案の定、用件は、予想したとおりだった。 「――次も頼む」 五月分の原稿も頼む、ということだった。果敢那があの作品を気に入ったということは、 それはつまり――徹の作品ではなく、私の作品を気に入ったということに他ならない。 徹の作品では駄目なのだろう。 私が書いたものでなければ、駄目なのだろう。 だからこそ、徹は私に頼みにきたのだ。締め切りを落としたわけでもないのに、代筆を 頼む、と。 辟易した。 代筆を頼まれる行為に、ではない。その理由にだ。 「そんなに彼女のことが好きかい」 下手をすれば土下座でもしそうな勢いの徹に、私はやる気のない声をかけた。確かに果敢那は 可愛かったが、それはどこか病的なものを含む可愛さだった。球体間接人形がおぞましさと美しさ を備えているようなものだ。見て楽しむのは良いが、手に入れたいとは思わない。 が、徹は手に入れたがっているだの。 そして、手放したくないのだ。 だから、私に頼みに来たのだ。果敢那を手放さないためには、作品が必要だから。そのこと を、徹はすでに気付いている。彼女の愛の本質がどこにあるのかを。 ――作者は出力装置に過ぎない。 そんなことを言っていた人がいたなと、ふと思い出した。 「――ああ」 力強く。 嘘偽りのない強さで、徹は頷いた。果敢那のことが好きだと、彼は肯定した。 「……ふうん」 人の趣味に、それ以上とやかく言うつもりはなかった。書けるのならば、そして私の前に山 とつまれた土産をもらえるのならば、書く以外に道はなかった。 私は頷き、 徹は歓喜して返っていった。 その時点で――私はすでに結末が見えていたような気がしたが、それでも一応、締め切りまでに 作品をしあげて出した。作品は本となり、サークル内に配られ、果敢那の手にも渡った。 その結果。 二つ目の、辟易する事態が引き起こされた。 148 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 00 42 35 ID 7Iqx920E 「…………」 さすがに――辟易した。 呆れ果てた。 「よぉ」 3号館の果てにある部室の扉を開けると、三角・徹は気軽に手をあげた。他にも幾人かが 部屋の中にいて、彼ら/彼女らは、一斉に助けを求めるように私を見た。 ただ一人、私を見なかったのは。 徹の膝の上に座る、小柄な果敢那だけだった。 「……やぁ」 私は恐らくは曖昧な笑みを浮かべて手を上げ返した。内心では部室に入ったことを後悔 していたが、今更引き返すわけにもいかなかった。助けを求めるような目にも納得がいく。 一目見ただけで、どういう状況なのか分かってしまった。 悪化したのだ。 多分、恐らく、間違いなく。 恋愛という病が。 「仲がよさそうじゃないか」 「そうだろう」 皮肉混じりに言った言葉に、徹は真顔で答えた。皮肉が通じていない、というよりは、 皮肉だと理解もしていないらしい。成る程、病は平等に進行しているらしい。果敢那だけ でぇあなく、徹の方も、蝕まれているというわけだ。 ――おめでとう、君達は両思いだ。 心の中でささやかに祝福して、私は空いた席――徹の正面に腰掛ける。そこだけ空いて いる理由は単純で、そこに座れば、べたべたとしている二人を思い切り視界に治めなけれ ばならないからだ。 ここは禁煙ではないので、思い切り煙草が吸える。私は煙草を咥え、火を灯す。部屋に 充満していた紙の匂いに、煙草のにおいが混じる。部屋の両側には本棚があって――それ が物理的・心理的に問わず、部屋を圧迫していた。ほとんどが市販の本で、一角を発行し た本が占めていた。 そのうちの一冊を手にとって私は広げる。一番手前にあった本は、つい先日出したばか りの本だった。 『三角・徹』の名で書かれた話を開き、私は徹へと語りかける。 「いつもそうなのかい」 「まあな」 徹は即答した。いつも――ずっと、こうなのだろう。 文字通りに、ひと時も離れず。 恐らくは、この本を読んだときからだろう。それ以前は、此処までは酷くなかった。 一作目を読むことで、果敢那は徹と付き合い始めた。 そして、二作目を読むことで――更に仲が深まったのだろう。 「…………」 徹の胸元にすりつくようにして座る果敢那を見る。至極、幸せそうな顔をして、徹の 手を握っていた。小説を書く手を、大切な宝物のように握り締めて、果敢那は徹に甘え えていた。 何も言わない。 それだけで、彼女は満たっていた。 取り返しのつかないほどに。 「徹の話は、面白かったかい」 『徹の話』にアクセントをおき、私は興味半分で訪ねた。果敢那は、ゆっくりと、ゆっくりと、 私の方を見た。 眼球が、私を見る。 一ヶ月前よりも――更に透き通って、見えた。 反対側に、私が映って見えるほどに。 ――はい、大好きです。 変わらない、細く儚い声でそう言って。 ふうん、と私が頷くよりも早く。 果敢那は、付け足すように、こういったのだった。 ――次の本が、待ち遠しいです。 149 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 08 13 ID 7Iqx920E 六月の初めに、徹から一通のメールが来た。 題名はなく。 本文は、簡潔だった。 『次は、自分で書く』 ――そうして物語は、坂を下るようにお終いへと加速する。 150 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 11 51 ID FZKvuD5l おお、リアルタイム? 151 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 17 27 ID 7Iqx920E 日付はゆっくりと進み、梅雨が始まり、梅雨が終わった。蒸し暑いだけの日々が過ぎると、 からっと晴れた夏がやってきた。あまりにも暑すぎて、空調のきいた部屋からは出たくなかった。 自宅にいるよりも、大学へと出てきたほうが涼しいので、私はもっぱらそこで時間を潰していた。 だから、七月分の本を受け取ったのも、部室ではなく教室でだった。部室にはクーラーがついて おらず、講義が行われている教室だけ空調は動いている。外は炎天下にも関わらず、私は汗ひとつ 流していなかった。 「……ふうん」 部長から受け取った本を、私は流し読むようにして目を通した。大きな節目の本ということだけ あって、さすがに厚い。 一通り目を通すと、部長のほうから話を切り出してきた。 「どうだい、今回の出来は」 「そうですね、悪くないと思いますよ」 嘘ではなかった。さすがに新入生のそれは拙いが、それでも気合が入っているのは読めばわかる。 在学生のそれも、読み応えのあるものだった。 中でも、 「特に――徹のが良いですね」 素直に、率直に、そう言った。 君もそう思うか、と部長は言った。私は「ええ」と答え、もう一度、三角・徹が書いたものを読んだ。 二ヶ月ぶりに読んだ徹の小説は面白かった。彼は、彼なりにこの話にかけていたのだろう。自分が出せ るものを全て出し切っているのが、読んでいるだけでわかった。恐らくは、今回のこの本の中ではもっと も高い評価を得るだろう。 それだけに――惜しかった。 彼の努力が、恐らくは、報われないであろうのが。 「君も書けばよかったのに」 徹の本を読む私に、部長が心底残念そうに言った。 ――そう。 私は今回、小説を書いていない。本当は書きたかったのだが、自制して書かなかった。 なぜならば。 「……徹が書いてますからね」 「ん? どういうことだい?」 「いえ――なんでもないですよ」 適当にはぐらかし、私は胸ポケットをまさぐり、そして舌打ちする。そこに煙草はなかった。 部長は吸わない人間なので、貰うわけにもいかない。今から買いに行くのも面倒だった。 何かを咥えていないと、口が軽くなって困る。 意識して私は話さないように口を閉じた。 そう、話すべきことではない。 書くわけにはいかなかったのだ。 『三角・徹』が書いたものが二つあっていいはずが――ましてや、別人の名前でかかれては―― それはまったく違う結果を、まねくことに他ならない。 それだけは、避けたかった。 ああいうものに深入りする趣味は、私にはないのだから。 152 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 22 52 ID 7Iqx920E 「話は変わるのだけれど」 口を閉ざした私を慮るように、部長は自ら話題を変えた。 が、変わった先の話題は、私にとっては、あまり変化していないものだった。 「最近、徹を見ないんだが――君、知らないかな。あいつ、講義にもきてないみたいなんだ」 「……ふうん」 気のない返事を、私は返した。 もちろん、そのことを、私は知らなかった。 もちろん、そのことを、私は予測できた。 両方の意味をこめて、適当な返事を返し、私は想像する。 今、三角・徹がどこにいるのかを。 「大方、修羅場なんでしょう」 揶揄するように言うと、部長は苦笑いを浮かべた。 「締め切りはまだ少し先だよ」 「良いものを書くためには、缶詰になる必要となる場合もあるということですよ」 言って、私は立ち上がる。暑いのは嫌いだが、これ以上話を続けたいとは思わなかった。部長 は不思議そうな顔をしたが、私を引きとめようとはしなかった。その潔さが気に入ったので、私 は一つだけ、部長へと手助けをだす。 「部長。果敢那は部室にきていますか?」 「いや――彼女もきていないけれど、どうして?」 「いえ、特には」 それだけ答え、私は教室を抜け出して、暑い外へと脚を踏み出した。 153 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 31 04 ID 7Iqx920E 教室の外は想像以上に暑くて、扉を開けるだけでむっと熱気が襲ってきた。ただ立っている だけで汗が流れてくる。しかし、湿っぽい気持ちの悪い暑さではない。本格的な夏が間近に迫 ってきている証拠だった。 あの日と同じように、木陰ではなく、日向を歩きながら私は想像する。 三角・徹のことを。 そして果敢那のことを。 確かに――嘘偽りなく、三角・徹の書いた小説は面白かった。今回の本の中で最も面白く、 今までに彼が書いた作品の中で最高のものだった。それは自他ともに求めるだろうし、徹は そういうものを書こうとして、見事に書きあげたのだろう。 果敢那に気に入ってもらうために。 果敢那を自分の手元に置き続けるために。 最高傑作を――書き上げた。 けれど。 それでは、駄目なのだ。 問題はレベルではなくクラス。技巧ではなく属性なのだから。 果敢那という少女が恋していたのは、 君ではなく、 君の作り出す小説でもなく、 あの日、『あの即売会で読んだ三角・徹の小説』なのだから。 だから。 君がどんなに傑作を書き上げたところで、 果敢那は、決して満足はしないだろう―― ――ポケットに突っ込んでいた携帯電話が、無言でメールの着信を告げた。 「…………」 振動するそれを、私は取り出す。誰からのメールかは、想像するまでもなかった。着信欄には、 想像していたとおりに、『三角・徹』の文字があった。 携帯を開き、メールを読む。題名はなく、本文に、簡素に内容が書いてあった。 『書いてくれ』 たった五文字の、SOSだった。ついに根をあげたな、と私は思った。 彼は今頃――どこかで。彼の部屋か、彼女の部屋で。今までずっと、小説を描いていたに違いない。 彼女が望む小説を書くことができるまで、ずっと、書かされ続けていたに違いないのだ。 私は左手だけで携帯を操作し、徹にメールをかえす。題名はなく、本文の欄に簡素に書く。 『自分で書け』 五文字で返して、私は携帯の電源を切る。 木陰を歩いて、煙草を買いにいこうと、そう思った。 154 名前:狂人は愛を嘯く.Case1 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 44 55 ID 7Iqx920E ……とまあ、ここで唐突に、お話は終わる。 当事者たちは私の付き合いきれない遠い遠い彼岸へといってしまった。其処に辿り つけるのは、常人ならざる者たちだけなのだろう。 だから、もはや語るべきことはそんなに残っていない。あの時にメールの返事次第では また別の展開へとなっていたのだろうが――そうはならなかった。 その時点で、このお話は、終わりを迎える。 その少しばかり語れることを、ここに語っておこうと思う。後日談のようなものと捉え てもらって構わない。 彼と彼女が、どうなったかということだ。 三角・徹との交遊はなくなった。私は彼のアドレスを携帯から消したし、彼から二度と 連絡はなかった。ただし――一度だけ、彼の姿を見た。 七月の、一番暑い日だった。 炎天下の中、コンクリートから湯気が立つような暑い真昼に、私は蜃気楼のように彼の姿を 見た。夢遊病者のように歩く、面影がかすかにしか残らない、死人のような三角・徹を見た。あ まりもの変貌ぶりに、声をかけることすらできなかった。 彼は、私に気付いていなかった。 否―― ガラス球のように透明になった彼の瞳には、何も映っていなかった。彼は何も見ずに、ふらふらと、 ふらふらと、ふらふらふらと、どこか遠くへ去っていった。 彼について、語れることはそれだけだ。私はそれ以降、彼の姿を見なかったし――他の誰も、徹の姿 を見ていない。それが、最後の目撃だった。 そして。 私は手元にある、八月分の冊子を開いた。ぱらぱらと頁をめくると、ある一点で視線が停まる。 そこには、こう書かれている。 『題:ある愛の話 作:三角・徹』 いなくなってしまった徹の名で、小説が書かれている。私はそれを読む。幾度となく 読んだそれを、もう一度読む。何度読んでも、何度読み直しても、そこに書かれている中身は変わらない。 小説だ。 紛れもなく、それは――四月のような、五月のような――私が三角・徹の名で書いた小説と、同一の存在 だった。 三角がいなくなった今も、毎月のように、『三角・徹』の小説は冊子に載っている。私の書いた徹の小説が、 私の知らないうちに冊子に載っている。 ――小説は、手で書くものだ。 夏の日に出会った徹は、両腕が肘の先から消滅していた。切り取られたかのように。 あの部室で、果敢那は、徹の手を愛しそうに握っていた。小説を書く、徹の手を。 あとは、蛇足だ。 物語は、ここで終わる。終わらざるを得ない。もはや私も、徹も、当事者ではない。 彼女は、彼女で完結している。 少しばかりゆがんでいて、おぞましくて、奇妙でも。 ――彼女は、彼女の望む愛情を得たのだから。 END 155 名前:作者 ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 48 00 ID 7Iqx920E 第三者から見た病んだ愛情な話でした。 と、間があいた上に短いですが、『いない君といる誰か』の本編投下。 本当は間をあけるならここまで投下しておきたかったのですが……ごめんなさい 156 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 49 28 ID 7Iqx920E ■いない君といる誰か資格 『・ハンプティとダンプティ たまごは決して大きくなりませんでした。 周りの木々が大きくなっていく中で、卵だけはずっとそのままでした。 なぜってその卵は、生まれてしまったことをずっと後悔していて 塀の上から飛び降りることもできずに、ずっとそこに座っていたのでした。 その卵には、目も鼻も口もついていたけれど、 笑うことも泣くことも怒ることもありませんでした。 ちょっとだけ皹がはいった顔で、ただそこに座っているだけでした。 卵の顔には、白い文字でこう書かれていました。 ハンプティ・ダンプティ。 四千人の兵隊でも元には戻せない卵は、 けれど臆病すぎて、塀から飛び降りることを拒んでいました。 そんな彼を見て、アリスは言いました。 ――臆病者。 そうかもしれないね、とハンプティ・ダンプティは答えました。 私は臆病者だ。きっと臆病者だろうし、ずっと臆病者だ。 そんな彼を見て、赤頭巾は聞きました。 ――逃げないの? 逃げてきたのさ、とハンプティ・ダンプティは答えました。 私はずっと遠くから逃げてきて、逃げた果てに此処にいる。 そんな彼を見て、ピーターパンは笑いました。 ――此処は君の場所じゃないよ! そうなのだろうね、とハンプティ・ダンプティは頷きました。 ここは子供たちの楽園で、老いた私のいる場所じゃないんだ。 そんな彼を見て、シンデレラが問いかけます。 ――なら、如何して貴方は此処に? その問いに。 ハンプティ・ダンプティは、そのひび割れた顔を、かすかに動かしました。 笑っているような、泣いているような、はっきりとしない、 今にも割れてしまいそうな、そんな表情で、ハンプティ・ダンプティは答えます。 ――卵の中身は、まだ新鮮だろうからね。 そのとおりでした。 その言葉のとおりでした。 ハンプティ・ダンプティは壁の上から飛び降りました。 長い時間をかけて、高い壁から飛び降りました。 幸せそうに飛び降りて、幸せそうに地面に粒かって、幸せそうに砕けました。 四千人の兵隊でも、もとの場所には戻せません。 王さまの力でも、もとの姿には戻せません。 けれど。 けれども。 割れた卵からは――彼の言葉のとおりに、新鮮な中身が飛び出ました。 中身は二つでした。中には、二人がいました。 アリスはこういいました。 ――この子の名前はハンプティ。 すかさずピーターパンがこう答えます。 ――じゃあ、この子はダンプティだ。 そうして。 ハンプティ・ダンプティは堕ちて砕けて。 ハンプティとダンプティの双子が、そのお茶会に加わったのでした。』 157 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 51 33 ID 7Iqx920E 絵本を読み終えて。 僕は、そっと本の頁を閉じた。裏表紙には割れて砕けた巨大な卵と、中から生まれてきた二人の子 供が手をつないでいる絵がかいてあった。一番下には、筆記体で作者名が綴られている。 ――ハンプティ・ダンプティ。 それ以外には、何も書かれていない。出版社も、値段も、書かれていない。 そもそも絵本は本屋で売っているような立派なものじゃなくて、いかにも手作 りといった雰囲気が作りからもにじみ出ていた。よく見ると――そもそも文字 や絵は、印刷したものじゃなかった。 直接書かれたものだった。 この世に、一冊しかない、本。 その本を机の上において、僕はもう一度、部屋の中を見渡す。扉の向こうには荒れ果てた如月更紗 の家。荒れ果てた家の中で、この部屋だけが守られているかのように荒れていない。窓にはレースの カーテンがかかっていて、二段ベッドは天井からつるされたヴェールのようなもので覆い隠されてい る。大きめのクローゼットが部屋の両端で存在を主張し、床には赤いカーペットがしかれていた。広 い部屋は少女趣味な小物で満ちていて――正に、女の子の部屋だった。 死体が転がってもいないし、血痕が残ってもいない。 如月更紗の、部屋なのだろう。 この家にあるのは部屋だけで、それ以外には生活感はなかった。人の住める家じゃない。ただの荒 れ屋だ。それこそ、四千人の兵隊がいたとしても、この家を下に戻すことはできないだろう。 死んでいる。 死に果てた、場所だ。 もう一度、 もう一度、僕はぐるりと、部屋の中を見回す。 死体が転がってもいないし、血痕が残ってもいない。 如月更紗は、此処にはいない。 下の冷凍庫には、彼女の母親の、生首が入っていた。 思う。 僕はようやく、そのことに思い至る。 「……あいつの――父親は?」 158 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 52 26 ID 7Iqx920E 窓の外ではいつのまにか陽が堕ちてきていて、降り込む陽光は紅くなっていた。紅い光が、赤い部 屋を紅く染めていく。 探している時間はない。 あいつの父親『だったもの』を、探す時間はないし、探す意味はない。そもそも、生きているとは 思わなかったし、此処に『ある』とも思わなかった。 多分、 この絵本が、想像通りの代物ならば。 如月更紗の父親は―― 「…………」 それ以上、考えることを僕はしなかった。 今は、考える時間じゃない。 動く時だ。 僕は一度机の上に置きなおした本を、持ってきた鞄の中に放り込む。代わりに、鞄の中に入っていた 魔術短剣を取り出しやすい位置に直す。ここから先はもう、常に臨戦態勢であったほうがいい。 如月更紗は言っていた。狂気倶楽部は、日常からかけ離れた場所で動くのだと。 夜は、その筆頭だ。ここから先、何時何が出てきてもおかしくはない。 覚悟を、決めなくてはならない。 僕は鞄を持ち、最後にもう一度だけ部屋を見渡して、 外へと、出た。 振り返ることなく、外へ。如月更紗の部屋を抜け出して、如月更紗の家を抜け出して、振り返ることなく、 夕暮れに染まる道をまっすぐに向かう。 彼女の待つ、学校へと。 すべてを――終わらせるために。 そして、夜が来る。 159 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 55 03 ID 7Iqx920E 以上、終了です。 伏線全部張り終えてあとは回収しつつラストシーンです。 160 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 01 55 55 ID 35vascqh 159 あなたと同じ時間に巡りあわせた狂気の神に感謝 161 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 08 32 ID FZKvuD5l 目の前の目障りな害物へのあくまでも正当なけじめ、としてスタンガンの電撃を与えよう、そうすれば少しは反省して松本君の気苦労も軽減されるだろうと思い、 自分のこの報復の成功を信じて疑わなかった。 しかし、その矢先、私が害物のスタンガンを掴み取ったように、私は父にこうして愚かにも、スタンガンを取り上げられてしまったのである。 咄嗟のことに私は壊れた人形のように呆然としたまま、父のなすがままにスタンガンは取り上げられ、その物騒な装置のスイッチを即座に切られた。 父の目はいつものように陰のある目であり、どこか取り澄ましたような目をしている。 何事に対しても動じない父は、私の害物への報復を見て何と思ったのかしら? 娘が知らない女の子に対して凶行に及んでいる。悪くすると、殺そうとしている、そんな風に取ったかもしれない。 確かに、それを物語るように父の黒褐色の静やかな目からは、心なしか正反対の確かな憤りと悲しさを感受できた。 しかし、それは私に対して昔から無関心な父親故の誤解というもの。 私は、単にけじめをつけようとしただけなのだから。 白黒はっきりさせ、それなりの処遇を施すことが悪いことだというならば、何をもって、世の中の正邪の区別をしそれを正すというのか。 だから、父の突然の闖入は無粋でナンセンスなものであって、私にとっても憤りを感じるところ。 162 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 09 47 ID FZKvuD5l それなのに、父は私が悪いと思っているので、私の双眸に向けた目をそこから離さずにいた。 父は何も声を発していないのだが、そのまま話す以上に雄弁に目が語っていた。 謝って済むことでないが、早く彼女に謝りなさい、と―。 そして、何があったのか逐一、自分に話をするように、と―。 私にとっては、そんなことは歯牙にもかけない事。 なぜなら、私は松本君と私自身の幸せが最重要であって、それ以外のことは二の次で十分だと思っているからだ。 だから、今回も松本君のためにこの行為に出た訳であって、行為そのものに罪悪感とか良心の呵責とかいった物は感じない。 恐ろしさのあまり腰を抜かしているのか、あまりに突然の出来事と緊張の緩和からか、害物は気の抜けた顔でただ茫然自失としているのみであった。 そのため、誰一人として語を発するものがないという、異様な沈黙が生まれた。 その沈黙を破ったのは意外にも悠然とした態度をとっていた父だった。 「時雨、そのように黙っていたのでは何も物事は進まないものだよ。きちんと私に分かるように何があったのかをまず話しなさい。」 それから、父は視線をぼんやりとしてしまっている害物の方へとやり、君からも話を聞くので不公平はなく聞くつもりだよ、と安心させるような口調で優しく言った。 いつも、いつものことだが、父はこういうときだけ実情を知らなくて、問題を余計にややこしくするだけだというのに、訳知り顔で、父親ぶった行動をする。 それでも、きちんと話せば私が悪くないことを証明できるだろうか。 答えはダウト、などと松本君がいたら突込みを入れてくるところかもしれない。 別に父に理解してもらおうとは思わないが、私は父に今の事を話すことにした。 163 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 11 46 ID FZKvuD5l 私の前で娘が今あったことの一部始終を話し出した。 私はその突起の穴から伸びている紐を腕にかけて、手のひらの中に銀白色の光沢が生々しい、 スティック状のスタンガンを確かに自分が保有していることを確かめるかのように、しっかりと抑えながら、娘の話す内容に耳を傾けた。 今日、私のすべき仕事自体は午前中に終わり、長らく無沙汰であった大学時代の友人から連絡があったので、 少しばかり話をしていたのだが、彼に急な用事ができ、すぐにお開きとなってしまった。 その彼の住んでいるという家は娘の学校の近くにあり、ここの学園長とは私の義父の友人であったことから、 今でも時折、会っては歴史の話をしているのだが、その例に漏らさず、学園長に会うためにやってきたが、今日は学校に来ていないようで、 何をするわけでもなかったのではなかったのだが屋上に出ようと思った。 そこで、私は時雨の凶行を目にした訳である。 しかし、それにはやや語弊があって、正しくは私は短いブロンドの小柄な少女に相対するような長身長髪、 黒髪のわが娘とが舌戦を繰り広げているところから、言ってしまえば最初から静観していたのだった。 だから、全ていきさつは知っており、最初にスタンガンを取り出したのは小柄な少女の方だということは知っている。 はじめにその少女が凶行に出ようとした時に止めに入ろうとしたが、すぐさま娘がスタンガンを取り上げてしまったので、止めに入る必要性を感じず、そのまま静観していた。 そして、その静観を破ったのは娘が凶行に出ようとしたからであった。 だから、正しく何があったかは私は完全に理解しているのだ。 その上で彼女らのあったこと、を話させて解決しようというのは角が立たないようにし、彼女らを一番納得させることができる、そう読んだからだ。 164 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 13 02 ID FZKvuD5l やや落ち着いてきたのか、朧気だった意識が明晰さを取り戻しつつあったブロンドの少女は時雨の話す内容を耳をそばだてて聞き、 彼女からすれば不公平に感じることがあったのだろうか、目には怒りの色をたたえていた。 それから、平板な印象の強い時雨の形式的な説明が終わると、怒りに満ち満ちた表情のブロンドの少女に落ち着いて話すようにと、 落ち着いて、というところを強調して促した。 人は皆大なり小なりとも、嘘をつくものだ。だからといっては私は取り立てて、嘘が悪いと声高に叫ぶこともないし、そう思いはしない。 というのも、嘘をつくことは自分に対して正直であると私は考えているからだ。 だから問題の解決には第三者の視点から見た主観の入っていないものが一番合理的に思える、が、この場合はそうではないのだ。 実際に二人に言いたいことをまず完全に言い切らせることで、一定の満足を与える。 それが問題解決に思わぬ効果を与える。 また、このブロンドの少女が何者か解らなかった私にとっては、彼女らの説明を聞くことで一層状況を深く把握できるという効果もあるのだ。 165 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 14 07 ID FZKvuD5l さて、このブロンドの少女、松本理沙と私の娘、北方時雨の双方の意見を聞き、彼女らの争いは例の松本君に起因している。 幸いにも今回誰も外傷を負ったものがいないわけなので、極端にどちらが悪いということは言い切ることができなかった。 また、松本君自身の病状を考えたならば、松本君がどう思うのか、精神的ダメージについて考えるようにいい、その病状を根拠に彼を安静に休ませてやるように合意させた。 具体的には完治するまで、理沙と時雨を松本君に会わせない、という方針を提案した。 流石にこれは逆効果かと思ったが、なんとか説き伏せて共に認めさせる事に成功した。 喧嘩両成敗という形をとり、何とかこの問題を解決できそうだ。 後は時雨自身ともう少し対話する機会を設けて、何とか松本君に私と同じ目にあわせないように努力してみることにしよう。 北方利隆は自身がこの問題を仲介し、自己の力で解決へと導けると信じて疑わずにいた。 ここで喧嘩両成敗という方針を採ったことで松本理沙、北方時雨の両名から恨まれる結果となるなどと、予想だにしていなかった。 北方時雨が所持する本では髪長姫の行く末を案じた優柔不断な彼女の父は結果的に皆から恨まれ、無残にも全員から惨殺の目に遭って死ぬ、そう綴られていた。 また、面白いことに彼女の妻もこの殺害に加わっていたのである。 彼女は言う―愛するが故に殺したのだ、と。 166 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 14 58 ID FZKvuD5l 今日は綺麗な夕焼けが拝めるか、などと思っていると、急速に墨をこぼしたように暗雲が立ち込めてきた。 それは予想通り雨雲であったようで、激しい雨を降らせていく。 先程までの良いお天気もどこへやら、流石は梅雨の時期だけあるなどと、無駄に感心してしまう。 医者の話だと一ヶ月以上はこの脳細胞のゲシュタルト崩壊機能を目玉とする病人収容所に無料で (いや、北方家が払ってくれるとか、何とからしい。それを聞いて親は一文も払う気がなくなったらしい。薄情め。)入所、体験実習できるらしい。 しかも、それだけでも腸をえぐられるような高邁な満足感があるのにも関わらず、平安貴族向けですか、 と子一時間問い詰めたくなるようなすばらしく高雅な味付けの楽しいお食事が三食付いて、寝ることが仕事、 という更なる鉛のような、真鍮のような、そんな金属とか言っても非金属だったり、単に比重が重いだけのお得感。 ……妙に皮肉が浮かんできたので脳内でそれを紡いでこんな風に継ぎ合わせてみたが、いや、我ながらナンセンスだ、はは。 いや、笑えない、笑えない。 167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 15 03 ID Qq/vzm6U 159 GJ!起きてて良かった 168 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 15 48 ID FZKvuD5l 昨日はかなりの時間を北方さんの本を読むことに費やしていたが、今日はその本をそこまで長時間読んでいなかった。 北方さんが今日見舞いに来てくれる、そう一昨日に言ったのだが、その指定された時刻を大幅に過ぎても彼女はやってこないので、さっきから心配しているためである。 しかし、彼女にも用事というものがあるのだろう。急にできた用事のせいで僕のところに来れなくなった、ということがあってもそれは不思議なことじゃない。 そうこうしている内に、夕食が僕だけしかいない味気ない病室に妙に優しい看護婦さんの手によって届けられ、それを食べているうちに面会時刻は終わってしまった。 あれほどずっと傍にいた彼女が急にいなくなると、その寂しさが際立ってしまうものだ。怪我をして、こうして一人でいる時間が長いからか、なんとなく心細く感じる。 塩気が完全に抜けている味気ない鮭の切り身をいくつかに箸を使って分けて、その一切れを口にしながら、監獄に不似合いに取り付けられた一つだけの窓から外を眺める。 目を醒ました一昨日から時折眺めてきた、その窓だ。 外では、ざあざあと大粒の雨粒が音を立てて狂ったように踊っている。 169 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 17 36 ID FZKvuD5l そういえば、あの時もこんな陽気の日だった。 初夏の蒸し暑く晴れていた日、僕は珍しく体調が良くなった日が続いていた妹を連れて、近所の散歩をしたり、近くの公園へ遊びに行ったりした。 理沙は一時期かなり病弱で、入退院を繰り返し、家にいるときでさえ、寝たきりでいる時間のほうが長かった記憶がある。 そんな中、体調が極めて数日の間優れていた日があった。小康状態が時折訪れることはそれまでにはたびたびあったのだが、 そのときはそれまで以上で、医師ですら、狐につままれたような表情でもう少しで完全に治るなどといっていた。 そんなことがあって、僕は病院以外の理由ではめったに外に出ることがなくなっていた、理沙をその体調がいい日に連れ出して、 近所を散歩したり、公園へ連れて行きごく普通の子供ならば、普通に親しんでいるブランコに乗せたり、砂場遊びをしたりした。 皆、僕と同世代の子供たちは見慣れぬ妹の存在を物珍しげに遠くから眺めてはいたが、誰一人として理沙に話しかけてくるものなどいなかった。 僕以外の誰もが無視をしていることに気づいた理沙は時折涙を見せていたことがあった。 僕だけが理沙と話をして、家とは違った遊びに興じる、そういう構図に理沙自身が満足しつつあったとき、悲劇は起こった。 ひどい喘息の発作が起こり、僕は救急車を手配し、親に連絡を取った。幼心に妹が死んでしまうという恐怖心に震えていたことを覚えている。 病院へ運ばれた理沙は緊急手術を受けることになり、他の子が幼稚園を卒園するくらいまでの間ずっと、病院に入院するか、常に薬を常用しているかしていた。 思えば、理沙は病弱だった幼少期、こんなに閉塞感にさいなまれながら闘病生活を続けてきたのだろう。 どれだけ、心細かったことだろうか。それに対して、僕はその理沙に対してどれだけ力になってやれたのだろうか。 そもそも、僕が理沙を無理に連れ出すことがなければ、こんなことになっていなかったのかもしれない。 それは、そのままにしていても小康状態が終わり、このひどい発作が発生していたことも考えられるが、あまりに関係があるように感じられてならない。 170 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 19 04 ID FZKvuD5l そういえば、入院して以来、理沙の顔を見ていない。 あの子は確かに北方さんの自転車に細工をして、この僕が負っている傷を北方さんに与えようとした。 しかし、それは僕が自分の単なるうぬぼれに過ぎないかもしれないが、あの子の不安感や恐怖心を取り除く唯一の光であり続けたのに、 急にここのところ、北方さんといろいろと接近して、あの子のために時間を割いてやることが少なくなったのが原因なのだ。 理沙のことだから、当然、僕に対して不平不満を面と向かって漏らすようなことはしないだろう。 今になって考えてみると、理沙はかまって欲しいというサインを明らかに発していたと思う。 第一に、いつも学校に行く前に遅くなることを事前に言わなければ、必ずすぐに帰ってきた僕が、理由も言わないまま遅く帰って、 一緒にお風呂に入ろう、そう提案してきたとき。 第二に、僕が昼食を北方さんととっているときに取った理沙の不愉快そうな態度。 第三に、理沙が一緒に帰ろうといってきた申し出を面前で断って、北方さんの家に行ったこと。 特に、このときのサインを気づかずに、正しくは心のどこかでは、気づいていたのかもしれないが、 完全に理沙か北方さんかという、二択において拒絶してしまったことが大きかったのかもしれない。 少し考えるだけでもこれだけのサインが浮かび上がってくるのだ。 勝気な彼女は人前で悲しそうな顔をするだろうか。 いや、しないだろう。そういえば、あの北方さんの家の車に乗せてもらって帰ってきたとき出迎えた理沙の表情は笑っていなかっただろうか? 堤防を決壊し、勢いよく溢れ出てしまいそうになる感情を押し殺しながら笑みを作ったのかもしれない。 171 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 19 52 ID FZKvuD5l 北方さんを確かに僕は愛しているつもりだ。現に北方さんも僕のことを愛してくれているだろう。 彼女の暗い過去を受け止め、共有し、それを忘れてしまうような楽しい日々を一緒に送れたらいかに満足なことか。 彼女自身も僕と過ごす日々が楽しいと言ってくれた。また、彼女のお父さんも僕の存在を認めてくれたのだ。 でも、これだけの好条件が揃いに揃っていたとしても、今の僕の立たされている状態は順風満帆ではなかった。 問題はいくつかあって、曰く、北方さんを理沙よりも優先させることは理沙を明らかに破滅させる。 二に曰く、理沙を北方さんよりも優先させることは北方さんを完全に破滅させ、最悪の事態どんなことが起こるかわからない。 そう、この問題はアイロニーなまでに典型的な二律背反。アンチノミー。こんな選択をすることができるわけがない。 さらに、心のどこかでは未だに何とかなるのでは、という淡い期待を抱いている自分がいるようで、その自分がこの選択をさせないようだ。 172 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 21 33 ID FZKvuD5l コンコンと、病室のドアを叩く音が味気ない病室に響く。 どうぞ、と入室を許可してから、視線を開扉されたドアにやると、そこには年の割りに白髪が多く黒髪に交じり、瀟洒なスーツを着ている男性が立っていた。 北方さんのお父さんだ。 「松本君、君は私のことを覚えていないかもしれませんが、北方時雨の父、北方利隆です。」 「いえ、北方さんのお父さん、だとしっかりと把握しておりますが。」 北方さんのお父さんがいったい何のようであろうか、と咄嗟に何か理由となりそうなことが脳の引き出しの中から見つからず、率直にそう思った。 「……今日は、時雨が君を見舞いに来ることになっていたと思うのだが……」 「確かに、今日は…そうですね、一時間半ほど前までにはこの病室に来るということになっていました。」 目覚まし時計の今の時刻を確認した上で、そう答えた。 「そうですか、それで時雨からは何か君に対して連絡は来たのかね。」 「いえ、来ていません。」 「………そう、だったか。」 連絡が何も来ていないことを手短に相手に伝えると、驚きを隠せないといった表情で応答した。 「娘には自分で君に説明するように、と言ったのだが…」 あの賢く合理的でそつなく物事をこなす、あの北方さんが連絡しないというのは何かあるのかもしれない、 そう直感的に動物的感覚に近い何かで感じ取った。 いったい、その何か、とは何のことだろうか? しかも彼女自身が言い出しにくいこと、敢えて強めて言うならば、僕に聞かせたくない言葉、となるのだろうが皆目見当がつかない。 173 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 23 10 ID FZKvuD5l 「……どんなことを説明するのか皆目、僕にはわかりません。」 「そうだった、君自身が考えても、何を時雨が君に説明しなければならないか、それは理解できないはずだね。」 「単刀直入に言ってしまうと、君の身体が治るまで時雨には君に会わせないようにしたというところである。 また、君に対して指図するようで申し訳ないが、体調が良くなるまでの間は時雨に会わないでやってくれないだろうか。」 あまりのことに絶句した。 何を説明するのかと思えば、唐突に北方さんと会わないでくれ、という発言。 一体どういうわけでそうしなければならないのかわからない。北方さんのお父さんが言うことなのだから、 何らかの謂れがあるのだろうが、これを北方さんに説明しろ、というのはあまりに酷な注文だ。 いつだったか、北方さんは自身の父に対して、不平を漏らしていたことがあり、それどころか嫌いであるとまで言い切っていた。 今のこの発言で、彼女がそのような感情を父に対して抱く理由が理解できたと思う。 そう思っていると、僕のその心境を深く考えるまでもなく、すぐに察したらしく本当に申し訳なさそうな顔をしながら、口を開いた。 「あるときは傍にいてやってくれと言ってみたり、また今は離れていてくれと臆面もなく言う。 それがいかに、得手勝手で、厚顔無恥なことであるかは、私自身が一番、一番理解しているつもりだよ。」 「だがね、事は差し迫っているのだ。君が事故にあってから、一週間と経過していないのだが、こんなにも問題が大きくなってしまうとは思わなかったのだ。 どうか、この状況を理解してくれないだろうか。」 174 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 24 57 ID FZKvuD5l そこで、問題が大きくなった、という句にかかる箇所があって、そこに関して質問をしようと思ったのだが、もう北方さんのお父さんにはそれを意に介する為の余裕がなくなっているらしく、 そのまま話し続けてきた。 「……君は私が君を嫌っているという風にとったかもしれないが、それは違うとはっきり言っておきたい。 寧ろ、君は昔の僕と似ているような気がしてならない。だから、お節介だと知りつつも、余計なことに手出しをしてしまうのだ。」 「僕が、あなたに、ですか?」 「そう。だから、君に私が味わったような思いをさせたくなくてね。このままでは、君は私が味わった苦痛、耐え難い理不尽な不幸の連続、それ以上の苦しみ、 言ってしまえば煉獄の苦しみを味わうことになってしまう。それだけは私は絶対に、避けたいのだ。」 必死な僕に対する態度から、単に僕と北方さんの関係を嫌悪した故の行動とは割り切れないものである、むしろ異質なものであることがひしひしと伝わってきた。 しかし、一向に解せないのは、そもそも僕が置かれているという大変な状況、という奴である。 「解りました。北方さんのお父さんにそう言われては、当然、従わないわけにはいきません。」 「どうもありがとう。私が言っているのは滅茶苦茶で身勝手なことに他ならない。それなのに、本当に申し訳ない。 ただ、申し訳ないついでに一つ勘違いして欲しくないことは私自身の意見としては時雨と君の関係を肯定している、ということだ。本当にこれだけは信用して欲しい。」 「はい、それに関しては僕も理解しているつもりです。しかし、確認しますが、僕が病院を退院したならば、これまで通り北方さんと付き合ってよろしいですか?」 「時雨があれほどまでに信用するのは君だけだ。だから、君は時雨の傍に極力いて欲しい。だから、当然それは許すつもりだよ。」 「それともう一点ですが、僕自身、その大変な事態、というものがいまいち理解できていないのですが、細かく説明してもらえますか?」 175 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 26 43 ID FZKvuD5l それから、昨日の放課後に起きたことの一部始終が語られた。 正直なところ、理沙が北方さんを呼び出して、襲おうとしていたことに驚きを隠せなかった。 これによって、未だに女々しくも自転車事故は偶然の産物だなどと観測的な考えを滅しきっていなかったのだが、 これで完全に理沙によるものだと理解した。 が、それと同様に驚いたのは、北方さんもその取り上げたスタンガンで理沙に対する害意を持ったということである。 やはり、理沙に対しては今までのサインに気づいてやれなかったことが大きかったのだろうか。 このままでは、本当に大きな傷を作ってしまうことになりかねない。そもそも、理沙が北方さんを襲うことがなければ、 北方さんも理沙に対して攻撃しようとしなかったような気もする。 そうすると、やはり僕は理沙に対する接し方を大きく誤っていたのだ。 もし、そうだとしても今回は誰にも死傷者は出なかったのだ。 二度の理沙の暴走の結果、結局のところ、痛い思いをしたのは僕だけだった。 176 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 27 35 ID FZKvuD5l 見方によってだが、言ってしまえば、これは三つのさいころが同時に全て、六の目を出したかのような幸運であるというべきかもしれない。 もっと具体的に述べるなら、まだ理沙ときちんと向き合って、問題を解決する為のチャンスがあるということだ。 その機会を活かさなくて何が幸運だ。 常々、不幸は幸せの三倍多い、などと言っているのだから、ここで幸運を活かさなくてどこで活かすというのだろうか。 幸いにも、北方さんのお父さんは理沙に会うことも禁じる、とは一言も言っていない。今度、この病室に理沙を呼び、きちんと話し合う機会を作ろう。 いまさら何を言っているのかと自嘲的に思ったが、兄として、少しでも理沙の暴走をきちんと清算しなければならないと思う。 177 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 28 48 ID FZKvuD5l 話そうとした全ての話を全て語り終えて、自分の娘と松本弘行を彼自身の体調が回復するまで、会わせない、 という条件を呑ませた北方利隆は病室を後にした。 強酸のような濃密さの短時間で、自分の望むように話をつけたことに満足し、 肩をなでおろしていてもおかしくない状況だったが、利隆の表情はどこか空気の入ってしまった氷のようにくもったもので、 どこか浮かない表情だった。 その暗い表情の理由はごく簡単なことに起因している。彼は自身の娘である時雨と松本理沙の二人の調停をした際の約束の一つ、 一つであったが非常に重みのある一点において、約束を松本弘行に伝えず、違えようとしていたのだ。 その約束とは、北方時雨を納得させるために見繕った条件である、時雨が松本弘行に会わない間は、妹である理沙も兄に会わないで、 静かに完治するのを待つように、という条件であった。 利隆は仲介時の理沙の態度や思考といったその場で咄嗟に判断できる事柄から、約束を確実に反故にする、 また、実は実の娘である時雨以上に暴走する可能性があるのではないか、と踏んだのだった。 対して、時雨の場合、この条件に関しての松本弘行の同意があったならば、すぐに従うであろう事は今までのことから予想できた。 178 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 29 40 ID FZKvuD5l このことを活かして、利隆は弘行に理沙と極秘裏に、少なくとも時雨に伝わらないように会わせ、理沙に暴走に関して反省させ、この三角関係とも呼べなくなりつつある、 異常な状態にピリオドを打とうと画策していたのであった。 しかし、実の娘である時雨に毛嫌いされ続けながらも、父として娘に父らしいことをしたいと思っていた利隆にとっては、再び娘を欺くことは大きな苦痛であったようである。 夕立のように短い時間の内に降り終るであろう、と思っていた雨は、上空の黒雲が大粒の雨粒を降らせている為、未だに止みそうにない。部下を使って車に乗ることなく、 行きは傘をさしながら歩いてきた利隆であったが、帰りは傘をささずに、暑さと対照的に冷たい雨に瀟洒なスーツが濡れることを厭わずに、ただ雨に身を任せていた。 しかし、それが不快なものと感じることがないようで、自宅に繋がる道を暗闇の中、ただ歩を進めるばかりであった。 頬を雨粒が伝い落ちていく。しかし伝うものは雨ばかりでなかったようだ。 179 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 02 32 46 ID FZKvuD5l 159 GJ!それと、直後に投下して申し訳ないです。 第10話でした。 最近、かなり忙しいので、不定期になるかもしれませんが、いずれ、また。 180 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 05 51 40 ID Q/YrA/+K 起きたらキテター! 159 待っててよかった! 久しぶりに更紗分を補給……まだ先か(´・ω・`) でもラストに向かってwktkが止まらないぜ。 短編もGJ! でも語り手は男女どちらなんだろうか? 個人的には女の方が萌える状況なんだけど。 179 苦悩する親父さんいい人なんだが 死亡フラグが…… まあ普通に善人なキャラに不幸が降りかかるのは このスレではデフォかw 181 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 37 05 ID e3g7TlOW 投下します。16話です。 182 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 37 47 ID e3g7TlOW 第十六話~犯行の動機~ まぶたが重い。 上下のまぶたが糊でくっついているようにべとべとする。 服の袖で目をこすり、目やにを取り除く。 少しだけ軽くなった目を開けると、白い袖が見えた。 袖口から離れた位置には薄いブルーの横線が入っている。 腕を下ろし、目線を自分の胸元へ。 そこで飛び込んできたものもまた白だった。 俺の部屋にある掛け布団のカバーは、あまり洗っていないせいでくすんだ色をしている。 とてもじゃないが、今体の上にかけられている布団のような純白とは程遠い色だったはずだ。 違和感を覚えつつ、視線を上へ向ける。 天井が見えた。またしても白。合板の継ぎ目の色が違うせいで、そこだけが浮いていた。 首を左に傾けると、閉め切られている窓が見えた。 窓の向こうには、電信柱があって、その向こう側には曇り空が広がっていた。 雲は幾重にも重なっていて、日の光を通していない。 寒そうだ。外はかなり冷え込んでいるのかもしれない。 そう思うとずっとこうやって布団の中に潜り込んでいたくなる。 だが、それはできない。 今いる場所が病院だということはすでにわかっている。 俺はここで眠っているわけにはいかないのだ。 やらなければいけないことがある。 十本松にどういうわけかさらわれた香織を助けなければならない。 そのためには、まず動かなければ。 体をゆっくりと起こしていく。頭の中を軽い痺れが走った。 かけ布団を跳ね除け、ベッドの右に足を下ろす。 「おはようございます。遠山雄志さん」 不意に声をかけられた。視線を床から上げる。 ベッドの横にスーツ姿で小太りの中年男性が椅子に座っていた。 男性はジャケットの中に手を入れると、黒い手帳を取り出した。 手帳を広げると、俺にその中身を見せた。 「県警の刑事課の中村と言います」 「はぁ……刑事さん?」 「はい。あなたの自宅で起こった銃声について、質問をさせてください」 相手をする気分ではない。 しかし、相手は刑事。下手な態度をとるのはよくないだろう。 183 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 39 53 ID e3g7TlOW 俺は焦る気持ちを抑えて、中村という刑事と向き合った。 「いいですよ。どうぞ、質問をしてください」 「ええ。それでは……あなたが覚えている事件の詳細を教えてください」 俺は言葉を選んでわかりやすいように説明した。 刑事は話を聞きながら、手帳にペンを走らせている。 「……なるほど。だいたいの状況はわかりました。 つまり、その十本松あすかという女性が、あなたの部屋のドアノブに向けて拳銃を発砲したと」 「たしか、6発撃ったと思います」 「鑑識も6発の銃弾を発見しました。それは間違いないです。 その後、あなたの部屋に忍び込み、あなたとあなたの従妹を気絶させ、女性をさらった。 お名前は天野香織さん。あなたとの関係は、恋人」 「……はい」 「この、天野さんがさらわれた理由について、何か心当たりはありませんか?」 俺は何も思い当たらなかったので首を振った。 「よーく思い出してください。どんな些細なことでもかまいません。 それが手がかりになるかもしれないんです」 「香織と十本松は、お互いの父親が知り合いだったみたいです。 2人は顔見知り程度の関係で、最近はあまり面識がなかったらしいです」 「ふんふん……他には、何かありますか? 父親同士で確執があったとか」 刑事から目を逸らして黙考する。 以前十本松に聞いた話では、香織の父親はビルから飛び降りて死んだらしい。 自殺か、それとも他殺かはわからないと言っていた。 十本松の父親は、なんで死んだのかわからないがこの世にはいないようだ。 そういえば昨日、十本松は俺に父親を殺されたとか言っていたな。 なんか、前世がどうとかも喋っていた気がする。 どうせ十本松の言うことだ。 深い意味なんかないだろうし、それ以前に信用に足るとは言えない。 もし本当に十本松や香織の父親が死んでいるのならば、警察が調べればそんなことはすぐわかる。 この刑事に喋る必要はないだろう。 「特に無いですね。2人とも父親を亡くしているらしいとは聞いてますけど、疑わしいし」 「疑わしいと、なぜ思うんですか?」 「事件の犯人から聞いた情報なんか、嘘っぽいですから」 「……ああ、なるほど。それは言えてますね。では、十本松という人物が住んでいる場所に心当たりは?」 「菊川邸に住んでいたみたいです。今はどうか知りませんけど」 「菊川ですか……またやっかいなところが……」 刑事は手帳をしまうと、椅子から立ち上がった。 「ありがとうございました。あなたの従妹さんとの話と合わせればかなり捜査が進みそうです」 「華にも話を?」 「聞きました。2人とも病院に搬送して、一夜明けた今朝、彼女に話を伺いました」 「……華も怪我をしていたんですか」 「も、ではなく彼女だけが怪我をしていました。あなたはただの脳震盪で倒れていただけです。 従妹さんは、肋骨にひびが入っていて、さらに吐血までしていました。 内臓に後遺症が残らなかったのは、不幸中の幸いでした」 184 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 41 06 ID e3g7TlOW 「それで、華はどこに?」 「隣の病室にいます。彼女、あなたのことを心配していましたよ」 「後で行ってみます」 「ぜひそうされてください。では、私はこれで」 刑事は軽く頭を下げると、病室の扉から出て行った。 足音が聞こえなくなるまで待つ。……聞こえなくなった。 そろそろ動こう。香織を助けにいかなくてはならない。 ドアを開けて病室から頭を出して、周りを確認する。 廊下には白衣を着た病院の人間と患者らしき人間しか居ない。 さっきの刑事はいないし、俺を観察しているような人間も居なかった。 病室の壁に掛かっている時計の針は、昼と言ったほうがいい時間を差していた。 昨夜十本松が俺の部屋に来てから一夜明けて、今は昼。 十本松が俺の部屋に来たのは午後7時ごろ。あれから12時間以上経ってしまった。 十本松が香織をさらって何をするかわからないから、時間が過ぎるごとにまずいことに なっていくのかは判断できない。 しかし、あそこまで強引に香織をさらっていった以上、冗談だよ何もするつもりはなかったんだ、 などとは言わないだろう。 もしそうだったらすぐにでも引きずりだして警察に突き出してやる。 が……十本松が本気だろうと冗談だろうと、俺にはどうすることもできない。 さっきのように、俺の自宅にやってきて拳銃を撃ち香織をさらった犯人が十本松だと 警察に言うだけで精一杯だ。 十本松がどこにいるのかがわからない。 もっとも、それがわかれば警察だって苦労はしないだろう。 わかっていればとっくに十本松を捕まえているはず。 わかっていないから、俺に話を聞きに来たんだ。 まだ菊川邸に潜んでいるのか、秘密のアジトに隠れているのか、何の変哲もない 民家に住んでいるのか、どれもありそうだけど確信を得ることはできない。 十本松は菊川邸の一室に部屋を持っていた。以前から菊川邸に住んでいたと考えられる。 菊川邸で起こった爆発事件の犯人は十本松。 直接聞いたわけではないが、昨日の行動から考えれば十本松がクロで間違いない。 だが、そんなことはどうでもいい。 香織は助けなければいけない。 香織に告白する前なら、警察にまかせっきりにして自分はじっとしていただろう。 けれど、今は違う。俺は香織を助けたいと思っている。 こうやってじっとしているだけでいらいらする。動きたくなってくる。 今度目の前に現れたら殺す、と十本松は言った。 ならば、俺はお前に殺される前に香織を助け出す。 それで、終わらせる。 185 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 41 51 ID e3g7TlOW 隣の病室のドアを3回ノックする。返事はない。 ゆっくりとドアを引くと、さっきまで居た病室と同じ光景が広がっていた。 ベッドの上には華がいる。ベッドで横になって眠っていた。 置かれたままになっている椅子に座って華を観察する。 白い布団から、華の頭と手首が出ていた。 華は見られているとは知らず、無防備な寝顔をさらしている。 さっきの刑事の話では肋骨にひびが入るほどの怪我を負っているらしい。 それをやったのは、間違いなく十本松だ。 一体十本松は華に何をしたのだろう。 拳の一撃か、体当たりか、蹴りか。 ドアを開けるとき、銃弾を撃ちつくしておいてくれてよかったと思う。 もしかしたら、華が撃たれていたかもしれなかった。 華のやつ、俺と香織が付き合っていると知って何をしてくるかと思えば、俺の手が出せない 場所で香織に危害を加えようとしてきた。 そういう意味で考えれば、十本松が来てくれてよかったとも思うが……。 もし十本松が来なかったら、俺は華を止めて香織を助けられたのだろうか? 管理人のところに行って鍵を借りてきて、戻ってきたとき香織が無傷でいられたのか? 待て。そもそも、華は香織に危害を加えようとしていたのか? 直感で香織が危ないということはわかったが、実際にはどうするつもりだったのか。 仮に華が香織に暴力を振るおうとしていたとして、なぜ華がそれをする? 華が言った、「俺を奪った香織は許せない」という言葉。 言葉の通り、香織を許せなかったからあんなことをしたのか? もしそうなら、華を放っておくわけにはいかない。 俺と香織が付き合っていることを納得してもらわなければいけない。 けれど、それをするのは今じゃない。 十本松の居場所を突き止めて、香織を助けてからになる。 ここに来たのは、華を起こすためではなく、華の無事を確かめるためだ。 華に協力してもらうわけにはいかない。 怪我をしているし、第一華の身が危険にさらされる。 それに、香織を助けるための協力をしてくれるかどうかもあやしい。 協力してくれる人が多いにこしたことはないが、華の力は借りられない。 眠ったままの華の頬に右手を当てる。 その途端、華がぴくりと身を震わせた。体を震わせただけで、起きる気配は無かった。 そのまま眠っていてくれ。 俺は今から、この病院を出て香織と十本松の居場所を探しに行く。 そんなことをするのは俺だけでいい。 俺のことを想ってくれる華の気持ちに応えられないのは悪かったと思う。 だけど、俺は華を傷つけたかったわけじゃない。自分に嘘をつけなかっただけだ。 華の髪の毛を撫でる。さらさらしていて、暖かくて、いつまでも触っていたくなる髪だ。 ごめんな。俺もお前のことが好きだけど、お前の気持ちにはやはり応えられない。 香織の代わりに俺を殴ってくれ。俺なら次の日には必ずケロッとしているはずだから。 俺が香織を助けられたら、そうしてくれ。 186 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 43 20 ID e3g7TlOW 人に見つからないよう病院を出て、自宅へ向かう。 空は相変わらず曇りで、晴れ間を覗かせる様子は無い。 まだまだこの季節は寒い。今日は風が強くないのが幸いだ。 香織を助ける。そのためには、十本松を探し出さなければならない。 十本松は今どこにいるんだ? 可能性がありそうなのは菊川邸だが、いつまでもそこに留まっているとも考えられない。 それに、先日の爆発事件で菊川邸は警察にも注意を向けられているはずだ。 とすると他の場所。しかし十本松が居そうな場所なんて見当もつかない。 華の通っている大学で聞き込みをしてみるか? だけど十本松と積極的に関わろうとする人間なんているんだろうか? だめだ。聞き込みはあてにならない。時間もかかる。 なら、もう一度菊川邸に侵入してみるか? 俺と華が脱出するときに使った裏道を使えば、中に入れる可能性がある。 菊川邸の外を囲っている雑木林から県道に出た場所は、どこにでもありそうなわき道だった。 あそこなら人の目につかず侵入することができる。 問題はまだある。侵入できたとして、それからのこと。 どうやって十本松に繋がる手がかりを探し出すか。 脱出に使った屋敷からの出口は十本松の部屋だった。 部屋をあされば何か見つかるかもしれないが、全て隠滅されているかもしれないと思うとあてにはできない。 それなら、他の手段。屋敷の中をくまなく捜索する。 ……これも駄目か。爆発事件の後でうろついている部外者が居たら、そいつは袋叩きの目に会うだろう。 俺が袋叩きの目に会うわけにはいかない。 せめて、菊川家に関係する人物でもいれば何かわかるかもしれない。 だが、どうやって探す? 誰一人として菊川家に関係する人間なんて知らないぞ。 かなこさんは知り合いといえば知り合いだが、連絡をとる手段がない。 連絡をとる手段があるならとっくに俺はそれを試している。 何の手段がないからこそ、かなこさんが無事か心配なんだ。 「さっそく手詰まりか……」 歩きながら、頭をかく。 なにか他に手はないのか?所詮俺1人ではどうすることもできないのか? 情けない。香織がさらわれたというのに何もできないなんて。 恋人の身が危険にさらされているというのに。 どうしたらいいんだ――? 187 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 44 52 ID e3g7TlOW 考えながら歩いていたら、自分の住むアパートの前に到着していた。 2階にある自分の部屋のドアを見る。ここからではドアノブまでは見えない。 ドアの前に人がいる様子はなかった。警察もあらかた調べ終えたんだろう。 階段を登り、2階の自室のドアを開ける。 そこに、知らない人が居た。 玄関にいる俺の位置からは、その人物の顔は見えない。 見えるのは頭を覆う白髪と、スーツかタキシードらしき格好のみ。 スーツを見て、一瞬十本松かと疑ったが、あいつは白髪を生やしていない。 となると、別の人物だ。 誰だ?この状況で、勝手に俺の部屋に侵入する人間は。 警戒しながら靴を脱ぐ。声をかけるため、静かに息を吸う。 白髪の人物に向けて声をかけようとしたら、先手を打たれた。 「遠山様ですね」 低い声。髪の毛が全て白くなるまで年をとっている人物とは思えないほど声に力を感じられる。 俺の名前を知られている。なら、黙っているわけにもいかない。 「……ええ。俺が遠山雄志です」 「お待ちしておりました。私は――」 畳の上に正座している人物が、玄関にいる俺に体を向けた。 「菊川本家長女、菊川かなこ様の執事、室田と申します」 「かなこさんの、執事?」 「そうでございます」 今まで見たことがないけど、執事って本当に居たのか。 しかし、服装や姿勢は本当にイメージどおりだな。 勝手に人の家に入っているところだけは、イメージどころか予想すらしなかったが。 「勝手にお部屋に入ってしまったことはお詫び申し上げます。どうか、お許しくださいませ」 「もちろん勝手に入ったのには、理由がありますよね?」 「はい。火急の事態ゆえ、こうせざるをえませんでした」 「話してもらえますか?」 「はい。そのために遠山様を訪ねてきたのです」 白髪の執事、室田さんと向かいあって座る。 この人と向かい合っていると、勝手に足が正座を組んでしまう。 こういう雰囲気の人が嫌いなわけではないんだけど、一対一で話すのは得意じゃない。 とりあえず、事情を聞いてみるか。 「俺から質問します。なんで部屋に入ったんですか?」 「実は、私は命を狙われております。それゆえ、外で待っていることができませんでした」 「……誰に?」 「十本松あすかの手の者にです。もっとも、私を狙うのは安全策といったところでしょう。 本命は、かなこ様です」 「かなこさんは生きているんですか?!」 「はい。私が屋敷から追われる昨夜まで、かなこ様は無事でした」 よかった。肩の荷が一つおりた。 188 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 45 49 ID e3g7TlOW 「しかし、今もかなこ様が無事であるかはわかりかねます」 「なぜ?」 「桂造様を殺害した十本松あすかが、かなこ様を無事でおいておくとは考えられません」 「桂造……菊川家の、当主の方?」 「はい。誕生パーティの翌朝、十本松あすかの仕掛けた爆弾の爆発に巻き込まれ、亡くなられました」 あの日、爆発は2回起こっていた。 1回目は俺と華とかなこさんの近くで爆発が起きた。 あれが2回目の爆発に注意を向けさせないためのものだったとすれば、 1回目の爆発の威力が低かったことにも合点がいく。 2回目の爆発が本命。当主の桂造氏の命が十本松の目的だったということか。 「昨晩のことをお話します。私は9時ごろ、ショックで寝込んでいたかなこ様に付き添っておりました。 そこへ、十本松あすかと屋敷の人間の数名がやってきました。 十本松あすかは私を拳銃で脅し、かなこ様をどこかへ連れ去りました。 隙を見て、私は屋敷から脱出したのです」 かなこさんがさらわれた?! くそったれ。香織に続いてかなこさんもか。 十本松は何をするつもりだ? 「それで、屋敷に住んでいる人達は十本松を止めなかったんですか?」 「止めるものはおりませんでした。おそらく、あの屋敷の使用人全てが十本松あすかに従っております。 桂造様を殺害するために、ずっと準備を重ねていたのでしょう。あの女は」 「なぜ十本松がそんなことをしたのかはわかっているんですか?」 「……それは……」 室田さんは俺の目から視線を外した。 さっきまで詰まることなく話をしていた人物が見せるとまどい。 話しにくいことなのか?もしくは口止めされているとか? 「桂造様は亡くなられました。このうえ、かなこ様を失うわけにはいきません。 ……お話しましょう。他言無用で、お願いいたします」 俺は無言で頷いた。 「十本松あすかは菊川家の人間を恨んでおります。 その理由は、桂造様が十本松あすかの父を謀殺したからです」 「え……?」 十本松の父親が、かなこさんの父親に殺されていた? じゃあ、十本松は父親の仇を討つために桂造氏を殺害したということか? それなら、あいつがかなこさんを連れ去る理由もわかる。 かなこさんは無事なのか? あいつが菊川家の人間全てを恨んでいるなら、かなこさんに危害を加えない理由が無い。 いやむしろ、そうするのが自然だ。 「私は十本松あすかの父、十本松義也を殺す計画を、桂造様が立てていることに気づきました。 私が警告しても十本松義也は聞き入れませんでした。 数ヶ月が経ち、十本松義也が殺害されたことを知った私は、独自に調査を始めました。 そこで気づいたのは、十本松あすかが行っていた事業を桂造様ともう1人の人物が引き継いだことでした」 「もう1人?」 「はい。その人物の名前は、天野基彦といいます」 189 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 46 51 ID e3g7TlOW 今まで起こってきたことの全てに納得ができた。 十本松は、かなこさんの父親と香織の父親に、父親を殺された。 これは、十本松が香織とかなこさんの2人をさらう動機になる。 そして、もしかしたらという推測が真実味をおびてくる。 香織の父親は、ビルから飛び降りて死亡した。 俺の推測が正しければ、おそらくは。 「その天野基彦という人は今、どうしているんです?」 「殺されました。十本松あすかの手によって。天野基彦は、10階建てのビルから突き落とされて死亡しました」 ――やっぱりか。 十本松は、自分の父親を殺した人物を、殺した。 今は、その娘2人まで手にかけようとしている。 香織と、かなこさん。 香織をさらったのも、かなこさんをどこかへ連れていったのも、2人を始末するための行動だ。 最悪だ。知り合いの1人が殺人犯だった。 元知り合いの殺人犯は、俺の恋人と俺を想ってくれている人を殺そうとしている。 これが冗談ならどれだけ嬉しいことか。 だけど冗談じゃないんだろう。 そうでなければ目の前に執事さんがいたり、執事さんが真剣な顔で向き合っていたりはしない。 「まずいです。その天野基彦の娘の香織が、昨日十本松にさらわれました」 「天野基彦の娘? それは、何時ごろの話でございますか?」 「昨日の夜7時ごろです」 「ということは、昨夜十本松あすかがその香織さんをさらい、屋敷に帰ってきてからかなこ様を連れ去った。 自分の父親を殺した2人の男の、娘。十本松あすかが動くだけの理由は充分ですな」 「……今、十本松はどこに?」 「おそらく、まだ菊川の屋敷の中にいるでしょう。推測ですが」 それだけわかっていれば十分だ。 近くの警察署の番号に電話をかけるため、俺は携帯電話を取り出した。 「警察に連絡しても無駄です」 「……なぜです?」 「警察は菊川家に接触しないよう動いています。 最近のニュースを見ていれば、その理由がわかるはずです」 あの爆発事件のことか。 爆発事件が起こったというのに多くの情報を流さないマスコミ。 進展を見せない警察の捜査。 どちらも圧力がかかっていなければ、そんな行動をとりはしないだろう。 マスコミは最初からあてにならないが、警察すら同じ状況だとは。 190 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 47 36 ID e3g7TlOW 「ですから、私達が動くしかありません」 「私達? 俺を含んでます……ね、その言い方は」 「はい。かなこ様から聞いておりました。 遠山雄志様は、何があろうともかなこ様を守ってくださると。 かなこ様の言うことに間違いはございません。 もし間違っていようとも……私はかなこ様の言葉を信じます。 そして、かなこ様が信じている遠山雄志様。あなたのことも私は信用します」 室田さんの目は嘘を言っていない。こんなまっすぐな目をして嘘をつく人などいるはずがない。 買いかぶりすぎです、かなこさん。 あなたはなんで俺をそこまで信用しているんですか。 ――ああ、俺ってかなこさんにとって護衛役だったんだっけ。 自覚は一切ないんだけど。前世の記憶なんかないし。 だけど、これは願ってもないチャンスだ。 菊川邸のことを詳しく知っていそうな室田さんと一緒なら、香織とかなこさんの捜索もスムーズにいくはず。 やるしかない。多分、これが最後のチャンスだ。 「やりましょう、室田さん。俺は香織とかなこさんを助けなければいけません。 2人をみすみす見殺しにすることなんて、できません。絶対に」 「私も同じです。この事件は、桂造様が根になって起こったことです。 菊川家の執事として、解決のために動くのは当然のこと。 主を止められなかった私にも、責任があります。 十本松あすかを、必ず止めて見せます。たとえ、この身を砕かれようとも」 室田さんの目を見る。 黒い瞳は、まるで意思の塊のようだった。 この決意を砕くなど、誰にもできないのではないだろうか。俺はそう思った。 191 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/07/08(日) 07 49 53 ID e3g7TlOW ・ ・ ・ 菊川邸へ向かう、室田さんの運転する車の中。 俺の部屋より広いわけではないが、どちらの居心地がいいかと問われれば間違いなくこの車の中だ。 シートは、シートではなくソファーと言ったほうがいいほどふかふかしている。 空調も完璧なようで、濁った匂いが全くしない。 座りながらぼーっとしていると、眠気がやってきた。 深呼吸して、背筋を曲げ伸ばしして、睡魔を追い払う。 「遠山様」 睡魔がブーメランして戻ってきたころ、室田さんに話しかけられた。 「なんですか?」 「かなこ様のことを、よろしくお願いいたします」 「え? それはどういう意味で?」 「かなこ様を幸せにしてください、との意味で言っております。 かなこ様を悲しませることだけはなさらないでください。もしそうなったら私は……」 「なんです?」 「遠山様を……いえ、何でもございません」 室田さんはそこで言葉を止めると、口を開かなくなった。 この人、俺をどうするつもりなんだ。 待てよ。俺はすでに香織を恋人にしてしまった。かなこさんは恋人の対象ではない。 もし室田さんの言う言葉の意味が「女性として」幸せにしてほしいというものだったとしたら……。 かなこさんと結婚してほしいという意味で今の言葉を口にしていたのだとしたら……。 いや、考えるのはやめよう。 今は、それより先に香織とかなこさんを助けなければいけない。 全てはそれからだ。それまで全て保留だ。 それからでも、きっと遅くはない。 スモークの入っていない窓から外を見る。 車は菊川家の敷地に入る玄関前を通り過ぎたが、敷地には入らずそのまま道路を走り続けた。 そこで一瞬見えた菊川邸には、明かりが灯っていた。 まるで、何の異常もないことを教えるためにそうしているようで、かえって不自然に見えた。 ****** 16話はこれで終わりです。次回へ続きます。 192 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 11 53 55 ID RLqTXOEK べっ、別にあんたなんか待ってなかったわよ! たまたま暇だったから見ただけだもん! ……gj。 193 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 14 21 39 ID FfRpUnHh GJ! 194 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 15 16 46 ID Fx/u4FsE 159 お久しぶり!そしてグッジョブ! 催促も悪いなあと思ってたけど「いない君といる誰か」続きがくるのを楽しみにしてたよ。 私事に影響出ない程度に書き進めてもらえたら嬉しいです。 ところで前から気になってたんだけど、西尾維新とか好きですか? 文の雰囲気が似てるからなんとなく思ったんですが…・・・。 195 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 16 06 36 ID 1xBq/q1M 194 それは俺も思ったなー。 何気に「策戦」なんて言葉が出たりとか、会話文なんか化物語の影響が強いように思う。 196 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 17 12 26 ID 0oMLrpxT 195 サァクセンwww 197 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 18 34 52 ID 9hs1ndZi 1スレ目ではきのこっぽい言われてたなぁ。 198 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 18 41 39 ID 0FRwT+41 ヒント:きのこと西尾は同じ作家のファン 199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 19 16 48 ID Q/YrA/+K 191 十本松の目的は復讐だったのか。 ヤンデレ分ない回でも話の展開だけで面白い。GJ! 200 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/08(日) 19 30 46 ID /kk3z3fv 191 GJ! かなこが生きてるとなると、まだまだヤンデレ分は消え無そうだな(*´д`*)
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1086.html
1 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/23(水) 23 32 38 ID sNl+0M+K ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。 ○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど) ○ぶつ切りでの作品投下もアリ。 ■ヤンデレとは? ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。 →(別名:黒化、黒姫化など) ・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。 ■関連サイト ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫(本保管庫) http //yandere.web.fc2.com/ ヤンデレ臨時保管庫 @ ウィキ(臨時保管庫) http //www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/ ■前スレ ヤンデレの小説を書こう!Part14 http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1204261770/ ■お約束 ・sage進行でお願いします。 ・荒らしはスルーしましょう。 削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、 削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。 ■投稿のお約束 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため) ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。 ・版権モノは専用スレでお願いします。 ・男のヤンデレは基本的にNGです。 2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/23(水) 23 37 25 ID PdxkNS+F -‐ ´ ̄ ̄`ヽ、 -‐ ´ ̄ ̄`ヽ、 -‐ ´ ̄ ̄`ヽ、 / / `ヽ ヽ \ / / `ヽ ヽ \ / / `ヽ ヽ \ //, / ヽハ 、 ヽ //, / ヽハ 、 ヽ //, / ヽハ 、 ヽ 〃 {_{ノ `ヽリ| l │ i| 〃 {_{ノ `ヽリ| l │ i| 〃 {_{ リ| l.│ i| レ!小l● ● 从 |、i| レ!小l● ● 从 |、i| レ!小lノ `ヽ 从 |、i| ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│ ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│. ヽ|l ● ● | .|ノ│ /⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j /⌒i ! /⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j /⌒i ! |ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j | , | \ / | l>,、 __, イァ/ /│. \ / | l>,、 __, イァ/ /│ | /⌒l,、 __, イァト |/ | . / /| | ヾ |三/ {ヘ、__∧ | / /| | ヾ |三/ {ヘ、__∧ |. | / / |三/ // ヽ | `ヽ | | ヾ∨ /ヾ 彡 |. `ヽ | | ヾ∨ /ヾ 彡 | | | l ヾ∨ / ヒ 彡, | ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ちゅるやさんAは、 1乙を唱えた! ┃ ┃ちゅるやさんBは、 1乙を唱えた! ┃ ┃ちゅるやさんCは、スモークチーズを欲しがっている。 ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/23(水) 23 43 45 ID JZRmxXR0 3 4 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 00 55 56 ID 8rvuLuFC 4 5 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 02 44 51 ID Uj7HMpBS 1 乙 6 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 02 48 27 ID rkzo8kjy ナイス 1乙……! 素晴らしい乙……! 7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 04 38 25 ID 9lD4ju2W 1乙 8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 06 05 52 ID g2jL+wwz 1お兄ちゃんの乙を独占したいの 9 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 01 03 30 ID 4FqnX7n3 高1春 男 高校に入学して1ヶ月がたった。 地元の中学からこの高校に入学したのは俺だけだったので不安もあった。 でも、友人もでき、問題なく学校生活を送っていた。 部活はテニス部前から興味があった。それだけだ。 順調にどこにでもいる高校生になっていった。 高1夏 男 学校生活にも慣れてきた頃、クラスで気になる女子ができた。 彼女はクラス、いや学年でもトップクラスの容姿だった。だが漫画に出てくるような容姿端麗、頭脳明晰 というような娘ではなく、成績は中の下くらいだった。性格はおとなしく、化粧もしていないようで、同じようにおなしい 性格の友人とグループを作っていた。 10 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 01 03 57 ID 4FqnX7n3 高1秋 男 夏休みが終わり、2学期が始まった。 彼女は夏休み前と変わっていなかった。 もし、派手な風貌になっていたらどうしようと身勝手な心配していたので安心した。 そんな風に彼女を見ていたら目があってしまった。 あわてて目をそらした。俺は女子にはまったく免疫がないんだ。 文化祭が近づいているので放課後も残って準備することが増えてきた。 俺は意図せず彼女と同じ班になっていた。 黒板の希望するグループのところに自分の名前をさっさと書いて友人とふざけていたら 彼女もこのグループに来てしまったのだ。 俺はただでさえ女子に免疫がないのに、気になる娘がそばにいるととても平静ではいられない。 放課後の作業も部活だとか塾(嘘)だとか言って逃げまくっていた。 しかし、いざ文化祭が近づくとそんな言い訳も通じなくなり、いやいや参加していた。 俺は異常だと自分でも思う。好きな娘と事務的な用事について話すだけでも嫌なのだ。 心臓がバクバクいって自分のヘタレた部分を見せ付けられるようでとても耐え切れないのだ。 文化祭は2日間に渡って行われる。 周りの友人はクラスだの部活の女子だのを誘い一緒に校内を回るようだ。 だが俺にはそんな発想はまったく無かった。 はっきり言って好きな娘ができても恋人になりたいなどと思ったことはない。 前に述べたようにヘタレなのものあるが、何より俺は自分に自信が無かった。 成績ははっきり言って悪い。運動も部活はしているが試合に勝ちたいとかそういう気持ちはなく、 いわば、前からの興味と運動不足を気にしてのことだった。 最後に容姿だが、これは実は周りからの評判は悪くない。といっても女子に免疫のない俺が女子の評判を耳にする機会などあるわけもなく、 もっぱら、男連中からだ。まあ要は信用ならない情報だ。 当日は部活の出し物のない時には教室の出し物に顔を出すことにした。 教室に行くと彼女が居た。 俺達のグループで入るのは彼女だけのようだ。目が合ってしまったのでしかたなく平静を装って彼女の方に向かう。 いつから当番をしているのかと尋ねてみるともうすでに3時間もここに居るそうだ。 俺は彼女に自分に任せてくれてかまわないと伝えたのだが、しかし 彼女は友人も男子とどこかにいってしまっているのでいいと返してきた。 俺は困ってしまった。彼女にこの場を任せるように言ったのは自分のためでもあったのだ。 俺は文化祭前に何が何でも彼女を落とすと豪語していた友人の登場を願った、心の底から。 すると友人ではなく誰だか知らない男が現れ、彼女に話しかけた。誘っているのだろう。 しかし、彼女はそれを断っているようだ。男はしばらくねばっていたが、やがてあきらめていってしまった。俺を睨み付けて・・・ 結局文化祭が終了するまでの間俺はずっと彼女と一緒にいた。 その間彼女には10人以上のお誘いがあった。 しかし彼女は誰の誘いにも乗らなかった。そのせいで俺は10人以上に睨まれるはめになってしまった。 でも、彼女も彼女だと思う。相当なイケメンもいたのに振ってしまうなんて持ったいない。 イケメンをふって10分に一度「人あんまり来ないね・・・」「うん」なんて会話しかできない俺といるなんて矛盾している。 もしかしたら彼女も俺と同じ気持ちなのかもしれない 俺と同じで異性が苦手なのだ。 ちなみに彼女を落とすと豪語していた友人は前日にはもう振られていたらしい。 それを聞いて俺はホッとした。 身勝手だと思う。 彼女と二人になってしまった時には来い!そして誘え!と思っていたというのに。 11 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 01 04 34 ID 4FqnX7n3 高1冬 男 俺の耳に恋愛の噂はあまり入ってこない。 俺自身が好きな人をまわりに言ったりしないせいだと思う。 クラスの中で三角関係が起きていたことなど、三角関係に決着が付いた後に知った程だ。 だが、噂の当事者が学年でも評判の美少女となれば話は別だ。 彼女に好きな人がいるらしい 俺は正直ホッとした。付き合っているという噂ならショックを受けただろう。 しかし、好きな人がいるというのはいいことだと思う。 自分のことは棚にあげるが、彼女にはいい恋をしてもらいたいと思う。 はっきりいって俺のような青春は駄目だ。 それに好きな人がいるらしいという段階から聞ければ、付き合っていると聞いてもショックは和らぐだろう。 2月14日はバレンタインデー 中高生男子にとっては審判の日だろう。 女の友人でもいれば気軽に構えてられるのかも知れないが、俺のような人間にそうはいかない。 というか、俺自身はそんな気にしてないのだが、同じ系統の人間が俺を巻き込んで騒ぐのは迷惑極まりない。 結果の見えているのにいつまでも教室にいるのは見ていて哀れになる。 俺はさっさと部活に行くことにして教室を出た。 その時についいつもの癖で彼女を見てしまう。 目が合う。合ってしまった。 後悔した死ぬほど 勝手に期待していた身の程知らずの男と思われただろうか。 彼女は意中の相手にチョコを渡すことはできなかったようだ。 彼女の性格なら十分にありうることだ。 普段、親しくしているならまだしもそうでない相手にチョコを渡すことは告白に等しい。 彼女は家で泣いたりしたのだろうか 12 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 01 05 50 ID 4FqnX7n3 即興で書いたのを勢いで投下しました。 うん、ごめん 13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 01 23 25 ID l41RQECY ねぇちゃんを鈍器で打ったらヤンデレになっちゃったよぅ・・・うっ・・・うっ・・・ 14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 01 24 12 ID 4+RlTjWH いんや、面白かったぜ! スピーディーで良かったよ。 続きに期待してます!! 15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 01 42 03 ID aQ3WnBEo 続きに期待 でも、誤字脱字が目立ったから、一度推敲してみることをオススメする 16 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 06 08 48 ID 1Il//wuQ 誤字脱字以前の前にsageろ そんで辞典片手に20回は読み直せ。あまりに酷すぎる。いままで読んだSSの中で一番最低だ 謝るくらいなら投下するな。即興で書いたとか言い訳するな。即興かどうかなんてこっちは知ったことじゃない ハンパなもん投下する奴が一番タチ悪い。中学生レベルなら身の程をわきまえろ 17 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 06 33 36 ID ivsGyO8x どのへんにヤンデレがあるの? どのへんにヤンデレがあるの? 18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 07 54 51 ID l41RQECY 携帯小説レベルと言われても仕方ない出来 19 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 08 47 35 ID 5S3SRATj 12 GJ!! 続くのかな? だとしたら全裸で待機してるよ 20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 08 53 30 ID cpVrKqtR 16 喚くなハゲ 21 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09 02 36 ID 1Il//wuQ 21 黙れ糞虫。日本語も読めないゲロカス以下は死ね。今日中に死ね 22 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09 08 42 ID 1Il//wuQ 自爆った… 20ね は、恥ずかしくなんかないんだからね!言い過ぎたことを後悔なんかしてないんだから! 23 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09 12 36 ID kxQIA+gg 何か暴れている奴は腐女子のような気がするな 24 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09 15 11 ID kxQIA+gg 批判者というのは自分に書く能力がないのに態度だけは偉そうなのはどうしてなんだろうか? 25 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09 24 44 ID hf5zHBt6 文法的な間違いってどこかな? 26 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09 24 47 ID NZ0Pv+NW ID変えて擁護乙 27 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 11 31 35 ID a0ffIId0 気に入らなきゃスルー それくらい常識だろ 28 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 11 55 35 ID h9LX2Vum これから病んでくるじゃない?なぜ騒ぐ?わっかった!みんな中毒だヤンデレの! 29 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 11 56 30 ID kxQIA+gg ヤンデレみたいな彼女が現実にいたらいいんだけどね 30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 12 01 24 ID kxQIA+gg 鋸を持ったヤンデレに襲われる夢を見た奴が勝ち組なんだよ!! 31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 12 36 15 ID ks/S5VkT 女にストーカーされたあげく刺された夢を見た私が参上 32 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 12 43 55 ID 2KNIWV7m 31 なんと言うレズ 33 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 15 55 40 ID ks/S5VkT 男だよ 34 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 17 47 46 ID 2KNIWV7m ほんとは知ってたんだけどなにか俺の中で期待があったのかもしれない(´・ω・) 35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 18 24 30 ID sNNVpEsu それは本当に夢だったのかな? 36 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 18 45 54 ID yR4FV587 五時脱字なんてこのヤデレスレには似あわないよ 37 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 19 45 24 ID SGNkNkQw 36 つっこまないぜ 38 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 21 09 32 ID yaTEmfKK , -‐ァ‐- 、 / ´ .. ヽ , -‐ヤ . rt ァ;゙´ ,」 \ ` ̄`ヾ `ヾ 7 シ. ヽ ト-、 ` ツ . \ l ㍉ 、 . .、\ , . ヾ、 . .、 . ㍉ミゝ、 、 ` ‐㍉ミミミミ、 ヽ. _,` =ミミミミ 、 `7 - ニ..ミ三彡ヘヽ\ ` /´ / ヾ \ヽ 、,/ / ヾ. ヾ\  ̄/ __/ ヾ .ヽヾ、 / ヽ ヒョウロンカキドリ 山梨県 富士樹海 他の鳥が作った巣に難癖をつけ、攻撃する習性を持つ しかし自分では巣を作らない ケイタイ虫と呼ばれる寄生虫を飼っており、それによって 凶暴化しているという学説も有る 39 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 05 45 ID eYlfZSYl 投下します。 十一話目です。ちなみに、九話から死闘編ということになっております。 40 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 09 12 ID eYlfZSYl * * * ああ、愉快愉快。 あの金髪女ったらあんなに取り乱しちゃって。ざまーないわね。 そんなに彼の姿が見えないのが不安でならないのかしら。 全く情けない。アタシなんか彼の姿が見えなくったって幸せな気分でいられるっていうのに。 ま、無理もないかも。あの女、葵紋花火の友達は彼だけ。 知人と呼べそうなのは体目当てに誘ってくる性欲猿みたいな男子生徒たちだけ。あ、彼のお兄さんも知り合いかな? ともかく、彼が居ない時の葵紋花火はデパートのおもちゃ売り場で迷子になった子供みたいな感じ。 他に頼れる人がいないんだもん。その唯一の人がいなくなったんだから、取り乱しても当然か。 沸騰した頭で考えてでたらめに行動したって、なんの結果も生み出せないのに。 彼が今どこにいるのか、突き止められはしないのに。 あまりのおかしさに喉だけでくつくつと笑ってしまった。肩もちょっと揺れてる。 もう、お昼なんか要らないかも。あの女の焦る顔を見ているだけで腹一杯。 「どうしたの澄子ちゃん? いきなり笑ったりして」 「ん? んーん、なんでもないない」 話しかけてきたのは机をくっつけて一緒にお昼を食べている桃ちゃん。 桃ちゃんの箸はあまり進んでいない。小さなお弁当箱の中身は半分も減ってない。 この子の神経の細さじゃ、さっきの光景を見たショックに耐えきれないから当然か。 「……ねえ、大丈夫かな。私たち」 「何が?」 「だってほら、さっきの……さっきみたいに、葵紋さんが……」 「大人しくしてればなんともないよ。だってアタシたち、誰にも言ってないから気付かれてないでしょ? あの子たちみたいに群れたりするからいざとなった時狙われるんだよ。平気平気」 「そう、だよね……うん。ありがと」 そう言って桃ちゃんはようやく箸を動かした。 でも口が開いてない。小振りなコロッケを半分に割って食べているようじゃそのうちに昼休みは終わってしまう。 アタシと桃ちゃんは彼に憧れる同士。 と言っても桃ちゃんは内気な性格だから彼にアピールしない。アタシもさりげなく止めてるし。 だって積極的になり出したら敵として認識しなければいけなくなる。できるなら、それは避けたい。 あまり頼りにならない勘だけど、昔のアタシと桃ちゃんは似てる気がする。 内気なところとか、声が聞き取りにくいところとか、諦めから物事に取り組むところなんかが。 アタシは彼と気持ちよく話すために普段から明るく振る舞っているけど、内面ががらっと変わったわけじゃない。 一人で部屋に居るときや、彼が葵紋花火に話しかけるところを見ていると一気に気分が落ち込んでしまう。 それでも彼が優しくしてくれると、彼を掴まえて独占したくなる。 なにかのきっかけがあれば桃ちゃんも今のアタシみたくなる可能性もある。ないとは言えない。 だからアタシは彼と桃ちゃんをなるべく接触させない。 罪悪感もある。だけど、彼はアタシだけの恋人なんだから仕方がない。 それにもし桃ちゃんまで本気になったら、排除しなくちゃいけなくなる。 アタシは一応桃ちゃんのこと友達だと思ってるから、できればそれは避けたい。 41 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 10 17 ID eYlfZSYl 「さっきの……葵紋さんが殴った子。どんな様子なのかな」 「さあ。さすがにそこまでは。大事にはなってなければいいんだけど」 桃ちゃんは小さく頷いた。あんな子を心配するなんて優しいね。 アタシがさっき口にした言葉は嘘。本当はとっくに大事になっている。 葵紋花火は昼休みになると同時、彼を狙う有象無象の輪の中に突っ込んでいって、いきなりグーで殴った。 自分が心配している時に、あーだこーだと彼の行方を推測する人間達に腹を立てたと思われる。 腹を立てていたのはアタシも同じだけど、さすがに殴らなくても。 殴られた子は吹き飛ばされて、机を三つほど巻き添えにして床に叩きつけられた。 とっさに隠したみたいだけど、口から溢れる血と一緒に、折れた歯が床に落ちるのをアタシははっきり見た。 手加減ってものを知らないのかしら。それともただ後先を考える余裕がないだけ? そのままずっと心を乱したままでいればいい。 校内で暴れ続けていればさすがに教師の目に留まる。 停学、もしくは退学処分になればあの女の目障りな金髪を目にすることがなくなる。 桃ちゃんが箸を置いた。まだ中身の残ったままの弁当箱に蓋をして、嘆息する。 「葵紋さんが暴れたのって、やっぱり彼が今日休んでるのが原因かな」 「たぶん、そうだと思う」 「でもたまには休むことだってあるだろうし。どうしてあんなに荒れてるんだろ。 彼が休むたびにあんなんじゃ、私落ち着いて学校に行けないよ」 「たまたま、二日目とぶつかったんじゃない? 大丈夫だって。アタシたちは絶対に狙われることなんかないから」 「うん……うん、そうだね。ありがと、澄子ちゃん」 弁当箱を布でくるむと、桃ちゃんは自分の席へと戻っていった。 アタシは唇だけを動かして呟く。 「なんにも心配要らないよ。もうすぐ恋に悩む必要すら無くなる。 ……彼はアタシが手に入れたんだから」 彼の居場所を知っているのはアタシだけ。 彼が昨晩何を食べたか、何をしていたのか知っているのはアタシだけ。 彼の全て、心も体も考え方もコントロールできるのはアタシだけ。 今はまだだけど、これからそうなっていく。アタシがそうする。 そして、最後。 これこそが葵紋花火にとっては最大の屈辱。 ――――彼の初めての味を知っているのはアタシだけ。 42 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 11 37 ID eYlfZSYl * * * 「知ってるんだろ、アニキならもちろんさ。なんたってお兄さんなんだからな」 短いなかに俺への悪意が強く感じられる、花火の言葉。 これでもこいつにしては抑えている方だろう。本来なら胸ぐらを掴み上げられてもおかしくない。 そうしないということは、ここへは話を聞きに来たのだろう。 「どうなんだ、アニキ」 「わからん」 「…………は、なんだって?」 「わからないんだ、本当に。弟は昨日学校から帰ってこなかった。で――」 「その後で変なメールが送られてきた。そうだろ?」 花火がスカートのポケットから携帯電話を取り出し、開く。 画面に映っているのはメールの文章だった。 でも、これは……。 「あいつが私にこんなメールを送ってくるはずない。絶対にありえない。 昨日あげたチョコ、あいつは貰ってくれた。大切に味わって食べるって言ってくれた。 だから、急にこんなメールを送ったりするほど気変わりするわけがない」 花火の言うとおり、メールの文章は弟ではなく、弟になりすました誰かが送ったとしか思えないものだった。 いきなりだけど、大事なお願いがある。 二度と僕に近づかないで欲しい。 僕の前に姿を現さないで。 僕は花火のことが好きじゃないんだ。 花火が僕のことを好きじゃないのと同じで。 さよなら、花火。 「こんなの、こんなのあいつじゃない! 誰かがあいつの携帯を奪ったんだ! あいつと仲のいい私を嫌ってる誰か、男か、女か、年上年下同い年……どいつでもいい! 昨日この学校であいつを奪った奴がいるんだよ! 許せるかっ、そんなのっ!」 花火の掌が机を激しく打った。瞬間的に椅子ごと揺らされたような錯覚を覚えた。 「答えろ、考えろ、思い出せ! 何か一つぐらい心当たりがあるんだろ、アニキ!」 教室中を静寂に陥れる叫び声。しかし、隠し切れていない怯えが裏にある。 花火の手が小刻みに揺れる。 弱い。今の花火には弱さだけがある。俺に怒りをぶつけてきた時の勢いは欠片もない。 でも、俺には励ましの言葉を言う権利や、状況を利用して軽口を叩く勇気もなくて。 可哀想だけど、もっとも誠実に、期待を裏切るような言葉を言うしかできない。 「悪いけど、本当に知らないんだよ。俺のところにもそれと似たようなメールが来た。妹にもだ。 昨日はずっと寝ずに待っていたけど、帰ってこなかった。連絡をとろうとしたけど返事もない。 とりあえず今日まで様子を見てみて、明日になっても同じようだったら警察に連絡するよ」 「遅いんだよ、そんなんじゃ。 明日まで待つだって? 明日まであいつが無事で居られる保証は? 警察が発見する確率は? 一日もあれば、人間一人ぐらいどこにだってバレずに移動させられるんだぞ。 アニキはあいつのこと心配じゃないのかよ」 「……まったく心配していないわけじゃない」 「なら、こんなところで座ってないであいつを捜しに行きなよ。 捜してるのは私だけだ。本気で心配してるのも私だけ。どいつもこいつも憶測するか、待つしかしない。 もうこの際、なりふり構ってられない。アニキにも手伝ってもらう」 右手首を掴まれた。力の全く籠もっていない手が強引に体を引っ張り上げようとする。 振り解こうとすればできたけど、今の花火を拒絶することはできなかった。 過去に花火を傷つけた罪悪感が、従う以外の選択肢を許さない。 もしかしたらまだ完全には嫌われていないのかもしれない、なんて甘い考えが脳裡を掠める。 そんなことはありえない、と自分に言い聞かせると少しだけ寂しくなった。 43 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 12 37 ID eYlfZSYl 花火の手に引かれるまま椅子から腰を浮かせ、後をついていく。 教室の入り口前に辿り着いたところで、突然花火が止まった。背中にぶつかりそうになるのをなんとか堪える。 見物人でも溜まっていたのだろうか。花火の肩越しに進行方法を見遣る。 見えたのは、腕を組んで入り口のど真ん中に佇んでいる葉月さんの姿だった。 「どけ」 花火の声を聞いても葉月さんは動かない。眉さえぴくりとも動かさない。 ただまっすぐに目前の相手を見据えているだけ。 「詳しく話を聞かせて欲しいの。さっき、そこの彼の弟のことを話していたでしょう」 葉月さんの目が俺を捉えた。その目が少しだけ細くなったのは何故だ。 もしや、怒っている? ――あ、そういや葉月さんには弟のことは一言も話していなかった。 相談されなかったからのけものにされたとでも思ったのかもしれない。 こっちにそのつもりはなかったけど、ごめんなさい。 葉月さんの視線が花火の方を向く。真摯な目をして、ふざけた調子のない声で喋り出す。 「私も彼の弟が心配なの。あなたの言うとおり何かがあったとしたら助けないといけない。 動くなら早いほうがいいもの。そうでしょう?」 「……その通りだ」 「それじゃあ、私も一緒に捜すから」 「いや、その必要はない。協力しないで欲しい。私とアニキの二人だけで探す」 葉月さんの表情が怪訝なものに変わった。おそらく今の俺も似たような顔をしていることだろう。 花火はなぜ葉月さんの協力を拒む? 人を捜すなら人海戦術をとった方が有利だということはわかるだろうに。 「どうして協力したらいけないのかしら? 理由は?」 「……話す必要がない。これは私とあいつと、アニキの問題だからだ」 「そんな理由じゃ納得できないわ。弟君のことを心配しているのは私だって同じよ。 もし何かあったりしたら私だって困るもの」 「……なに?」 「だってそれは、将来……他人じゃなくなるんだから。無事でいてもらわなきゃ、私の計画が崩れちゃうわ」 うつむきながら葉月さんが呟く。昨日もだったが、言葉だけでは葉月さんの考えを読めない。 計画ねえ。将来の計画、進むべき未来の予想図、これからやりたいこと。 俺には模型作りの趣味以外にやりたいことがすぐに浮かばない。 同い年でありながら先のことを考えている葉月さんは立派だと思う。 まあ、そんなことはどうでもいい。今考えるべきなのは花火が葉月さんの協力を拒む理由だ。 44 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 14 11 ID eYlfZSYl 「そんなわけだから、私も弟君を捜すの手伝うから」 「お前の名前は?」 「私? 葉月よ」 「葉月……葉月。そうか、お前が、か」 花火の声が幾分低くなった。 「二年D組の、葉月。お前もか。お前もそうなのか」 花火が一歩踏み出す。表情は俺の位置からは見えない。しかし声を聞く限り、穏やかであるとは思えない。 正面から向かい合っている葉月さんの様子も少し違う。表情が固くなったというか、あまり動かなくなった。 ふと気づいた。昼休みだというのに、葉月さんと花火の近くにいる人間は俺一人だ。 そのせいで緊迫した空気に俺まで飲み込まれた気分になる。 関係者ではあるのだが、にらみ合いに混ざっているわけでも、こうなった原因を作ったわけでもないので立ち位置の判断に困る。 もしかして、二人を止める役どころをクラスメイトに期待されていたりしないだろうな。 実家が道場を開いていて自身も武道を習っている葉月さん。ぱっと見てもじっと見ていてもアウトローに見える花火。 葉月さんには過去四回ほど投げられたことがある。花火には一度殴られたことがある――こっちは自業自得だが。 ともあれ、口論で事態が収まらないのだとしたら、体を張らなければならない。 二人の衝突を見過すことなどできないのだから。 葉月さんが口を開く。それだけのことで驚いて心臓の鼓動が速くなる気がした。 「私も、って? 私が今あなたに何かしたかしら」 「私にじゃない。あいつに、だ」 「あいつ……弟君のこと?」 「葉月、お前のことはあいつから何度か聞いた。 私と一緒にいるとき、あいつが女のことを話すのは少ない。せいぜい自分の妹のことぐらい。 だが、最近になってお前のことも話題に上るようになった。 そのことを、気にしすぎだと思っていなくて良かった。警戒していて、良かった。 私の予想通りに、葉月――お前は、あいつを奪おうとしていた!」 目の前にいる花火の肩が少し揺れた。そして、たったそれだけで事態は急変した。 45 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 16 00 ID eYlfZSYl 拍手の快音に似た音がひとつ生まれた。しかし誰かが拍手したわけではない。 言うなれば、葉月さんと花火が協力してできた音だった。 花火の右拳が葉月さんの顔面を真正面から狙った。それを葉月さんが両手を使って止めたのだ。 葉月さんが口を開く。いつもより声が一段階低い。 「……そっか。あなたもやっぱり弟君のこと」 「ああ。お前と同じでな!」 花火の体が小さく傾ぐ。左足のシューズが床から離れている。 この動きが蹴りだと気づいた瞬間、左足が跳ね上がり、葉月さんへ向かっていった。 蹴りを受け葉月さんの体勢が低くなる。 途端に背筋が寒くなった。葉月さんが倒れる――と思ったが、そうはならなかった。 予想だにしなかったことだが、今度は俺の体に衝撃が走る番だった。 蹴りを出したはずの花火の体がいきなり俺の体にぶつかったのだ。 そう、花火は後ろに下がった。蹴りを放った体勢のまま。 「は…………はああ?」 何が起きた? 蹴りを受けた葉月さんじゃなく、どうして攻撃した花火が下がる? 「く、お前……!」 「やめて。あなたは誤解してる。私はあなたが心配するようなこと、考えてない」 「そんな台詞は聞き飽きた!」 右腕を花火に掴まれた。腕を引かれ、体を振り回される。 強制的に葉月さんのもとへと押しやられる。 このまま抱きついてしまおうか、なんて考えたがすぐに思考を止め、次にもつれる足を止める。 花火に一言文句を言うために振り向く。 目に映り込んだのは、右足を振り上げた花火の姿。足の軌道は床と水平。高さはみぞおちまで。 衝撃に備えるのが間に合わない。反射的に目を閉じる。 右方向への強制的な浮遊感、いやむしろ、転倒する感覚。 脇腹に痛みは覚えない。だというのに明らかに体は傾いていた。事実、立っている位置が変わっていた。 花火と向かい合っていたはずの場所から、葉月さんを背にして右にいた。 目の前に黒板の右の壁に貼られている時間割がある。今日の五時間目は国語。 「ち、奇妙なことを!」 声がした方向を向く。花火が目を剥いていた。視線の先にいるのは俺ではなく、葉月さん。 葉月さんの立ち位置は一切変わらない。花火の蹴りを食らったような様子もない。 「もう一度言うわ。やめて頂戴。 こんな言い方嫌いなんだけど、私は護身術みたいなものを習っているから、さっきみたいなことをされると体が反応するの。 最初の蹴りは足が伸びきったところを掴んで押した。さっきのは彼を右に動かして、あなたの蹴りを腕で逸らした。 反撃しようとすればできた。けどやらなかったのは、反撃したくなかったから。 頭に血の上ったあなたじゃ無理。私の膝を床に付けさせることはできない」 「そんなの、絶対だなんて言えるか!」 「ああ、もう――――少しは話を聞けないの!?」 46 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 17 17 ID eYlfZSYl 耳をふさいでしゃがみたくなるほどの大音声。間近で聞いたから鼓膜が本当に痛い。 葉月さんが花火を指さしながら言う。 「私は弟君のことなんか――じゃない。弟君を狙ってたりしないわよ! だってわたしが、……き……なのは、別の人なんだから! 勘違いされちゃ困るわ! 本当に困る! もし誤解されたらどうするのよ!」 ……うむ。なんていうか、照れる。 葉月さんが好きなのって、俺――なんだよな、たぶん。昨日バレンタインチョコもらってないから自信ないけど。 でも、ここまで必死になって弟との関係を否定されるとちょっとだけ嬉しい。ライバルが一人減った気になる。 必死の叫びを聞いた花火はまだ納得できていない顔をしていたが、握り拳を解いていた。 「今の言葉、本当だな?」 「ええ。彼だけじゃなく、クラスにいる全員に誓ってもいい」 「そうか。なら――謝る。すまなかった」 花火が会釈ぐらいの角度で頭を下げた。意外にも、花火は自分が悪かったときは非を認めるらしい。 「わかってくれたならいいの。それじゃ、早速弟君を捜しに行きましょ」 「……それは駄目だ。やっぱり断る」 「ええ? どうしてよ。やっぱり誤解してるんじゃ」 「違う。ただ単に一人で捜しに行こうと思い直しただけだ」 花火が入り口方向、葉月さんのところへ歩き出した。 葉月さんが花火の前に立ちふさがった。しばし二人が見つめ合う。 ほどなくして、葉月さんがため息をついて道を譲った。顔には諦めが浮かんでいる。 ふと、思い出した。花火が教室に来たのは俺を弟捜索の応援に駆り出すためだったはず。 なのにいきなり一人で捜しに行くなんて、どういう心境の変化があったんだ。 「花火、俺を連れて行くんじゃなかったのか?」 「……もういいよどうでも。ていうか、着いてこないでくれ、アニキ」 扉に左手を懸け、肩越しに花火が俺を見た。 「アニキ。やっぱり、あんたは最低な人間だ」 ――え? 「ちょ、ちょっとあなた、なんてこと言うのよ。彼はそんな悪い人間じゃないわよ」 「葉月、あんただってそう思うはずだ。今はまだでも、アニキとの関係を続けていればいつか必ず」 「……どういうことよ、それ。返答次第じゃただでは済ませないわよ」 葉月さんが花火へと詰め寄る。花火は首を廊下へと向け、教室から出て行った。 「待ちなさいよ! どういうことなのか説明しなさい!」 昼休み終了のチャイムが間もなく鳴る時間帯、教室に戻る生徒が行き交う廊下に葉月さんの声が響く。 花火の足が止まる。窓から指す陽光を反射する、流れるように滑らかな金髪も一拍遅れて動きを止める。 「はっきり言ってやろうか、葉月」 「ええ、言ってみなさいよ。彼のどこが悪いって言うの?」 「私からすれば存在自体なんだけど、あんたに言っても無駄だろう。 ひとつだけ言わせてもらうよ。アニキの絶対的な欠点。 人の気持ちに不誠実なところ。平気で裏切るとか、いつまでも相手の気持ちに答えないとか。 忠告しておいてやる。アニキに関わったら、いつかあんたまで不幸になるよ」 「そんなのっ……」 「言いたいのはそれだけ。じゃあ」 言い終わると花火は歩き出した。 葉月さんはその場に立ちつくし、階段のところで花火の姿が見えなくなる頃になってようやく口を開いた。 「仕方が……ないじゃない。駄目だって、まだ無理だって。 私には……待つことしかできないんだもん。あなたなんかに何がわかるのよ」 泣いてはいなかったが、声は悲しみに沈んでいた。 拳は固く握りしめられ、小さく震えていた。 昼休み終了を告げる鐘の音が鳴る。 葉月さんにかける言葉を見つけられなかった俺は、鐘の音を聞いて心が安らぐのを自覚した。 47 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 17 57 ID eYlfZSYl 十一話はここで終了です。それではまたお会いしましょう。 48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 24 38 ID uHljBazC うおおぉ! リアルタイムGJ! 兄貴の記憶にない過去が気になるなあ 49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08 48 36 ID tCb0nO5E 初期に保健室でクロロホルムの話をしていたのは澄子ちゃんではなく桃ちゃんでいいの? 澄子ちゃんとはキャラが重ならないから、どこ行っちゃったのかな?と思ってたんだ。 50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 10 31 27 ID CzLvOW/t 確かに兄貴ってびっくりするほど行動しないよな。 もう少しアクションがあってもいいと思うんだけど。 その辺含めて後で語られるのかな。 楽しみにしてます。 51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 13 09 35 ID H+tKNrpX GJ!やっと来たぜ新作。こりゃ、長いことになりそうだな。葉月さんはこれからヤンデレにはならない…かな?結局病みそうなのは誰だ?花火?妹?澄子? 52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 13 27 12 ID w26y1BI/ 新作だと? 53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 14 04 38 ID tCb0nO5E つうかさ、クリスマスにはラブコメっぽかった澄子ちゃんがいきなり病んでるのはなぜ(?_?)。 おいらが一話見落としているのか、それとも弟視点話で澄子ちゃんが独白してくれるのか・・。 54 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 14 05 04 ID obck4Il3 47 葉月さんは可愛いなあ それにしても、ここまでボロクソに言われる過去の兄はどんなんだったのだろうか。 今はただ鈍いだけだが 55 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 14 24 53 ID KbLm19Xk いや、これは全員病んでるんじゃないのか? 56 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 17 54 00 ID 6XAW3pct 50 タイトルに傍観者と銘打ってるわけだしいいんじゃないか? あまり積極的に動きすぎると看板に偽りあり、ってことになっちまうしな 57 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 22 09 42 ID CDAbNtRH 傍観者なのにクソミソ言われてるのも妙な話だが 58 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 23 03 30 ID UCq/AwTP 連載当初は確かに傍観者だったよ。そこからどんどん周りに巻き込まれたんだろ 59 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 23 43 28 ID UvqDZ014 花火に殴られた娘が可愛そうです。 弟を無事見つけられたら反省してほしい 60 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 23 49 18 ID 5GOgZQ5A 実は本当の傍観者は弟の方なんじゃね? 61 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 00 44 21 ID F+toZw+R どっちにしても主人公なんだから兄貴は最後にカッコよく決めてくれると信じてる。 さすがにこの状況でいつまでも傍観者を気取ってはられまい。 62 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 00 46 00 ID tyGbB3JU 記憶の一部分が無いことやら、告白された美人への返事やら 複雑な家庭環境やらどうみても自分が関わってるのに傍観者 のごとく問題を静観するだけで投げっぱなしだしな 思考も解決しようとするのではなく問題先送りにしてるだけだし よく考えるとダメ人間な気がw 63 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 03 14 56 ID sf04hmCW ヤンデレの主人公なんて基本ヘタレな気もするがw ただまぁ、妙に感じ方が奇妙なのもあるな。誰が喋ってても言葉の意味を考えようとはしてないし 64 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/27(日) 06 19 40 ID QhHgTSQ+ 65 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 12 55 33 ID dHJVDZqA まぁ書き手が書きにくくなっちゃいかんからあんま詮索しないほうがいいだろうがな。 あっ後みんなおはよう。ツンデレっ娘に怒られてたらいつの間にか眠くなってヤンデレっ娘に 監禁される夢見たよ。すっごく幸せだった。 66 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 18 07 36 ID JZZlC6BC 馴れ合いうぜえ 67 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 19 30 17 ID U8TKeMm8 65 ヤンデレの夢はごくたまに見るけど夢の中でもまだ監禁されたことがないから正直少し羨ましい 血とかはないけど中~重度の依存症気味の女の子 やはり脳内の理想のヤンデレ像とかヤンデレ娘に言われてみたい言葉が影響しているんだろうか 68 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 19 55 27 ID izKGek9N ヤンデレとか実際いいもんじゃないぞ たとえ顔がかわいくてもね、やめてほしくなる 69 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 19 55 59 ID +r8g0N6n 去れ 70 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 20 17 30 ID /PKThdUc 68 そりゃ三次元だろ。 たぶんだけど俺らは大半が二次元のヤンデレ萌えだと思う。 70年~90年代のヤンデレが出てくるやつ見た奴はとくに。 71 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 20 18 06 ID YMec9AVg このタコが 72 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 20 41 26 ID dHJVDZqA 67 監禁は愛の究極体だということがよく分かったよ 68 君はいったいここをどこだと思ってるんだい? 73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 21 20 52 ID izKGek9N すまん別に批判してるわけじゃないんだ 実際俺も体験するまではこのスレの話読んで俺もヤンデレに愛されたいなーとか思ってたし 74 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 21 22 00 ID +r8g0N6n \み会行きたくない… orz ……orz /orzorzorzorzorzorzorzorzorzorz . . \ orz orz 彼女にアニオタだってバレ/orzorzorzorzorzorzorzorzorzorz . . \ノジョにフられた…… orz … /orzorzorzorzorzorzorzorzorzorz . . \ …… orz 友達と喧嘩/ ■■■ ■ ■■ ■■■■■ . . .... .. \orz 女の子のアドレス30件しか /■ ■ .■ ■ Λ_\ ……orz …orz / ■ ■ ■ ■ リア充→ / 彡ミ゛ヽ;\ … 経験人数が一/ .■ .■ ■ ■ / / ヽ、ヽ、\ … ∧∧∧∧∧ / ■■■ .■ ■■■■■ / /;; ヽ ヽ l\< 自 >/ orzorzorzorzorzorzorzorzorzorzorz  ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄< 虐 > orzorzorzorzorzorzorzorzorzorzorz < 風 >orzorzorzorzorzorzorzorzorzorzorz ―――――――――――< の 自 >―――――――――――― 36名前:学生さんは名前 < 予 慢 > OTL セックスしすぎて… 東大に入って、昨日の駒 < 感 > OTL 彼女が… orz 彼女に運ばれて、今日の < !! > 高学歴なのに… orz /∨∨∨∨∨\ 友達が… OTL mixiで… 24 名前:学生さんは名前が/ \ 合コンで… orz 彼女から着信あるとマジで/ リア充[ピーーー]よ!\´ OTL イケメンなのに… 連続ですごいかけてくる /∧_∧ ∩ \サークルが… orz 正直しんどいです… /( ;´Д`)ノ______ \ orz 180cm65kgで… / (入 ⌒\つ /| \ 女の子が… OTL 427 名前:学生さんは/ ヾヽ /\⌒)/ | \ バイトの… 童貞に戻りたい…orz/ || ⌒| ̄ ̄ ̄| \ 75 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 22 40 22 ID OKmGdIja お茶会を全裸で待つ。 76 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 00 58 36 ID KKL5Vf+f 主人公の男が引きこもりだったらヤンデレはどんな行動をとるのか… 77 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 01 13 16 ID HyG/K924 監禁する手間が省けるだけです 78 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 01 22 17 ID 9UNdHfr7 社会復帰を全力で阻止する 79 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 02 15 30 ID enBNyxon 78 えぐいな…だが興奮を禁じえない 80 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 09 36 20 ID oNPhMG0c 75 例大祭終わるまで待ってやれよw 81 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 11 53 43 ID BuOZBwvN 『殺し愛』の一部のパターンはヤンデレだと思っている私は異端でしょうか? 殺し合う=愛し合う的な思考回路のヒロインはやっぱヤンデレとは言えないんかなー 82 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 13 00 16 ID Ohei2eNI 78 最悪じゃんwww と思ったらそこから妄想が膨らんで萌えた。 男「初めて女友達できた^^」 女「!」 83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 13 08 00 ID 6nIYF+Oi 82 つまり世話焼きでツンデレな幼馴染が駄目駄目NEETの主人公を働かせようとして 紆余曲折ながら嫌々NEETは仕事始めるんだけど 段々と働くことが楽しくなってきてそこで幼馴染は寂しさを感じるんだけど主人公のためだと思って我慢しとく でもあるとき主人公が女と親しく話してるところを見て、 「あの女誰なの・・・?」 的な感じで主人公を追い詰め始める的な?w 84 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 13 35 05 ID 0BVZQyst むしろ引きこもらせた原因を作ったのがその娘っていうね 85 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 15 28 06 ID zz9erowk 愛ゆえに! 素敵……そういうのシビれちゃう…… 86 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 18 11 06 ID 0BVZQyst というか昔そういうヤンデレもの考え付いて途中まで書いた 投げたけど 87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 19 41 36 ID Ohei2eNI 86 さあ、お前の「ヤンデレ.txt」の中にある文章を素直にここに出しなさい(`・ω・´) 出さないと俺の知ってるヤンデレの番長に焼きいれてもらうからな。 88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 22 43 22 ID TyV8OtB8 ふと思い出したことだが、 7,8年くらい前に何かの宗教の女教祖が逮捕された事件があったな その女教祖はある好青年(確か名前はユタカ)にベタ惚れしてて、 自分の宗教の信者達には「ユタカ様」と言わせて自分と同じように敬わせていたんだと しかし、信者の中に 「ユタカ様とドライブしてみたい」とか「ユタカ様ってかっこいい」と言う女がいれば、 「お前には狐がとりついておる!」と言い出し、 他の信者たちを呼び、集団リンチで殺していたそうだ この女教祖が逮捕された後の話は、 その時俺がヤンデレに興味がなかったせいか、どうなったのかはよく覚えていない 89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 23 35 13 ID aXXMwxmi 88 前半の文でカルタグラを思い出し 中の文でこの女痛いなと考え 後半でカルタグラの再プレイを決めた 90 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22 11 24 ID JI5inxaN ヤンデレを3日間ほど徹底スルーしたらどうなるんだろう 91 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22 24 48 ID vrW15ifj 前スレ落ちた? 1000いくかと思ったのに 92 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22 39 12 ID BnF9RCyL 90 1週間というSSが保管庫にあってだな 93 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 01 39 50 ID b2ceXhLE 90 今の未来日記が似たような状況だと思う 94 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 01 43 41 ID WjciKzqG 90 腕組まれたり添い寝されたり、やりたい放題される 95 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 15 16 55 ID dKFi3s8/ ヤンデレ女にやりたい放題されたいな。 ああ二次元が出てきてくれたいいのに 96 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 15 49 53 ID AZsNBQud 94 「ほら男くん。腕くんでみようね…」 「お、女さん…そ、それなんか違う…!!」 「ん~?じゃあ上に乗っかっちゃうよ」 「ああ!!女さんの体温は感じるけど、かなり違う気が!!」 「……ワガママばかり言うと!!」 「あだだだだ!!!!」 ヤンデレ柔道娘? 97 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 12 11 47 ID 7Pwbiol6 捕手 98 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13 04 30 ID J3V1WISz 投手 99 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13 17 48 ID i6U3Ixs2 86だけど、短いが一応形になった というわけでこれから投下する 100 名前:ヒキコモリと幼馴染 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13 18 45 ID i6U3Ixs2 「お、7777だ」 僕がよく行く、全員が固定ハンドルネームをつける馴れ合い掲示板がある。 今日もいつものようにいったら、アクセスカウンターが7777という、縁起のよさそうなキリ番になっていた。 「七誌さん、おめでとう~」 「ちくしょー、俺が踏むつもりだったのに!」 「七誌オメ」 すぐに掲示板にそんなカキコミがならんだ。 ちなみに七誌とは、僕のハンドルネームである。 7777、いかにもいいことがありそうな数字じゃないか……といっても、ヒキコモリの分際でにいいこともなにもないか。 僕は、そのキリ番を踏んだことを少しうれしく思いながらも、その喜びはすぐにこの“ヒキコモリ という、負け組としかいいようのない、自分の境遇に対する絶望に上書きされてしまった。 僕は一つため息を吐くと、掲示板にキリ番を踏んだことの報告をし、そのまま別のサイトを開いた。 ちょうどそんな時だ。俺の部屋の窓ガラスがコツコツ、と鳴ったのは。 カーテンがしてあり、外の様子は窺い知れないが、その音の原因ははっきりと分かってる。 だから、僕はそれを無視して、またサイトを眺める。 「信也くん、起きてるよね」 うるさい。 その声自体は、大して大きくもなく、いや、むしろ遠慮がちで、うるさいという形容詞からは程遠い声だ。 だが、僕にとっては、うるさくて、不快でしかたがなかった。 ヒキコモリ続けて早半年。 教師なんて言うまでもない。心配し、そして叱責してきた父、媚び諂ったかと思えば、何をどう考えたのか知らないが、自殺未遂までしてみせた母。 彼らですら、とうの昔に僕に干渉し、社会復帰させることを諦めてしまっている。 それなのに。 そんな中、この糞女――古閑風香、僕の幼馴染だ――だけは、未だに僕に対して接触を謀ってくる。 いい加減にして欲しかった。 彼女が知っている昔の僕とは違って、もはや現実世界をまともに生きていく気なんて微塵もなく、 パソコンの中のささやかな幸せや楽しみが世界の全てとなっている僕にとっては、現実世界をまともに生きている彼女は、それだけで、存在するだけで、僕にとっては猛毒にも等しい。 その猛毒が、積極的に自分にアプローチをはかってくるのだ。 小鳥のさえずりの様な可愛らしい声も、小動物のような、キョトキョトとせわしなく動く仕草も、僕にとっては、聴覚や視覚に訴えかけてくる毒に他ならない。 それなのに、彼女は僕の気持ちなどまったく顧みず、どんな罵声を浴びせようと彼女は毎朝毎晩僕にいちいち接触を試みてくる。 うんざりだった。 もう僕は経験から、どんな誹謗中傷も意味を成さないことを知っている。 だから僕が取る選択はたった一つ。 無視だ。 息を殺し、じっと彼女が立ち去るのを待つ。 しかし、いつもはしばらく無視すれば立ち去るというのに、今日はいつになっても立ち去らず、それどころか、起きてるのは分かってるだの、出てきてくれだの、僕に声をかけてきやがる。 時計を見ればもう九時、とっくに学校は始まってるはずだ。 と、そこで気づいた。今日は土曜日、休日だ。 最悪だ。もう寝た振りしていてもしょうがない。僕はパソコンをカチカチを弄り始めた。 「あ、やっぱり信也くん起きてたー。ねえ、今日はいいことあったんだから、久々に外に出てみようよ」 なんてヤツだ。僕がこれだけ無視しているのに、まったく意に介した様子も無く、明るい口調で話しかけてきやがった。 最悪だ。 僕はヘッドホンをつけると、大音量で音楽を流し始めた。そろそろ寝ようと思っていたのに、とんだ災難だ。 しかも、こんな生活をしている僕に、いいことなんてあるわけないだろ。しいて言えばあの掲示板のキリ番を踏んだくらいだ。 その思考に至った瞬間、背筋に寒気が走った。 いや、まさかそんなはずはない。僕がいつもアクセスしている掲示板でキリ番を踏んだことなんて知っているはずもない。ただの偶然。ただ僕の気を引くためのでまかせがちょうど当たったってだけだ。 101 名前:ヒキコモリと幼馴染 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13 19 42 ID i6U3Ixs2 音楽で彼女が何を言っているかは分からないが、まだ彼女がいて、何かを言っていることも分かる。 彼女は何を言っているのだろうか。まさかとは思うが、僕を監視していたりするのではないか。 僕は、ヘッドホンを外した。 馬鹿馬鹿しい。ただの偶然なのに。 自分で自分に嘆息する。ヒキコモリ生活のせいだろうか、こんなくだらない妄想に囚われるなんて。これは彼女の言に従うわけではないが、少し外に出たほうがいいのかもしれない。 「ね? 一緒に神社まで散歩しようよ、ほら、いい天気だよ」 外にでるっていっても、てめえと一緒に出る気なんてさらさらねえよ。 「ほら、紅葉でも見たいって言ってたよね? 神社なら綺麗だよー」 僕はガタンと跳ねた。 当然、僕が彼女にそんなこと言ったわけじゃない。家族とだってもう随分会話してないんだ、まして他人なんかとそんな会話をしているわけが無い。 しかし僕は思い当たる節があった。 あの掲示板に、紅葉の写真が添付されたときに、見に行きたいと書いていたのだ。 いいことがあったとか、紅葉を見に行きたがってるとか、どうして知ってるか。 誰でもすぐにこの思考に至るだろう。 『アイツはこの掲示板を知っていて、俺の固定ハンドルも知っている』 糞っ! 胸糞悪い。一体どこから洩れたんだ! つまり今までずっと僕のカキコミは彼女に駄々漏れだったってことか。 思わずキーボードを机に叩きつけて破壊しそうになった。しかし破壊してしまえば、外界と接触を取らざるをえなくなるため、すんでのところでそれを堪えた。 「死ねこのストーカー女! 気持ち悪いんだよ! 警察に通報するぞ!!」 意味が無いと分かっていながらも、窓の向こうのアイツに向けて悪態を吐く。 返事は、無い。 糞っ! 再び悪態を吐いた後、僕はこの掲示板のブックマークを削除するために、ブラウザのブックマーク一覧を開いた。 ブックマークにマウスの矢印を重ねて左クリック。 それを実行しようとした瞬間、窓ガラスがコツン、と鳴った。 誰もいないものと思っていた僕は驚いて、その拍子に右クリックしてしまった。 そのことによって掲示板は更新され、現在の書き込みが表示された。 その更新されていた内容。それを見て、僕は愕然とした。 「どうして分かってくれないの?」 「私はあなたのことを思っているだけなのに」 「誰がなんと言っても、私だけは信也くんの味方だから」 僅か数分の間に書き込まれていた書き込み。 そして、その書き込みを行っているハンドルネームは一つだけではない。 この掲示板の、主に書き込みをしている住人全員のものだった。 愕然とし、咄嗟に窓ガラスのほうを向く。 窓ガラスにはカーテンがかかっていて、外の様子は窺い知れない。 でも……。 僕はゴクリと唾の飲み込み、深呼吸をすると、意を決してカーテンの前まで歩く。 目を瞑り、開き、勢いよくカーテンを開けた。 朝の眩しい陽光が注がれる。 反射的に目を覆い、そしてその手を序々にずらす。 そこにあったのは、ただの何の変哲も無い庭だった。 はあ……と安堵のため息を漏らす。 まあ特にあの女がいなかったからいなかったからといって、何の問題の解決になる訳でもないのだが。 それでも安心して、カーテンを閉じると、もう一つため息を吐いて、天井を仰いだ。 そして、風香と目が合った。 思考は停止し、目のピントは固まってしまったかのように、彼女の目から逸らす事ができない。 天井板の一部を外し、天井から風香が僕を見ていた。 「信也くんのこと、ずっと見ているよ」 102 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13 20 04 ID i6U3Ixs2 投下終了です 103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13 36 31 ID WnfULUJc これは神作品の予感!!! GJ!! 104 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13 50 58 ID i6U3Ixs2 神作品も何も、続き書く予定ありません 105 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 14 01 51 ID Dh/6G0Ao 住人は全員風香の自演かw GJ 106 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/05/01(木) 14 55 05 ID kaumOuSf GJ! 他の言葉は見つからぬ 107 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 14 55 38 ID kaumOuSf すまない。ageてしまった 108 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 15 55 18 ID 7Pwbiol6 それでも続編を望む 109 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 16 04 21 ID bH11oGiA GJ! でも、この展開だと続きは書けないよな 出来たとしても質が下がりそうだしさ…… なので、違う短編も書いてみて下さいなw 自分的には、とても良かった 110 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 16 26 49 ID Hu78xs5+ 「こ~こはど~この箱庭じゃ?」を思い出した 111 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 16 40 29 ID aDjeonJL 110 俺も俺も 112 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 20 11 32 ID rwAih/+8 ところで5/3のやみなべ祀行く人居る? 今回は都産祭の一環で今までより規模が大きいみたいなんだけど 前回のようにクレームがきて当日会場が混乱しないか不安だ… 113 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 20 51 51 ID WnfULUJc 104 続きを書いてくれたら近所のヤンデレあなたに差し上げます。 更にさらにさーらーに、もう一人、予備のヤンデレもおつけします。 114 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 22 37 42 ID T5hsuvVS このスレの人間は肉体的にはドMなのに 精神的にドSな人間が多いと思うのだが、どうだろう? 115 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23 17 25 ID Dh/6G0Ao 心も体もMな俺が参上 116 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23 49 10 ID i6U3Ixs2 108、 113 もし続き書くとしたら、登場人物の背景や性格が微妙に俺好みではないので、その辺を直した別物を書くことになるでしょうね プロットにしたらほぼ同じものですが 110-111 元々このプロットはホラーものとして書いたものなのであながちはずれでもありません しかしヤンデレ好きになった今考えてみると、アレはいいヤンデレ というわけで、連投臭くなってしまいますが、第三話を投下します 117 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23 50 13 ID i6U3Ixs2 空が微かに白み始めたころ。 香草さんが大きな伸びをして起床した。 「……起きてたの?」 香草さんは木の根元にもたれかかっている僕を見るなり、そう言ってきた。 「火の番が必要だからね」 「相談してくれれば、私だって……」 香草さんは珍しく柔和な態度をとっている。これが見れただけでも、半徹夜の価値はあったかもしれない。 「無理しなくていいよ。その代わり、今からよろしく。僕はこれから少し寝るよ」 僕はそう告げると、寝袋に包まって即時に夢の世界に旅立った。 ―――――――――――――――――― 「……なさい!」 甲高い何かが聞こえる。まったく、なんだよ人が気持ちよく寝てる時に……。 「起ーきーなーさーいー! 一体いつまで寝ているつもりよ!」 耳朶を叩き壊さんばかりの大声と、甘い香りで目を覚ました。 声のした右のほうを向けば、鼻の頭がぶつかりそうなほどの超至近距離に香草さんの顔があった。 反射的に飛びのこうとしたが、両手両足が寝袋で封じられているため、飛びのくことも出来ずにただ変なポーズをとっただけになってしまった。首がグキリとなる。 「あいたっ!」 「もう、なにバカやってんのよ。もうアンタ以外準備出来てるんだからね」 「あ、朝飯は?」 「……あの鳥が木の実摘んできたわよ。それと虫も! 信じられる? 虫を食べるのよ!?」 うわー、露骨に不快そうだなあ。 虫かあ……まあ僕も食べたことが無いわけでもない。都会の人間はあまり食べないみたいだけど、若葉町なんか思いっきり田舎だからなあ。 「あ、ゴールド起きたです! 木の実食べるですー? それとも虫食べるですー?」 軽快な声とバサバサという羽音が聞こえた。頭を少し持ち上げてみれば、ポポが僕のほうに飛ぶように跳んでいるところだった。 待て待て、ちょっと待て、まさかそのまま……。 僕の顔から見る見る血が引いていく。その憂慮どおり、彼女は両膝で僕の腹の上に着地した。 当然声にならない悲鳴を上げた。意識を失うほどでないだけ、昨日よりはマシだったが。 「どうしたです? 具合悪いですー?」 「な、なんでもないよ。大丈夫だから早く僕の上から降りて……!」 軽い拷問だ。早くどいて貰わないといろんな秘密を意味もなくゲロってしまいそうだ。 ポポは多分事態を理解できていなかっただろうが、僕の上からはどいてくれた。 「あ、虫潰れちゃったですー」 体を起こして見てみれば、ポポの鉤爪には潰れた虫と思しき液体と物体が付着している。彼女は体を器用に丸めて、それをペロペロと舐めていた。 他人の食生活にとやかく言う気は無いが、これは結構キツイ光景だな。 ちゃんと契約して登録したら、そういうのは控えてもらうようにしよう。 僕はその後、普通に木の実を食べると――この木の実がやたら苦かった。どんな錯乱状態でも一瞬で正気に戻りそうな苦さだ。甘い木の実もあるというのに――、荷物を片付け、火を消し、そのまま吉野町に向けて出発した。 「あのさ、昨晩考えたんだけど、折角人数増えたんだし、協力しない?」 「協力?」 「そう、ポポに僕らの上を飛んでもらって周囲の警戒をしてもらうのさ。草むらの中じゃあまり早いうちから野生のポケモンが分からないだろう? 上から見て、それを伝えてもらって、早期発見早期撃退ってね。それに多分鳥ポケモンが目立つ位置にいるってだけで虫ポケモンは逃げ出すはずだし」 「いらないわよ、そんなの」 「まあまあそう言わずに、物は試しだと思ってさ。いいね、ポポ?」 「分かったですー!」 ポポは素直でいいなあ。前方を肩を怒らせて歩いている香草さんに見習わせたいよ。 と、思っていたら、早速ポポが大声を出した。 118 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23 50 34 ID i6U3Ixs2 「ポケモンいたですー!」 「どの辺ー?」 「あっちのほうにいるですー!」 あっちかよ! 思わぬ不意打ちに僕と香草さんはこけそうになる。 そういえば、野生で暮らしていれば方角を指す言葉なんて知っているわけが無いな。 「ポポー、一度下りてきてー」 教えないといけないな、と思ってポポを下ろした。 「どうしたです?」 「あっちってその方向さ?」 「あっちですー」 ポポはビシッと翼を二時の方向に向けた。 「『蔓の鞭』」 香草さんがその方向に二本の蔓の鞭を伸ばせば、何かにぶつかった音と短い悲鳴が同時に聞こえ、その後草むらを僕達から遠ざかるように走り去る音が聞こえた。 やっぱり思った通りだ。草むらにおいて二人は相性がいい。……ポポの問題さえ解消できれば。 「よしポポ、勉強の時間だ」 「勉強? それ食べ――」 「食べられないよー。勉強ってのは、頑張って頭をよくしようってことだよー」 「勉強したらいいことあるです?」 「食べ物たくさん食べられるようになるよー」 「やるですー!」 ポポの扱い方がちょっと分かってきたかもしらない。 「何『ちょろいな!』みたいな顔してんのよ、気持ち悪い」 な、中々厳しいな……。 「やっぱり役立たずじゃない。だから私はあんなのとは」 「はいはいはいはい」 ここで全自動愚痴聞きマシーンになってもよかったが、時間が勿体ないから悪いとは思いつつ流す。 ああ、間違いなく彼女は怒るんだろうなあ……。 予想通り、彼女は大声でわめき散らしている。でも暴れたりしないからまだマシか。 「いいかポポ、正面が十二時、背後を六時とする。で、こっちの翼のほうを三時、こっちの翼のほうを九時だ。覚えた?」 「覚えたですー」 「よし、じゃあ次はそれぞれの間を三つに分けるんだ。十二時と三時の間に一時と二時、三時と六時の間に四時と五時、六時と九時の間に七時と八時、九時と十二時との間に十時と十一時。分かった?」 「よ、よくわかんなくなったです……」 「あはは、一気にやりすぎたか。まあ三時六時九時十二時さえちゃんと覚えてくれれば、後は適当でいいから。じゃ、出発しようか」 ポポは再び飛び上がり、香草さんは僕が走ってなんとか追いつけるような速度で進みだした。 ポポは混乱していたみたいだったが、実際は割とよく理解できていたみたいだ。 ここからは本当に順調だった。ポポが指示した先に香草さんが蔓の鞭を伸ばし追い払う。ほとんど歩を止めることすらなく、昼までにかなりの距離を進んだ。 僕にもっと体力があればもっと進めただろう。 もっとも、人間離れした体力があれば、だが。 「ぜはーぜはー」 「情けないわね」 肩で息をしている僕に、香草さんは理不尽な言葉を浴びせてくる。 「は、早いよ、進むの」 「普通よ、このくらい」 大部分の人間にとっては普通じゃないんだ。 昼食のために止まったが、もう動き出せそうに無い。 「木の実とってきたですー」 「お、ポポ、おかえりー」 ポポが木の実を摘んで戻ってきた。 「何か水がある場所あった?」 「なかったです……」 うーん、木の実のおかげでかなりの節水になってるから、吉野町まで水分補給できる場所がなくても大丈夫といったら大丈夫なんだけど、それでも不安だなあ。 「まあいいや、じゃあお昼にしようか」 「はいですー!」 こうして僕とポポは木の実を食べだした。 今度の木の実はやけに冷たい。先ほどまで火照っていた体が、今はもう寒気すら感じる。 僕とポポは普通に談笑しながら木の実を食べていたが、香草さんは僕らから距離をとって、会話に加わろうとするどころか近づこうとすらしない。 119 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23 51 43 ID i6U3Ixs2 うーん、中々難しいなー。 元々他の種のポケモン嫌いに加えて、天敵の鳥ポケモンだから、ポポと仲良くするのは相当難しいだろう。 でも、僕はどうせならやっぱり皆仲良く旅をしたい。 その旅がたとえ途中までの短いものであったとしても、だ。 「もう行くわよ」 僕が木の実を食べ終わったころ、見計らったように香草さんが声をかけてきた。 僕はこんな短い休憩では満足に疲労がとれるわけもなく、本音を言えば一歩も動きたくなかったが、早く体を温めないと明らかにやばい気もする。 「ポポ、もう大丈夫? 多分また休憩無しで日が暮れるころまで飛びっぱなしになると思うんだけど」 「大丈夫です……。それより寒いから早く動きたいです……」 ポポが食べた実も、僕が食べた実と同じ実だったみたいだ。香草さんだけが、僕らの様子を見てキョトンとしている。 彼女のそんな顔が可笑しくて、にやけそうになるのをなんとかこらえる。 もうこれ以上怪我を増やしたくないし。 ポポが空高く舞い上がったのを確認すると、僕達は再び歩き出した。 時たまポポが野生のポケモンの存在を伝え、遭遇する前に香草さんがそれを迎撃するだけで、他のトレーナーや人に会うことも無い。 速度的には僕達はかなりハイペースだし、最後尾からのスタートなんだろうから、出会ってもおかしくはないと思うんだけどな。 そんなことを考えていたとき、ポケットに入っていたポケギアが突然激しく振動した。 ポケギアの画面を見れば、宇津木博士からメールが来ていた。 香草さんとポポに止まってもらって、そのメールを確認した僕は、我が目を疑わずにはいられなかった。 「そ、そんなことって……」 「どうしたのよ?」 香草さんは怪訝な顔をしながら僕のところまで歩いてきた。そして僕のポケギアの画面を見て、僕と同じような強張った表情を浮かべた。 「ロケット団復活ですって!?」 「し、信じられない……」 「どうしたですー?」 僕らの様子が気になったのだろう、ポポも地上に降りてきた。 「ポポ、字読める?」 「読めないですー」 ポポは元気に右の翼を掲げながら言った。 「だよねえ……。ロケット団って知ってる?」 「知らないですー」 ポポはさらに元気に右の翼を掲げながら言った。 「だよねえ……。ロケット団っていうのは、とっても悪い人たちの集団のことだよ。ポケモンを正式な契約無しに捕獲して売りさばいたり、自身の技を使って犯罪行為をしたり……三年前に壊滅させられて解散したって聞いたんだけど……」 「それで、そのろけっとだんってのがどうかしたです?」 「復活したんだよ……それで、宇津木博士から、『この辺での目撃情報はまだ無いけど、一応念のため、今は使われていない旧街道を使うように』って。その街道は通行には不便なんだけど、見通しがいいから、多分警察の人たちが何人か派遣されてるんだろうね」 「で、どうするのよ」 香草さんがズイッと僕の視界の前に来た。 「どうするもこうするも……旧街道のほうに――」 「何ふぬけたこと言ってんのよ! 他のパーティーがちんたらしてる隙にリードするチャンスじゃない!」 僕の言葉を最後まで待ってもくれない。 「で、でも、もしロケット団と会ったりしたら――」 「所詮チンピラの集まりじゃない! それに、三年前壊滅させたのだって、私達と同い年くらいのパーティーだったらしいじゃない! なら大丈夫よ!」 僕の言葉にかぶせるように彼女は自信満々に言った。一方の僕は、彼女が自信を持てば持つほど、自信が無くなっていく。 「そ、そんなのただの噂話じゃないか……」 「昨日も言ったでしょ? 私は、誰にだって負けないんだから」 その赤い双眸には、強い光が宿っていた。 はあ……と僕は軽くため息を吐いた。彼女にはかなわないな。 「分かったよ。でも、一つだけ約束して。戦闘中……もし戦闘になったらだけど、ちゃんと僕の指示を聞いてよ。昨日みたいに暴走するのは無しだからね」 「う……そんなの、分かってるわよ!」 彼女の頬がぽうっと赤く色付く。一応昨日のことは恥ずかしく思っているんだな。 「たとえ逃げる、っていう指示でも、だよ」 120 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23 52 17 ID i6U3Ixs2 「うう……分かったわよ!」 彼女はかなり癪なようだ。声がほとんど怒り声になっている。まあ彼女のプライドから考えたら逃げるなんて絶対に嫌なんだろうなあ。 でも、古くの言葉にすら、三十六計逃げるにしかず、なんていうものもあるくらいだ。逃げることの有効性は確かなものなのに。 「じゃあ、逃げるときの合図を決めとくよ。僕がリュックに手を入れたら即座に戦闘を中止して、僕の後を追って一目散に逃げてね」 僕はそう言って、リュックから手のひらサイズの筒を取り出した。 「にゃんにゃかにゃんにゃんにゃーん。シルフカンパニー製、怪しい光曳光弾ー」 僕はそれを頭上に掲げながら、だみ声を作って言った。少しでも場を和ませようと思ってだ。 「……ナニソレ?」 しかし、僕の期待を見事に裏切って、彼女はポカーンとしている。 「怪しい光と同じ効果がある曳光弾。だから絶対に光を見ないでね」 「いや、そうじゃなくて、その前の」 「アレ? 知らない? そういう感じのシーンのある有名なアニメあったじゃない?」 「……知らない」 うっわー、完全に滑ったな、こりゃ。 「ま、まあいいや、そういうことだから」 僕は無理やり話を終わらせると、逃げるように歩き出した。 ものの三十分で後悔した。 僕の足とスタミナはあっさりと限界を突破した。 というわけで、今僕は香草さんに蔓の鞭でずるずると引きずられている。 もうだめだ、休憩しようと言ったら、アンタなんかに付き合ってらんない、と香草さんが蔓の鞭で僕を縛り上げ、そのまま引きずって歩き出したからだ。 草がうっそうと生い茂っているお陰で痛くは無いが、ズボンとリュックは黄緑色に染まっていることだろう。 僕を引きずったまま香草さんは無言で日没間際まで歩き続けた。 日没間際なので、当然夜目の利かないポポは木の実を探すこともできなかった。 「……なにこれ」 僕が差し出したものを見て、香草さんは不服そうな顔をしている。 「何って、乾パンと水だよ」 「見れば分かるわよ、そんなの。……それよりもどうしてこんなものしかないのって聞きたいの」 「しょうがないだろ。香草さんが日が暮れるまで止まってくれないからポポは木の実を探しにいけなかったし、火を使ったら野性動物やポケモンは逃げても、ロケット団は逆に寄ってくるだろうし」 「……」 文句を言いつつも、香草さんはきっちり完食していた。 そして今日も昨日のようにメタモンガムを噛み、就寝の準備をする。 ちなみにポポが、「ポポもそれ食べたいですー」と言ってきたので、一応の効能を説明してガムをあげたら、噛むのもそこそこに飲み込んだ。大丈夫だよな? 人体に対しては無害なはずだよな? ガムの効能を説明している間も、飲み込んだことを叱っている間も――ポポは「おいしくないです……」とか言っていてまともに聞いてなさそうだったが――、 香草さんはずっと不機嫌で――と言っても昼間のような過激な不機嫌さではない。空気を澱めるような、ダウナーな不機嫌さだ――、僕達のそばに寄ろうともしかなかった。 はあ……と軽くため息を吐いた。 ポポは僕のため息の意味が理解できないのか、ぼおっと僕を見ている。 「香草さん」 僕は藪の中で横になっている香草さんに声をかける。 「……」 返事がない。もう寝てしまったのだろうか。……いや、この空間を伝わってくる不機嫌オーラで分かる。彼女はまだ起きている。 「……何?」 「今晩は火を焚かないじゃない? だから用心のために固まって寝たほうがいいと思うんだけど……」 「絶対イヤ」 即答だ。予想通りだけどさ。 僕はその後、一言も言葉を発しなかった。 ポポは当然すぐに寝てしまったし、そして……。 「……香草さーん」 小声で呼びかける。しかし返ってくるのは規則正しい寝息の音だけ。 よし、もう寝たみたいだな。 僕は香草さんの……というか大部分の草ポケモンの性質上、夜に弱いということが分かっていた。だから僕がちょっと待っていれば香草さんはすぐ眠ってしまうわけで……。 僕は寝ているポポを抱きかかえ、同じく寝ている香草さんのすぐそばまで移動した。 121 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23 53 07 ID i6U3Ixs2 月の光に照らされた香草さんの寝顔はとても美しく、どこか幻想的な雰囲気すら纏っている。 こうして見つめている分にはいいんだけどなあ……。 はあ……、とまた一つため息を吐くと、僕も眠った。 「起きるですー」 頭とペシペシと叩かれる感覚。どこか舌足らずな声。 それらで僕は目を覚ました。 ポポの幼い顔が僕を覗き込んでくる。 「おはよう。香草さんは?」 「離れて木の実食べてるです」 ポポの指すほうを見れば、こちらを見ながら無表情で木の実を食べている香草さんがいた。 「そうか……。ポポはさ、香草さんの態度、気にならない?」 「気になるって何がです?」 「いや、かなり距離とってるだろ?」 「草ポケモンは皆近づいてくれないです」 ああ、そういえばそうだ。ポポにしてみたら、香草さんの態度は当然のものなのか。うーん、色々考えさせられるなあ。人間とポケモンの共存はもちろん、ポケモンごとの共存も難しい問題なんだな。 そんなことについて考えながら食事を終え、再び吉野町に向かって歩き出した。 やはり行進は順調そのもので、まともに遭遇したポケモンは一人もいない。 相変わらず空気は最悪だったが。 今日は僕は昨日の疲れもあり、午前中から引きずられることになってしまった。 やはりほとんど会話もないまま昼食を取り、ほとんど休まずに歩き続けた。僕は歩いてないけど。 そうして、日が傾き始め、そろそろ吉野町に着くかな、と思ったころ。 僕達の上を飛んでいたポポが、大きな声を出した。ポケモンを見つけたときより焦っているように見える。 「十二時の方向に、全身真っ黒の怪しい人たちが三人いるです!」 僕は慌てて蔦をほどき、体勢を立て直した。 「服に赤い字で何かかかれてない?」 「書かれてるです!」 やっぱり! ほぼ間違いなくロケット団だ! まさか町の入り口近くで張っていたのか!? どうしようかと考えていると、向こうにも目の効く者がいるのか、こちらに気づいたらしい。高らかな笑い声が聞こえてくる。 「ハーッハッハ!」 「我々はロケット団だ! ガキ共、おとなしく――」 ロケット団の演説は途中で中断した――いや、させられた。 草むらの間を縫う、低い蔓の鞭が三人の足を絡め取り、逆さ吊りにしたのだ。 彼らの着ている服は、やはりロケット団のものだった。 ロケット団は人間の男が一人にポケモンが男女二人か。多分、どっちもコラッタかな? 「コ、コラ、人の話は最後まで聞けと――」 男が何か喚いたが、香草さんはそれをまったく意に介さず、左の林に向かって高く放り投げた。 罵声、絶叫、悲鳴。その三つの声が順番に発せられた。 その声もかなりの距離飛び、林に突っ込むころには聞こえなくなった。 唖然とする僕とポポ。 「なんだ、やっぱり大したことないじゃない」 平然としている香草さん。 「香草さん! いくらなんでも死んじゃうよ!」 「別に死んでもいいじゃない。どうせゴミよ。それに、多分生きてるわよ。ちゃんと加減したから」 あ、あれで加減したって言えるのか?」 「で、でも警察にちゃんと突き出さないと――」 「警察に一体なんて言うのよ? そんなことしたら私達が迂回しなかったことがばれちゃうじゃない」 そ、それはそうだけど……。 僕は何も反論できなかった。 香草さんはしばらく僕を見ていたが、話は終わり、と言うようにプイッと向き直り、そのまま無言で進み始めた。 僕は僕で、かけるべき言葉が見当たらず、一瞬の逡巡の後、彼女を追って歩き出した。 ポポも困惑しているようだが、僕達に続く。 そうして、それからすぐ僕達は町に着いた。 122 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23 54 29 ID i6U3Ixs2 と、いうわけで投下終了です 話は全然進んでいませんが 123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/02(金) 01 09 06 ID DnlCmsuZ 122 非常にGJ! 香草さんはツン→ンデ→ヤンとみた! 蔓の鞭って拘束に便利ですよね 124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/02(金) 09 39 21 ID yX3Vqd3Z 122 ずっと待ってたよ、gj! 香草さんかわええw 125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/02(金) 11 44 25 ID YUUYxXst ぽけもん 黒キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/02(金) 22 41 53 ID PMsXYit9 ロケット団がちょい役すぎるな。たった数行じゃないか。 127 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 08 57 53 ID yChHOa4d ロケット団の宿命ですw 128 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 10 02 02 ID xYjM7rLE ヤンデレな幽霊のSSはありませんか 129 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 11 00 39 ID aPnxtwm4 「今日はすごい雨だなぁ…」と思ってたら、ふとこんな事考えた。雨の中、ヤンデレに言われたいセリフはなんだろう 130 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 11 46 42 ID fRKPB0kl 雨に濡れながら主人公を待ってるっていうのは定番だけに人気もあるのでは 131 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 12 21 01 ID CyM/iuM7 主人公に頼まれて一緒に空手の練習をしていたヒロイン。 ある日、主人公が乗っていたバスが高速道路で大規模な事故に巻き込まれる。 ヒロインは初めのうちこそ楽観していたが、次々と舞い込んでくる絶望的な知らせに精神を疲弊させられていく。 日付や時間の感覚をなくしたヒロインは、主人公と二人きりで練習していた場所で待ち続ける。 周囲が闇に染まっても、どしゃぶりの中でも、毎日毎日、ずっとずっと…… みたいな妄想が浮かんだ。 132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 14 53 39 ID yxzQn2KP 131 それヤンデレかな? 133 名前:触れられない優しさ[] 投稿日:2008/05/03(土) 15 32 59 ID ZfWXD8eZ 書いてみました 投下してみます 128 書いてみた ――か、体が動かない。どうやら金縛りにあったらしい。また、か…… 「こんばんはぁ、健ちゃん」 僕の脳の中で甘ったるい女性の声が反響する。その声の主は、僕が愛した女性の声だ。名前を由梨という、二年前に事故死した彼女の。 「ふふ、また来ちゃった」 目を開けると、向日葵のように微笑む、生前のままの由梨の姿があった。透き通るような長い黒髪も、陶器のような白い肌も、睫の長いぱっちりとしたかわいらしい瞳も…… 「健ちゃぁん……さっき、どこ行ってたの?」 そして異常なまでの僕への独占欲も。全て生前のままの彼女だった。 134 名前:触れられない優しさ[] 投稿日:2008/05/03(土) 15 33 54 ID ZfWXD8eZ 「い、いや……別に」 声が出せないので心の中で呟く。幽霊ってのは心の中まで覗けるのか、声が出せなくても会話はできた。 「別にって……私に言えないことなの……?」 悲しみとも怒りともつかない声が脳内に響く。聴覚を介せず、直接脳に語りかけてくる声からは逃れられない。 「私には分かるよ。健ちゃん、女の家にいってきたんでしょ?」 そう、確かに僕は今晩女の子の家に行ってきた。でも、別にやましいことをしてきたわけじゃない。言い訳はできないのは分かっているが、説明したところで、彼女が理解してくれるか怪しかった。 「健ちゃん……私のこと嫌いになったの?忘れちゃったの?」 由梨が僕の頬に手を伸ばす。だが、彼女の半透明の手は僕の体をすり抜ける。幽霊である彼女は、生きている僕の体に触れることはできないのだ。それでも彼女は幾度となく触れようとした。そしてその度にうなだれた。 「嫌いにもなってないし忘れてもないけど……ごめん」 「……なんで謝るの?」由梨は無表情で僕を見下ろしていた。見る者すべてを凍り付かせるような目で。それは、僕が由梨以外の女の子と話したりご飯を食べたりしたときの表情。 そしてなまじ美しいだけに、恐ろしかった。 135 名前:触れられない優しさ[] 投稿日:2008/05/03(土) 15 34 24 ID ZfWXD8eZ 投下終わります 136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 15 57 57 ID xYjM7rLE 135 GJ!! まさか書いてくれるとは思わなかったよ!! ありがとう! 137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 16 03 55 ID ZfWXD8eZ 136 いや、なんか恩きせがましいこといってすいませんでした 要は閃いたといいたかったんです あとsage忘れすみませんでした… 138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 16 23 46 ID Fj87ocXr 137 素晴らしい、もっとくれ! 139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 19 06 38 ID iGVVwY+0 112 微妙に遅レスですが、やみなべ祀一般参加で行ってきました。 やみなべ祀としての規模自体は前回とあまり変わっていないという印象でした。 ただ、他のイベントと合同&雨でしたので会場に入る時が多少混雑していたかな? 前回盛り上がった落書きスペースのヤンデレしりとりは健在で、前回は最後の文字 が1番目の文字に繋がるように終了しましたが、今回は中央部分に書かれていた 中に誰もいませんよ に繋がった後、最後は よろしく誠君 でめでたく終了。 と思ったらなんとヤンデレしりとりIFバージョンとして第2弾が開始。 こちらの方も最後が ん になる言葉で終了。 またこれも前回あったナイスボートでの外周埋めですが、今回はあまり埋まらず 途中から前回参加した方がネタを交えて1人でナイスボートを埋めて こちらも終了。 そして終了間際、女性スタッフの方が来てヤンデレしりとりの内容を途中まで音読 してくれるというサプライズがありました。 アフターイベントは前回同様ヤンデレカルタ大会でした(自分は不参加)。 なお、次回開催は11/3、川崎で開催を予定しているみたいです。 ヤンデレのマグカップ(ヤンデレカルタ大会参加者に抽選でプレゼントされた)欲しかったな・・・。 140 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 19 45 31 ID yxzQn2KP 川崎だと……!?地元だ……。 141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20 25 10 ID xTbUXORb 地球なんて言うからには、この惑星は球体なわけで。今僕を苦しめるこの暑さを知らずにいる人々がたくさん居る。 それはひどく不公平だと思う。 完全に自分勝手な考えではあるけども、訂正するつもりはないし、異論も認めない。 暑苦しいのは気候だけで十分だ。 夕方の空が藍色に染まっていくのを縁側で眺めながら、僕は夕涼みをしていた。 涼は景観から、と取り付けた風鈴は少しも揺れていない。 ふと聞こえた吐息に僕はため息を吐いた。続いて振り向く。 背後には一式の敷き布団とそこに横たわる少女。 艶やかな黒髪が汗ばんだ肌に纏わりついて、ほんのり朱に染めた頬と喘ぐような吐息。乱れた浴衣姿と寝具は情事の余韻のようでもあるが、実際はそんなに色っぽいものでもない。 彼女は僕が奉公している屋敷の娘さんで、時代が時代なれば『お嬢さま』と『下男』なわけだ。そんな僕らが関係を持つなど有り得ないし、あってはならない。 142 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20 26 26 ID xTbUXORb では、一体何なのだ。 その答えはとても込み入ったものではあるが、端的に言うなれば僕の『仕事』なのかもしれない。 僕は縁側から這うように彼女の下へ向かった。 僕の接近に築いた彼女は、探るようにその手を辺りに漂わせた。彼女の腕は周囲のものを気にせず漂い、枕元の水差しにぶつかってしまう。けれども水差しは倒れない。間一髪伸ばした僕の腕が受け止めていた。 ふと下を見遣れば僕の胸の中に彼女が居た。 艶やかな黒髪と同色の目隠しと猿轡。それらがよく映える白磁の肌。 純粋に、極々純粋に、綺麗だと思った。 僕は慣れた手つきで目隠しを取る。それを巻いたのは僕なのだから外す手つきが慣れているのは当たり前だ。 目隠しの下、血の色の瞳が真っ直ぐに僕を見つめていた。 途端に痛みを覚え、声を洩らす。痛みを感じた右腕は彼女のそれに力強く握られていた。彼女の白磁には幾許の青筋が走り、長い爪が僕の肌に食い込んでいる。 僕は視線で彼女に拘束を解くよう促す。しかし、彼女は首を横に振る。 143 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20 28 38 ID xTbUXORb 仕方無く僕は左手だけで猿轡を解いた。手元が覚束ないのでひどく手間取る。 自由を得た彼女の唇はまさしく水を得た魚のように言葉を紡いだ。 「愛しています」 僕は気にしない。 彼女は言葉を紡ぐ。次々に、次々に。 愛しています。 愛しています。 愛しています。 愛しています。 愛しています。 「うるさい」 僕が制止の言葉をかけると彼女は微笑んだ。 「やっと聞いてくれた」 彼女の笑みがあまりにも可憐で見取れてしまった。 それがいけなかった。 しまった。と考えた頃には既に彼女の左腕が僕の首に伸びていた。 柔い細腕のどこにこんな力があるのかと思うほどに強く、万力のように締め付けられる。 意識を失いそうになる。 しかし、すんでのところで僕の意識は『仕事』を果たす目的に踏みとどまった。 「ごめん」 水差しを強かに打ちつけた。 144 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20 30 55 ID xTbUXORb 夕焼けはとっくに終わっていて、風鈴を月明かりが照らしていた。 僕の傍らで安らかな寝息をあげる彼女の黒髪を梳く。愛しさとかが胸の内に湧き上がるものの、首筋に残る赤い手形に寒気を感じてしまう。 でもこれが僕の『仕事』。 元来彼女の家の家系は狂気に囚われやすいらしく、更に女性はそれが顕著に現れる。彼女も例に洩れず、狂気と正気の狭間で揺れている。 僕らの家系に代々与えられる仕事はその狂気を受け止めること。 彼女たちが狂気に堕ちてしまわぬように、よき伴侶を得るその日まで。 145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20 31 20 ID xTbUXORb つまるところ、僕が感じるこの思いは作り物なわけで、僕は彼女にとっての繋ぎでしかない。 彼女が僕を愛していることすら、その場しのぎでしかないかもしれない。 故に望む。 彼女がいつの日か本当に愛しい人と結ばれるなら、それが本当に幸せであるように。 僕がその時には死んでいるようにと。 それまで僕は死ねない。 彼女が呟く。 「愛しています」 それはきっとただの音の羅列に過ぎず、意味なんて無い、見出しちゃいけない。 「僕もだよ」 言ってから気付いた。この想いはきっと報われない。 僕は少しだけ涙した。 月は霞んで消えてしまい、僕と重なった。 146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20 33 24 ID xTbUXORb 誰もいない! (゜Д゜≡゜Д゜) 投下するなら今だ! ってノリでやった 反省はしない 後悔はしている 147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20 51 52 ID 6Yz5zL3h 146 しかしいるぜ。 なんだか情景がきれいな感じだ、GJ 148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21 17 03 ID bV45Habb 短編投下します 例によって書きながらなのでちょっと時間かかるかもしれません のんびり見ていただければ幸い 149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21 19 14 ID xYjM7rLE 148 全裸でお待ちしております 150 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21 26 22 ID bV45Habb ぴちゃりと―― 小さな水音がするのは、彼女の行儀が悪いからだ。誰も食べ方など教えなかったし、教えたところで 彼女は覚えようとしないだろうし――覚えなかったとしても、誰もこまりはしなかったから。地下室に いるのは彼女と私だけで、それ以外に人の目はなく、誰にはばかることもなかった。 思う存分に、 思うがままに、 彼女は食事を楽しんでいる。 「――――――」 私はそれを見ている。美味しいかい、とも、慌てなくてもいいよ、とすらいわない。 ただ、見ている。 見ているだけだ。決して手は出さない。地下室に存在するモノは椅子が一つきりで、その椅子を私は専有して いる。自然、彼女は剥き出しになったコンクリートの上に座ることになるが、それを苦と思う様子はない。 そもそも―― 彼女が何かを思うのか、私はよくわからなかった。ものを食べているとき、嬉しそうにしているから、感情は あるのだろうが――それが本当に『嬉しい』という感情なのかも、私にはわからない。 誰も彼女に教えなかったから。 生まれたばかりの赤子、どころではない。生まれるまえの胎児にすら等しいのだ。 「――――――」 私は無言のままに部屋の中を一瞥する。部屋、というのもおこがましい。箱、と呼称するのが 正しいであろう空間。地下の深く深く深く深くに封じられた地下室。壁を突き破ったところで、 その先にはどこまでも続く土の重圧があるだけだ。外へと繋がる戸と、換気のための目に見えな 穴。外部と繋がるのはそれくらいのものだ。 外部。 その言葉にどれほどの意味があるのだろう? 彼女は、外を認識していない。彼女にとって、外 など存在しないのではないか。私はただ、『どこからともなく現れて食べ物をくれる人』としか思 われていないのではないか。 そう、思った。 「――――――」 視線を部屋から中央に座る少女へと移す。水溜まりのなかに膝を曲げて座りこみ、口も身体 も汚しながら一心不乱に食事を続ける少女。小さな少女だ。抱きあげれば壊れてしまいそうな、 生きるために必要最低限な筋肉すらない壊れかけの少女。かつては白かったウェディングドレ スは、今では真っ黒に染まっている。 ただの黒ではない。汚れて、澱んだ、黒ずんだ色。かつては紅かったものが、時間とともに 黒くなって――ウェディングドレスは、黒と白に染まっている。 水溜り。 色は紅で、存在は血だ。食べ物から滴り落ちる血を浴びて、食べながら、少女は笑っている。 微笑んでいる。 嬉しそうに。 幸せそうに。 自身と同じ体構造のモノを食べながら――微笑んでいる。 151 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21 34 40 ID bV45Habb ぴちゃり、 ぴちゃりと――だらしなく食べるたびに、口から毀れた血と肉が血だまりの中で跳びはね、彼女の ウェディングドレスを染めていく。自身が食べた記録を積み重ねるように。 私は、 私はそれを見ている。何も知らない少女の、何も知らずに食人行為を重ねる少女を、ただ見ている。 見つめて、 観察し、 待ち、 焦がれている。 「――――――――」 そんな私の視線に気づく様子はない。彼女は微笑んでいるが、その頬笑みは私へと向けられた ものではない。誰にも向けられることのない、ただの純粋な感情の発露。だからこそ――それを 私は尊いと思うし、見つめているのだ。 微笑んでいる。 自分の肩から生えた腕と、食べているものが同じカタチであることにも疑問を思わず。皮をち ぎり指を食み腕を噛む。切りとられたそれを、嬉しそうに食べている。 彼女は、 純粋だった。 何も余計なものを与えられていない、余分なものを与えられていない、人間として究極すぎるほど に先鋭化された存在。道具を遣うこともできず、言葉を話すこともできず、そんな存在さえ知らない。 与えられたものを甘受し、ただただ満たされて育ってゆく。 そこに不幸はない――幸福はないから。 そこに絶望はない――希望はないから。 地下の深くの、閉ざされた世界。 まるで楽園だ。神の作りあげた世界のようだ。けれどここには禁断の木の実もなければ 蛇もいない。楽園はいつまでも閉ざされていて、外に出ることはない。少女は知恵をつけ ることもなく、永遠は永遠として続いている。 それを、 私は、 「――――――――」 少女が腕を食べ終わる。切断面から洩れた血が地面に水たまりを作り、その上にはこぼした 肉片がいくつも浮かんでいる。もったいないと、純粋にそう考えたのだろう。少女は尻を突き あげるようにして四つん這いになり、ぴちゃぴちゃと、血だまりを舐めはじめる。 手でかきよせるようにして肉をあつめ、舌ですくうように食べる。真っ赤な唇。真っ赤な舌。 紅く紅く、血よりも紅い彼女の臓器は、何よりもの生きている証左だ。 ぴちゃぴちゃと、 ぴちゃぴちゃと――血を舐める音だけが、静かな箱に響き渡る。 152 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21 42 57 ID bV45Habb 美味しいとも、 不味いとも、 彼女は言わない。言うことができない。その口はただ、肉を食むためだけにある。その体 は育つためにある。 足りない。 まだ、足りない。 何が? 時間が。 あるいは、全てが。 足りていない。 「――――――」 だから私は見る。ただ、見つめている。閉ざされた世界での少女の成長を。姿を。 四つん這いになり血を舐めるその姿を。猫のようだ。失われた動物のように、彼女は 音を立てて血を舐める。跳ねた血が、文様のように彼女の肌に痕をつける。生まれて から一度として陽の光を浴びたことのない肌は白く、一度として切ったことのない髪 もまた白い。すべては白かった。それが少しずつ、血と時間で紅く黒く染まっている。 育っていく。 汚れて、穢れて。 彼女は、育ってゆく。 「――――――――」 私は何も言わなかった。彼女が満足がいくまで舐め終わるのを待ち、更には満足げに眠る まで動きすらしなかった。椅子に座り、彼女の生態を観察する。彼女にとっては――私は此処 にある椅子と同じようなモノに過ぎない。視線をやることもなく、丸くなって眠りについた。 いつものように。 そして私はいつものように椅子を立ち、眠る彼女の元に歩み寄る。濡れたタオルで彼女の汚 れた肌と、血の跡がつく髪を丁寧にぬぐい取る。時間をかけて、優しく。起こさないように、 傷をつけることのないように。最後に彼女の下着を脱がせ、確認し、新しいのを履かせて傍を 離れる。 寝た子を起こす趣味はなく、 私は何の声をかけることもなく、閉ざされた箱を後にした。 ……ぱたん。 153 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21 48 30 ID bV45Habb ――箱。 それは彼女の部屋だけではなく、この場所全てがそうだと言えるのだろう。 箱。 閉ざされて、開かれることのない箱。 そもそもが蓋の存在しない箱。蓋の開け方は失われてしまった。強引に外に出たところ でそこは土の壁があるだけであり――数百メートルと続く壁を越えて『上』へと出たとこ ろで、そこはもはや人の住む世界ではないのだろう。 かつてから変わっていなければ、だが。 だがもはや確かめる方法はない。『上』で変化が起き、誰かが来てくれるのならばわか るかもしれないが――それはただの夢物語である。 世界は閉ざされている。 箱は閉じ切っている。 ずっと昔から、そうであったように。 ――だからここは楽園だ。楽園の内側だけで循環する、外側を必要としない閉じた 世界。 彼女と、 私と、 二人しかいない――楽園。さながらアダムとイブのように。 「……いや、」 久しぶりに声を出して否定する。彼女のいる部屋にいる間は、声を出すことができない から。自分の声を聞くのは自分だけだ。 いや、と否定する。 さながら、ではない。 ある意味では――本質的には。 そのものだ、と自嘲するように呟いた。 「……構わない」 そう、 構わないとも。 世界にいるのは私と彼女だけであり、それだけで世界は成り立っている。楽園は閉ざされている。 彼女は禁断の果実を食べることなく、幸せを甘受して生きている。だからこれは私だけの苦しみだ。 一足先に禁断の木の実を食べてしまった、彼女よりに先に食べてしまったという、それだけのことなのだ。 構わない。 今更――悔やむはずもない。 世界には私と彼女しかおらず、 私は彼女を――愛しているのだから。 そうだ。 そのはずだ。 世界はそうやって成り立っている。 154 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21 54 36 ID bV45Habb かぶりをふり、私は余計な思考を振り払う。悪い癖だ。どうしても考えてしまう。彼女が 成長すれば成長するほどに、考えてしまうのだ。 思考は余計だ。 思索は無意味だ。 後悔も躊躇も必要がない。 世界はこうなっているのだと、受け入れるしかない。 狂ってはいない。 初めからこうだっただけだ。 私たちはこうあることしかできず、 それならばきっと――外のほうが狂っているに違いない。禁断の木の実を食べ、楽園を捨て、 自ら滅びるほどに発展し繁栄した外のほうが。 それでも―― 「神様を――恨まずにはいられない」 アダムのように、私は呟く。 イヴのように、私は呟く。 私たちがアダムとイヴならば、それを作った神がいる。 比ゆではなく。 確かに――いるのだ。ただ神と名づけることしかできないだけで、それは私たちと同じような モノなのだろうけれど。この地下室を造ったものは、確かに存在する。 彼は、 彼女は、 何を考えて――こんなものを作ったのか。 希望をこめてか。あるいは絶望とともにか。不幸のどん底からのがれるようにか、希望を求めるためにか。 それとも。 私は思う。それを作ったのも、あるいは私なのではないかと――思わずにはいられない。 だとすれば、自業自得としかいいようがなく、 「――――――ははは」 いつものように私は笑った。 何度目か数えきれない思考は途絶えることなく、私は笑う。 閉ざされた箱の中で、笑い声は反響し、消えることはない。 155 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22 03 04 ID T4P/z52t 書き上げてから投下しろ 156 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22 05 57 ID bV45Habb いつも通りはいつまでも続く。次の日も私はいつものように食べ物を持って彼女の部屋を訪れ、 いつものように彼女はそれを食べた。その日は左足で、彼女はそれを抱きかかえるようにして食べていた。 血だまりの中で。 食べにくいのか、貪るたびに彼女の体が揺れ、必至で挑むように食べている。 ゆらゆらと、 白い髪が、 白い身体が、 黒い婚姻服が揺れる。 ゆらゆらと、揺れている。 振り子のように揺れる姿を、私は椅子に座ったまま見つめている。手をのばしても届かない距離だ。 彼女から手を伸ばしたことは一度としてなく、私から手を伸ばしたこともまた、ない。 まるで箱だ。 お互いが箱に詰められていて、外側を知り得ることはないのだ。彼女にとって、私など、食べているソレ と大差はない。 私にとって―― 私にとって、 彼女はどうなのだろうと、考えた。 「――――――」 考えるだけだ。決して答えは出さない。出す必要もない。 初めから出ているのだから。 言葉にする必要など――どこにもなかった。 いつものように彼女は食事を終え、いつものように寝転がる。今日は珍しく食べる量が少なく、 床に散乱する肉と血だまりはそのままだった。身体が倒れたときに、ばしゃりと大きな音と ともに血だまりが跳ね、波のように広がった。 仕方なく、私は血だまりを踏むように歩き、彼女のもとへと歩み寄る。身体を拭くためには 場所を変えなければならない。だが、そうすれば彼女は起きてしまうだろう。思案し、先に確 かめることにする。黒いウェディングドレスのスカートをまくり、下着を下ろし、 「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」 手が止まる。 視線が固まる。 意識は硬直し、心音だけが、高く深く跳ねた。 ずりおろした白の下着は、汚れていた。 外側からではなく。 汚物でもなく。 初めて。 初めて――内側から、紅く汚れていた。 ――初潮の、紅。 「――――――――は」 何よりも先に笑いが漏れた。 手よりも視線よりも先に、それらを全て忘れたように、口からは笑いが出た。 「は――――はははははは」 視線は穢れた下着にとまったままに、口だけが我を忘れたように笑い始める。はは、ははは、と。 彼女が起きるかもしれない、など思いもしなかった。何を考えることも放棄して、笑っていることを 意識できないほどに――私は笑う。 笑う、 笑わずにはいられない。 待っていたものが――ようやく訪れたのだから。 そうして、私は。 157 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22 15 15 ID bV45Habb 「×××××」 初めて、彼女の名前を呼んで、 その体を、押さえつけた。 小さく、細く、壊れそうな体を――壊すかのように押さえつける。白い髪が散らばり、 押さえられた頬が血に埋まる。眠りについたばかりの彼女は、浅い眠りから叩き起こされた。 目を覚ます。 目を開けて――私を見た。 初めて。 おそらくは初めて、彼女は私を認識した。背景の一部でしかなかったモノが、突如として自身の 身体を押さえつけていることに驚くように目を開いて。そのことに私の方が驚いてしまう。彼女が 驚くとは思わなかった。何をされているかわからず、世界の一部として受け入れるかと思ったのだ。 構わない。 驚くが、驚くまいが――このあとの展開が変わるはずもない。 「――――――――」 彼女の視線を見返しながら私は動いた。ずりさげた下着はそのままに、めくりあげたスカート もそのままに。血を受けて黒く染まるウェディング・ドレス。逃れられないように、細い両手首 を片腕で抑え込み、 残る片腕で、自らの服を脱ぎ、性器を露出させる。 「――――――」 彼女は無言だった。無言のまま、私を見上げていた。何も言わない。何をされるかも、 わかってはいないのだろう。私が動いていることに驚いているだけで、行為そのものに 頓着はしていない。 構わない。 反応を――求めているわけではない。 委細気にすることなく、私はすでに張りつめていた性器を、何ひとつ愛撫していない 彼女の秘所に突き刺した。愛液ではなく――血に濡れる秘所へと。 短剣のように。 「――――――――!!」 流石に劇的な反応があった。行為の意味は知らずとも、痛みだけは明確な事実として存在する。 突然内臓を抉られたようなものだ。無理やりに押し開かれた秘所の痛みに、彼女は暴れようとする。 無理だ。 細い腕は暴れれば自ら折れそうなほどに弱いのに――逃れられるはずもない。ばしゃばしゃと、血の 水たまりをかき混ぜるように動くことしかできない。逃れることができない。一部で繋がり、一つとな った体は、前へ進むことすらできない。 悲鳴をあげる。 声ではなく、 音を張りだすように、彼女は痛みからのがれる悲鳴を叫んだ。 ――ああ。 良い音だ、と思う。それは初めて聞く彼女の音だった。微笑みではない、彼女の内側 から発せられる意図だった。他人から与えられるとはこんなにも良いものなのか。突き さした性器は痛いだけで快楽などなく、その音によって恍惚を得る。 縛っていた手を放し、彼女を後ろ向きに組み伏せるようにする。自由になった手をばた ばたと動かすが、やはり血をかき混ぜるだけだ。必死に前へ――私から離れようとするが、 しゃくとりむしのように前後するだけで、一歩として前へは移動しない。 ばしゃり、 ばしゃりと、血が跳ねる。 血の海で、溺れている。 158 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22 23 09 ID bV45Habb 初めての性行為を心地よいとは思わない。知識でしか知らなかったことを体験したところで、 快感があるはずもない。痛い。ただ痛い。彼女が突き刺される痛みに悲鳴をあげるように、私は 締めつけられる痛みに臓器を持っていかれそうになる。当たり前だ、たった今、今日、初めて変 わったばかりの体なのだ。性交渉に向いているとは思えない。 けれど、 向き不向きに関わらず、 彼女はもはや、未熟ではない。 未成熟ではない。 熟している。 果実は、熟れた。 受け入れることができる。 子供を造ることができる。 それだけが全てだった。 無作為な前後運動を繰り返す。自身は動かない。後ろから抱き締めるように彼女の 身体を固定するだけでいい。彼女は這って逃げようとし、逃げられずに戻ってくる。 鈍感な往復運動。内臓で内臓が擦られる。 熱い。 痛くて、熱い。はちきれそうなほどに。 堪える理由など、どこにもありはしなかった。 迷いなく、 繋がったままに、 解き放つ。 「……………………!!」 一瞬――視界が白く、真っ白に染まる。自身の腰が意志と関係なくはねる、抱きしめた 彼女の身体が同じように跳ねるのがわかる。同じように、彼女の意識もまた白ずんでいる のかもしれない。意志を、力を、生命を、絞り込むように彼女の中へと放出する感触。 注ぎこまれる感触が、彼女をむしばんでいる。 腰がはねる。止まらない。二度、三度と放出し、そのたびに彼女の身体が痙攣する。逃 げようとしていた身体が止まる。力の抜けた身体が血の海に突っ伏し、だらしなく開いた 口から唾液とともに舌が零れ、無意識で血を舐めていた。 そっと―― つきさし、今は萎えたそれを抜き取る。白と紅に汚れてたそれを抜き、しまうことなく、 私は彼女を見下ろす。 動かない。 死んではいない。初めての外的接触に意識だけが飛んでいる。私もそうしたかったが―― 最後の力を振り絞るように立ち、彼女の箱を後にした。 ……ぱたん。 159 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22 38 20 ID bV45Habb 戸を開け、しめる。それだけで世界は隔離された。 「……………………」 小さな部屋だ。箱状で、彼女が生きる部屋と大差はない。地下深くに沈められた世界は、 二つの箱が繋がりあうような構造になっている。本来ならば向こうが居住区であり、こちら が生命維持のための部屋だったに違いない。地上から離れても、長く長く生きていられるように。 再び『上』が命溢れる世界になるまで逃れるために。 生命維持。 それは――間違っていない。確かに向こうの部屋が停滞ならば、こちらの部屋は生命だ。 ――禁断の果実がここにある。 彼女が食べることのなかった果実が、私の前に広がっている。 ずるずると戸に背を預けて座り込み、私の箱を見遣る。箱は狭い。純粋な大きさは彼女の箱と 変わりないのだろうが、モノがあるかないか、という一点で印象の差がわかれている。 彼女の箱には、椅子しかない。 この箱には椅子はない。椅子を埋める間もないくらいに――みっちりと、機械類が詰められている。 命を維持するための機械と、 命を造るための機械が。 「………………ようやく、」 私はひとりごとを呟く。ここにいるのは独りではないが、独り言でしかない。 彼女たちは、聞きはしない。 眠りにつく彼女は、ただのモノでしかない。 それは命だ。 食糧にして――命だ。 「…………前へと、進めそうです」 私は呟く。笑いたかった。けれど、きっと笑いは浮かんでいなかっただろう。 むしろ――笑ってほしかった。 彼女に。 彼女たちに。 私は見上げる。隣の部屋で成長する××××と同じ姿を。巨大な試験管に詰まった彼女の姿を。 箱の中にみっちりと詰められた試験管の群れを、その中で眠り続ける彼女たちを。無限に造られ ながらも生殖機能を持ち得ない彼女たちを。 ――楽園は完全だ。閉ざされている。死すらなく、子供を作る必要などない。 酷い冗談だ。この中にいる限り死ぬことはなく、それが故に子供を作る機能がないだなんて。 それを得たければ、外で育てるしかないだなんて――コレを食べながら。 禁断の木の実。 すべてが、それだ。彼女そのものが。それを食べてしまった以上、二度と楽園へは戻れない。 私は、独りでは生きられない。 だから幾度となく続けるのだろう。彼女が子を成すまで。私以外のモノが生まれるまで。自分以外の 他者が生まれるまで。たとえ同一のモノから生まれたとしても、それは別のモノだろうから。 愛すべきダレカが生まれるのを願って――私はぼんやりと、立ち並ぶ試験管を、 私と同じ姿をした彼女たちを、ずっと見つめていた。 世界は狂っている。狂ったダレカが作ったから。初めから狂った私たちは、独りでなくなることを祈り、願う。 はやくおおきくなあれ、と。 (了) 160 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22 41 17 ID bV45Habb 投下終了です。時間かかってごめんなさい ふと思い立って投下した短編ですが、相変わらず主人公側が病んでるとか色々アレです 血の池でカニバリするドレスの女の子は好きですか お茶会はもうしばらくかかりそうです 待ってくれてる人、ありがとうございます 161 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22 44 42 ID Mcfx0Opk よし、今から見る 162 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22 45 17 ID 6Yz5zL3h 160 お茶会の人か! 途中鬱入りそうになったけど、相変わらずの独特の世界観で乙でした。 いない君はいつでも待ってますよ 163 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 23 12 08 ID xYjM7rLE カニバリは苦手だ… 164 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 00 55 55 ID cxdzbSC4 彼は刈ったばかりの芝生の上に横になってる 私の全てを魔法みたいに変えてくれたのに 酷く思いつめてた あなたが私にしてくれたように あなたの全てを私が変えてあげた でも今あなたの目は死んでる だいたいそんな感じ ギャグ漫画日和 165 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 02 00 18 ID Q4rBVE8/ 139氏も書いていますが一応やみなべレポ。 大雨の中、都産祭という合同イベントなのでかなりの人数が開始前からセンター前に並ぶ。 今回は並んでいる最中もしくはカタログ購入時に18歳以上の人は身分証を提示して 証明のためのリストバンドをつける形でした。 最近の東京都はこの辺の問題に敏感だし、前回はそれで一悶着あったのでこの手間は センターを気持ち良く利用するためには必要だと思います。 で、中に入って3Fへ。 今回はやみなべ・ハルヒ・初音ミク・クィーンズブレイドが同室で開催。 やみなべのサークルは大まかにハルヒ・スクイズ・オリジナル。比率はオリジナルが多めで前回より ハルヒ・ひぐらし・シャッフルが減少。(ハルヒは隣が普通のハルヒオンリーだったからかも?) 前回・前々回あったサークルさんが来ない卓は今回は全くなし。 そして毎回恒例落書きコーナーが、これまた毎回恒例超カオスに。 外周で「ヤンデレしりとり」と「NiceBoat」が同時勃発。外周を埋めつつ周囲の絵や文のために グネグネと曲がるしりとりは圧巻。 NiceBoatはヤンデレしりとりに食われる形で早々に止まるも、途中から馬鹿が「ひとりBoat」を決行。 「NiceBoat」「良好小船」「内酢棒斗」「誠ボート」「ブルーアイズアルティメットNiceBoat」 「ドロー!NiceBoatカード!ドロー!もうやめて誠はとっくに生首よ!」とネタを混ぜながらも NiceBoatで外周一周も成し遂げる。おつかれ、自分。 終了間際には女性スタッフがヤンデレしりとりの文を読み上げるというお遊びが始まり、 中にはかなり際どい文章も。「できちゃった…あなたの子供」を書いたのは自分ですごめんなさい。 終了後はアフターイベント。4イベント共同じゃんけん大会とやみなべアフターであるヤンデレカルタ。 前回ヤンデレカルタはスタッフがその場で読み上げていましたが、今回はカルタ付属の読み上げCDを使用。 景品は非売品ポスター、非売品マグカップ、売品カルタ+読み上げCDでした。 最後に主催者様の挨拶で次回からは、神奈川に入り川崎で開催とのこと。 今回も前回に引き続き個人的にヤンデレ娘に改造したフィギュア(Pinky st)を持ち込んだところ はるか昔にこのスレに投下したフィギュア+SSを見たという方と遭遇、驚きました。 以前の作品(Wikiじゃない保管庫の彩 味香(仮))のに加えてもうふたりほどいますので 折角だしアップしてみます。 ttp //xtp0001.s3.x-beat.com/cgi-bin/up/source/Sonata_24612.jpg ttp //xtp0001.s3.x-beat.com/cgi-bin/up/source/Sonata_24613.jpg 長文失礼しました。 166 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 07 09 37 ID Hd6oCBIQ 160 カニバリズム大好きな俺には超GJ! この狂った感じたまらんw いない君はずっと待ってるのでゆっくり書いていってね! 167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 11 53 43 ID NDne1Qh0 146 こういうの好きだ GJ! 168 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 12 00 17 ID mXK3jQCC 165 >途中から馬鹿が「ひとりBoat」を決行。 >NiceBoatで外周一周も成し遂げる。おつかれ、自分。 本人かw 連休中だからか懐かしい人達帰ってきてるなあ。皆さん、乙 169 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 13 03 30 ID sVl/SzWw ほトトギすの人まだかな。そろそろ終盤だからかなり待ち遠しい。 170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 15 34 10 ID y/qEogVB 無形氏は俺のよm(ry 171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 23 14 27 ID MUzDDzl7 紳士なら全裸で待て 172 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 22 51 ID VyAnuljW みなさんおはようございます。 今日も元気に、ヤンデレ娘に(性的な意味で)迫られる妄想に励みましょう。 第十二話、投下します。 173 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 24 19 ID VyAnuljW 「掃除用具入れ、異常なし、と」 しけった匂いを放つロッカーの扉を閉める。使い倒された扉の金具が大袈裟な音を立てた。 窓の外に目を向ける。夕方の太陽が放つオレンジ色が雲に映り、鮮やかな光景を作り出していた。 俺が何をしていたのかというと、校内の各教室巡りである。授業が終了してからこの時間までずっと続けていた。 そして、最後の教室である多目的室に到着し、何の収穫も得られなかったことに落胆した。 弟が隠されている場所を探し、一度も入ったことのない多目的室までやってきたが発見できず。 すでに頻繁に利用される教室は全て見回った。男子トイレと、女子トイレまで人がいないタイミングを見計らって調べた。 職員室に備え付けられている更衣室まで掃除という名目で入り込んだ。しかしどこにも弟はいない。 校舎の中で探していない場所というと校長室ぐらい。 しかし、いくらなんでも頭髪に相当の白が混じっている年齢の人間が弟をさらったりはすまい。 残るは部活に所属する人間が動き回るグラウンドと体育館のみだ。 俺がこうしているのは、つい一時間ほど前、帰りのホームルーム終了後に葉月さんから話を持ちかけられたのが始まりだった。 「今日は暇がある? もしあるんなら、今日は弟君を探しに行かない? やっぱり心配だもの。本当に事件に巻き込まれたのかもしれないし。あなただって、そうでしょう?」 もちろん頷いた。昼休みに花火と一悶着あったせいで、朝よりもずっと弟のことが気にかかっていたから、 葉月さんに声をかけられなくても探しに行くつもりだった。 葉月さんは今、俺の近くにはいない。 俺が学校内を捜索、葉月さんが弟の友人知人に直接話を聞きに行く、という役割分担で動いているからだ。 まあ、妥当な配役である。葉月さんが校内でうろちょろしていたらいろんな人に声をかけられて動きにくいだろうし、 俺は弟の友人知人なんてろくに知らない。 人付き合いのスキルにおいて俺よりも葉月さんの方が上回っているのはほぼ確実だ。 さりげなく話を聞き出すなら、話慣れしている人間の方が上手くやれる。 印象の薄い人間の方が、あちこち探っていても人目につきにくい。 そういうわけで、俺は一人で放課後の校舎を隅から隅まで見て回っているわけである。 多目的室から移動し、振り出しの地点である弟の教室へと向かうことにした。 校舎の一階にある弟の所属するクラスへ向かう。 廊下から窓ガラスの向こうの教室を見ると、誰も残っている人間はいなかった。 遠慮なしに入り口のドアを開ける。 そうしたら俺の目の前に弟が立って――いれば楽なんだけどなあなんて思ったが、もちろんそんなことは起こっていなかった。 この教室には、去年文化祭の準備で一週間ほどお世話になったことがある。 当時の弟の席は窓側の列の中ほど、夏場に窓から差し込む日差しを避けられる壁のある箇所だったはず。 かつての弟の席の机の中や、鞄掛けフックには何も残されていない。机の上の落書きまでない。 果たしてここが現在も弟の席であるのかどうかはわからない。それでも意味もなく座ってみた。 窓の外を見る。空はいつのまにか黒の成分を増量させ始めていた。 もうじき夜が来る。夜になると人に限らず捜しものをするには困難な状況になる。 それに部活をしているわけでもないのにいつまでも校内に残っていたら、教師に目をつけられてしまう。 というわけで休憩終わり。同時に再スタート。 まだ捜索していないグラウンドと体育館へ向かうため腰を浮かす。 174 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 25 26 ID VyAnuljW 廊下を歩いていると、突然制服の上着の内ポケットが振動した。素早く小刻みに動く携帯電話を取り出す。 電話をかけてきているのは葉月さんだった。通話ボタンを押して応答する。 「もしもし、葉月さん?」 「……あれ? 声……」 「もしもーし。聞こえてる、葉月さん。俺だよ」 「あ、うん。聞こえてるよ。ごめんね、一瞬誰か別の人にかけちゃったかと思っちゃった。 電話を通して聞く声って普段と結構違うんだね」 「そう?」 「うん。顔が見えてないからかな。よくわかんないや」 俺は葉月さんに限らず、声の調子で相手の表情をなんとなく読めるのだが、葉月さんはそうではないのだろうか。 普段の連絡の手段に電話ではなくメールを活用するのは、電話するのが苦手だからか。 ――ん? 待てよ。 「葉月さんって、電話苦手じゃなかった? なんで今は?」 「……うん、ちょっとだけ苦手。でも今は、今だけは別だよ。 あなたの声が聞きたかったの。なんだか不安だったから。 弟君が居なくなったから、もしかしたら次はあなたの番なんじゃないかって思っちゃって」 「……ありがとう、心配してくれて。でも俺は大丈夫だから」 「うん。声聞けたから、安心した」 それは何より。 俺がさらわれることなんてことはありえないから無駄な心配ではあるが。 弟みたいな人気者ならともかく、俺をさらって得をする人間などいないはずだ。 まあ、俺が葉月さんと仲良くしている様子を妬んだ男や女にとっては腹いせになるだろうけど。 「それじゃ私、今から学校に行くね。一緒に帰ろう」 「え、ちょっと待って。学校にくるって、葉月さん今どこに居るの?」 「学校から歩いて二十分かからないくらいの場所。走れば十分もしないうちに着くから、待っててね」 「いやいや、葉月さんこそ待って! そのまま帰った方が安全だって。わざわざ学校に戻らなくても」 「いいの! 一緒に帰りたいんだから、そうするの!」 「それは嬉しいんだけどだからってここまで…………って、もう切ってるし」 携帯電話からはツーツーという無機質な音が聞こえてくる。 こちらからかけ直そうかと思ったが、葉月さんを説得しているうちに葉月さん自身が学校に到着するかもしれないので、諦めた。 呆れてやれやれと呟くべきか、嬉しくてにこにこと笑うべきか。 二つの選択の中間、ため息を吐き出す行為をとった後、携帯電話をしまった。 葉月さんがここまでするのは心配しているからだろうが、なぜ心配しているのかというと、 まだ俺のことを好きでいるからなんだろう。 俺は以前葉月さんに告白された。 だから気持ちに応えるため、なんらかの返事をしなくてはならない。 昼休みに花火が俺を非難したのは、俺が葉月さんと中途半端な関係を続けているから。 花火は昼休みのやりとりで、葉月さんの抱く思いと、それに対する俺の反応を読んだ。 告白されたのに、俺が白黒つける回答をしていない、と。 175 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 26 17 ID VyAnuljW 葉月さんのことを好きか、嫌いか。 嫌いという回答はまずありえない。そんなことは欠片も思っていない。 それではどう思っているのか。胸に手を当てて自問する。 答えはすでに準備してあった。 「俺は葉月さんのこと――大事にしたい。仲良くしたい」 声にすると、心の中のもやは晴れる。 でもこの答えは葉月さんの期待しているものではないはず。 要は、あなたはいいお友達です、ということ。 少し言葉の捉え方を変えれば、いいお友達でしかありませんよ。 もし言ってしまったら、葉月さんは離れていってしまうのではないか――いいや、離れていく。 だったらこのまま答えを保留し続けてもいいはず。 嫌なことから逃げて何が悪い? 一体俺を、誰が責められる? 176 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 27 15 ID VyAnuljW 不意に、開け放たれた窓から風が吹いてきた。 冷たい風。冷たくて、思考までがぬるま湯状態から、この季節に蛇口から流れる水ぐらいまで冷えた。 「……そんなんじゃ駄目だろ、俺」 誰が責めるか? 二人いる。まず俺、もう一人は花火。 昼休みに葉月さんが呟いた言葉で、葉月さんは俺との今の関係を快く思っていないということが知れた。 でも、答えを出すまで待ち続けるとしたら、葉月さんはいつまでも悲しい顔を隠し続ける。俺に気付かれぬように。 最低じゃねえか。 真剣な気持ちで告白してくれたのに、友達の関係のままでいたいからって応えない。 大事にしたい? 仲良くしたい? 相手を思うなら真剣な気持ちで応えるべきだろ。 これから仲良くしていくうちに好きになっていくかも? ――本当にそうか? それは具体的にいつになる? というか、これから先がどうこうという時点で話が違っているだろう。 今の俺が、葉月さんをどう思っているのか。それを葉月さんは知りたがっているんだ。 あえて問い質さずともわかっている。すでに答えは出ている。 全ての始まり、葉月さんに告白されたその日、その時に、確たる答えを導き出していた。 言おう。葉月さんが校門に現れたとき、面と向かって口にしよう。 ごまかし続けるより、嘘を吐くより怖いけれど、言わなくてはならない。 決断すると、不思議なことに足取りがふっと軽くなった。 すっきり起きられた朝に、緩やかな陽光の注ぐ庭で、晴天を見上げながら鳥のさえずりを耳にしているよう。 静かで、気持ちがどこまでも落ち着いている。 頭の中のざらざらした感覚が一切合切払われていた。 俺は今まで告白への返答のことで悩んでいたのだ、と悟ると同時に、罪悪感を覚えた。葉月さんに対して。 だって、あなたの告白の返事を考えていたら頭の中が重くなっていました、なんて言ったら可哀想だ。 むしろこっちの方で葉月さんが傷つくかもしれない。 ……このことは言わなくてもいいよな。言うべきことではないし。言うべきは俺の気持ちだし。 結局、一つ答えを出した代わりに、一つ内緒にすることが増えた。 ま、いいか。 頭の中が完全に自由になるよりも少し悩みを抱えている方が俺らしい。 それに、葉月さんのことで悩まなくなったらそこで関係が終わってしまいそうだ。 葉月さんが俺の家に来て妹を一回、俺を数回ぶん投げたあの日、俺が言った言葉は嘘じゃないんだから。 177 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 29 54 ID VyAnuljW 一階廊下側の窓はたった一つだけ開いていた。俺の位置から五歩前方。 非模範的生徒になろうとしてもなれない俺の足は勝手にオープン状態の窓へ寄っていく。 無視するのも忍びないので、窓を閉じたうえで鍵をかける。 窓の向こうに見える中庭はすでに明度を低くしたテレビ画面のようになっていた。 こんな暗い中、葉月さんを家まで送っていくのか。 嫌だなんて一切思わない。問題は送っていく途中ではなく葉月さん宅に着いてから。 葉月さんの家の玄関、のさらに向こう側、家の中からじっと見つめられている気がするのだ。 家に住んでいるのは葉月さんと葉月さんの両親だけらしいから、視線の主は父親か母親のどちらかだろう。 俺が葉月さんを暗くなるまで連れ回していると思われている、なんて誤解されているかもしれない。 そうなった誤解を解かなければならないわけだが、解くことができるかがわからない。 もしあまり印象を持たれていなかった場合、言葉選びを間違ったり視線を一瞬逸らしただけでミッションオーバーになりうる。 クラス一実年齢と後ろ姿から推測される年齢がかけ離れている、と高橋に評されている俺である。 説得失敗する可能性が濃厚だ。 上手くやる方法はないかなんて考えていたら、ふとあることが浮かんだ。 気だるさが体外に自然放出される。前のめりになるところを、窓枠を掴みガラスに額を押しつけることで耐える。 「あーあ……そうだったよ」 今日一緒に葉月さんと帰れるかわからないじゃないか。 告白の返事をして、その後でどんな反応が返ってくるかいまいち予想できない。 いや、予想したくない。考えると返事する気が削がれそうだ。 だって、だってだぞ。もし泣かれたら―――――― 「あああああ、やめやめやめやめ、止め!」 額をぐりぐり窓に押しつける。次に打ち付けようとしたところで、ガラスが割れる光景が浮かんだので停止する。 ネガティブな想像をしたらネガティブな気分になるだろうが。ただでさえ背景は薄暗いってのに。 ともあれ、まずすべきは校門に現れるはずの葉月さんを迎えることからだ。それ以外は考えるな。 たとえ、中庭を一人で横切ろうとする女子専用制服を着た人影が通り過ぎたとしても。 校舎の出入り口へ向けて歩を進め――急停止した後にバックステップ、という行動を体がとった。 今し方目にした光景をスルーするなと脳が拒んだだけである。断じて舞台に備えて演技の練習をしているわけではない。 中庭を観察する。校舎内に目もくれず歩いていくのは確かに同じ高校の女子生徒だった。 葉月さんではない。暗い中でもはっきりわかるぐらい身長に差がある。 髪型も違う。葉月さんは黒のロングだが、視線の先にいる彼女はショートヘアー。 スカートは短い。といってもそれは女子用制服のデフォルトである。 だが彼女のようなか細くないのにしまっている足は、全女子に共通しているわけではない。 みんなああだったらいいのになあという感想はさておいて、観察を続けるべく腰をかがめて移動開始。 校舎内から女子生徒を追い抜き、気付かれぬよう窓の下に隠れ、女子生徒の顔を観察する。 ふうむ、んー……暗くてわからん。 というか、何をやっているんだ俺は。 なんで人気の無くなった校舎内で一人かくれんぼをしている。まるで女子生徒のストーカーじゃないか。 改めて自問しても答えは出ない。なんとなく、中庭を歩いている彼女のことが気になっただけ。 とはいえ、誰かに見つかったら答弁しようがないな。 もうしばらく、女子生徒が誰かわかるまで先生が来ないよう祈るのみだ。 178 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 31 26 ID mtcrNc77 支援いたす 179 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 34 47 ID VyAnuljW 中庭にいる彼女と校舎内の俺が距離を空けて肩を並べた時、突然窓ガラスが揺れた。 人為的なものではない。おそらく強風が吹き付けてきたのだろう。 「わひゃあっ!」 小さな悲鳴が聞こえた。女子生徒の方を見ると、彼女はスカートの前を両手で押さえていた。 さらに窓が揺れる。女子生徒のスカートの後ろ側が風によってめくれる。 「もう、何するんですかいきなり!」 女子生徒は俺に背を向けるように反転して尻を押さえ、風に向かって抗議の声をあげる。 俺はというと、心の中で風にエールを送っていた。いいぞ、もっとやれ! だが、応援の甲斐無く風は活動を止めてしまった。 彼女のスカートの中身は、俺と女子生徒の位置関係、および膝上十センチ以上は死守すべきと たたき込まれてきたかのような彼女の鉄壁の守りによって、一切見えなかった。 「まったくもう。人が居なくてよかったですよ。きっと見えちゃってたもん」 いいえ、見えませんでした。ですが見たかったわけではありません。 俺はただ必死にスカートを押さえる女の子の姿を見たかっただけ。 ふわりと浮く柔らかなスカートの裾や、さりげなく露出度の上がった白いフトモモ、必死に二本の手で抵抗する女の子の仕草がいい。 同じクラスの女子からは引かれ、男子からは同意を得られない嗜好かもしれない。 だが、悪いことだろうか? 女子のスカートというものは隠れた向こう側が見えないからこそ魅力があるのだ。 向こう側を知っている、もしくは常時見えている状態であれば興味をそそられない。 そんなものは、引いたら必ず目当てのものが出てくるガチャガチャのようなものである。 ロールプレイングゲームの二周目のボスを倒しても、一周目の時のような感慨も湧かないのと同じだ。 俺は今後「風が吹いてもスカートは役目を全うすべきの会」の代表者として活動し高橋をはじめとする友人から仲間に 引き込んでゆきゆくゆくは春一番と緑風と秋風と寒風の吹き始める季節のそれぞれに会合を開いてゆく所存だ。 「……なんてな」 もちろん本気ではない。自分でもわけ分からなくなってきた。 きっと気分が軽くなっているせいだ。そうに違いない。 180 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 35 30 ID VyAnuljW さて、俺は女子生徒が風によって翻弄される光景を目の当たりにしたが、下半身だけに集中していたわけではない。本当だ。 まず、声を聞いた時点で相手の見当をつけられた。丁寧語が印象に残ったからだろう。 続けて、中庭にいる女の子の容姿と予想した相手の容姿を比べた。結果はほぼ一致。 最後に、彼女が俺に背中を向けている間に目を凝らし、女子生徒の顔を確認した。 相手は予想の通り、木之内澄子ちゃんであった。 その澄子ちゃんは、制服の乱れがないかを確認した後で再度目的地へと進路をとった。 今は建物の死角に入ったから姿は見えない。 「怪しい……」 傍から見れば一番怪しいのは俺であるが、それは除外して澄子ちゃんに焦点を絞り込む。 現在の俺の目的は弟の捜索。 弟が自分の意志で俺や花火に黙って失踪したのでなく、何者かの手によって姿を現せない状態にあるとしよう。 そう仮定した場合、第一容疑者は澄子ちゃんということになる。 理由は二つ。 その一。彼女には弟をさらう動機がある。 澄子ちゃんは弟に恋している。 もっとも、身を焦がすような恋をしていても容疑者候補に挙げるには足りない。 それだけで容疑者にしたてられるなら、花火や弟のファンクラブの子たちも疑わしくなる。 しかし彼女には他の女子と違う点がある。 それこそが理由その二。彼女には前科がある。 去年の文化祭の一日目、弟は行方不明になった。犯人は忍者のコスプレをした澄子ちゃん。 事実を知っているのは俺だけだ。もう二度と同じことはしないと信じていたので、かばうつもりで葉月さんと妹には伏せていた。 けれど、同じ事態になった以上はもうかばいようがない。 涙を流しながら縋り付かれても、俺は澄子ちゃんを第一容疑者として認識する。 その第一容疑者が夕方の学校の中を一人歩いている。怪しむのが当然だ。 181 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 37 20 ID VyAnuljW 急いで靴を履き替えて外に飛び出す。早足よりちょっと早いぐらいの速度で中庭へ向かう。 地面の砂利を踏む音を立てないよう歩くという小細工を使っているつもりだが、音は少なからず発生する。 砂利の音と緊張感が俺の精神をやすりで削るように縁からじわじわと削りカスに変えていく。 削り取られて少し五感が鋭くなった気がした。錯覚を事実として強引に認識。 腕利き諜報員のつもりで建物の陰から中庭を観察する。 澄子ちゃんはすでに中庭にはいなかった。しかし、概ね行き先は絞り込める。 もし澄子ちゃんが弟をさらったなら、今から隠し場所へ向かう可能性が高い。 校舎内は俺がすでに見て回った。弟が校舎にいないことは九割方確信できる。 校舎内に弟がいるなら、澄子ちゃんは中庭から一直線に校舎へ向かい、俺と遭遇するはず。 しかしそうはならなかった。つまり、まだ俺が捜索の手を伸ばしていない体育館かグラウンドに向かった、ということ。 ヤマをはろう。倉庫と床下のスペースがある体育館か、部室棟と屋内練習場の建ち並ぶグラウンド、どちらか。 部活見学さえやらなかった俺は、運動部の部室の内部がどうなっているのかは知らない。 体育の授業で剣道場や弓道場に入ったことはあるが、隅から隅まで見たことはない。 体育館はまだ馴染みがあるが、詳しく知っているかというと否。 「――ふうむ」 顎に右手の指を添えて唸ってみる。 葉月さんはいつやってくるかわからない――いや、そろそろ正門をくぐった頃かも。 なんにせよ、二月の寒空の下歩き回っては体調を崩しかねない。 待たせないためにも、ここは戸の総数の少ない体育館へ向かおう。 部室棟はちょっと数が多い。野球部、サッカー部、ラグビー部、陸上部、テニス部、……エトセトラ。 その点、体育館は正面、裏口、舞台の袖、左右に一つずつだから比較的少ない。 澄子ちゃんがすでに中に入っていたら中から鍵をかけるかもしれないが、澄子ちゃんは間の抜けた部分があるのでかけ忘れる可能性がある。 初対面した日にクロロホルムの効果のほどを知らずにそれに頼ろうとしていたこと、 文化祭の日に弟を自分の体で引きずって移動させていたこと、 クリスマスイブに弟を見失った後でいい年したサラリーマンにつきまとわれていたこと。 あのドジが再発したならば、運良く弟の隠し場所にビンゴするかもしれない。 もし期待以上の成果があったとしても俺は行動しない。すぐに教師を呼び、事態を収拾してもらう。 俺が一人で突っ込んでいっても返り討ち、もしくは二人目の犠牲者になるだけ。 情けないが、自分の実力も図れずに動くよりはずっとマシというものだ。 182 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 39 46 ID VyAnuljW 足下の怪しい夕刻の渡り廊下を通過し、体育館前へ到着した。 正面入り口の両脇には電灯が設えられていた。 おかげで入り口に至るまでの階段で足をおそるおそる差し出さずに済んだ。 スライド式のドアを開こうとしてみるが、開かない。 諦めて別の入り口へ向かってみる。 時計回りにぐるりと体育館を回ってみたが、どのドアも開いていない。 てことはハズレか。悔しさの中に一滴の安堵がこぼれ落ちて波紋が生まれる。 仕方なく正面入り口前に戻り、葉月さんに連絡をとるため携帯電話を取り出す。 通話ボタンを押す直前、ディスプレイ以上に頼りになる光源の電灯に何気なく視線を向ける。 「む、ん? ……あれ?」 正面入り口のドアが開いている。 わずかではあるが、右と左のドアの間に隙間ができている。ここに来た時には開いていなかったのに。 入り口に近寄り、隙間に両手の指を入れて開くと、重い手応えと一緒にドアは動いた。 何故だ? 誰か忘れ物を取りに戻ってきた生徒がいる? 違うか。生徒に体育館の鍵を管理させるほどこの学校の教師はユルユルではない。 すると見回りにやってきた教師が開けた可能性が濃厚。 その次に、澄子ちゃんが開けた可能性が浮上する。 俺が他の入り口を探している最中に入れ違いで体育館の正面入り口から入り、鍵を閉め忘れるというドジっぷりを発揮した、とか。 中にいるのが教師か、澄子ちゃんか。 どちらにせよ、中に入ってみなければ。もちろん誰にも見つからないように。 体育館のフロアを覗きこんでも人影は無い。見回りをしている教師なら懐中電灯を使うはず。 おかしい。静かすぎる。人が居るなら足音や、戸を開ける音が聞こえるのが普通。 それがない。すなわち誰も居ない、もしくは隠れている。 もしも後者であるなら、隠れる理由はなんだ? 見つかりたくないから、見つかる訳にはいかないから。 たとえば、他人に知られたくない何かが―――― 静寂を打ち砕くような轟音。体育館内の壁とガラス、おまけに自分まで揺れる気がした。 突然の音は正面入り口からやってきていた。外灯の明かりがドアの窓枠の向こうに見える。 入る時は左右どちらかのドアを全開にしたままだったはず。それが今では閉めきられている。 ということは。 「誰かが、閉めた」 としか考えられない。 見回りの教師が今頃来て、体育館の入り口を閉めていったならまだいい。 それ以外なら。俺が中にいることを知りながらドアを閉め切ったのなら、その目的は? 「まさか、俺を、閉じこめ」 「――るのが目的ですよ、先輩」 183 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 42 16 ID VyAnuljW 不意に聞こえてきた女の声に体が反応する。勝手に足が後退したせいで背中と壁がぶつかり、また驚いた。 「そのっ、声は」 「はあい。木之内澄子ちゃんですよ。いつか先輩の義妹になる、恋する女の子です」 左から右、右から左へと目を泳がしても暗いだけで、澄子ちゃんらしき人影はない。 どこだ、一体どこから喋っている。 「先輩、今アタシを探してますね。よーく見えますよ、ここからなら」 「ここってどこだよ! 姿を見せろ!」 「あれあれ? 焦ってますねえ先輩。怖がらなくてもいいですよ。ここにはアタシと、彼だっているんですから」 彼? 三人称で言われてもわからんぞ。 「でも、先輩が一番早くここに辿り着くなんて思わなかった。 てっきり葵紋花火がくるものだと思って色々用意していたのに。 まあ、いいです。アタシの邪魔をする人、彼を奪っていく人。そんな人たちには相応のやり方で応えます」 花火? 邪魔? 奪って? 応えます? 何を言っているんだ。わからない。耳と脳を繋ぐ回路が混線してるせいだ。 腹部に違和感。同時に耳障りなモーターの音。 攻撃を加えられたわけではない。制服のポケットに入れていた携帯電話が動いただけ。 慌てて止めようとするが、手をコントロールできない。内ポケットは右と左どっちにある? 駄目だ、わからない。制服を脱いで床に敷き、携帯電話を探る。 ……よし、見つけた。 本体を開いて、電源ボタンを押そうとして――首に冷たい異物が触れていることに気付いた。 首をぐるりと巻いているこれは、鉄線? 「見ーつけた、せんぱい」 声がとても近くから聞こえた。 強制的に冷められた頭を働かせて、澄子ちゃんの位置を探る。 前、居ない。左、右、居ない。肩越しに背後を見る。誰もいない。 前後左右以外の方向でこんなに接近できる居場所は。もしや。 ゆっくりゆっくり、緩慢に首が上がる。 直上を見上げたとき、そこには。 「ようやく、アタシを見つけられましたね。 まったくもう…………先輩ったら、ほんとうに、キヅくのが、オソインデスネ?」 俺の頭上に居ながら、目と鼻の先で不気味に微笑む澄子ちゃんを見て、その場に尻餅をついた。 澄子ちゃんの口から漏れる音は聞こえない。何か言っているようだったけど、耳が働かない。 次第に霞んでいく意識の中、鉄線が首に食い込む痛みと、携帯電話の放つ緑の光だけを認められた。 振動音と、床を跳ねる音が重なっていく。 ぶぃぃぃん、がたがた。 ぶぃぃぃぃん、がたがたがた。 ぶぃぃぃぃぃん、がたがたがたがた。 いつまでも、音は鳴り止まない。 184 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 43 31 ID VyAnuljW 十二話は終わりです。 ちなみに最終回ではありません。次回がエピローグなわけでもありません。続きます。 185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 47 25 ID 5FZBvvDq 184 リアルタイムGJ! 186 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08 49 04 ID mtcrNc77 184 ぎゃあああぁぁあ!!!! 危ない危ないと思って読んでたら案の定捕まりやがった! 葉月さん、葉月さーん! たーすーけーてー! やっぱり下手人は澄子ちゃんか。ちょっとは信用してたんだけどね。 心臓がばくばく言ってます。超GJ 187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 16 43 15 ID 03Zdusic 184 GJ! でも、鉄線って体重なんてかけたら首切れない? 188 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 17 33 52 ID +RqJeO+8 まさかの主人公生首→ヤンデレのターゲットは弟だから物語はそのまま続行 →傍観者編終了、新章突入 189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 18 44 43 ID 03Zdusic その後葉月さんはnice boatするんですね、わかります 190 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 20 29 58 ID vKVVyCW/ 別れ話をスルーする女はヤンデレですか。 191 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 20 33 12 ID mtcrNc77 190 かなり近いと言わざるを得ない。 192 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 21 16 02 ID vKVVyCW/ そうかー、(´・ω・)親父うらやましす 193 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/05/05(月) 21 53 28 ID DN9Kek6c だが我々は突っ込まない 194 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 22 06 13 ID vqPF+91Z sage 195 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 00 42 33 ID 0Hny20+I ↓が突っ込みなら俺にヤンデレの友達が出来る 196 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 00 52 42 ID ErT801K5 そんなこたぁない。 197 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 01 17 29 ID uLnTxaht ヤンデレ なのに 友達? とんだ矛盾だな 198 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 01 20 28 ID zn9wmRD9 195 ←友達→ ヤンデレ ―恋愛感情→ 男 …ということだろう、たぶん。 199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 01 26 15 ID uLnTxaht ヤンデレは惚れた男以外にはただのヤンだぜ? 200 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 01 32 50 ID h+i77S8x 病みもしないだろ、男以外は華麗にスルー